東京ゲームショウ2009レポート

モバイルゲーム出展ブースレポート その1

スクエニが超長編小説「グイン・サーガ」をRPG化


スクウェア・エニックスブースのモバイルコンテンツコーナー

9月24日~27日 開催(24日、25日はビジネスデイ)

会場:幕張メッセ

入場料:1,000円(一般/前売り)、1,200円(一般/当日)、小学生以下は入場無料



 東京ゲームショウ2009では、昨年まで枠が設けられていた「モバイルコンテンツコーナー」が「PCオンラインゲームコーナー」と統合される形で、「アドバンスド モバイル&PCコーナー」として展開されている。

 統合された結果、モバイルゲーム関連の出展は昨年よりも減っている(出展社が減ったから統合されたというべきだが)。また、これまで自社ブースの一角でモバイルゲームを展開してきた大手ゲームメーカーのブースでも、今年はほとんど見当たらない。さらに携帯キャリアの出展も、昨年からソフトバンクモバイル株式会社が出展を取りやめ、今年はKDDI株式会社も出展を見送ったため、株式会社NTTドコモだけが残っている。

 モバイルゲーム業界としては決して落ち目ではなく、むしろiPhoneなど新たなプラットフォームの登場で世界的に盛り上がっている。特に昨年の東京ゲームショウでは、モバイルゲームのブースでもあちこちで行列ができるなど、年々存在感が増してきていた。しかし今年は世界不況のあおりもあってか、元々小規模なブースが多かったモバイルゲームメーカーは、出展を見送るケースが増えたようだ。

 ただそれを逆に言えば、こんな中でも出展している企業というのは、好調で気合が入っている証拠といえる。本稿では、新作のモバイルゲームを携えてブースを出展している4社を紹介する。




■ 小説「グイン・サーガ」をゲーム化したスクウェア・エニックス

 大規模なブースを構えた大手ゲームメーカーの中で唯一、株式会社スクウェア・エニックスだけが自社ブース内で新作のモバイルゲームを出展している。同社はNTTドコモブースで「ドラゴンクエストIII」、「ファイナルファンタジーIV」、「聖剣伝説2」という強力な移植タイトルを出展している(こちらは別のレポート記事でお伝えしている)が、自社ブースでは完全新作となるiモード用RPG「グイン・サーガmobile」を初公開した。

 「グイン・サーガ」は栗本薫氏によるファンタジー小説で、現在までに正伝(本編)だけで既刊128冊を数える超長編作品。現在まで約30年に渡って続いてきたが、栗本氏は今年5月にこの世を去っており、生前に執筆された数冊分の原稿が刊行されれば、未完で物語の幕を下ろすものと見られている。そのタイミングでのゲーム化というのは複雑な気持ちになるが、4月からはテレビアニメも放映されており、それらと絡めたメディアミックス的な展開となっている。

 「グイン・サーガmobile」はオーソドックスなRPGで、俯瞰視点の2Dフィールドと、サイドビューのコマンドバトルで展開される。キャラクターの動きやバトル展開はかなり俊敏で、システム面でストレスを感じさせない。それに対してイベントシーンはゲーム開始時からたっぷり入っており、キャラクターを大写しにするカットインなど演出も凝っている。登場キャラクターや世界設定は必要な際に簡単な説明が入り、原作を知らなくても問題なく遊べるよう配慮されている。ゲームを入り口にして「グイン・サーガ」をきちんと知ってもらいたい、という制作意図が伝わってくる設計だ。

 今回出展された体験版は、物語の序章となるエピソード0と呼ばれており、モバイルサイト「スクエニモバイル」で10月に無料で配信される予定。同時にその続きとなるエピソード1も配信され、こちらは500ポイント(525円相当)となる。以降、1エピソード500ポイントで順次配信される予定。


【スクリーンショット】
1枚絵のイベントシーンだけでなく、会話シーンでもキャラクターが大きく表示される。そのためか、プレイ感は小説よりもアニメ作品のほうが近い
(C)栗本薫/天狼プロダクション/Project Guin (C)2009 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.



