G-Star 2009現地レポート

NCSoft、武狭MMORPG「Blade & Soul」開発者インタビュー
2010年CBT開始予定! 新感覚武侠MMORPGの開発構想を聞く

11月26日~29日開催

会場:釜山国際展示場(BEXCO)

入場料:大人4,000ウォン(前売り2,000ウォン) 学生2,000ウォン(前売り1,000ウォン)


 G-Starの開催に先駆けて11月24日、韓国ソウルのNCSoft本社にて開催された「2009 NCSoft G-Star Premiere」では1年4カ月ぶりに、次期主力タイトルとして同社が現在開発している武狭MMORPG「Blade & Soul」(以下、『B&S』)の最新トレーラーを公開した。G-StarのNCSoftブースでは、この最新トレーラーが視聴できるクローズドシアターに長い行列ができ、今年のG-Starを象徴するタイトルとなった。

「Blade & Soul」のタイトルロゴ

 ムービーの内容は「ジン」、「ゴン」、「クン」、「リン」といった4つの種族と「ブレードマスター(剣士)」、「カンフーマスター(拳士)」、「フォースマスター(気功士)」、「デストロイヤー(力士)」といった4つのクラスの戦いぶりを紹介するというものだ。

 依然として実機によるデモンストレーションや試遊は行なわれないままだが、トレーラームービーを通じて多くの情報が明らかになった。「B&S」は約一千年前の東北アジアの色んな文化がミックスされた架空の世界で、プレーヤーは世界の敵とのPvE と、敵対する派閥とのPvPを楽しむMMORPGだ。馬乗りになっての攻撃、大ジャンプ、空中コンボなど、豊富なアクション性と、圧倒的に美しいグラフィックスが特徴となっている。

 弊誌では、発表会終了後に「B&S」の開発総括を担当するペ・ジェヒョン氏とアートディレクターを担当するキム・ヒョンテ氏との単独インタビューを行なった。開発を総括しているペ氏は最初は規模は小さいが深みのあるタイトルを作ろうとしていたが、いつの間にか気が付くと、大規模になってしまったという興味深いエピソードも話してくれた。インタビューでは、「B&S」の基本的なゲームシステムから開発秘話まで確認することができた。ぜひ最後までお楽しみいただきたい。


【「Blade & Soul」G-Star 2009トレーラー】




■ 「B&S」は千年前、東北アジアの文化を融合させた世界観。個性溢れる4つの種族に注目!

NCSoft専務取締役兼開発本部長ペ・ジェヒョン氏。NCSoftの開発部署全体を総括しているため、「B&S」だけではなく、「The Tower of AION」の開発にもかかわっているという

編: まず、「B&S」の世界観について教えてください。

ペ・ジェヒョン氏: 架空の世界で、千年前の東北アジアをイメージしました。韓国、中国から日本、インドの文化をミックスさせた世界ですね。その世界の上で、武功や師匠と弟子といった武狭の要素が盛り込まれています。

キム・ヒョンテ氏: 簡単にお話ししますと各文化が混ざった世界があり、創造神によって分かれた4つの柱から4つの種族が生み出されました。そういう世界を封じ込もうとするチャタルシンとの対立を描いた世界です。詳しい話はCBTの直前に発表するつもりです。

編: 「B&S」は基本的にPvE(対モンスター戦)ですか? PvP(対人戦)はどのような仕様になりますか?

ペ氏: 基本的にはシャタルシンとの対立を描くPvEが中心です。ギルドとは違うものなんですが、プレーヤーは「Ultima Online」のFactionシステムのように、ゲームの中で用意された派閥を選択して、派閥同士のPvPが楽しめます。この派閥はRvRとは違い、途中で変えることも可能です。1対1より派閥対派閥の戦いがメインになります。

編: PvPはどこで楽しめますか?

ペ氏: オープンされたフィールドで敵対の派閥と自由にPvPができます。

編: というと、基本的にはインスタンスではなく、誰でも自由に入れるオープン型のフィールドですか?

ペ氏:はい。インスタンスダンジョンもありますが、基本的にはオープン型のフィールドの世界です。

キム氏: MMOであり、他の人と別れた世界でプレイしている感じはないようにしてます。

編: 種族のクラス選択はどうなりますか?

