Electronic Entertainment Expo 2009現地レポート

EAブースレポート1:ノルマンディー号撃墜、シェパード少佐死す!?
怒涛のシネマティックRPG「Mass Effect 2」、リアルサッカー「FIFA 10」など、注目作をピックアップ

6月2~4日開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center

 

 現地時間6月2日よりいよいよ開幕したE3 2009。その中でひときわ大きなブースを構えて大量の新作を展示していたメーカーがElectronic Artsだ。ブース内には自由に試遊することのできるプレイアブル展示と、タイトル毎に個室を与えられたデモンストレーション展示(“Behind Closed Door Demo/Preview”)があり、注目作品の多くは後者の形で紹介されていた。

 本稿ではその中からBioware開発の新作RPGタイトル2作品「Mass Effect 2」、「Dragon Age」と、EAの新IPであるアクションゲーム「Dante's Inferno」、EAスポーツの看板シリーズの最新作「FIFA 10」をピックアップする。



■ RPGの実力派スタジオ、Biowareが相次いで投入する骨太のRPG2編

 まずはじめに、RPGの老舗ゲームスタジオ、Biowareの最新作2タイトルからご紹介していこう。Biowareと言えば、PCで「Baldur's Gate」、「Never Winter Nights」といった傑作RPGを作り続けてきたスタジオだが、「Mass Effect」以降はXbox 360にもタイトルを供給し、独自の作品スタイルを確立した。Electronic Arts傘下となった現在でも強烈な存在感を放ち続けている。

 そんなBiowareが放つ最新作が、Xbox 360とPCで提供予定のシネマティックRPG「Mass Effect 2」と、往年のPC系RPGのシステムを継承する新IP「Dragon Age: Origins」の2本だ。先日のEAプレスカンファレンスでは、この2本に加えてMMORPGも製作中と発表したBioware。現在、どんな作品作りをしているのかを見てみよう。



・大注目の「Mass Effect 2」は、前作のすべての面に磨きをかけてさらなる大作に

制作プロデューサーCasey Hudson氏

 欧米で2007年末に登場したRPG「Mass Effect」は、独自のハードコアSFの世界観と、面白く厚みのあるシナリオが高く評価され、数々の賞を受賞した。日本語版はつい最近登場したばかりだが、日本のプレーヤーは続編がすぐにプレイできるかもしれないという幸運に恵まれたともいえる。現在Biowareが開発している続編「Mass Effect 2」は、Xbox 360とPC向けに2010年初頭にリリースされる予定だ。

 EAブースの一角に設けられた一連のクローズドルームでは、“Behind Closed Door Preview/Demos”と題するプレス向けデモンストレーションを行なっており、その中で「Mass Effect 2」の新しい情報を多数得ることができたのでお伝えしよう。

 本作のデモンストレーションを行なった、Biowareの制作プロデューサーCasey Hudson氏の説明によれば、「Mass Effect 2」では、前作のプレイデータを読み込むことで、前作の世界と主人公の状態が引き継がれてストーリーが進行していくという。そのため、プレーヤーは前作からの連続性をより強く感じられる。さらに、本作はシリーズを特徴づけているすべての面で改良が施されている。大きく分けるならば、インタラクティブな会話シーンと、戦闘と、シナリオである。

 まず会話シーンについては、前作で採用されていたシェパード少佐の反応を選択できるシステムはそのまま継承されているものの、シーンの進行がよりリアルタイムに、ダイナミックなものになっている。デモンストレーションでは、シタデル内を車両で移動しつつ、車内で会話する場面を見ることができたが、会話中も映画的なカメラワークの変化や、キャラクターの演技が織り込まれ、前作で度々みられたような「棒立ちで話し合う」ようなシーンはひとつとしてなかった。全編この調子だというのだから、本当にリッチな作り込みだ。

 デモでは、仲間を引き連れたシェパード少佐が敵対企業を襲撃し、責任者のアサリ族を問い詰めるシーンに移行していく。そこで突然、新手の宇宙種族が現われ、忍者じみた動きで敵方のキャラクターをあっという間に始末してしまう。人間型のボディに甲殻類のような頭部を持つこの種族は、シェパードと2、3の言葉を交わすとすぐに姿を消す。こういったシーンが高いインタラクティブ性を保ったまま演出され、映画のワンシーンを演じている感触が前作以上に得られる。

グレネードランチャーで大爆発を起こす

 戦闘システムにはさらに大きな変化が加えられた。2人の仲間が常に同行するという基本は変わらないが、インターフェイスが刷新され、各キャラクターの状態がよりわかりやすくなっている。また、新たな武器カテゴリとして「ヘビーウェポン」が加えられ、ロケットランチャーや核兵器級のグレネードランチャーが登場。後者には一撃でたくさんの敵を消滅させるほどの威力がある。