■ 4本の新作アプリを出展したコトブキソリューション

 株式会社コトブキソリューション(ケムコ)は、毎年多数のモバイルゲームを出展しているTGSの常連企業。今年も例年どおりの充実したラインナップで、モバイルゲームサイト「ケムコ帝国」で配信予定の新作アプリも4本出展している。

 新作の目玉は、人の生命力「エナジ」をテーマにしたファンタジー世界で展開されるRPGシリーズ第3弾「アルファディアIII」。今回は1作目よりも前の時代を舞台としており、兵器として人工的に生み出された「エナジ生命体」が、人と同じ感情を持つという苦悩が冒頭から描かれている。

 システムは従来どおり、2Dグラフィックスのオーソドックスなものを採用している。ただし、グラフィックスやインターフェイスに改良が加えられている。物語の展開とあわせた多数のクエストが用意されているそうで、シリーズならではの特色を受け継いでいる。

 Yahoo!ケータイで11月上旬に配信予定で、iモード、EZwebでも順次配信される予定。利用料金は1ダウンロード525円。


【スクリーンショット】
「エナジ生命体」が自らの存在を見つめなおすところから物語が始まる。しかし強力な兵器であることは事実なだけに、どういった展開になるのか先が読めない
(C)2009 KEMCO/EXE-CREATE

 2本目は、同社が配信中のRPG「ディアレストドラグーン」の続編に当たる「アルカイックドラグーン」。2Dでコマンドバトルというデザインは「アルファディアIII」と共通しているが、SF風の設定も見える「アルファディアIII」とは異なり、こちらは比較的ベーシックな剣と魔法のファンタジーとなっている。

 このシリーズの設定で面白いのは、登場するヒロインがドラゴンに変身できるところ。戦闘中にコマンドでヒロインの誰かをドラゴンに変身させると、主人公がその背に乗って戦う。この状態では体力や攻撃力が大幅に強化されるとともに、人間の姿では使えなかった強力な技も使えるようになる。ボス戦などでは、変身して戦える分を加味して戦略を立てる奥深さがある。

 Yahoo!ケータイで11月下旬に配信予定で、iモード、EZwebでも順次配信される予定。利用料金は1ダウンロード525円。


【スクリーンショット】
か弱い印象を持たせる少女が、ドラゴンに変身してしまうというのがユニーク。ドラゴンは攻略の上でも重要な意味を持つ存在だ
(C)2009 KEMCO/MAGITEC

 3本目は、戦国時代をテーマにしたファンタジーRPG「戦国ブレイブ」。秀吉の正室・ねねが発した心の声を聞き、直江兼続、石田三成、伊達政宗、真田幸村の4人が集結する。予知能力で世界の危機を知ったねねは4人に対して、失踪している夫の秀吉を探し出し、その彼を打ち倒してほしいと言う。

 戦国時代をテーマにしているが、あくまでテーマとして扱う程度で、歴史観をほぼ無視したファンタジー世界となっている。4人の言葉遣いは現代的でぶっきらぼうなものが多く、美形イラストで描かれた武将が登場する女性向けのデザインになっている。ゲームシステムはオーソドックスなRPGで、ターン制のコマンドバトルを採用。各キャラクターごとに異なる技や術を駆使して戦う。

 Yahoo!ケータイで10月下旬に配信予定で、iモード、EZwebでも順次配信される予定。利用料金は1ダウンロード525円。


【スクリーンショット】
登場する武将は男前揃い。言葉遣いも軽めで時代物という雰囲気ではなく、女性のライトユーザーに向けた作りになっている
(C)2009 KEMCO/WorldWideSoftware

