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逆風の中でも更に次を目指す「FFXIV」吉Pパッチ5.3インタビュー

「漆黒のヴィランズ」完結。すがすがしく終わったあとには「うわー」という展開が!

8月11日 実装予定

 スクウェア・エニックスは、プレイステーション 4/Windows/Mac用MMORPG「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ(以下、FFXIV)」の最新アップデート、パッチ5.3「クリスタルの残光」を8月11日に実装する。今回のアップデートは、新型コロナウイルス感染症の影響で、当初予定されていた6月16日からり約2か月弱の遅れとなった。

 現在もリモートワークでの開発が続いているが、プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏は、公式フォーラムへの投稿で、今後のアップデート間隔には遅延がないと解説している。

 今回は、Zoomを使ったリモートインタビューで、吉田氏からパッチ5.3や、感染症対策に関しての詳細を聞いてきた。

【ダンディ化した吉田直樹氏】
【クリスタルの残光】

「転んでもただでは起きない」リモートワーク移行でQOLも作品の質もアップ

――最初に、新型コロナウイルス感染症で開発がリモートワークに移行していることで、どのような影響がでているかについて教えてもらえますか。

吉田氏: 新型コロナウイルス感染症の影響で全員が自宅待機になってから、2週間ぐらいは会社側も方針を決めたり、新たな業務インフラを構築するために、ほぼ全員の仕事が止まっている状態だったのは事実です。

――その段階で2週間は確実に遅れがでたんですね。

吉田氏: そうですね、僕は取締役としての仕事はしていましたが、開発は基本的に全部署が完全停止に近い状態でした。その間に第三開発事業本部ではコアメンバーを中心に、PCスキルの高い人たちにノートPCを優先配布し、まず自宅にいながらノートPCを使って、会社のPCを外部からコントロールして開発するリモートデスクトップを試しました。ただこれはネットワーク環境にものすごく左右されるものです。特にDCCツールと呼ばれる開発用のグラフィックス系ツールでは、フレームレートが5fpsとか15fpsしか出ない状態が多く、マウスカーソルが追えない、モデルを回転させながら作業をしたいのに回転のフレームが飛び過ぎて困難だ、など、そういった検証からスタートしました。

 そこで、開発用の高性能PCを自宅へ持ち帰ることができる人は持って帰ろうと、かなり早くに決断しました。最悪の場合、ネットワークに繋がらなかったとしても個人作業はできるからです。しかし、その一方で決断しただけではダメで、今度は輸送を手配する必要があります。物流も大混乱していたため業者さんを探していると、時間がかかりすぎてしまいます。そこでローテーションを組んで、安全性を確保したうえでタクシーやレンタカー/マイカーでの輸送を行いました。もしPCが壊れたら買い替えるしかないという覚悟で、ひとまず自宅に持って帰ってもらって、セットアップを行い、個別問題があればその後でしらみつぶしにしていこう、と。

 自宅にPCを持ち帰ってもらっても、ネットワークセキュリティ的に、通常のインターネット回線で会社のサーバーにログインするわけにはいきません。安全なVPN回線が必要です。トークンによるVPN接続では数に限りがあるため、インフラチームに急遽新しいVPNシステムを作ってもらって、チームの有志でテストをして……と、この辺りまでで4週間くらいでしょうか。

 ただ、データワークは再開できていたので、インターネットを遮断して個人作業をしつつ、ファイル共有サービスを使って会社にデータをあげて、会社に何人かいるメンバーでそのデータを会社の共有サーバーにあげてという作業をリレー式にやったりもしました。最初の1カ月くらいはだいたいそんな感じでした。

――かなり大変な状況だったんですね。

吉田氏: その間も手をこまねいていては損失が大きくなるので、個人のネット環境を調べてもらうためのマニュアルを作ったりもしていました。「こういうテストをして欲しい」、「回線スピードがこうだった場合、使ってるのがIPv4なのかIPv6なのかを確認して欲しい」といった感じで。「IPv4とIPv6とは何か?」というマニュアルも全部作って、全員このフローに従って自宅回線のチェックをしてもらいました。

