東京ゲームショウ2009レポート

SCEJ、PS3「HEAVY RAIN 心が軋む時」
日本正式タイトル決定! TGS 2009にプレイアブル出展
シリアスな現実と感情を描く“大人向け”なインタラクティブアドベンチャー

9月24日~27日 開催予定(24日、25日はビジネスデイ)

会場:幕張メッセ

入場料:1,000円(一般/前売り)、1,200円(一般/当日)、小学生以下は入場無料

 

海外版のキービジュアル。雨、そして折り紙が象徴となっている

 株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEJ)は、プレイステーション 3用アドベンチャーゲーム「HEAVY RAIN 心が軋む時」の最新情報を公開した。本作はSCEJブースの年齢制限ゾーンにプレイアブル出展されており、4人のプレーヤーキャラクターのうち2人をプレイすることができる。新たに公開されたスクリーンショットと共に、本作の特徴やTGS 2009でプレイできる2人について紹介していこう。

 本作の開発はPS2「Fahren heit(ファーレンハイト)」などを過去に手がけた仏Quantic Dream。プレーヤーは4人の主人公を操作し、「折り紙殺人鬼」と呼ばれる連続殺人犯を追跡するのが目的だ。4人にはそれぞれの事情があり、刻々と迫る時間のなかで決断を迫られることになる。

 今回の情報公開で、仮題だった日本版タイトルが「HEAVY RAIN 心が軋む時」に決定し、国内発売もほぼ確実なものとなった。なお、SCEJのブースでは「折り紙」が配布される。折り紙は本作を象徴するモチーフであり、公式サイトの隠し要素に繋がる内容が記載されているということだ。来場される方はぜひ入手して頂きたい。




■ 感情や現実をリアルに描く大人向けのインタラクティブなアドベンチャー

メインメニュー画面。激しい雨が暗がりに降り注ぐという印象的な画面になっている。雨や水の描画にクオリティを感じさせる
主人公の1人「イーサン」。幸せな時代のものだ
 本作は非常に独特なテイストを持ったゲームだ。大前提として「大人向け」という表現がなされており、年齢層が高めのプレーヤーを想定した演出や内容が随所にある。だがそれは単に過激であったりグロテスクだというものではない。奥深い愛情や悲哀、感情の揺らぎなど、リアルな現実を描いている。

 

 インタラクティブな作りをしているのも特徴だ。本作には主人公が4人登場する。シーンに合わせてプレイする主人公を切り替えることで、全体が進行していくスタイルだ。通常のゲームではキャラクターが死んでしまった場合、物語が続かなくなってゲームオーバーになることが多いが、本作はそのままキャラクターが死んでしまっている場合のエンディングへと向かっていく。それもひとつの結果というわけだ。もちろんキャラクターが生きている場合のエンディングも存在し、それぞれの展開の意味が変わってくる。

 タイトル画面(メインメニュー画面)では暗がりに大粒の雨が激しく降り注いでいる。本作はタイトルの通り雨が象徴的な作品だ。グラフィックスのクオリティにも注目が集まる本作だが、中でも水や雨の表現はずば抜けてクオリティが高い。

 本作は現在も開発中で、グラフィックスをはじめとした各所のブラッシュアップは今も続いているとのこと。すでに日本語吹き替えの音声はついていて、ローカライズも同時進行で進んでいるようだ。

 本作は操作も独特で、ゲーム的なお約束に沿わず、より直感的で自然な操作ができるよう配慮されている。例えば、移動する時。現実に身体の向きを変える場合、まず首だけを動かしてその方向を見てから身体の向きを変えるだろう。本作でもアナログスティックを倒すと、まず首を動かして視界が動き、その後にその方向へ身体を向ける。これだけで非常に生々しく見える。

 次にオブジェクトを操作するとき。操作できるオブジェクトに近づくと、矢印のアイコンがたくさん表示される。右アナログスティックを矢印アイコンの通りに入力することでオブジェクトを操作するという作りだ。例えば車に乗るシーンなら、スティック操作で車のドアを開いて中に乗り込み、続いてスティックを斜めに入れてシートベルトを閉め、上方向にスティックを入れてミラーを調節し、最後にキーを回す。この一連の操作を全て右アナログスティックで行なう。ボタンはほとんど使わない操作になっている。

