Electronic Entertainment Expo 2009現地レポート
Bethesda Softworksブースレポート
老舗Splash Damageの新世代FPS「Brink」、カジュアルな女性チャンバラ活劇「WET」などをピックアップ
2008年に日本法人を設立し、日本市場へ本格参入したBethesda Softworksは、「The Elder Scrolls IV: Oblivion」や「Fallout 3」といったミリオンヒットタイトルをじっくり時間を掛けてリリースしていく大作指向の寡作メーカーという印象が強いが、今年の出展でそのイメージをやや一新していた。
今年は、他社開発タイトルを前面に押し出し、パブリッシャーとしての側面も強化していた。自社開発タイトルは、わずかに「Fallout 3」のダウンロードコンテンツ第4弾「Point Lookout」のみで、他のタイトルはいずれも他のデベロッパーの手によるもの。単に自社タイトルが間に合わなかっただけなのかもしれず、この戦略変換が何を意味するのかはもうしばらく時間が掛かりそうだが、「The Elder Scrolls」や「Fallout」の新展開を期待していたら、意外なものを見せられたというのが率直な印象である。まずは、日本でもファンの多い「Fallout 3」から、新作ダウンロードコンテンツ情報をお届けしよう。
■ 「Fallout 3」DLC第4弾「Point Lookout」では、摩訶不思議なウェスタンホラーの世界へ
デモを行なってくれた「Fallout 3」プロダクションディレクターのAshley Cheng氏 |
取材に協力いただいたゼニマックスアジアゼネラルマネージャー高橋徹氏。今年の出展タイトルについては、「基本的に日本でも出していくつもりです」と力強くコメントしてくれた |
ウェスタンホラーの世界観にこだわった「Point Lookout」。古びた灯台の明かりが恐ろしい物語の幕開けを予感させる |
GDC 2009でGame Developer Choice AwardsのGame of the Yearを獲得した「Fallout 3」。「Little Big Planet」や「Left 4 Dead」、「Grand Theft Auto IV」といった並み居る大作を押しのけての価値ある受賞であり、2008年度を代表する傑作と断言して差し支えないだろう。4月には「Fallout New Vegas」という新しいフランチャイズも発表され、まだまだその熱は冷めそうにない。
実際、「Fallout 3」は2008年10月の英語版の発売から半年以上が経過しているが、まだまだコンテンツアップデートが続いている。5月に日本でも発表されたが、第1弾から第3弾までDLCに加えて、新たに第4弾、第5弾が登場することが明らかにされたのだ。タイトルは「Point Outlook」と「Mothership Zeta」で、E3ではこのうち第4弾がプレイアブルの状態で公開されていた。
「Fallout 3」は、人類が起こした核戦争から200年が経過したワシントンDC、通称“キャピタルウェイストランド”が舞台となっている。この世界は非常に広大であり、すべてを遊び尽くそうと思えば、100時間でも足りないほどのボリュームがあるが、「Point Outlook」はキャピタルウェイストランドの外に、さらに新たなエリアを拡張する。具体的にはワシントンDCに隣接するメリーランドの湿地帯が舞台となる。
DLCを導入すると、何らかの連絡手段で主人公に情報が伝達され、新たなエリアに赴くための交通手段が用意されるという、「Fallout 3」DLCお馴染みの展開で、今回は船で新エリアまで赴くことになる。
驚かされるのはその規模感で、ダンジョン1つ、街1つというレベルではなく、「Fallout 3」本編のようにそれなりの長旅感が味わえる規模のフィールドがドカンと追加されている。主人公は船着き場に着くや否や、Point Lookoutにまつわる様々な情報や依頼を入手し、同時多発的に発生するクエストに戸惑いながら、いずれかの方角へ歩みを開始することになる。そういう意味では、「Fallout 3」本編の作りに極めて近いDLCだと言える。
世界観は強いて言えばウェスタン・ホラー(東部だが)といった印象で、核汚染の影響は感じられるものの、物理的な破壊からは逃れられ、驚くべきほど原形をとどめた20世紀風の寂れた街並みが残されている。そこにはBrawlerやScrapperといった新種のおぞましい生命体がうごめき、通りがかるプレーヤーに対して次々に襲いかかってくる。敵はタフで攻撃も強く、デモでプレイした限りでは、レベル24のキャラクタでも数人に囲まれれば瞬時に倒される強さだった。DLC第3弾でレベルキャップを30まで解放したコアユーザー向けのコンテンツといった印象だ。