 殆どのISP(インターネット回線業者)で、IPv4からIPv6への変更は、追加料金無しの申請するだけで切り替え可能な状況です。ですので、基本的には全員自宅回線をIPv6にしてくれと。後は電気代がどうとか、家庭内の契約アンペアは幾つなのかなど、アンケートで潰していって、だいたい1カ月を過ぎた頃には、デバッグ以外は殆どの開発メンバーが社内の開発用サーバーにログインして、効率は落ちるけど、なんとか開発を続けられる、という状況になりました。

 デバッグを行なうQAチームは、アルバイトとして働いている人も多いので、全員にPCを持ち帰ってもらうわけにはいきません。そうなると出社していただく必要がありますが、緊急事態宣言が明けるまで、それは難しい。さらに、明けたとしても感染予防のため、ソーシャルディスタンスを守るために、1人2mの間隔を保ったままデバッグしていただくことになります。当然今まで以上に作業面積を用意しないと大規模チェックができません。こういった準備、徹底にも別途時間を要しました。

 あとはメンタル面や物理環境面ですね。どうしても最初は在宅勤務に慣れなかったり、お子さんがいるご家庭だと託児施設もすべて閉まっていたので、奥さんと交互にお子さんの面倒を見ることになり、業務に集中しづらいなど、状況は様々です。緊急事態宣言が明けたあと、希望を確認して「社内で集中して業務に当たりたい」という方は、安全対策をして出社してもらっています。今はそれらが綺麗に解消でき、「FFXIV」関係者の9割くらいが在宅勤務を維持しつつ、開発出力は以前の状態にほぼ戻りました。確かにパッチのスケジュールでいうと2カ月弱という遅れになっていますが、開発と運営、宣伝チームの環境としては90%以上復帰しています。

 たしかに2カ月弱の期間をロストしてしまったのは事実です。ただ、「FFXIV」チームとしては転んでもただでは起きないぞの精神で、この2カ月は『強制的に働き方の進化を促された期間だった』と考えるようにしました。9割以上の人が在宅のまま、開発スピードとしてはほぼ元に戻ったので、ここから先のパッチは今まで通りの3.5カ月間隔ぐらいで、例えば5.3から5.4の間がまた極端に開くということは、再び緊急事態宣言が発令されるなど、非常事態にならない限り、もうないという自信があります。

 リモート開発で、どこからでも「FFXIV」の開発や運営に参加できるという体制が整っています。例えば大阪とか東北とか北海道で、どうしても地元を離れるわけにはいかないんだけど「FFXIV」の開発に参加したいという人達が普通に働ける環境ができました。例えば、仕事のために東京に住んでいるけど、本当だったらもっと土地が安い所に引っ越して、ガレージでバイクを組み立てながら開発したかったんだよなっていうスタッフが実際にいるんです。今後これが制度として運用できれば、働き方が大きく変わります。

――今後はこの形をスタンダードにして行こうと思われてるってことですか?

吉田氏: 開発に参加した初期の頃は、最初のトレーニングだけはフェイス・トゥ・フェイスの方が早いですが、それもリモートでやれなくはないと思っています。実際、バトルコンテンツのチェックもみんな在宅環境でやっています。僕は会社に出ていますが、みんなでZoomに入って、ああでもないこうでもないと言いながらやっています。効率はかえってよくなったかもしれないです(笑)。

日本だけでなく、世界からも開発に参加できるようになったのはすごくいいところですし、首都圏の通勤を考えると片道1時間近くはかかってしまうと思いますし、仮に通勤時間が短いとしても、ものすごい混雑の中を乗り換えで移動しなければいけないことで受けるストレスは大きいと思います。24時間の中から往復2時間が浮いて、その2時間を運動したり、家族との生活にあてたり、自己研鑽に使ったりすることは、最終的にはパッチの品質に跳ね返ってくると思います。だから、そこはポジティブに考えようと。アンケートを取っても、もう在宅のままがイイです!という声が多くて、「よかった」という単語は状況的に使いにくいですが、「FFXIV」の開発としては進化したと思っています。

――いま発生している2カ月の遅れはどうなりますか?

