東京ゲームショウ2009レポート
東京ゲームショウ2009、SCEI・平井一夫代表取締役社長兼CEO基調講演
「確認しておきたい、プレイステーションフォーマットの核となるのはゲーム」
2年ぶりとなる平井一夫社長兼CEOの基調講演。氏は「新型PS3が売れたのは価格が大きいが、ソフトのラインナップが揃ってこそのこの価格だ」と語った |
日経BPの浅見直樹氏からの質問を受ける平井一夫氏。“人間の感情を拾うセンサー”など自身の夢にまで話は及んだ |
社団法人コンピュータエンターテインメント協会 (CESA) は9月24日に開幕した「東京ゲームショウ2009」と併せて「TGSフォーラム」を開催しているが、オープニングを飾る形で基調講演を行なった。基調講演は第1部がソニー・コンピュータエンタテインメントの代表取締役社長兼CEOの平井一夫氏によるもので、第2部は「グローバル時代におけるトップメーカーの戦略と展望」と題してカプコン、スクウェア・エニックス、KONAMI、バンダイナムコゲームス、SCEIの社長やプレジデントが一堂に会してトークセッションが行なわれた。ここでは第1部の平井氏の基調講演をお届けする。
実はこの基調講演の直後にソニー・コンピュータエンタテインメントは発表会を予定していたため、平井氏の基調講演は直近の具体的な発表と言うよりは、同社の戦略の基本方針と今後のあり方についての大局的な内容になっていた。
平井氏は冒頭、「プレイステーションプラットフォームは15年を迎えます。15年の間の支持、叱咤激励ありがとうございました」と挨拶し、「『全てのゲームは、ここに集まる』という初心に返って頑張りたい」と語り、基調講演をスタートさせた。
平井氏は近年のユーザーのライフスタイルの変化について触れ「これまで通りだと、成長ではなくこれまでと同等かそれ以上のものは求められない」との見解を示し、そういった時代におけるキーワードは「言い古されているかもしれないが、ネットワーク」とし、ネットワークは切り離せないと続けた。ではネットワークを通じてユーザーになにを提供するのかと言えば、8つの体験を満たすことだという。8つの体験とは、「遊ぶ」、「交流する」、「観る」、「聴く」、「発見する」、「創る」、「共有する」、「学ぶ」。これらを通してユーザーに楽しいと思わせることが大切だとした。
これらを満たしているソフトとして挙げられたのが「リトルビッグプラネット」と欧州で特に人気を集めている「SingStar」の2タイトル。「リトルビッグプラネット」はパッケージメディアに収められた内容は少ないが、ユーザーが“クリエイト”し、“シェア”することで128万ステージにも世界がふくれあがっているという。平井氏は「1日6時間、365日プレイしても29年掛かる」とその膨大な世界を表現。「SingStar」も曲の配信にとどまらず歌っているシーンの動画を配信するなど「データ量に制限されることなく楽しんでいる」と新しいゲームの楽しみ方であると語った。そして「もっと参加したいと思わせるコンテンツ」を生み出すべきだと語りかけた。
ここで平井氏は話題を遮る形で「確認しておきたいことがある」と切り出した。氏は「核となるのはゲーム。今まで以上に力を入れて、さらに盛り上げていきたい」とした。これはこの直後のサードパーティへのアピールに繋がっていく。新型PS3が発売3週間で100万台を突破するなど好調だと発表し、「販売好調な原因は価格にある」と言い切った。しかし平井氏はただ安くすればいいのではないと続けた。価格は一定の時間が経てばコストダウンし自動的に安くなる……ワケではないと説明。「魅力的な価格は魅力的なソフトありき」とし、年末に200タイトル以上用意されるなどサードパーティのソフトラインナップが揃ったいまだからこそ実現できたのだと、言い方向に進んでいるとした。