 それ以上に面白いのが、新しく導入された部位ダメージのシステムだ。リアル系FPSと同じように「ヘッドショット」の概念があり、頭部を狙えば大ダメージが狙えるだけでなく、手や足を集中的に攻撃することで、その部位を破壊し、戦闘や移動を不可能にさせることができるのだ。アンドロイド系の敵には特に効果的で、まず足を破壊して動きをとめ、じっくり始末するという戦術が可能になっている。

 最後に見ることができたシーンは、本作のシナリオに関するものだ。このデモンストレーションでは「Suicide Mission(自殺行為的なミッション)」という言葉が多く使われたが、それは単に難しいという意味ではない。本作では、シナリオとして、シェパード少佐が本当に死んでしまうことがあるのだ。

 ある惑星軌道上の宇宙空間で、シェパード少佐の乗船するノルマンディー号が激しい砲火にさらされている。船内のいたるところが炎上し、クルーが次々に倒れていく。シェパード少佐がデッキに上がると、外殻を失った司令室はもはや宇宙空間。真空・無重量状態の虚空が眼前に広がり、もはやノルマンディー号の命運が尽きたことを知る。

 それでも歩を進めていくと、操縦席には操縦士ジョーカーが居り、まだ船のコントロールをあきらめていない。説得に応じようとしない頑固なジョーカーを無理矢理担ぎ、船外へ脱出しようとするシェパード少佐。その時さらなる砲撃が船体を襲う。シェパード少佐は宇宙空間に放り出され、虚空へ消えてゆく……。

 まさに、いったいどうなってしまうのか?という見ごたえのあるシーンだ。本作ではこのように、絶体絶命どころではない、絶望的なシチュエーションでゲームオーバーになることもありうるという。そのために、プレーヤーにはより慎重な選択が求められるということだ。

 期待感抜群の作品に仕上がりつつある本作、プレイできるようになる日が待ち遠しいが、日本語版の登場時期などについてはまだ明らかになっていない。いずれ続報をお伝えしたいと思う。


【「Mass Effect 2】
見ごたえのある会話シーンや、ノルマンディー号が危機に瀕した映像をお届けしたいところだが、今回公開可能なスクリーンショットは戦闘システムがらみのものだ。新しいヘビーウェポンや部位ダメージの様子が確認できるので、詳しくご覧いただきたい



・とても古くて新しい、ダークファンタジーRPG「Dragon Age: Origins」

デモルームの前には巨大なドラゴンのオブジェ
リードデザイナーのMike Laidlaw氏

 「Dragon Age: Origins」は、Biowareが今年10月20日にPS3及びXbox 360、そしてPCでリリースを予定しているRPGだ。ダークファンタジーの世界を舞台とする作品で、基本ゲームシステムとしては往年の傑作「Baldur's Gate」に非常に近いものとなっているのが特徴だ。

 「Baldur's Gate」をご存じのない方に簡単に紹介しておくと、本作の主人公は常に3人の仲間とともに4人パーティを組んで行動するシステムになっており、NPCとの会話、買い物、戦闘、クエストの解決といったオーソドックスな仕組みでゲームが進行していく。

 戦闘では随時パーティメンバーに指示を出して制御することができ、非常にストラテジックだ。典型的には、戦士系の前衛タイプ、魔法使い系の後衛タイプに分かれて戦術を組み立てるのが一般的。本作ではそのようなスタイルをスケールアップして継承しているため、古くて新しい作品だと言えるのだ。本作については、4月にロンドンで行なわれたEA EUROPEAN SHOWCASEでもレポートしているので、合わせて参照していただきたい。

 発売を4カ月後に控えるとあって、ほぼ完成に近付いているという本作。リードデザイナーのMike Laidlaw氏は、本作のおいしい部分をつまみ食いするかのうようなデモンストレーションを行なってくれた。

 まず見せてくれたのは、「Mass Effect」ばりの恋愛シーン。キャンプを張って休息をとる一群の中に、プレーヤーと恋仲になりうる、キュートな女性キャラクターが2名ほどいる。プレーヤーが話しかけて、頼まれごとを解決したりすると「好感度」的なパラメータが上がり、そのうち「あの子と私、どっちにするの!」的な問いかけを受ける。どちらかを選ぶとラブシーンに突入だ。後のパーティ内部は修羅場に違いない。

 さすがにBioware作品というだけあって、そのほかにも「Mass Effect」に近いにおいがある。徹底的に選択肢が用意された会話システムがその好例だろう。当然、プレーヤーの反応によって得られるものが異なる部分もある。これがBioware流のロールプレイシステムというわけだが、本作では「Mass Effect」ほどにはリッチなカットシーンが用意されていない。このあたりは、オーソドックスな3DRPGという印象だ。