プレイ想定時間は3~5時間程度で、発売時期は6月23日を予定。価格は800MSP(Xbox 360版)。提供プラットフォームは、Xbox 360版、PC版に加えて、時期未定ながらPS3版への提供も予定されている。ゼニマックスアジアゼネラルマネージャーの高橋氏は、「第3弾が遅れていますが、第5弾まですべて日本語版でやります。どうぞご期待ください。PS3版のDLCもパッケージ提供の形でやるつもりですので、PS3版のユーザーさんはこちらをお待ちください」と断言してくれた。正式なアナウンスを待ちたいところだ。
【Fallout 3: Point Lookout】 | ||
---|---|---|
「Point Lookout」は、新種のミュータントがひしめく危険地帯。キャピタルウェイストランドで装備を調えてから挑戦した方が良さそうだ |
■ 「Enemy Territory」シリーズのエッセンスを詰め込んだ新世代のFPS「Brink」
Bethesda Softworksブースの2階部分で「Brink」のデモが行なわれた |
奥に見えるのがフローティングシティの「Ark」。Arkは数百の島で構成され、複数の文化、民族の人々が入居する最後の入植地となっている |
今回Bethesda Softworksがもっとも出展に力を入れていたのがクローズドシアター形式で紹介していた「Brink」である。「Brink」は、FPS界では玄人好みのデベロッパーであるSplash Damageの新作FPS。Splash DamageとBethesda Softworksは、5月に長期のパートナーシップ契約を発表したばかりで、その第1弾タイトルが「Brink」ということになる。両社の契約は「Brink」1作に限られないため、Splash Damageの代表作である「Enemy Territory」シリーズはBethesda Softworksからリリースされるようになる可能性が高い。
「Brink」は、「Enemy Territory」シリーズの影響が濃厚に感じられる作品で、同シリーズの経験やノウハウを活かしながら、新たなFPSへのチャレンジが行なわれている。ゲームモードは、大別してシングルプレイ、マルチプレイ、そしてCO-OPの3種類で、1人に共通のキャラクタで3つのゲームモードをシームレスに行き来するようなプレイスタイルになるというから楽しみだ。
ゲームの舞台は2035年の未来世界。地球温暖化が進み、人類はArkと呼ばれるフローティングシティで暮らしているという設定で、そこで発生した利害の不一致による人類同士の内乱がテーマとなっている。
デモは、近未来のターミナルらしき場所からスタートした。そのメリハリのくっきりとしたグラフィックス、近未来の世界観、そしてその身のこなしの柔らかさや速さから、思わずEA DICEの「Mirror's Edge」を彷彿としてしまった。もっとも、「Mirror's Edge」は純粋に移動技術を競うスプリントアクションだが、「Brink」は純粋なFPSで、あくまでシューティングアクションが基本となる。
「Brink」では、“スプリントモード”に切り替えることで、武器をしまい両手が空いた状態となり、助走を付けた大ジャンプや壁へのとりつき、スライディングといったアクロバティックなアクションが可能になる。これにより、ちょっとした高台や建物などはすぐ上に飛び乗れるし、柵やブロックも飛び越えることができる。動きの幅が大きく広がったことで従来のFPSのゲーム性にも大きな変化が生まれている。
次に見せられたのはキャラクタカスタマイズ。基本となるボディタイプのほかに、民族、アーキタイプ、髪型、フェイスペイント、ヘッドギア、フェイスギア、上下衣服といった項目が用意されており、あたかもMMORPGのような細かさでカスタマイズが可能となっている。実際に作成後のキャラクタのバリエーションを見せてもらったが、細かくカスタマイズを行なうことで、自分だけのオリジナルキャラクタを作ることができる。
そして最後にバトルシーンを見せられたが、発見が多かった。まず、ローディングを終えると、最初から操作可能な状態でスタートしたが、仲間達が身振り手振りを交えながら表情豊かにしゃべり出したのには驚かされた。つまり、いわゆるカットシーンに相当するものがリアルタイムで処理されているのだ。
次に、気になるFPSとしての基本的な部分は「Enemy Territory: Quake Wars」をそのまま踏襲しており、同作の経験者ならすんなりゲームに溶け込めるだろう。たとえば、敵にダメージを与えたり、倒したりすることで、プレーヤーが経験値を獲得し、その経験値を消費することで、敵の位置を知らせる矢印を表示させたり、タレットを配置したりといった特殊スキルが発動可能になる。