ペ氏: 種族によって、選択できるクラスがあります。「リン」のように小さいキャラクターが倒れた相手を馬乗り状態でぶん殴るのはビジュアル的に可笑しいですよね(笑)。

キム氏:種族の特徴、設定やビジュアルの問題によって選択できるクラスを絞りました。

編: 各種族の特徴を教えてください。

ペ氏: 「ジン」、「ゴン」、「クン」、「リン」の4つの種族です。「ジン」は平均的な東洋人の体型で、文化的にも人間と似てます。クラスの選択も全クラスが選択できるようになったバランス型ですね。「ゴン」は巨大な体で、体内に角を持ってます。ムービーで銃弾を防御したシルドみたいなものも「ゴン」の角ですね。パワフルで、そういう角の能力を使える種族です。「リン」は小さい体のキャラクターです。最大の特徴は可愛さですかね(笑)。

キム氏: 「クン」は男性がなく、女性だけの種族です。生まれも自然の温もりから生まれて美しさを追求する種族です。また、「リン」についてもう少しお話しすると、現世と冥界を行き来できる能力を持つの種族です。ムービーに出た召喚術がそうですね。そういう種族ごとの特性も現在調整中です。どうなるかはまだわかりません。詳しい話はCBTの時に説明できると思います。

編: 他のクラスはいかがですか?

ペ氏: ムービーでちょっと登場した召喚するクラスや銃を使うクラスをどうするか悩んでるところです。ほかにもう2つのクラスがありますね。

編: 育成システムはどうなりますか?

ペ氏: 育成システムは色々と悩ませました。ファンタジーだと定義されてるものが色々あって、作ることがわりと簡単ですが、武狭だとそれが無いので難しいところでしたね。ファンタジーの世界観のように鎧を入れるのも可笑しいですし、衣装が腕、胸元、足とかに分かれるのもちょっと可笑しいと思いました。とりあえずはレベル制で、各武功(スキル)は師匠と弟子の関係で学べるようにしました。また、衣装そのものに能力値が無く、他の方法を考えてます。

編: 戦闘システムはどういうものなんですか?

ペ氏:単純にステータス基盤の数字にならないように、ビジュアル的な努力をしました。相手を倒したり、後ろ、もしくは空中へ飛ばしたり、異常状態にしたり、そのバリエーションが豊富です。単純に相手の動きを数秒ストップさせるぐらいかもしれませんが、そこから生まれるアクションが盛り込まれてます。例えば、倒した相手を蹴ったり、馬乗りにして打ん殴るなどができます。また、ムービーにも出ますが、「力士」の場合、倒された相手の頭を掴み上げて、殴ったり、投げたりすることもできます。

編: その他に特徴は何かありますか?

ペ氏:ストーリーはクエストを通じて伝えますが、演出された映像などを入れてストーリーテリングするようにしました。

「ブレードマスター(剣士)」は複数の剣を遠距離に飛ばし攻撃する“御剣”というスキルが特徴である

馬乗り状態は、プレーヤーだけではなく、モンスター相手にもしかけることができる。モンスターの数は数百匹以上で、馬乗り状態のアニメーションがどのキャラクターを相手にしてもフィットするように作ることが難しいという。単純に全部、アニメーションを作って入れるとしたら、その数が天文学的な数になってしまうからだ。MMORPGに実装するには高い技術力が必要である。馬乗り状態は「カンフーマスター(拳士)」のスキルだ

相手の頭を掴み上げる「デストロイヤー(力士)」のスキルアクションは、どのようなキャラクターにも使えるという

気を使う「フォースマスター(気功士)」。気で相手を空中へ持ち上げたり、「ドラゴンボール」の“元気球”のようなスキルなどを使う。また現在、公開されたクラスのなかでヒーラーのようなクラスは見当たらなかった。「フォースマスター(気功士)」がヒーラーの役割も担当するのか気になるところ

今回、公開されたムービーで、その正体が明らかになった「クン」と「リン」。より詳しい情報は今後公開していくという

ムービーのなかでは召喚獣を呼ぶクラスや、銃を使うクラスも登場した



■ 「最初は小規模で作ろうとしたものが、いつの間にか大規模に」。「B&S」開発秘話を聞く

NCSoft 「B&S」アートディレクターのキム・ヒョンテ氏。韓国だけではなく、日本、台湾でもファンクラブを持っている人気イラストレーターだ

編: 最初に武狭を作ろうとした理由はなんでしょうか?

