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グランツーリスモシリーズプロデューサー、山内一典氏インタビュー「グランツーリスモ for PSP」プレビュー

「GT PSP」はこうなった! 「GT5」はこうなる!


6月3日 収録(現地時間)



 PSP用「グランツーリスモ」は、PSPの本体発表時の2004年からその存在がアピールされ続けてきた経緯がある。

 当時は「グランツーリスモ・モバイル」と仮称されていたが、正式名は「グランツーリスモ for PSP」(以下GT PSP)となり、アナウンスから5年の歳月を経て、ついに2009年10月1日に発売されることとなった。

 ポリフォニー・デジタル代表取締役兼プレジデントの山内一典氏はこの「GT PSP」を「フルスケールの『グランツーリスモ』である」と言い切り、その完成度には絶大な自信を見せている。

 登場車種は800台以上。塗装バリエーションを含めると4,500車種にまで及ぶ圧倒的な物量を誇る。35個のサーキット/コース、60種類以上の景観/レイアウト。PSP用のレーシングゲームとしては過去最大規模のボリュームであることは間違いない。

 ライセンス取得モードを含むキャリアモードも搭載し、クイックレース、タイムアタックといった定番のゲームも搭載。PS3用の「グランツーリスモ HD」より搭載されたドリフト・トライアルまでもが搭載される。

 ネットワーク機能についてはアドホックモードに対応し、最大4人での対戦レーシングが可能(インフラストラクチャーモードには未対応)。さらに繋がったプレーヤー同士がガレージを参照し合い、それぞれの手持ちの車の交換、貸し借りまでが行なえる。はっきり言って、PS3の「グランツーリスモ5プロローグ」に優るとも劣らぬ規模のレーシングゲームになっているといっていい。

 「GT PSP」の発売を数カ月後に控え、最終調整に忙しい山内氏を取り囲んでのインタビューが行なわれた。

2004年、PSPが一般発表されたときに公開されたPSP版「グランツーリスモ」のイメージ そのデモ映像からのキャプチャショット



■ 「PSP GT」はPS3「グランツーリスモ5プロローグ」と同レベルの車両物理シミュレーションを採用

ポリフォニー・デジタル代表取締役兼プレジデントの山内一典氏

 これまで据え置き型のゲーム機向けの「グランツーリスモ(GT)」を5作(「GT5」は未完成だが)作り上げてきたポリフォニー・デジタルだが、今回の「GT PSP」が初めての携帯ゲーム機向け「GT」ということになる。ゲームデザイン部で根本的な部分になにか違いはあるのだろうか。

山内氏「最近では、ユーザーのゲームに対する接し方が変わってきていると思います。特にPSPのような携帯機では、1つのゲームを長時間プレイし続けるということが少なくなってきているんですね。『GT PSP』では、ユーザーのこうしたゲームの接し方に対応した形で調整しています。つまり、まとまって長時間プレイしなくともいいといいいますか、1プレイが短くても、その成果がプレーヤーにフィードバックされるような仕組みを取り入れています」

 おそらく、実績の獲得や新車種の獲得を細かい間隔で小出しにしていくようなシステムが搭載されているのだろう。ちなみに、資料には「累積プレイ時間だけでも、新車種は追加される」と記載されている。レースで勝てなくとも、こまめにプレイをしているだけでもだんだんと使用できる車種は増えてくるということだ。

 さて、「GT PSP」ではアドホックモードでのネットワークプレイ時に参加者同士がガレージを参照しあえる要素を盛り込んでいるとのことだが、車のトレードは自在に行なえるのだろうか。

山内氏「これは車種ごとにトレードできるレベルが設定されています。1つはガレージを参照しあうだけで、そのプレーヤー同士で複製を許可された車種です。これは相手の車種アンロック状態を引き継げるような車種になります。次はプレーヤー同士のガレージ間で移動しあえる車種です。こうした車種は相手にあげてしまうと自分のガレージからはなくなってしまいます。そして移動も貸し借りもできないスペシャルな車種も存在します」

 移動ができない車種は、おそらく、イベントをクリアした際のプライズ的車種、難易度の高い実績達成時に与えられた車種などと思われる。

 PS3版「GT」と「GT PSP」との連携要素はなにかあるのだろうか。

山内氏「『グランツーリスモ』シリーズは、シリーズを重ねるごとに登場車種が増えています。『GT PSP』では800車種もありますし、今後の『GT』ではもっと増える可能性だってあり得ます。プレーヤーの皆さんに新『GT』が出るたびにゼロからまた車集めをしてもらうというのはいくら何でも酷だろうと思い始めました(笑)。そこでプレーヤーのガレージの情報というのは、今後の『グランツーリスモ』ファミリー内で相互に継承共有できてもいいんじゃないかと考え始めています」