吉田氏: ここから先、この2カ月弱の遅れを取り戻せるかと言うと、取り戻そうとするとかえってよくないと思っています。開発にも運営にも「取り戻さない」という話をしました。遅れを無理に取り戻そうとすると、パッチとパッチの間のスケジュールを詰めていくしかありません。そうなると、当然ですが、予定してたコンテンツを無くすしかない。結局クオリティが落ちるんです。

 計画していたメジャーアップデートの1つをキャンセルするという方法もあるんですが、これはテレビドラマシリーズで数年がかりで計画してたものの1話をまるごと抜いてしまうようなものなので、どうしてもシナリオが駆け足になってしまったり、本当は語らなければいけないエピソードが語られなくなってしまうので、結果ダメージになると思っています。

 パッチのスケジュール間隔は取り戻せたので、この2カ月に関しては、進化のために必要だった2カ月だったという考え方にしようと。得たものも大きいから、焦って間隔を縮めて元に戻そうとするのではなく、単純に全体を2カ月ぶん後ろにずらし、その代わり間隔はしっかり取り戻そうという形で進めています。

――北米のファンフェスは中止になってしまいましたが、12月に予定されている名古屋ファンフェス開催については、いつ頃決定されるんでしょうか?

吉田氏: どんなに遅くても7月中には、皆さんに予定通りの開催が可能かどうか、お知らせすることになるかと思います。今本当にぎりぎりの状況で、会場や代理店とも仔細を詰めているところです。

 ただ、先週末からの首都圏の新型コロナウイルスに感染されている方の増え方を見ていると、イベントに対して、より厳しい行政指導が入る可能性があると思っています。いまは収容人数の2分の1を守ってくださいということになっていますが、それが3分の1になってしまうとか、そういうことがでてきてもおかしくないと予想しています。

新型コロナウイルス感染症の影響を受けて北米はすでに中止された

 もともと「FFXIV」のファンフェスはアクティビティを沢山置いて、参加型として楽しんでいただくという形をとってきました。それをもしそのまま今回も実施した場合、待機列スペースを非常に大きく取る、プレイヤーが触った機材は、1回ごとに消毒させていただくなど、単位時間あたりに遊べる人の数も減ってしまいます。そうなると「FFXIV」というお祭りを皆さんも僕らも楽しむというところに合致しなくなると思うんです。

 ですので、ファンフェスの在り方やコンセプト自体を変えていくことになるかもしれません。ただこれも、影響を受けたから制限するというのではなく、進化させていくという気持ちです。仮にですが、もし年末のファンフェスがキャンセルになったとしても、開催を諦めているわけではなく、何らかの形で日を改めてやっていければと思っていますので、もしキャンセルになったとしてもあまり悲観的にはならずにいていただけたらなとは思っています。ただ、ぎりぎりまで粘りたいと思っているので、見極めにはもう少しお時間をください。

――オンライン開催という可能性もありますか?

吉田氏: もちろん検討しています。これまでのファンフェスは、すべてオンラインで中継もしていましたし、もともとオンライン開催だったのではという考え方もありますしね。

完結編は綺麗に終わったあとに「うわー」という展開に

――今回完結編ということですが、パッチ5.2までの内容だと、一体何が完結するのだろうというところがあるのですが、今回どういった部分が完結することになるのでしょうか?