巨大モンスターとの戦闘イメージ

 続いてデモンストレーションされた戦闘シーンでは、巨大なドラゴンとの死闘を見ることができた。タイトルにあるとおり、本作ではドラゴンがストーリー上重要な存在であるようで、この戦闘はミステリアスなNPCとの会話からスタートした。ドラゴンは身の丈10メートルはありそうな巨体で、ツメ、ブレス、尻尾を使い、4人のパーティメンバーを同時に撃退しうる戦力だ。

 この戦闘では、戦士系のキャラクターが2名前衛を務め、サマナー系のキャラクターが後ろから援護するという形で戦いが進行。PCではなくXbox 360でプレイしていたようだが、目を引いたのは随時プレイするキャラクターを切り替えて進めていたことだ。キャラクターを切り替えると、カメラがそのキャラクターを中心としたものに切り替わる。操作していないキャラクターは、あらかじめの作戦に基づいてAIが操作するようだ。

 そしてついに、戦士がドラゴンの頭に飛び乗り、頭に剣をつきたて、もんどりうったところに追い打ちして首を切断するという方法で、戦いに決着がつく。連続的なアクションが繰りだされ、インタラクティブな戦闘の中にありながら、非常に映画的だ。このあたりは最新のRPGとして十分なクオリティに達している。

 ここまででデモンストレーションは終了したが、「Baldur's Gate」を経験している筆者としては、それと同じ味わいを与えてくれそうな本作「Dragon Age: Origins」に大いに期待したい。日本語版については現在のところ不明であるため、日本のパブリッシャーであるエレクトロニック・アーツの動向に期待したい。


【「Dragon Age: Origins」】
正統派のファンタジーRPGというのは近年では希少になっているタイトルだ。ハードコアなRPGファンなら絶対に見逃せない1作となるだろう



■ 3Dアクションやスポーツジャンルにも新作が登場

 EAブース内のクローズドルームでデモンストレーションが行なわれていたタイトルはどれも注目に値するものだが、その中から新作アクションゲームと、スポーツゲームから1作品づつをご紹介しよう。いずれも発売を待ち遠しく思えるほどの内容を備えた作品だ。



・「Dante's Inferno」は、これ以上ないほどの地獄ぶり!

アクションヒーローと化したダンテの等身大フィギュア

 「Dante's Inferno」は、13世紀の叙事詩「神曲」、「地獄篇」をテーマとする3Dアクションゲームだ。EAのタイトルとしては珍しく、完全3人称視点のコマンド式アクションゲームとなっており、「神曲」に描かれた地獄の情景の中を、強力なアクションヒーローと化したダンテが縦横無尽に暴れまわるという作品だ。本作はPS3/Xbox 360、およびPSPでのリリースが2010年に予定されている。開発元はVisceral Games。宇宙サスペンスホラー「Dead Space」を開発したEA Readwood Shoresが改名したスタジオだ。

 本作については、日本法人のエレクトロニック・アーツが日本語版のリリースを予定しており、そのことについて弊誌ですでにお伝えしている(EA、PS3/Xbox 360「ダンテズ・インフェルノ(仮)」 叙事詩「神曲」を元にしたサードパーソンアクションアドベンチャー)。今回、クローズドルームで見ることのできたデモンストレーションは、 これまで公開されていた映像やスクリーンショットだけでは伝わることのなかった、本作の最も印象的な部分だ。

 ゲームのシステムと雰囲気に「God of War」シリーズに近いにおいを感じる本作だが、ゲームの舞台が地獄そのものということもあって、アクションや演出はすさまじくグロテスクで、即座に生理的嫌悪感を催す。それがどこか心地良く感じるのが不思議ではある。デモンストレーションはまず、ダンテが多数のモンスターと対峙するバトルシーンから始まった。

巨大なボス、死神との戦闘。本作の雰囲気は一言でいうと「禍々しい」に尽きる

 ダンテは身の丈を超すほどの大鎌を装備しており、それによる切りつけ、薙ぎ払いといった直接攻撃や、十字架のオーラを纏い、それを的にぶつけるなどの方法で戦いを展開する。過剰とも思われるほどの出血や、背中にとびついて首を切断するという残虐なアクションもあり、尋常ではない雰囲気だ。また、大鎌は離れた場所にある物を掴むという、グラッピングフックとしての機能もあって、これを使いアクロバティックな動きで敵を翻弄することができる。

