Electronic Entertainment Expo 2009現地レポート
E3 2009 Electronic Arts Press Conferenceレポート その1
スター・ウォーズMMORPGなどホットトピックが目白押し
米Electronic Arts(EA)はロサンゼルス市内のOrpheum Theterにて、E3プレスカンファレンスを開催した。
オープニングトークでEAのCEO、John Riccitiello氏は以下のように語っている。
「今日、紹介するタイトル達は世界中のオーディエンス達に3つの印象を与えることでしょう。1つは現在技術的に可能な限りのインタラクティブ・エンターテイメントの可能性が感じられること。2つ目にWiiプラットフォームのすばらしさです。3つ目にEAゲームのクオリティの高さです」。
2008年では、EAのゲームタイトルで、ユーザー評価で10点満点中8点以上を獲得したものが14タイトル以上あり、今年2009年では、さらにこの記録を塗り替える自信を見せている。
本稿では、EAプレスカンファレンスで紹介されたタイトルの中で、特にホットトピックだと思われるものを選んで紹介していくことにする。
■ 「Star Wars the Old Republic」
フルボイスのスター・ウォーズMMOPRGが登場
「Mass Effect」シリーズで知られるBiowareと、ジョージ・ルーカス直属のゲーム開発スタジオLucasartsとのコラボレーションによる大作MMORPG「Star Wars the Old Republic」の制作発表が行なわれた。
「本作はPC用ストーリードリブンなMMORPGで、(特定のスター・ウォーズ・キャラクターになるのではなく)スター・ウォーズの世界観でパーソナルな冒険をするものになる。時代設定はダースベイダー台頭から1,000年前の設定となる」(Lucasarts、Darrel Rodiguez、Darrell Rodriguez氏)
映画「スター・ウォーズ」で描かれる時代の遥か前のスター・ウォーズ世界をゲーム化した有名作として、シングルプレイRPGの「STAR WARS KNIGHTS OF THE OLD REPUBLIC」が存在するが、本作はあの世界観をMMORPG化したものといってよさそうだ。
LucasartsのみでなくBiowareに共同制作を打診したのは、Biowareが世界有数のRPGメーカーであること、そして「スター・ウォーズ」の世界観に対する愛着を観じられたからだという。
今回のプレスカンファレンスでは、ゲームに関する予告編が公開されただけで、ゲームの内容については一切語られなかった。
ただし、MMORPGとしては世界初のフルボイス作品になるのだという。自分の制作したキャラクターには固有の音声が付き、遭遇したゲーム中のNPCも全てフルボイスでしゃべるというのだ。
「おそらくゲーム史上で最大の音声収録プロジェクトになると自負しています。いや、もしかするとこれは、(映画やアニメを含む)全エンターテインメントの中で最大の音声収録プロジェクトになるかも知れない」(Bioware、CO-FOUNDER、Dr.Ray Muzyka)。
Muzyka氏によれば、セリフ数は数十万個、音声付き演技は数千個にも及ぶとのこと。プロシージャル技術との組み合わせもあるのかも知れないが、興味深いところだ。
また、これまでのMMORPGが戦闘とキャラクターの成長だけに特化していたことに対する新た提案として、MMOPRGに長編ストーリーを持ち込む試みを行なうのだそうだ。MMOPRGとはいっても、あくまでプレーヤーにはストーリーを楽しんでもらうことにフォーカスして制作を進めているのだという。
具体的に発売スケジュールは未定とされたが、早ければ年内にもサービス提供のアナウンスをしたいとのことであった。
【プロモーションムービー】 |
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■ 「CRYSIS2」
待望の続編登場はCRY ENGINE3ベースでPS3/Xbox 360/PCへ展開する!