吉田氏: これまで「FFXIV」としては「蒼天のイシュガルド」、「紅蓮のリベレーター」という2回の拡張での完結を描いてきました。拡張の物語は1回ごとに綺麗に終わりますというところを言ってきたと思いますが、今回もそれにあたると思っていただければ。ただ、今回は第一世界という、今までとは大きく違う場所が冒険の舞台でした。いよいよ、物語の終わりと共に、自分たちの世界に帰らなくてはいけない。「別れ」が大きなキーワードになるので、そういう意味では物語が終わるという感覚は今までよりも強いと思います。

特に「漆黒のヴィランズ」では、改めて暁のメンバーの目的や物語にフォーカスすることで、暁のメンバーを本当の意味で光の戦士の仲間にするということを主題としてやってきました。そのため、今回は彼ら1人1人が第一世界に別れを告げるという部分をちゃんと描きたいということもあり、ストーリーがかなり長くなっています。ボイスもかなり多いですし、クエストとクエストの間のヒントトークも丁寧に書かれているので、徹底して見ようと思ったら、メインストーリーだけで1日が終わってしまうと思います。あまり他のことをやらずに、ぜひ集中して遊んで頂けると嬉しいです。

第一世界との別れがくるのか?

――ゾディアークとハイデリンの関係もここで一度カタがつくことになるんですか?

吉田氏: いいえ、それはないです。カタが付くという単語は人によってとらえ方が違うと思っています。ハイデリンもゾディアークも、もうすでにメインシナリオで明かされている通り、最古にして最強の蛮神であるので、彼ら自身の意思というより、それを召喚した人たちの意思によって根源が作られています。それを作った人たちの想いみたいなところは一旦完結すると思います。でもなぜ2体になってしまったのかとか、そもそもハイデリンとゾディアークは今どうなっているんだということは、当然今回のパッチだけでは決着しないので、その辺りが今後どうなっていくのかが見どころになるかと思います。

――その辺りは今後のアップデートで語られるということですか?

吉田氏: 今の物語をハイデリン・ゾディアーク編と呼んでいますが、そこの完結に向かっていよいよ……という感じではあります。今回もほんの少しだけ描かれているので、今回のメインストーリーがすべて終わったら、「うわー、たいへんなことになりそう」みたいな感じになると思います。

――前回辺りから、ガレマール帝国が描かれる割合が増えていますよね。それと第一世界での話はベクトルが違っていると思いますが、ガレマール帝国についてもパッチ5.3で綺麗にまとまるんですか?

吉田氏: ガレマール帝国の動向も5.3でさらに知れることになります。セイブ・ザ・クイーンの「南方ボズヤ戦線」と「ウェルリト戦役」は、それぞれの軍団を率いている軍団長は違いますが、どちらもガレマール帝国を中心とした物語です。かつ1人彷徨っているゼノスもガレマール側の人間です。これらは徐々に集約してくることになりますが……そこはぜひ、隅々まで物語をご堪能ください。メインシナリオは、綺麗にまとまると思います。

ゼノスの謎も解けるだろうか?

第2弾からはどんどん「ニーア」に寄せていく

――新しいアライアンスレイド「人形タチノ軍事基地」ですが、新しいギミックもたくさん出てくるそうですが、まずはみどころを教えてください。

吉田氏: 第1弾は、「FFXIV」のルールの中に「ニーア オートマタ」が融合していたと思いますが、第2弾からは「ニーア オートマタ」と「FFXIV」が半々ぐらいになっています。

――今以上に「ニーア」に寄せていく感じですか?

吉田氏: 全体の計画を立てた時に、最初から全部「ニーア」にしてしまうと混ざり具合がおかしくなってしまうので、徐々にと計画してましたが、そろそろタガが外れ始めます。特に今回は、「ニーア オートマタ」をプレイされた人にとっては、今回の第二弾のアートワークを見て、「えっ、バンカー?!」という反応だったと思います。リソースにもかなりこだわっていて、特に「ニーア オートマタ」を開発したプラチナゲームズさんからは、丁寧にリソースを頂いていますのでクオリティにもご注目ください。

「人形タチノ軍事基地」は「複製サレタ工場廃墟」よりも更に「ニーア」世界に寄せてくる

――ヨコオさんと開発とのアイデアのすり合わせはどんな形でやられているんですか?