 極めつきなのは、見上げるほどの巨大さを持つ、死神の頭領といった風貌の大ボスとの戦闘だ。ボスが振り上げる腕による攻撃を大鎌によるアクロバティックな動きでかわし、尖った鉄柱をもぎとって眼球に突き刺す。そしてボスの頭に鎖を取り付け、巨大な拷問具に引きずり込み、スイッチが入るや、色々なものをまき散らしながら頭部を両断。こういったアクションは、一連のシーケンス中で適切なボタンをテンポ良く押すことで展開するシステムだ。

 グロテスクなアクション以外にも、禍々しい演出が存在する。ステージの途中に、地獄に落とされた人間がうめきを挙げていることがあり、それに話しかけることによって、彼の罪を聞き、許すか、それとも罰するかをダンテが決することができるのだ。デモンストレーションでは彼を罰し、光の十字架を顔面に突き刺すや、哀れな罪人はぐちゃぐちゃに粉砕されてしまった。これにより、ダンテが新たなステータスを獲得することがあるようだ。

 場内での撮影が禁止されていたため、その模様を映像でお届けすることができず残念だ。だが、本作の演出のクオリティは非常に高い水準にあり、最新の3Dアクションゲームジャンルを飾る作品のひとつとして、絶対に見逃せない内容を備えていると感じられた。日本での発売予定日はまだ確定していないが、プレイできる日を楽しみに待ちたい作品だ。


【「Dante's Inferno」】
とにかくゲーム世界の地獄っぷりでは他の追随を許さないクオリティを感じる。本作「Dante's Inferno」はプレイ可能な人を相当選びそうではあるが、一味違った刺激を欲するゲームユーザーには是非お勧めしたいところだ



・無数の改良でパーフェクトなサッカーゲームを目指す「FIFA 10」

EA Sportsルームの様子。大規模な展示はなかったが、スタッフによる説明を受けることができた
ボディコンタクトの処理が大きく向上し、ボールをめぐる駆け引きが説得力のあるものになっていた

 クローズドルームのEA Sportsのタイトルを紹介する部屋の一角で「FIFA 10」の紹介が行なわれていた。本作はEA Sportsブランドの中でもフラッグシップに位置するサッカーゲーム「FIFA」シリーズの最新作で、今年の秋にPS3/Xbox 360、そしてPCでのリリースが予定されている。

 本作を紹介してくれたEAスタッフによれば、本作は前作「FIFA 09 World Class Soccer」で実現した10vs10のオンライン対戦などの基本システムを継承しつつ、ユーザーのフィードバックをもとに非常に多くの改良を加えて完成度を高めた作品になっているという。明確なウリをひとつだけ言うのは難しいとしつつ、いくつかのプレイムービーを使って特徴を説明してくれた。

 デモンストレーションで確認できたひとつめの特徴は、ドリブルが非常にアナログ的になったということだ。従来の通常ドリブルは8方向に限定されており、高速ドリブル時でも16方向だったが、今回は「360°dribbling」と題してアナログなドリブル操作が可能となっており、従来は活用できなかった「ディフェンダーのマークのずれ」、「ちょっとしたスペース」を活用できるようになるという。

 もうひとつ、スタッフが詳しく紹介してくれたのが、ボディコンタクトに物理エンジンをうまくブレンドすることで、自然な動きと駆け引きを実現した、ということだ。これはいくつかのスクリーンショットで確認できるが、実際に動いているのを見れば一目瞭然。本作では現実同様、相手の前に体を入れることが非常に重要になっており、ディフェンダーがうまくポジショニングすれば、手、肩を使ってボールホルダーの動きを制し、ファウルなしでボールを奪うことができる。そのとき、とても自然で、全く違和感のない動きを見ることができる。

 そのほかにも、ボールをトラップする動き、AIのポジショニング、パス、シュート、ディフェンス、ゴールキーパーの動きなど多数の項目について、ゲームプレイ要素開発チームのほとんどのリソースを割いて無数の改良を加えたという。監督としてシーズンを通して戦う「マネージャーモード」についても、試合結果のシミュレーション、移籍システム、プレーヤーの成長システムなど、多くの改良が施されているそうだ。

 これだけ多くの点で改良を加えた結果、「ウリをひとつに絞れない」というなんともセールス的には難しい状態となった「FIFA 10」。しかし、前作「FIFA 09」で見られた不満点が徹底的に改善されたというスタッフの説明には、大きな自信を感じた。サッカーゲームのファンは、本作の発売を楽しみに待とう。


【「FIFA 10」】
ドリブルの360度化、ボディコンタクト処理の強化をはじめ、無数の変更が加えられた新しい「FIFA」。毎年リリースされるシリーズ物であるだけに、地味だがゲーム性を重視した改良に徹する開発元EAカナダの姿勢には一定の合理性がある。今年の秋をぜひ楽しみに待ちたい




(2009年 6月 3日)

[Reported by 佐藤カフジ ]