映像なしのアナウンスのみとなるが、CRYTEKは、同社の大ヒット3Dシューティングゲーム「CRYSIS」の続編の制作発表を行なった。
「CRYSIS」(2007年リリース)の後には、「CRYSIS」と同時系列の別主人公の活躍を描いた「CRYSIS WARHEAD」(2008年リリース)が発表されたが、「CRYSIS2」は完全なる続編となる。「CRYSIS」のラストシーンでは、ゲームのメイン舞台となった南国の無人島からせっかく脱出した主人公達が、謎のエイリアン種族を殲滅するために、島へ引き返すシーンで終わり、いかにも続編待ちという感じであった。あの、盛り上がるだけ盛り上がったストーリーが「2」では決着するに違いない。
「CRYSIS」と「CRYSIS WARHEAD」は、PC専用のゲームエンジン「CRY ENGINE2」(CE2)ベースであったため、PC専用ゲームであった。
しかし、「CRYSIS2」では、PS3/Xbox 360/PCへ対応した新開発のマルチプラットフォーム・ゲームエンジン「CRY ENGINE3」(CE3)を採用することが公言され、「CRYSIS2」はPS3/Xbox 360/PCの3プラットフォームでリリースされる。発売時期は未定。
「CRY ENGEIN3は、PS3/Xbox 360/PCの全てのハードウェアの優れた部分を最大限に活かしたビジュアル体験を提供します。『CRYSIS』でお見せしたクオリティが、全てのプラットフォームで体験できることをお約束します。詳しいゲーム内容については今年の後半についてお話しできるでしょう」と、プレゼンの最後をCRYTEKのCEO & PRESIDENT, Cevat Yerli氏はこう締めくくっている。
■ 「Mass Effect 2」
銀河特務エージェント、シェパードの冒険は続く
日本では第1作が発売されたばかりのSF-RPG「Mass Effect」だが、早くも「Mass Effect 2」が発表された。リリース時期は2010年初頭。
今作でも、人類は絶滅の危機にさらされることになり、これに立ち向かうは、我が地球人初の銀河特務エージェントの主人公シェパード……というストーリーライン。「2」では、自殺行為にも等しいほどの難しいミッションに際して、銀河系内のならず共が招集される。それらが「2」から新追加となるキャラクターのようだ。これ以外のゲーム内容については、今回のプレスカンファレンスでは公開されていない。
ゲームの発売時期は2010年初頭。
【プロモーションムービー】 |
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■ 「Need for Speed Shift」
ドライバープロファイルシステムがあなたの運転傾向を評価してくれます!?
EAの人気レーシングゲームシリーズ「Need for Speed」の最新作が「Need for Speed Shift」だ。
EA GAMES LABEL EUROPEのSENIOR VICE PRESIDENT、Patrick Soderlund氏は今作は「Need for Speed」シリーズにおいて初の試みを3つほど行なっているのだという。
1つは開発期間をシリーズ最大級の2年間とし、さらに複数の開発スタジオのコラボレーションで開発したということ。
2つ目は、コクピット視界のリアリティの徹底追求。これは内装の細かい材質表現からガラス越しのドライビングビューのリアルさまでを指しており、Soderlund氏は、「実際に実車の運転席に座って運転したときの感覚と雰囲気を完全に再現する」とまで述べている。