吉田氏: 僕らは最初、ヨコオさんは「こういうことをやりたい!」というこだわりが最初にあって、それを再現するためにみんなで力を合わせようという仕事のスタイルなのかと思っていたんです。でも実は全然違っていて。ヨコオさんは、最初に「できることとできそうなこと」を全部知りたがる方なんです。僕もちょっと似てるんですが、どちらかと言うと、制限の中から、「だったらこれをやれば驚くよね」、とか、「リソースがこれしか作れないのなら、何周もできる話を作ればいいじゃない」といったように、そこから遊びを作っていく方でした。無理にプレイヤーに衝撃を与えたいわけではなくて、できることを全部組み合わせた上で、「だからこそ、これを壊して見せたらびっくりするでしょ」と、そういうゲームデザインをされる方なんです。

 チームとしては、最初から「これはできません」とあまり言いたくはない。その一方で、「どんどんやりたいことが出てきたらどうしよう」と、最初はある意味ちょっと戦々恐々としていたんです。だから「FFXIV」の現場でも「ヨコオさんに、まず何ができるかをすごく聞かれるんですよ」と面食らっていました。言ってもらえれば新しい仕組みを用意できるかもしれないのに、と「FFXIV」チームは言うんです。でもヨコオさんは、枠組みをしった上で提案をする、その上でどうしても制約を飛び越える必要がある、という結論になったら、その部分だけ頑張ってほしいです、と。そのやり方に慣れるまで、開発は結構戸惑ったのではないかなと思います。ただ、ヨコオさんご自身もすごく「FFXIV」チームをリスペクトしてくれるので、うまくキャッチボールができるようになってからは、かなりのペースで進んでいます。今はもう第3弾の開発もかなり進んでいますが、すごい速度だなと思って横から見ています(笑)

――前回はバトル以外に探索要素がありましたが、今回「ニーア」に寄せていくということで、またああいった要素が増えていきそうですね。

吉田氏: まあ、タダでは起きない方でもありますし(笑)。色々できると分かれば、できるかぎり限界までやろうという感じはあります。ただヨコオさんも作り手として、最初にプレイヤーの方に驚いて欲しいと思っていらっしゃるので、事前のインタビューやPLLでどこまでお話しするか、僕がずっと悩んでいます。

――遊んでみてのお楽しみということですね。

吉田氏: はい、すみません(苦笑)。前回は、9Sに見える少年が気を失っているところで終わっているので、彼がどう動くのかとか、そもそもなぜこんな状況になっているのかという疑問にはいよいよ本格的に踏み込んでいきます。もともとの「ニーア」ファンはもちろん「FFXIV」から「ニーア」を知ったという人も、もちろん「ニーア」を知らなくてもストーリーとして楽しめます。バトルも結構めちゃくちゃになってきてますので、ぜひ楽しんでください。

「南方ボズヤ戦線」は大人数での砦攻略

――「セイブ・ザ・クイーン」ですが「南方ボズヤ戦線」は中間パッチでの実装になるんですね。

吉田氏: そうです。パッチ5.35での公開を予定しています。今週末に僕も参加しての最終確認をした後、バランス調整まで終えて、少し寝かせておくということになります。規模が大きいので、パッチ5.3の最初に実装してしまうと、やることが多すぎることになって勿体ないからです。

――そんなに大規模なコンテンツになるんですか?

吉田氏: 「エウレカ」のスタート時よりも大きいです。また、エウレカでのフィードバックも生かして、当然あれよりも作り込まれています。

――「エウレカ」は今また賑わっていますね。

吉田氏: 「禁断の地 エウレカ」シリーズは、ゲーム内ゲームとして独立したレベルがあって、外界とは関係なく遊べるというコンテンツだからこそ息が長いと思っています。今回の「南方ボズヤ戦線」は、遊び方はがらりと変わっていますが、「ゲーム内ゲームという感覚」はエウレカととても似ています。

――装備強化以外に、レベルを上げていくような要素があるということですか?