 つまり、イメージ的には「グランツーリスモ」のゲーム世界で有効なユニークなガレージアカウントを、今後の「グランツーリスモ」ファミリー内で継承していけるということだ。たとえば「GT PSP」で取得した100車種は、「GT5」に継承すれば「GT5」プレイ時にその100車種は取得済みになっている……ということ。これは、「GT」制作側、プレーヤー側、双方にとって嬉しい要素となる。プレーヤーは苦労して入手した愛着のある車種をずっと使えるし、未だ獲得していない車種の獲得にも集中できる。制作者側としては作り込んだ多くの車種をプレーヤーに早期から体験してもらえることに繋がる。


最初期の発表では「GT“4” PSP」だった

 前述したように、最初期のPSP向け「GT」の発表では「グランツーリスモ4モバイル」となっていた。正式なタイトルは「GT PSP」となったわけだが、ここで気になるのは、「GT PSP」のゲームエンジン世代だ。「フルスケールの『グランツーリスモ』」である「GT PSP」は、果たして据え置き型のゲーム機向け「GT」のどの世代がベースになっているのだろうか。

山内氏「シミュレーション部分などは『グランツーリスモ5プロローグ(GT5P)』と同レベルのものが実装されているとお考えください。車両データはPS2『グランツーリスモ4』、PS2『ツーリストトロフィー』のものをベースにしていますが、描画系エンジンに関してはPSP向けへ新規開発しています」

 「車両物理シミュレーションがPS3の『GT5P』と同レベル」というのはかなりホットトピックだといえる。

 ゲーム中の視点は俯瞰視点とコクピット視点が用意されるが、内装表現までは搭載されない。

 PSPは「PSP go」以前にPSP-1000/2000/3000の3モデルがあり、トータルで4世代が存在することになる。「PSP GT」の開発を進めていった過程で、それぞれのPSPごとの違いに気がついたり、「PSP go」に特別にチューニングしたりしたようなことはあったのだろうか。


山内氏「液晶画面の表示品質(残像の少なさ、発色のよさ)という面では『PSP go』とPSP-3000がもっとも美しいですね。『PSP go』は機能的には通常のPSPと同じですが、形状がやや異なるため、実は操作感が通常のPSPとは若干異なるんです。『GT PSP』の操作系のチューニングに際しては『PSP go』への配慮をちゃんと行なっています」

 筆者は、僚誌AV Watchの連載などでも、ゲームモニタの表示遅延についての話題を取り上げてきたが、ここでも簡単に触れておこう。現存する多くのプラズマ/液晶テレビ製品は、表示遅延の最も少なくなる「ゲームモード」などと命名された画調モード選択時でも、およそ3フレーム前後は遅延している。最近、筆者が評価したEIZOの「FORIS FX2431」シリーズの1フレーム遅延が業界最速となっているが、全てのテレビ製品のゲームモードがこのレベルになることが望まれる。意外なことに、プレイステーションを有するソニーのテレビ製品は、実はこの性能面では最も遅れていた。BRAVIAになってからは大分よくなってきたが、以前のWEGA時代では遅延が多すぎて全くゲームにならない製品も存在していたほど。ソニーに影響力のある山内氏にはBRAVIAのゲームモニタ機能面での性能向上を働きかけて欲しいところだ。


山内氏「ええ。当然、ボクもことあるごとにBRAVIA開発チームに働きかけているんですよ(笑)。表示遅延は1フレームにまで押さえ込んだテレビ製品が当たり前になって欲しいですし、そうなってもらわないと開発側としても困ります(笑)。PSPはゲーム開発側からすると、表示遅延がなくていいマシンですよ(笑)。この点だけで言えばPS3(でのプレイ環境)よりもいいくらいかもしれない(笑)」




■ 「グランツーリスモ5」はどうなる?