老舗のFPSデベロッパーとして、ゲームプレイの進化を意識したユニークな仕様としては、ステージの各所に配置されているボックス型の端末にアクセスすることで、いつでもクラスチェンジが行なえるところだ。経験値による特殊アクションと含めて考えると、プレーヤーが取れる行動のバリエーションはとてつもなく広い。
気になる発売時期は2010年春とまだ少し先。発売プラットフォームはPS3、Xbox 360、PCが予定されている。FPSファンは発売が待ち遠しい1作となりそうだ。
【Brink】 | ||
---|---|---|
「Brink」は、豊かなキャラクタアニメーションとアクションにより、従来のFPSの概念を覆す作品になる可能性がある。ゲームシステムのベースには、「Enemy Territory: Quake Wars」 |
■ 見た目はシリアスだが、中身はカジュアルなハイテンションアクション「WET」
取材に応じていただいたArtificial Mind and Movement(A2M)のAvi Winkler氏 |
「WET」のオリジナルモード「Rage」モード。真っ赤なグラフィックスをバックに、ステージクリアのスコアを競うというモード。バッサバッサと敵をなぎ倒していく感覚が楽しい |
日本でも5月1日に取り扱いが正式発表された「WET」は、超人的な身体能力を持つ美女Rubiのアクションが楽しいTPSだ。発表時点では、女性版「GTA」のような危なっかしいゲームになるのかと思われたが、実際のインプレッションは、2007年に発売されて話題を集めた「Stranglehold」に近く、思わず笑ってしまうような無茶なシチュエーションを、華麗なアクションで切り抜けていくという、いわゆる「Maxpayne」タイプのゲームだ。
開発元はカナダのモントリオールに本拠を置く独立系デベロッパーのArtificial Mind and Movement(A2M)。もともとは、EA、Activision、Ubisoft、THQなど大手メーカーの多くが開発スタジオを持つカナダモントリオールという地の利を活かして、彼らメーカーのDSタイトルの開発を手がけてきたが、近年では「Mercenaries 2」(EA)や「Kung Fu Panda」(Activision)、「Dante's inferno」(EA)といったメジャー級のタイトルも扱い始めており、勢いのあるメーカーだ。
「WET」の主人公Rubiは、Problem Solver(問題解決人)として、難所に単身で乗り込み、様々なトラブルを解決していく。たいていの場合は1対多のシチュエーションになることが多く、絶体絶命の危機をいかに彼女のアクロバティックなアクションで切り抜けていくかがこのゲームのキモとなっている。
Rubiは、二丁拳銃と刀による攻撃を基本に、ジャンプ、壁登り、スライディング、滑り降り、平行棒を駆使した回転、飛び移りなど、実に多彩なアクションを使うことができる。ジャンプやスライディング中は、いわゆる“バレットタイム”状態となり、時間の流れがゆっくりとなり、自分だけが早く動ける状況下で、無数の敵を一度に撃退するチャンスが生まれる。1対多を切り抜けるためには、いかにこのスローモーション状態を維持するかが重要となる。もうひとつ重要なのは刀による攻撃。集団で襲いかかってくる敵に対しては、二丁拳銃より刀攻撃のほうが有効で、状況に応じて拳銃と刀を切り替えながら戦っていく感じになる。
実際にプレイしてみて気になったのはゲームの難易度の高さだ。いわゆるバレットタイム以外の彼女は、どちらかというと撃たれ弱いため、囲まれてしまうと簡単にやられてしまう。スローモーション状態を維持するためには、ある程度のスペースと素早いコントローラー裁きが必要になる。カジュアルなゲームながら、それなりにアクションゲームに自信がないと非常に難しいゲームに感じられるかもしれない。
おもしろかったのが、本作オリジナルのゲームモードである「Rage」モード。ストーリー性を抜きにして、向かい来る敵をなぎ倒しながらいかに早くステージをクリアできるかを競うというもので、色彩が赤一色に統一された独自のグラフィックスと、ハイテンポなゲーム展開が楽しかった。ちょっとした息抜きにぴったりなゲームモードだ。
「WET」の発売時期は2009年秋を予定し、発売プラットフォームはPS3およびXbox 360。日本での発売もすでに確定しているため、発売日のアナウンスを楽しみに待ちたいところだ。
(C) 2009 Bethesda Softworks LLC, a ZeniMax Media company. All Rights Reserved.
http://www.bethsoft.com/
□Electronic Entertainment Expo(英語)のホームページ
http://www.e3expo.com/
(2009年 6月 7日)