吉田氏: そうですね。「南方ボズヤ戦線」の中でのみ成長する「レジスタンスランク」という要素があります。また、レジスタンス活動でのみ使える「ロストアクション」という概念も存在しています。「エウレカ」ではエレメンタルレベル上げもパーティを組まないとなかなかたいへんだったと思いますが、今回はソロでも気軽にランクを上げていけるようになっています。

 「エウレカ」の時には、F.A.T.E.でレアモンスターを沸せて狩るという、第一世代MMOの遊びを強く取り入れましたが、今回はもっと明確な大目標があり、それが「砦落とし」です。広いフィールド内で戦況がいろいろと変わります。その戦闘に参加して戦果を挙げ、ランクを上昇させてよりランクの高い戦闘に参加していく。その集大成として、「砦落とし」がある、といった感じになります。戦闘はイベント式になっており、常に多数発生する”スカーミッシュ”と、一定条件をクリアすると発生する、より戦略的なバトルが必要になる”クリティカルエンゲージメント”という2種類が存在します。スカーミッシュは発生頻度の高いF.A.T.E.で、クリティカルエンゲージメントは、今回用に開発した新しいイベントバトルのシステムになっています。

――戦況によって、色々なクエストが発生するようなものなんですか?

吉田氏: クエストというか、フィールド内コンテンツというか……完全に新しい仕組みです。とても良くできていますし、敵の武将との一騎打ちなど、かなりやり込み要素の強い、バトルコア層向けのクリティカルエンゲージメントもあります。カジュアルプレイヤーから、超ハードコアプレイヤーまで、幅広くプレイしていただけるかと思います。

――武器強化の方はどんな形になるのですか?

吉田氏: 武器強化は、もともとゾディアックシリーズなどを2回やってきた中で、もう作る方もネタ切れが強くなってきて、プレイする皆さんからも「飽きてきた」というお声を頂戴していました。ですので、前回は「エウレカ」という新コンテンツを遊んでいれば、結果的に武器も強化できますよ、という新しい形にしました。でもフタを開けてみると、「ソロで武器を強化しづらい」「コツコツやりたかった」「前の方が良かった」というお声も結構多かったのです。それを踏まえ、今回の武器強化はルートが2つに分かれています。

 まず「セイブ・ザ・クイーン」第二章である「南方ボズヤ戦線」のストーリーを序盤まで進め、そこで発生するレジスタンスウェポン強化クエストを受注すれば武器強化が始まります。ですので最初の一本目は、ストーリーを進めつつ強化をしていくことが可能です。

 また、レジスタンスウェポンの強化に必要なアイテムは、「南方ボズヤ戦線」の外でも得られるようになっています。当然、「南方ボズヤ戦線」の中でも強化に必要なアイテムを得ることができます。この二つのルートのアイテムは、同じものではありません。この二つのルートでの強化は、多少効率は違いますが、「南方ボズヤ戦線」は、「ストーリークリアだけでいいかな」という方は、コンテンツの外での強化を目指していただければと。

いよいよ南方ボズヤ戦線へと赴くことになりそうだ

――外の強化は、輝き集めとかアートマとか、そういうようなタイプのコンテンツになってるんでしょうか?

吉田氏: なにとは言わないですが、近いかな……(苦笑)。

――ちなみに「南方ボズヤ戦線」では属性はなくなっているんですか?

吉田氏: ないです。コンテンツタイプとしては似ていますが、「エウレカ」とはまったく別ものになります。どうしてもエウレカのイメージがあると思いますが、まったく別のコンテンツですので、ご注意ください。

――いまはまた「バルデシオンアーセナル」が人気ですが、ああいったコンテンツはあるんですか?