 今回のE3プレスカンファレンスのラスト付近では、「GT5」の完成予告ムービーが流され、場内を騒然とさせた。

【プロモーションムービー】

 これについても聞かないわけにはいかないだろう。

 まず、気になったのは映像中に垣間見られた「WRC」と「NASCAR」のロゴだ。これは「GT5」完成版でこのチャンピオンシップモードが搭載されるということなのだろうか。

山内氏「今はそのことについては多く語れません(笑)。WRCはヨーロッパが本場のモータースポーツ、NASCARはアメリカが本場のモータースポーツです。この2つを見せたということは? さて、どういうことなんでしょうね(笑)」

 この映像中のWRCのシーンではクラッシュシーンが登場する。

 「車を美しく見せること」にこだわってきた「グランツーリスモ」シリーズで、破壊表現はタブーとされてきたわけだが、まさにこの映像はそのタブーを打ち破る「予告」とも取れる。この点についてはどうか。

山内氏「クラッシュシーン、ありましたねぇ(笑)。ダメージ表現は要素の導入予定リストには前からあるにはあったんですよ。ユーザーや時代が求めているということで、このタイミングでこういうことになったということです。昨日の欧米メディアからの取材では『ああ、次から入るんだね』という自然な感じで受け止められちゃっていて、あまり、この件については質問されなかったな(笑)」


 さて、もし、ダメージ表現、横転表現なども入ってくるとなると、車両モデルのデータ構造、そして車両物理シミュレーションもかなりのモディファイが必要となってきそうだ。ライバルであるMicrosoftの「Forza Motorsport 3」は年内発売となるだけに、「GT5」完成版の発売がいつになるか気になるというのが人情というものだろう。

山内氏「『GT5』の発売はまだはっきりといえません。いや、すぐに出そうと思えば出せるし、一方でまだまだやり足りないことはあります。やはり納得のできたものになってから出したいんです」




■ 「グランツーリスモ」の役割、ポリフォニー・デジタルの未来

 いまや、日本はスポーツカー不況だ。トヨタはレクサスブランドでSCがスペシャリティカーとして設定されているのみで、かつてのスープラやMR-Sのようなピュアスポーツカーがラインナップからなくなってしまった。ホンダも2008年末の次期NSXの開発中止、2009年6月一杯でのS2000生産終了と、2ドアのピュアスポーツカーが年内に姿を消す。日本の若者の欲しいものランキングでは、いまや自動車は下位定位置安定という悲惨な状態。

 カーライフシミュレータとしての「グランツーリスモ」にとってこの時勢は向かい風だ。ただ、車の楽しさを見せ伝える手段としては、むしろ実車よりも「グランツーリスモ」のようなゲームの方が若者達にとってはいまや近道なのではないかという気はする。

山内氏「これはボク達にとっても重要な問題として捉えています。若い人たちに車の楽しさ、スポーツカーのかっこよさというものを知ってもらうためにどうすればいいか、日々考えているところです。何しろ、今はハンドルを握らない若者が増えてきていますからね。その意味で、今回の『GT PSP』が担う役割はとても大きいと思うんです。PS3用の『GT5P』では、大きなテレビでステアリングコントローラーを付けてPS3も必要……というハイエンドなゲームプレイ環境にならないと楽しみづらいというのがありました。これはある意味、若者から縁遠いものになってしまっていたといえます。ところがPSPならば若者にも気軽に手にとってもらえるし、手軽に車の面白さに触れてもらえるんです。」

 自動車メーカーが、どんなに「車が楽しいものですよ」と訴えても、それは「車を売りたいからだろう」という風に捉えられてしまう。しかし、「グランツーリスモ」のようなコンピューターエンターテインメントの方からの「スポーツカーはこんなに格好いい」というアピールならば、きわめてナチュラルなメッセージとして人々に伝わることだろう。気軽に「カーライフの楽しさ」を疑似体験できる「GT PSP」の存在は、新たな自動車好きを開拓するための有効な手段となっていくかもしれない。

シトロエンとポリフォニー・デジタルとのコラボデザインのスポーツカー。パリ・モーター・ショーで発表され話題となった

 ポリフォニー・デジタルは2007年発売となった日本のスーパーカー日産GT-Rのマルチファンクションディスプレイを設計したことで話題となった。最近ではパリ・モーター・ショーでシトロエンとポリフォニー・デジタルとのコラボによるコンセプトスポーツカーの展示を行ない、これも業界に大きな波紋を呼んだ。いまやポリフォニー・デジタルは、ゲームだけでなく、自動車業界に影響力のある総合的なデザインスタジオとして力を付けてきている。ゲームからだけでなく、デザインという方面からも自動車業界の盛り上げ、あるいは若い人達へのスポーツカーへの興味を誘導する役割を果たしているように思えるが、山内氏の中で、近年、なにかポリフォニー・デジタルの活動方針に転換があったのだろうか。


山内氏「ボクは、設立当初からポリフォニー・デジタルをゲーム開発スタジオ以上の、たとえば自動車産業にトータルな関わりが持てるような存在となるように育て上げていきたいと考えてきました。GT-Rのマルチファンクションディスプレイは好評ですし、自動車に搭載されたものとしては革新的な存在となったと自負しています。ボクらが持っているデザインやエンジニアリングのノウハウは、自動車産業の多方面に活かせるものだと考えていますし、今後もそうした方針で活動していきますよ」




■ 「GT PSP」を「PSP go」でプレイ!