3つ目はドライバープロファイルシステム。これは、プレーヤーの運転をあらゆる角度からシステム側が評価し、「どんなドライバーか」を判定しつつ、RPGのスキル成長システムのように育てていけるシステム。ドライバープロファイルシステムは、性格、レース成功率(順位、タイムなどによって判定される)、プロファイルポイント、バッジの4パラメーターからなる。このプロファイルシステムの成長の方向性により、乗れる車が変わったり、対戦時の敵AIの振る舞い、あるいはオンライン対戦時のマッチメイキングに左右するのだという。ちなみに「バッジ」とは、プレーヤーの成長とともに、システムが与えてくれる、その運転スタイルをアイコン化したワッペンのようなもの。
開発は人気レーシングゲーム「GT Legends」や「GTR 2」の開発元として知られるSlightly Mad Studiosの他、Black Box 、EA Games Europeの3社協力体制による。
登場車種は「Pagani Zonda F」、「Audi RS4」、「Porsche 911 GT3 RSR」を含む約70車種。なお、日本車では日産GTRが本作のイメージカー的に登場する。レーシングコースは「Willow Springs」、「Laguna Seca」を含む15個の実在サーキットの他、東京コース、ロンドンコースのような都市内架空コースなど多数を収録する。
また、車両物理エンジンは、これまでのどの「Need for Speed」シリーズよりもリアル表現にこだわり、実車の挙動にこだわった設計になっているとのこと。
発売は北米で9月22日。日本での発売は未定。
【プロモーションムービー】 |
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■ 「Brutal Legend」
音楽系バカゲーの新境地。ヘビーメタル世界観の魔界で中年ロッカーが大暴れ
ロックスターにあこがれる地方公演マネージャーのEddie Riggsが、コンサートステージにて不幸な事故にあって気絶。この怪我で流した血が魔法のベルトナックルに触れたとたんに世界が一変。なんとEddieはヘビーメタル音楽の音調と歌詞に彩られた魔世界にワープしてしまった……という突拍子もない内容。
ゲーム内容についての詳細はこちらの記事を参照して欲しいが、一言で言うならば、3人称スタイルのオーソドックスなアクションゲーム。ただし武器は「セパレーター」という名前の血みどろの斧と、悪魔の旋律を奏でるクレメンタインという名のギターなど。ギターの音を聞いた魔物はその音にしびれて消滅したり仲間になってしまったりと荒唐無稽で笑いを誘う。往年のへんてこ名作音楽フィーチャリングゲーム「ムーンウォーカー」(マイケル・ジャクソン主演)を彷彿とさせる。V8エンジン搭載の悪魔のハイパワーカー「ジュース」に乗ることができれば敵をひき殺しまくりの「カーマゲドン」的な大量虐殺も可能。よくある“どたばた”アクションゲームの文法をハードロック、ヘビーメタル世界に当てはめた作品という感じ。
今回のプレスカンファレンスでは、ゲーム内容の他、この作品の主要キャラクターの声優が明らかとなっている。
主役は「スクール・オブ・ロック」の主演で有名なハリウッドのコメディ俳優、ジャック・ブラック。ジャック・ブラックは自身がハードロックファンであるため、まさにこの役柄はハマリ役。この他、ジューダス・プリーストのロブ・ハルフォード、モーターヘッドのレミー・キルミスター、女性ハードロッカーの女王リタ・フォードなどが声を当てている。
もちろん、ゲーム中に流れるハードロック、ヘビーメタルの曲はすべてライセンス取得済みのホンモノの楽曲。
これだけスタッフと楽曲にホンモノのハードロック、ヘビーメタルにゆかりのある人を集めて制作したゲームなのに、なぜ音楽ゲームではなく、アクションゲームというシュールさもこの作品の特徴として際立っている。
発売は10月13日。プラットフォームはPS3とXbox 360の予定。「ゲームなんてものは軟弱」なんて考えているヘビーメタルやハードロックのコアなファン達も、本作のプレイはマストかも?