 この右アナログスティックでオブジェクトを触る操作でピンとくる人もいるかもしれない。同社が手がけたPS2「Fahren heit」も右アナログスティックでオブジェクトを操作するゲームだった。ひとつの事件に関わっているキャラクタが何人かいて、それぞれの行動が影響を与え合うところも近い。本作は「Fahren heit」にあったようなドラマを、ハイビジョン世代のクオリティで制作したゲームと表現するとわかりやすい。

 そして重要なのは、本作のストーリーは決して非現実的な話ではなく、現実的な要素で物語が構成されていて、感情などを主眼にしたより深いテーマで作られているということだ。

 公開されているトレイラームービーでは、主人公の1人「イーサン」の過去が描かれている。愛する妻、そしてジェイソンとショーンという2人の息子と暮らす穏やかな日々。キレイに整えられた庭で暖かな太陽の下、子供達の遊び相手になる。自室で充実した人生の喜びを噛みしめる。絵に描いたような理想的な日々がイーサンの毎日だった……。

 だが、それは突然に壊れてしまった。車が高速で行き交うマーケット街の道路。道路の反対側からこちらへ走ってくる息子。叫ぶ妻、飛び出すイーサン。そして、駆け寄る家族。このトレイラームービーはティザーサイトの時から掲載されていたものと同じで、すでにご覧になった方もいるかもしれない。このムービーにも既に日本語のナレーションが付いていて、ローカライズが早いペースで進んでいることが感じられる。また、BGMは非常に映画的で重厚なものになっている。


【トレイラームービー】
豪華な家、妻と2人の息子、穏やかな日々。だが、人生は突然に変わってしまう




■ TGS 2009でプレイできる2人のキャラクター、私立探偵の「シェルビー」とFBI捜査官の「ジェイデン」

・シェルビー(Shelby)―― 老練な元警官の私立探偵 ――

主人公の中で最年長のシェルビー。元警官であり現在は私立探偵をしている
コンビニエンスストアに強盗が入ってきた。こうした場面でどう行動するかで大きく結果が変わっていく

 シェルビーは「折り紙殺人鬼」の事件を追う元警官の私立探偵だ。コンビニエンスストアで働いている被害者の家族に事件の話を聞きにきたというシーンがプレイできる。シェルビーが被害者の家族に話しをするも、残された家族は心を痛めており詳しい話をさせてもらえない。

 ゲーム中にL2ボタンを押すと主人公の“思考を聞く”ことができる。例えばシェルビーは喘息を患っており、雨が降っている日はそれがひどくなる。その思考を聞いておくと、コンビニエンスストアで喘息の薬を探そうという考えが出てくるようになるわけだ。思考は展開をうまく進めるためのヒントになっている。難易度が3段階あって、難易度によってヒントになる思考が変わってくるとのことだ。

 薬を探して店内を移動していると、画面が、店内の奥にいるシェルビー、レジの店員、新たに入ってきた不審なお客という3分割になった。この場面では3画面がリアルタイムに進んでいく。お客は銃を取り出しお金をレジから出すよう脅しはじめた。金目当ての強盗だったのだ。背後に位置していてまだ見つかっていないシェルビー。酒瓶を右アナログスティックで獲得し、ゆっくり強盗の背後から近づいていく。

 近づいている最中、詰んであった商品にぶつかって商品が落下しそうになった。画面に現われたボタン表示に従い、すぐさまボタンを押して商品をキャッチ! 音を立てずに強盗の背後に立ち、コントローラーを大きく振ると、酒瓶で殴りつけて強盗をノックアウトした。

 これが今回体験した展開のひとつだ。


行動次第では強盗に撃たれてしまうことも。だが本作ではゲームオーバーではなく、これも結果のひとつとして物語は進行していく

 今度はもう1度強盗が来たときのシーンに戻って別の行動を試してみる。強盗の横側に進んでいくとシェルビーの姿が発見されてしまった。手を挙げろと脅す強盗。L/Rボタンを押し続けて手を挙げ、強盗との会話が始まった。元警官らしく説得するわけだ。どんな会話をするか選択肢がシェルビーの頭の上に現われるが、緊張状態のため選択肢が震え、点滅して見づらくなっていた。

 ここでL/Rボタンを離して手を下げてみる。強盗はその動きを見るや銃を突きつけて再度手を挙げるよう脅し続ける。だが、こちらはあえて手を挙げない。強盗の声が震え緊張が高まっていく。そして、銃が発砲されシェルビーは倒れた。

