Electronic Entertainment Expo 2009現地レポート

Codemastersブースレポート「Operation Flashpoint: Dragon Rising」最新ムービーほか
発売直前の「DiRT 2」など、気になるタイトルをピックアップ

6月2~4日開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center

 

 本稿ではE3におけるCodemasters関連のタイトル情報をお伝えする。前回のE3では独自のプライベートブースを構えていたCodemastersだが、今回は北米での流通を担当する大手パブリッシャーWarner Bros. Interactive Studiosの巨大ブースの一角に専用コーナーを設け、最新4タイトルのプレイアブル展示を行なっていた。

 日本では昨年7月に日本法人のコードマスターズ株式会社が設立されており、今回展示されていたほとんどのタイトルについては日本版のリリースが期待できそうだ。特に注目作の「Operation Flashpoint: Dragon Rising」については、声優を起用した完全ローカライズが明言されているため、詳しくお伝えしたい。



■ Codemasters期待の新作FPS「Operation Flashpoint: Dragon Rising」
 “軍事シミュレーター”と呼びたくなる、超リアル設計のゲーム内容を確認

本作を紹介してくれたリードデザイナーのTim Browne氏

 FPSというジャンルには、「リアル系」、「スポーツ系」といった基本的なカテゴリー分けが存在するが、その中で「リアル系」最高峰に位置したタイトルが、2001年にBohemia Interactiveが開発した「Operation Flashpoint: Cold War Crysis(以下『OFP』)」だった。全世界の、おもにミリタリーマニアを熱中させたリアルさや臨場感は、その後何年も競合作品が登場しないほどのレベルに達していた。

 それから8年を経過してついにリリースされる本作「Operation Flashpoint: Dragon Rising」は、開発元がCodemastersに変わったものの、正統なる後継作品に仕上がっている。今回のE3では、初めて本作がプレイアブル出展され、Codemastersで本作のリードデザイナーを務める Tim Browne氏の解説のもと、ゲーム内容を確認することができた。

 本作の舞台は近未来の極東アジア。ウラジオストクと北海道の間あたりに位置する仮想の島「スキラ島」を巡り、中国軍と米露連合軍が軍事的衝突を展開する。主人公は最新装備に身を固めた米海兵隊の小隊長となり、部下を指揮しつつミッションを達成していくという内容だ。舞台となる島は全体で220平方マイルの面積があるといい、端から端まで歩いて移動すれば何時間もかかる。そのためヘリコプターで一気に展開するようなミッションもあるようだ。


マップの広さがわかる連続図。左から右へ向かってズームアウトしていった様子だ。試遊したミッションの作戦範囲は、マップ全体から見ると米粒程度にしか見えないほどである


画面から受ける印象はとにかく地味! まさにシミュレーターの趣だ
後方からの砲撃支援を要請し、敵陣地に着弾したところ。モクモクと黒煙が立ち上る
乗り物のリアリティも気になるところだが、試遊バージョンでは入っていなかったため未確認だ

 本作をプレイしてまず印象に残るのは、その「地味さ」だ。他の最新FPSが、派手なエフェクトや格好の良い演出でアクション映画のようなゲームシーンを提供していることに対して、本作は本当に淡々としているのである。

 例えば、グレネードなどの爆発はほとんど閃光が上がることなく、土煙が「ボフッ」と広がるだけ。より大きな榴弾砲による支援攻撃でも、火花が派手に飛び散るようなことはない。Browne氏によれば、こういった表現は実際の現象に限りなく近づけて再現したのだという。Browne氏は「ほら、地味でしょう!」と、むしろ誇らしげだ。

 このことに象徴されるように、本作は現実の戦場で起こりうる風景をゲーム史上最高の正確さで表現することを目標としている。そのことは戦術面にも表れており、例えばプレーヤーが敵の防御陣地を正面から撃破することはほとんど不可能だ。銃弾は常に致命的であり、当たり所が悪ければ1発食らっただけで死亡することもある。敵の前に身をさらして戦うような、アクション映画のようなやりかたは自殺行為なのである。

 そういったプレーヤーの限界を補うのは、プレーヤーにつき従うAI制御の小隊メンバーだ。プレーヤーはメンバーに対して迂回、制圧射撃といった、戦術的行動を司令することができる。迂回行動を命じられた部下は、地形による遮蔽を使いつつ、時には数百メートルも移動して敵の側面を衝く。これを利用してじっくりと敵を追い詰め、有利な態勢を整えてから攻撃を仕掛けるというわけだ。