■ 「Fight Night Round 4」
世にも珍しい物理シミュレーションベースのボクシングゲームが登場
Microsoftの顔としてXbox 360を盛り立ててきたことで日本でも有名なPeter Moore氏。EA SPORTSに電撃移籍したときは驚かされたが、いつの間にかすっかり、EA SPORTSの顔が板に付いてきた感じがする。彼が登壇するなり、紹介したのはボクシングゲーム「Fight Night Round 4」(FNR4)であった。
「FNR4」は世界ボクシング史に残る著名選手が時代を超えて戦い合うというドリームマッチをゲームとして実現した作品だ。
「FNR4」の新要素は4つ。まず、1つ目はフレームレートが前作の30fpsから60fpsへ引き上げられたという点。
2つ目は、パンチによるダメージが完全な物理シミュレーションベースで計算されるという点。これは繰り出されたパンチがブロックで威力を低減させられたり、裁きによってダメージそのものを無効化させられたりすることをサポートするものになる。あるいは逆にカウンターに合わせればダメージを倍増させることも可能となる。
3つ目は戦略。ゲームに登場する選手で実在する選手については徹底的なリサーチを行ない、その戦いぶりをAIとして実装している。背の高いボクサーであるモハメド・アリはそのパンチのリーチの長さを利用して相手の射程外からの攻撃を優先する。マイク・タイソンはヘビー級としては小柄であるが、これを利用し相手の懐に入ってからの攻撃に重きを置く。本作ではこうしたロジックがちゃんと再現されているという。
4つ目は全てリアルタイムでダイナミックだという点。一般的な格闘ゲームのような事前に取得したモーションを、ただイベント的に再生するものとは違って、汗の吹き飛びからパンチとブロックの判定、受けたパンチによる体制の崩れや皮膚や肉体のぐにゃりと曲がる様までもがリアルタイムで処理される。
Moore氏がいうには「格闘ゲームのあり方に革命を起こす」とのことで、これまでのスクリプトベース、あるいはじゃんけん的なルールの3D格闘ゲームとは違ったプレイ感覚が楽しめそうだ。
発売は6月25日。プラットフォームはPS3、Xbox 360を予定。
【プロモーションムービー】 |
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さらに、おまけと言ってはなんだが、EA SPORTSの新しい格闘ゲームシリーズとして、実在する総合格闘技団体のMMA(Mixed Martial Arts)のゲーム化タイトルを2010年に投入することが予告された。ゲームの内容については一切公開されていない。
■ 「NCAA FOOTBALL 10」
WEBサービスを利用してマイ・フットボール・チームを作ろう
EA SPORTSでは、EA SPORTSブランドのゲーム内で使用できるユーザー制作ゲームコンテンツをWEBベースで作らせるシステムの提供を開始する。
その第1弾として提供されるのが全米大学フットボールを題材とした「NCAA FOOTBALL 10」向けのチーム制作ツール「NCAA FOOTBALL TEAM BUILDER」(以下、チームビルダー)だ。
このツールではチームロゴ、チームスタジアム、グラウンドデザイン、チームのユニフォーム、ヘルメット、靴下に至るまでがユーザー制作可能で、しかもWebブラウザベースで作業が行なえる。
操作はWebベースなので簡単。画面上に表示される希望のパーツをマウスで選んで組み合わせるだけでチームコンテンツをどんどん作り込んでいける。操作は簡単だが、組み合わせは無限なのだ。
制作したコンテンツはPCに保存し、さらにEA SPORTSサイトからアップロードすれば、ゲーム機の方への転送が可能。出先のPCで暇つぶしにチームを作っておき、帰宅後自宅でそのチームでプレイ……なんていう活用が流行りそうだ。
なお、この「チームビルダー」は、北米時間で6月2日より「TEAMBUILDER.EASPORTS.COM」より提供が開始されており、実際のゲーム本編の「NCAA FOOTBALL 10」は2009年夏のリリースを予定している。
「今からゲーム発売に向けてじっくりとチームを作りながらゲームの登場を待っていて欲しい」(EA SPORTS, SVP AND GROUP GM, Steve Chiang氏)。
■ 「MADDEN NFL 10」
インゲーム選手のトレードをiPhoneアプリで行なおう
WebベースのEA SPORTSゲームの支援システムは大人気プロアメフトゲーム「MADDEN NFL 10」にも提供されることも明らかにされた。その名も「MADDEN NFL 10 Online Franchise」。
このシステムを使うと選手のドラフト、プレーヤーの移籍、その他のチームマネージメントをWEBブラウザ上でできるようになる。さらにiPhone向けのアプリケーションも提供され、なんとiPhoneからもネット経由で「MADDEN NFL 10」のチームマネージメントが行なえるようになる。
「MADDEN NFL 10」本体は2009年夏発売予定で、このネット経由の支援システムはXbox 360版とPS3版に提供される予定。
「MADDEN NFL 10 Online Franchiseがリリースされると、アメリカ人はもう働かなくなるかも知れない……」という冗談はEA SPORTS, SVP AND GROUP GM, Steve Chiang氏の弁。
(2009年 6月 2日)