 このように、同じ場面でも様々な行動が可能で、それによって結果が大きく変わる。そしてどちらの結果であってもゲーム自体は終了せずにそのまま展開していく。だが、例えばシェルビーが死んでしまったなら、彼の事件に関する調査やその後の活動はもちろんなくなってしまう。

・ジェイデン(Jayden)―― 薬の副作用に身体を蝕まれるFBI捜査官 ――

FBI捜査官のジェイデン。彼もまた「折り紙殺人鬼」を追っている
ジャンクヤードで働く男に襲われ、激しい争いとなる

 いずれのキャラクターも長所と短所がそれぞれにあるが、ジェイデンはなかでも特殊な能力の持ち主だ。FBI捜査官である彼は、最新の捜査ツール「ARI」を使える。ARIは現場に残されている血痕など様々な痕跡を視覚的に見えるようにするツールだ。彼もまた「折り紙殺人鬼」を追っている。

 プレイできるのはジェイデンがジャンクヤード(スクラップ処理場のような場所)を訪れたシーン。一見、ここにはただのスクラップしかないように見える。従業員の男に話を聞いても煙たがられるばかりだ。

 だが、ARIを作動させると環境がスキャンされ様々な痕跡が見えるようになった。ペンキの跡、タイヤの跡があり、そして血痕が見つかった。血痕は引きずられたように延びていて、その先には酸浴槽があった。酸浴槽を覗くと、そこには人の骨らしき物が残っていた。

 これを発見した途端、先ほどの従業員が襲い掛かってきた。手には銃を持っている。ここからは激しい争いの場面だ。アクションシーンは激しく動きまわるのに合わせて次々と表示されるボタンに、素早く反応するという方式になっている。これは「Fahren heit」にもあったような戦いのシステムだ。だが、それよりも洗練されていて画面が見やすく、ボタンも反応しやすくなっている。

 隙を見て銃を蹴り飛ばし、蹴りやパンチを見舞う。相手は鉄パイプを取り、こちらに振り回してくるのを間一髪でかわす。何度か操作を失敗して攻撃を喰らったときがあったが、1度のミスでやられてしまうようなことはなく、何度か流れに応じたチャンスがあるようだ。スクラップの上に駆け上がり、蹴り飛ばし、とっくみあいと、激しい争いが続く。最終的に銃を奪い取ることに成功し、決着が着いた。その後、従業員から情報を聞くにもプレーヤーが選択するいくつもの選択肢があった。ここで負けてしまえば、また違った展開になっていく。


ジェイデンの能力である「ARI」。視界にある痕跡が即座にスキャンされる捜査ツールだ。これで重要な手がかりを探っていく



よくクオリティの高いグラフィックスに対して「実写のようだ」と褒めることがあるが、本作のグラフィックス(特に顔)はまさしくその言葉が当てはまる

 「折り紙殺人鬼」の事件を軸に、4人それぞれの物語が交錯する本作。様々な行動が可能で、これをしろ、あれをしろとは表示されない。画面表示もシンプル(というより通常時は何も出ない)で、自分で場面に会わせて行動していくことが求められる。

 何度も述べるが、グラフィックスのクオリティは非常に高く、特に顔や表情のリアルさには驚かされる。画面を分割して同時進行で見せたりと演出面も非常に魅力的だ。「Fahren heit」から良い部分が引き継がれ、大幅に進化している。

 ローカライズに関しても見た範囲のボイスは全て日本語吹き替えがついていて、味のあるものになっていた。ゲーム全体の雰囲気もシリアスで、いい意味でゲームらしくなく、それでいてゲームならではのインタラクティブ性を豊かに持っている。非常に独特で魅力的なゲームと感じた。

【スクリーンショット】
新たに公開されたスクリーンショット。イーサンと息子がピエロと対面しているシーンのようだが、ピエロの笑顔が不気味さを感じさせる。風船の映り込みなど細部のクオリティにも注目したい
【スクリーンショット】
変わり果てた姿のイーサン。手には折り紙が握られている
【キャラクターの立ち絵】
プレーヤーが操作する4人のキャラクタ、イーサン、シェルビー、マディソン、ジェイデンの全身姿が映ったスクリーンショット
【キャラクターのアップ】
イーサン、シェルビー、マディソン、ジェイデンの顔のアップ。細部まで細かく、しわや毛穴まで再現されている。眼球の生々しさあたりはCGとは思えないクオリティに達している

(C)Sony Computer Entertainment Europe
(C)Quantic Dream


(2009年 9月 24日)

[Reported by 山村智美 ]