 Browne氏によれば、こういったAIの行動パターンは、現実の米海兵隊の指導のもと、綿密に作り込まれたという。また同様に、武器や兵器類へのこだわりも相当なものだ。例えば銃弾は実際の物理オブジェクトとして空間を飛翔し、速度、重量、距離、風の影響などで着弾点や威力が変わる。プレーヤーは様々な要素を計算に入れる必要があるのだ。

 また戦車のような乗り物は、装甲板ごとにダメージシミュレーションが行なわれるため、装甲を貫ける能力をもった武器(対戦車ロケットや戦車砲など)でなければ傷一つ付けることもできない。しかし部位によってダメージ耐性は異なるので、たとえばキャタピラにグレネードを直撃させるなどして破損させ、動きを止めることは可能だという。

 まるで軍事シミュレーターのような内容を備えつつある本作「Operation Flashpoint: Dragon Rising」。リアルな風景を描くことに専念したという画面からは地味な印象ばかりを受けてしまうが、それだけに、その「中身」を理解できるプレーヤーにとっては、この上ない作品になりそうだ。豪華なミッションエディターも搭載しているそうなので、「OFP」ファンが求めるものは完全に満たされそう。

 本作の発売は欧米で2009年末に予定されている。対応プラットフォームはプレイステーション 3、Xbox 360、PC。コンシューマ機版については、日本法人のコードマスターズ株式会社から日本版の発売が決定しており、声優によるボイスオーバーを含めたローカライズが行なわれる予定だ。E3に合わせて公開された最新ムービーを掲載するので、是非ご覧いただき、ゲームの雰囲気を掴んで欲しい。


【プロモーションムービー】





■ オフロードレースゲーム「DiRT 2」
「GRID」でも使われた最新の「EGOエンジン」を採用し、今年9月にも欧米で登場

「DiRT」の試遊台の様子

 こちらは2007年6月に欧米で発売されたオフロードレースゲーム「DiRT」の続編だ。レースゲームの老舗であるCodemastersの看板シリーズであり、今年2月に日本版が発売された「RACE DRIVER GRID」に続くレースゲームタイトルだ。

 「DiRT 2」がテーマとするのはラリーカーによるダートコース、オフロードのレースである。フィクション性の強かった「GRID」に比べ、本作は現実のラリードライバー、ラリーイベントに対して忠実なつくりとなっており、現実にも存在するコースを、有名ドライバーとチームを組んで走ることができる。ひとり用のキャリアモードについては、「GRID」に似たシステムを搭載しており、イベントに出場して賞金を稼ぎ、新たなメンバーを加えながらステップアップしていくという構造になっているようだ。 

 ゲームエンジンとしては、「GRID」にも使用されたCodemastersオリジナルの「EGOエンジン」の最新版がつかわれており、アウトドアコースの陰影が印象的な色調で表現されている。また、「GRID」よりも詳細なテクスチャが利用できるようになったとのことで、車両の汚れ表現は一見の価値があるクオリティだ。水たまりに突っ込んでしぶきを上げながら疾走するシーンなどは特にそうで、オフロードレースならではの格好良さである。

 本作において、「GRID」から引き継がれた最大級の特徴は、レース中に任意の地点まで巻き戻すことのできる「フラッシュバック機能」を搭載したことだ。これは「GRID」で非常に便利かつゲーム性に深みをもたらしていた機能で、「DiRT」のようにミスが即クラッシュにつながるというオフロードのレースゲームでは本当に欲しかったものだ。

 また、マルチプレイ機能に関しては、最大2名までしか対戦できなかった前作「DiRT」の問題点を改善し、「GRID」と同等の多人数対戦が可能になっているという。さらに、「GRID」には無かったオンライン機能として、フレンドの新記録や実績の達成が自動的に通知される、一種の同報機能が採用されており、ライバル同士の磨きあいにより熱が入りそうだ。