ペ氏: 最初は個人的にMMORPGではなく、違ったものを作ってみたかったのです。RPGだと開発規模が大きいじゃないですか。MMORPGだともっと大きくなってしまいますね。「もういやだなー」と思ってましたが、結局は、またMMORPGを作ることになってしまったんです(笑)。だったらファンタジーではなく、全く異なるものを作ろうとしました。だから、最初は規模を小さくして作ろうと。当初の計画からズレて大規模になってしまいましたが……。

 ジャンルはSFと武狭で迷いました。両方、開発が難しいですが、アクションが気に入って武狭にしました。武狭でも最初は普通の武狭ゲームを考えましたが、既に良いものを作る人たちがいたので、方向性を変えました。フュージョンにしようと。

編: ムービーでは様々なスキルが確認できましたが、こういうスキルはどういうものからアイディアを得てますか?

ペ氏: 例えば、馬乗り攻撃ですが、以前、「リネージュII」のオーク種族を開発していたとき、馬乗り攻撃を入れてみたかったんです。当時は時間や技術的な問題でチームからの反対も多く、やめました。個人的にはずっとやりたかったんです。それで「B&S」で実際作りました。その延長線上で、コンシューマゲームではあるけど、MMORPGではないものを集めて入れてみることにしました。

キム氏: 休憩中にアイディアが出ることもあれば、「B&S」のキャラクターの特徴を活かせるために何を入れればいいかなと思い、他のゲームをプレイするなど、様々なシチュエーションでアイディアは出ます。

ペ氏: よく、墓穴を掘ってしまいました(笑)。エフェクトチームのとある人は「俺は空中コンボ!」と単に言っただけなのに、実際に作ることになったとか。そういう感じでどんどん開発がデカくなっちゃいました。

編: 光の表現がハッキリしていてグラフィックス面も印象的ですが…

キム氏: ゲームでは、疲れた日常生活から放れて、美しい景色が見れるようにしました。日常生活の美しく見える景色を、ゲームのグラフィックスになるようにしたのです。一瞬、窓から見える夕日といった場面をキャッチして、ゲームに盛り込みました。また、ムービーでは格好よくても、実際のゲームではそうではないとかという問題を解決するように努力しました。

編: 発表会の時、「B&S」は他の武狭ゲームとは異なる新しい武狭ゲームだと強調しましたが、その理由を教えてください。

ペ氏: 韓国の武狭というは決まりきったものが多いですね。例えば、古い服を着て笠を被ったキャラクターが登場して、「何々拳」みたいなスキルを使うと単に「何々拳を使いました。ダメージ40」とかの文字になってしまうところです。

 中国や香港の武狭、武術の映画を見てみると、様々なバリエーションの設定が登場するのがわかります。古い服だけではなく、現代風の革ジャンとか……。映画「マトリックス」を見ても映画の半分は武術を表現してます。実際には様々なバリエーションで武狭を表現しているけど、韓国では決まりきっている。それは可笑しいなと思い、様々なチャレンジをしてみました。

キム氏: 韓国の武狭はそう決まりきったものが多くて、初めてこの仕事を受けた時も「私の絵が武狭に相応しいかな?」と心配しました。でも、中国や香港の武狭映画などを見て、1つの突破口を見つけた感じです。韓国で武狭という言葉が持つ、ビジュアルの限界の中で、格好いい、トレンディなビジュアルを出すようにと作業をしています。

ペ氏: 数千年前に庶民たちはどんな服装だったのかわからないですよね。残ってるのは官職の人や武将のものしかないんですね。

編: 2Dイラストと実際のゲームの3Dモデルとの差は殆どなかったのが驚きでした。

ペ氏:キム氏、本人から話すと自慢話になってしまいますので代わりに私がお話ししますと、キム氏は2Dのイラストと3Dモデリングを全部、自分でやってます。1人でやってるので、当然同じものが出ますね。