 最後の1本は、スローライフシミュレーション「森の中」。都会で暮らしていた女の子が、自然が残る田舎にやってきて、森で珍しい動物を見つけて写真を撮ったり、畑で作物を育てたりしながら、のんびりと生活する。基本的には2Dのフィールドを歩いて何かするという形で、操作はさして難しくないし、新しい要素が入った際にはチュートリアル形式で丁寧に教えてもらえる。

 ゲームで明確な目的は示されないが、病弱な弟を元気付ける、というのが1つの柱になっている。例えば撮ってきた写真を見せたり、お小遣いで駄菓子屋にある昔懐かしいオモチャを買ってプレゼントしたりすると、弟が喜んでくれる。これらの過程で、より珍しい動物を探したり、色々なオモチャをコレクションしたりといった楽しみ方で、じっくりと、かつ気軽に遊べるゲームになっている。

 Yahoo!ケータイで10月上旬に配信予定で、iモード、EZwebでも順次配信される予定。利用料金は1ダウンロード315円。


【スクリーンショット】
動物の写真を撮るのは、フィールドで動いているものに重なってセンターキーを押すだけ。他にもいくつかの遊びがあり、のんびりと長く楽しめそうなゲームだ(C)2009 KEMCO/WorldWideSoftware



■ 恋愛アドベンチャー2本を携え初出展したワーカービー

 東京ゲームショウに初出展となる株式会社ワーカービーは、2本の新作恋愛アドベンチャーをプレイアブルで出展している。ただし1本は男性向け、もう1本は女性向けで、全く方向が異なる内容となっている。

 男性向けタイトルの「A系ヲタク彼女」は、オタク趣味の女の子達が登場する恋愛アドベンチャー。高校2年生の主人公が「メディア・アート部」に入部したところ、その実はオタク趣味を共有する4人の女子の集まりだった。ゲームではその部活動を中心に、秋の部活対抗発表会までの7日間の学園生活が描かれる。プレーヤーは午前、昼、午後の3つに分けられた時間帯に、学園内を移動して女の子達と話をしたりして、好感度を上げていく。

 一言にオタク趣味といっても、女の子達はそれぞれ漫画やゲーム、コスプレと異なる趣味を持っている。ストーリー的には部活対抗発表会で優勝するという大目標のもと、女の子と仲良くなっていくのだが、初日の部活動は女性向けアニメの上映会だそうで、主人公の立ち入る隙はなし。恋愛物のゲームとしても異色の個性を持った女の子達に翻弄される主人公に、果たしてどんなユニークな物語が待ち受けているのか気になるところだ。

 iモード向けサイト「WORLDゲーム城」と、Yahoo!ケータイ、WILLCOM、イー・モバイル向けサイト「Living Games」にて今秋配信予定で、利用料金は1ダウンロード315円(iモードのみ300ポイント、315円相当)。対応機種はそれぞれ、FOMA 903i/703i以降、SoftBank 3GC端末、Advanced/W-ZERO3[es]やWX330Kなど、H11T。


【スクリーンショット】
4人の女の子がすべからくオタク、というのが本作の面白いところ。果たして彼女達とどんな恋愛ができるのだろうか
(C)Elements (C)Worker Bee Inc.

【プロモーションムービー】


 女性向けタイトルは、恋愛アドベンチャーシリーズ作品の第4弾「明日キミに... Act3 -tomorrow with you-」。こちらは「正統派恋愛学園アドベンチャー」をうたっており、同じ学園に通う男子生徒との恋愛を楽しめる。

 本作はシリーズ最終話となっており、1作目に登場した4人に加え、2作目の1人、さらに新キャラクター1人を加えた6人が攻略可能と、過去最大のボリュームになっている。正統派といっても、登場キャラクターは剣道部の主将や生徒会長、バンドマンなど個性的な面々が揃っている。舞台となるのはクリスマスで、学園では昼にステージ、夜はパーティが行なわれる「聖夜祭」が催される。この準備から始まる1週間の学園生活の中で、お目当ての人からパーティに誘ってもらえるよう奮闘する。