そしてここで話題はインターフェイス面に写った。ソニー・コンピュータエンタテインメントは6月に行なわれたE3においてモーションコントローラ(仮)を発表。E3ではプロトタイプそのものだったが、「東京ゲームショウ2009」では平井氏自らがモーションコントローラ(仮)を手にしてスペックを説明。デザインも洗練されたものとなっており、かなり完成度が上がってきているようだった。スフィア(先端の丸い部分)、ジャイロ、加速度センサーにより奥行きの正確な検出、位置情報の取得と動きのトレースを行なうことができる。ゲーム側からのフィードバックとして振動するだけでなく、スフィアの光による演出も制御できる。EyeToyと共に使うことでプレーヤーの動きそのものを読み取るなど様々なゲームに応用できそうだ。平井氏は「コアゲーマー層にも有益だ」と、幅広い層にアピールする製品である点を強調した。発売時期は2010年の春となっている。
ここで話題は、日本では11月1日に発売となるPSP goに移った。PSP goはネットワーク専用端末であり、携帯性と利便性を追求するとし、欧米の発売日(10月1日)には1,700タイトルものダウンロード可能なコンテンツを用意すると言い、日本でも450タイトルのダウンロード可能なコンテンツを用意するという。周辺機器についても充実させていくとしているが、今回も従来のUMDタイトルの資産を活かす方法については触れられなかった。
最後に話題に上ったのがPlayStation Network。58の国や地域、12の言語、22の通貨、2,900万以上のアカウント、6億以上の累計コンテンツダウンロード数……等々昨年の3倍にも成長しているのだという。ゲームが中心だが、ビデオ配信の強化、コミックコンテンツの配信などについても進めていくとした。さらにPlayStation Home、Life with PlayStationなども挙げられ、様々なエンターテインメントを提供するという。最後に平井氏は「業界の力を合わせユーザーに体験できるコンテンツの提供を進め、未来を実現しよう」として基調講演を締めくくった。
基調講演後には日経BPの浅見直樹氏と質疑応答形式でイベントは進められた。昨日まで米国に出張に行っていたという平井氏は「ビートルズ」に触れ、「『The Beatles:Rock Band』が盛り上がっていて驚いた。楽しいゲームに“ビートルズ”という永遠のブランドが加わることで、ゲームメディアだけでなく様々なメディアで取り上げられ、盛り上がり方のスケールが違っていた。ゲームの裾野が広がると言うことを感じた」と米国での現状を解説。
浅見氏は現状を「閉塞感がある」とし、これを打開するためのイノベーションについて尋ねると平井氏は米国では特に人気のある「3D」ではないかとの考えを示した。ソニーグループとしても来年は本格的に3Dを推し進めていきたいという。映画の世界では一足先に3D映画が大ヒットを記録しているが「映画の3DはやはりCGベースのコンテンツと相性が合うようだ」と分析し「ゲームも創りやすいと思う」とゲームでも3Dコンテンツが流行るとの見解を示した。
平井氏は「夢を語っていいでしょうか」と語り、「これだけ発達した中でこれからどんな変革があるんですか?と聞かれるが、人間の感情を読み取ってゲームに反映させることはできない。感情を受ける一方で発信できない。例えばキャラクタと対話ができて、こちらの目が泳いでいたら指摘されるなどのインタラクションはゲームではできない。もし実現できれば、ゲームはこれまで以上の広がりを見せるのではないか」と語った。平井氏はこれを「MotionからEmotion」へと表現し、モーションコントローラ(仮)が夢の第1歩だとした。さらに「ゲームほど技術の進化によって表現が変わるメディアはない」とし、どんなに進化したハードがあろうと、より新しい進化を追い求めていく意義があるとした。
全く新しい発表は見受けられなかったが、非常にまとまっておりわかりやすいメッセージではあった。特に「モーションコントローラ(仮)」がプレイステーション 3プラットフォームにどのようなインパクトを与えるかは注目していきたいところだ。
□東京ゲームショウ2009のホームページ
http://tgs.cesa.or.jp/
□プレイステーションのページ
http://www.jp.playstation.com/
□ニュースリリース
http://www.scei.co.jp/corporate/release/090924a.html
(2009年 9月 25日)