キム氏: まず、私自身が3Dモデリングはどうすれば、魅力的なのかを知る必要がありました。今のスタッフたちは最初から一緒に作業をした人たちなので、今は仕事を分担ができるようになりました。

 私のデザインのスタイルは3Dモデルにしやすい方ですね。デザイナーによっては線が特徴の人もいるんですが、そうなると3Dで表現しようがないですね。私のデザインだと色と光の表現が特徴で、むしろ2Dより3Dの方がしやすいです。細かいテクスチャで表現された実写風の3Dモデリングではなく、色と光を上手く使って、自分の色を出すようにしました。

編: 「B&S」の開発中、1番思い出が深いエピソードは何でしょうか?

ペ氏: 発表会ですね(笑)。忘れもしないですね。準備作業が大変なんです。

キム氏: 去年の発表会のムービーを作る時なんかは疲れて、自分の席で1日中、同じ人に3回も「おはようございます」と挨拶したこともあるぐらいです(笑)。2回目までは大丈夫でしたが、3回目になると向こうの人も「あれ?」というような表情でした。

ペ氏: それから、「B&S」の開発当初は規模も小さく、開発時間も短くするつもりでしたが、いつの間にかこんなに大きくなってしまったことですね(笑)。

キム氏: 「全てを実装するわけではなく、1番自信があることだけ上手く実装するように頑張ろう」が当初のスローガンでしたが、いつの間にか「全てを上手く実装するように頑張ろう」になってしまいました。

ペ氏: 最初はこれだけは最高のものにしようとしたものを地下10階ぐらいまで掘ったんですが、そういうものを幾つか作ってたら、これも、これもになってしましました(笑)。

「リネージュ II」や「The Tower of AION」のように明るい色彩とは違い、コントラストが高いのが印象的だ

イラストのテイストがそのまま3Dキャラクターとして表現されている。ここまで再現されている作品はなかなかない

「B&S」は武狭なだけにジャンプ力もすごい。一方、マップ中を素早く飛び回る「軽功術」は企画当初、街と街の間を高速で移動する機能として作られていたが、現在は企画が変わって、どこでも自由に使えるという



■ 第1次クローズドβテストは2010年に実施予定!

編: 今までの開発期間、人数、資金といった規模はどのぐらいですか?

ペ氏: どれぐらいだとはっきりとは言えませんが、既に韓国でもこのクラスの開発規模は幾つかありました。莫大な規模ではなく、「ファイナルファンタジーXIII」に比べると結構小さいです(笑)。開発は2007年からです。

キム氏: 最近、次世代ゲームだと呼ばれるコンシューマゲームの半分ぐらいですね。

編: 現在、どのぐらい開発されました?

ペ氏: 実は去年の発表会のとき、OBTスペックの50%ぐらいだと言ってました。今、思うと当時はどうかしていたなと思います(笑)。多分、20%ぐらいでしたね。今が50%ぐらいです。

編: 第1次クローズドβテストの規模はどのぐらいですか

ペ氏:完成したものの4分の1とか3分の1ぐらいでテストを行なう予定です。2010年には確実に行ないます。

編: 最後に日本のユーザーたちに一言お願いします。

ペ氏: 日本のユーザー、キム・ヒョンテ氏のファンたちに楽しさを伝えたいです。この世にコンテンツは多いんですが、そのなかでも面白いと感じさせる作品をお見せしたいです。

キム氏: 日本のユーザーにとって、MMORPGは従来のコンシューマのRPGとは異なるものだと感じて、プレイに壁みたいものあるのかなと思います。「B&S」は従来のコンシューマーのRPGの感覚でプレイでき、また斬新な何かを楽しめるように努力をしています。去年の発表会から1年以上が過ぎましたが、また映像だけの公開になってしまって残念です。なるべく早くゲームを完成させて、日本のユーザーの皆さんに自分の作品をお見せしたいと思います。期待してください。

編: ありがとうございました。


ゲームの中には「釣り」といった生活スキルや乗り物も実装される

「B&S」の第1次クローズドβテストは2010年に“必ず”実施するという。有言実行を是非とも期待したいところだ

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(2009年 11月 28日)

[Reported by DongSoo“Luie”Han ]