 試遊台でプレイした感触についても触れておこう。さすがにラリーゲーム、常にドリフトしながらのコーナーリングだ。オンロードをテーマとする「GRID」をプレイした直後ならば、氷の上を滑っているような感覚である。だが、コースを数周しているうちにこのドライビングモデルに慣れ、旋回半径を先読みして華麗なドリフトを決められるようになる。かなり気持ちのいい挙動に収まっていると感じた。

 本作「DiRT 2」は、欧米では2009年9月のリリースが予定されている。今のところ日本版についてのアナウンスは聞かれてないが、Codemastersの看板シリーズであるだけに、近く何らかの動きがあることを期待したい。


【ティザームービー】

「コリン・マクレー」シリーズの系譜を受け継ぐオフロードレースゲーム「DiRT 2」。今作では「GRID」で導入されたシステムも受け継ぎ、プレイしやすさも向上。レースゲーマーならばチェックしておくべき作品のひとつだ




■ 悪の大君主の冒険再び。「OVERLORD II」
 ミニオンたちの能力や個性を大幅強化した最新作

「OVERLORD II」の試遊台。発売直前ということもあり、わりと落ち着いた雰囲気だった
ミニオンたち。今回はもっと個性的にたち振る舞い、プレーヤーを楽しませてくれるらしい

 欧米で2007年の6月に発売された「OVERLORD」は、2008年にはマイクロソフトから「オーバーロード:魔王サマ 復活ノ時」としてXbox 360版がリリースされた3Dアクションゲームだ。プレーヤーが悪の大君主「オーバーロード」となり、固有の能力をもったミニオンたちを引き連れて指示を出しつつ、タクティカルな戦闘やトリッキーなパズルを解決していくという作品で、なかなかの良作だった(レビュー記事)。

 その続編となる本作「OVERLORD II」は欧米向けに6月26日に発売される予定で、今回Codemastersブースでは試遊が可能になっていた。開発元は初代作と同じCodemasters傘下のTriumph Studiosで、前作と同じテイストを引き継ぎつつ、さまざまな面が強化されている。

 前作に比べて強化されたポイントのひとつめは、プレーヤーの手下となるミニオンに新たなアクションが追加されたことだ。特に目を引くのが、「動物に乗る」というアクション。マップ上に見つかる「狼」やその他の動物を使い、即席の騎馬軍団を編成できるわけだ。

 他にも、ミニオンたちが操作できる攻城兵器なども用意され、プレーヤーの作戦の幅が広がった。さらに今回は50以上のミニオンを引き連れることが可能になるが、AIシステムが強化されたことでミニオンは前作より賢く、個性的にふるまうように成長した。元気に動き回るミニオンたちの反応を眺めるだけでも面白く、より手応えのあるゲームになったという。

 ふたつ目は、主人公である魔王・オーバーロード自身の成長システムである「corruption」が、よりダイナミックな影響を及ぼすようになったことだ。オーバーロードは「Domination」と「Destruction」という、2つの成長経路を選択することができる。前者を選べば村人を命令に従わせ、継続的に利益を得ることが可能になり、後者を選べば、1度にすべてを奪い破壊の限りをつくすことができるそうだ。

 試遊台で試すことのできた範囲では、ミニオンを動物に乗って戦わせるアクションはなかなか見ごたえがあって楽しい。全体的には前作のプレーヤーを驚かせるほどの内容には至っていないものの、期待通りの続編としては申し分のないレベルに仕上がっている。前作をプレイしてハマったプレーヤーならば要チェックだ。


 初代作「OVERLORD」は、多数のミニオンを引き連れ、様々な戦術を駆使して戦うという新しいゲーム性を提供した。続編となる本作は、その基本を継承し、よりボリュームのある作品に仕上がったようだ。
 前作はマイクロソフトから昨年5月に「オーバーロード:魔王サマ 復活ノ時」として日本語版のリリースが果たされている。続編となる本作の日本版については現時点でアナウンスされていないものの、コードマスターズによるローカライズを期待したい。前作をプレイしたユーザーはぜひチェックしてみてほしい



【OVERLORD: DARK LEGEND】
「OVERLORD」シリーズの外伝的な作品で、Wii専用にリリースされる新規タイトル。多数のミニオンを引き連れて戦うというゲームの基本は変わらないが、Wiiリモコンを使った直観的な操作方法に置き換えられている。欧米では6月26日に発売予定である



(2009年 6月 5日)

[Reported by 佐藤カフジ ]