「グランツーリスモ for PSP」を「PSP go」で体験してみた

 E3のSony Computer Entertainmentブースにて、実際に「GT PSP」を「PSP go」でプレイしてみたのでそのインプレッションをお届けする。

 まず、「PSP go」を手に取った感じは「小さい」ということ。画面サイズがPSP-3000の4.3インチから3.8インチになったことによる以外に、「PSP go」を持ってプレイしているときのプレイ感が「小ささ」を強く感じさせる。

 PSP-3000以前では画面の両端を持ってプレイするが、「PSP go」では画面下部のこぢんまりとまとめられた操作パネルに指を置いてプレイすることになる。左右の手(と指)がとても接近して操作することになり、これが「小さい」と実感させるのではないか。

 実際、ボタン類もPSP-3000よりも小さくなっている。○×△□ボタンも小さく、互いが接近している印象がある。

 両手の人差し指は画面に隠れた位置にあるL/Rボタンを押さえることになるが、指が大きいとL/Rボタンを押さえたときに画面背面部に当たる。「GT PSP」では、L/Rボタンは、それぞれリアビュー、サイドブレーキの操作に割り当てられていて使用頻度は低いため、あまり気にならなかったが、押す頻度が高いゲームでは画面背面部を指でこすることになり、気になるかも知れない。

 「GT PSP」では、ステアリングはデジタル方向パッド、アナログスライドスティックの双方に対応していた。また、アクセルは×/○、ブレーキは□、リバースギアが△という割り当てであった。

両指が近くなる形で持つ「PSP go」 「PSP go」の画面は小さめ。面積比にして約20%小さい

 PSPシリーズではボタンはデジタルボタンであるため、入力がオンかオフの二値受付けとなる。よってアクセルおよびブレーキの操作は必然的にフルオンかフルオフの両極端操作になってしまう。

 「GT PSP」では、アクセルオン操作は、ペダルをグイっと短時間で奥まで踏み込んだのと同等の操作になる。ブレーキも同様だ。つまりゼロ発進時からの加速は必然的に急加速操作となりホイルスピンは避けられない。

 コーナリング前のブレーキも、こうしたデジタル操作系のため、必然的にフルブレーキングになってしまう。よってブレーキはロックしやすいので、ブレーキングは直線状態で終えることが必須条件だ。ブレーキを残しながらコーナリングする場合はブレーキボタンを小刻みに連打する必要性もある。

 逆にコーナリングの立ち上がり時にアクセルを押しっぱなしにすると、やはりフルアクセルとなってしまって挙動がピーキーになる。よって、この時もアクセルボタンを連打する必要が出てくる。つまり、旋回角が鋭くなるヘアピンコーナーなどでは、ブレーキボタン(□)、アクセルボタン(×)の両方を連打する局面があり、結構、操作が慌ただしくなるのである。

 総じて言うならば、PS時代の「グランツーリスモ1&2」の操作テクニックが必要になるということだ。

画面下部に各種インジケータを表示

 ところで、□と×は別々の指で押さえないと、両ボタンの連打は難しかった。従ってPSP本体をテーブル置きにしてプレイする方が遊びやすい。

 ちなみに日産GT-Rで筑波サーキット本コースをATモード、EASYモードでプレイしてみたところ、大体、平均して1分フラット前後をマーク。筆者を含むアナログパッドに慣れ親しんでしまったプレーヤー達には、最初、かなり難しいと感じられるかもしれない。しかし、慣れてくればこれはこれで非常にチャレンジングで楽しい。

 この様子だと「GT5」はまだ先になりそうだし、「GT PSP」のガレージデータは「GT5」へ引き継げそうな話を山内氏もされているので、今期は「GT5」に向けて、「GT PSP」をやり込むのがいいだろう。

 「PSP go」ではPS3のコントローラー製品が繋がるらしいので、できれば、ステアリングやアナログパッドへの対応もさりげなく望みたいところ。


【スクリーンショット】
グラフィックスの品質は思っていたよりもだいぶ良好であった。画素密度が高いこともあって携帯ゲーム機の映像とは思えない艶やかさがある

(2009年 6月 5日)

[Reported by トライゼット西川善司]



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ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

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