吉田氏: 「バルデシオン・アーセナル」自体の遊びはよかったと思っていますが、ただ、「準備に手間がかかりすぎる」、「他者の協力必須が辛い」などのお声もいただきました。エウレカのバルデシオンアーセナルは、「エバークエスト」や「FFXI」のようなレイドをイメージして作っているので、ほんの数人のために何パーティもの人が協力して頑張るようになっていますので、あれは意図的にそうしたものでした。もちろん、それが辛い、というお声も理解できるのですが、だからこその面白さもあると思っているのです。

 翻って今回は、その「大規模戦闘でのレイド的な面白さ」をより生かすことにして、パッチ5.4では「セイブ・ザ・クイーン」にも、エウレカでいう「バルデシオンアーセナル」に相当する遊びを用意します。こちらは事前準備があまり必要な作りではなく、みんなで大規模にレイドをやる、という新しいコンテンツタイプとして今開発を進めています。まだ少し先ではありますが、今後もセイブ・ザ・クイーンは、発展していきますので、ぜひ楽しんでもらえるといいなと思っています。もちろん、松野さんが描くストーリーも、物凄く力が入っており、読むのが好きな方は、涎が出ると思いますので、そちらにもご期待ください(笑)。

「FFXV」とのコラボイベントは5.3以降のどこかでリバイバルするかも

――新生エリアの改修について、フライング対応にするために大変だったところなどを教えてもらえますか?

吉田氏: そもそも新生エリアは「旧FFXIV」のアップデートをしながら、並行して約2年という短い期間で、色々なものを詰め込みつつ、かなりの速度で制作を行いました。そのため、かなり効率的に作られているんです。

 具体的に言うと、例えば建物の屋根には、プレイヤーキャラクターが、「地上を歩いている」というステータスの時のみ移動可能、という処理が行われています。これはMMORPGには『登山』という楽しみ方があって、プレイヤーが登れそうなコリジョンを見つけて、色々なところを登っていく。プレイヤーが発見する遊びだから、とお願いして作った処理でした。ですので、新生エリアの屋根の上にも移動可能な床は用意されています。しかし、今ご説明した通り、「プレイヤーキャラクターが地上判定の時のみ有効」という処理です。つまり、フライングマウントに乗った状態だと、「フライング中という判定」になるため、せっかく移動可能な判定があるのに、フライングマウントでは屋根に降りることができない、ということがわかりました。

 広大な新生エリアのすべての屋根の上を作り直すのは膨大な作業になってしまいます。ですので、プレイヤーの皆さんが、「登ってみたい」と思うであろう個所に絞って対応を行い、そもそもフライングマウントで上から見られたり、近距離で見られることを想定していない場所は、透明なボックスで覆い、近づけないようにしましょう、と。ところがこの方針は、作業者個人の感性に依存するところが大きく、その判断や対応は終盤までかかりました。最初からフライングが想定されているエリアとは作り方が違うので、どうしてもアラが目立ちやすいわけです。

 また、多少のキャラクターめり込みを許容とするか、NGとするかの線引きもかなり難しかったですし、幾つかそういう粗は残るかもしれません。これらは今後のパッチでも少しずつ手を入れていくことになるかなと思います。でもそのぶん、飛べるとやはりすごく気持ちがいい(笑)。7年くらい抑圧されていたものが開放された感がありますね。

――現在遊んでいるプレイヤーはすぐに飛べるようになるということですが、今後新規で始めた人はどうなるのですか?

吉田氏: 新規でFFXIVをプレイされている方の新生エリアフライング開放条件は、メインクエスト「究極幻想アルテマウェポン」のコンプリートになっています。三国が戦時下で、帝国の侵略にあっているので飛べない。しかし、シナリオ上帝国の脅威を取り払った後、飛べるようになりましたという立て付けになっています。

――制空権が回復したので、飛べるようになるわけですね。

吉田氏: 新規の方は、メインクエスト「究極幻想アルテマウェポン」のコンプリートまでは飛べませんが、周りの先輩ヒカセンが飛び回っている様子を目撃することになります。「俺も早く飛びてー!」と思ってもらえると思うので、ゲームを前に進める動機としてもより良くなるのではないかと思っています。

――今回、傘がかなり増えるそうですが、今回はどんなところで手に入るんですか?