 配信は今冬の予定。配信サイトや価格、対応機種は、前述の「A系ヲタク彼女」と同じ。

 同社はこの2本のほかに、株式会社フェイスがサービス中のWindows用MMORPG「ローズオンライン レジェンド」と、株式会社工画堂スタジオが発売しているWindows用シミュレーションゲーム「POWER DoLLS」のモバイル版の開発を行なっていることも発表している。「ローズオンライン レジェンド」はフル3Dのゲームだが、モバイル版でどういった形のゲームになるかはまだ未定としている。


【スクリーンショット】
「正統派」というだけあり、特にマンガ的なハプニングもなくクリスマス前の学園生活が始まる。最終話ながら、新キャラクターも登場する
(C)Elements (C)Worker Bee Inc.

【プロモーションムービー】




■ 新作RPGを2本出展したジグノシステムジャパン

 ゲームを始め、多彩なモバイルコンテンツを提供しているジグノシステムジャパン株式会社は、今回が東京ゲームショウ初出展となる。とはいえ昨年までは、同社のゲームを企画している株式会社ライドオンジャパンが出展しており、実際のところは看板が入れ替わっただけという印象だ。

 今年は2本の新作RPGをプレイアブル出展している。1本目は同社が多数手がけてきた「不思議の国」シリーズのRPG「不思議の国の鍛冶屋2」。冒険者になりたくて街にやってきた主人公の少年が、紆余曲折あって鍛冶屋の弟子になることを条件に、冒険者として登録される。冒険者として依頼されるクエストを達成しつつ、同時に手に入れた素材を使って鍛冶の腕を鍛えるという、2本の柱でゲームを進めていく。

 プレーヤーキャラクターは、戦士や魔術士など4つの職業から選んで作成できる。続いて街でクエストを受けて、2Dのダンジョンを探索することになる。戦闘シーンは7×3マスに区切られたフィールドとなっており、事前に設定しておいた陣形に応じた効果が得られる。

 EZweb向けサイト「得する追加ゲーム」と、iモード、Yahoo!ケータイ向けサイト「本格メガゲームズ」にて、2009年秋より順次配信予定。利用料金は未定。


【スクリーンショット】
冒険者と鍛冶屋の2枚看板で身を立てていくRPG。戦闘は陣形などによる戦略性の高さもウリだが、操作は普通のRPGと変わらず軽快に進む
(C)RideonJapan,Inc.
(C)GignoSystemJapan,Inc.

 もう1本の「ジオファンタジア」は、剣と魔法のファンタジー世界で繰り広げられるRPG。鉱山の街に住む主人公の少年が、鉱山に現われたモンスターの調査に向かった冒険者を追いかけ、そこで知識を魔法に変えるという不思議な力を持った生き物と出会う。それをきっかけに主人公は各地を旅し、世界の謎を解き明かしていく。

 システム的にはオーソドックスな2DのRPGで、説明なしでも問題なく遊べる。戦闘もサイドビューのシンプルなデザインで、速いテンポで進んでいく。「世界の全てを知る」という冒険で何が起こるかは、試遊した程度の段階ではうかがい知れないが、奇をてらわず、RPG要素と冒険物語を快適に楽しませようというのが伝わるデザインになっている。

 こちらもEZweb向けサイト「得する追加ゲーム」と、iモード、Yahoo!ケータイ向けサイト「本格メガゲームズ」にて、2009年秋より順次配信予定。利用料金は未定。


【スクリーンショット】
冒険家に憧れる少年が奇妙な生き物と出会ったことをきっかけに、「世界の全てを知る」旅に出る。わかりやすいゲームシステムなので、少しずつ遊びたい人にオススメ
(C)RideonJapan,Inc.
(C)GignoSystemJapan,Inc.

(2009年 9月 27日)

[Reported by 石田賀津男]