吉田氏: 「イシュガルド復興」でも手に入りますし、「南方ボズヤ戦線」にもあります。全部で8種類くらい存在し、今回は和装に合いそうな番傘もあります。色んな所にありますね。

新生エリアが飛べるようになる

――「ドラゴンクエストX」とのコラボイベントがリバイバルされますが、「FFXIII」や「FFXV」のコラボイベントを開催する予定はありますか?

吉田氏: 「FFXV」リバイバルのご要望がかなり多いのは実は意外でした。開催してからあまり期間が開いてないためです。それだけ新規の方がものすごく増えているんだなと、改めて実感させられました。今のところ予定はしていなかったのですが、考えた方がいいかなとは思っています。パッチ5.3がリリースされると、色々なシーズナルを一気に動かせるようになるため、しばらくは予定が埋まっています。ですので、一旦計画してる新しいシーズナルを開催しつつ、その合間のどこかで考えていこうと思います。

PS5のスペックは世界を広げるために使いたい

――いよいよ、PS5が発表されました。今まで何かをやるならPS5と言っておられましたが。

吉田氏: 「PS5が」とか「PS6くらいじゃないと!」という持ちネタだったんですが……(苦笑)

――これでネタにできなくなりましたね。PS5について、対応するとしたらゲーム的にやってみたいことはなんですか?

吉田氏: 例えばよく言われるのが「レイトレーシング」ですが、光の反射なので、「FFXIV」のように反射素材が少ない純ファンタジーは対応しても効果がやや薄いんですよね……。FPSで限られた空間内、かつ反射素材が多い、というのであれば、メチャクチャ効果的なのですが。MMORPGという世界でPS5のスペックをつかうのであれば、より世界を広くしたり、描画対数を増やした遊びをもっと追求していったほうが面白いんだろうなと思っています。

――もしPS5版が発売されるとしたら、PS4版発売の時にあったような乗り換えキャンペーンはありますか?

吉田氏: PS5にはPS4のタイトルが後方互換できる機能があるので、若干当時とは状況が違います。PS4のプレイ権はPlayStation 4版のパッケージやダウンロード版を購入いただいた費用によって付与されるのですが、これをそのままPS5版のプレイ権とした場合、日本の法律上問題ないかなど、細かくチェックする必要があります。日本の戦後につくられた、消費者をまもるための法律が、今のビジネスに合致しないものがあって、景表法もそうですが、欧米に比べて日本はややビジネスを発展させにくくなっていますね……。

――去年の11月にロンドンに行った時、フィル・スペンサ―さんから、「ヨシダサンと話をして、Xboxで『FFXIV』を出すよ」と聞きました。日本人として期待しているんですが、どうなっているんですか?

吉田氏: もちろんお話はしていて、特にフィルさんとはもう3年半くらい対話をさせてもらっています。フィルさんは大体半年に1度くらいはスクウェア・エニックスにいらっしゃるので、メールでも直接対話でもかなりたくさんお話ししていますね。

 最初に話した時には、まだXboxのクロスプラットフォームプレイポリシーが非常にガチガチで、まだ「ユーザー囲い込み」がベース戦略だった時期でした。

 「デバイスはあくまでデバイスであって、大事なのはコミュニティがどう広がるか、コミュニティが何を選択するのかということだ」と、この辺りが対話の最初のきっかけでした。それからも会うたびにそういったお話をしてきて、今に至ります。この間に、これらのポリシーにより強い賛同をしてくださり、色々なレギュレーションを、フィルさん自らが「FFXIV」のために変更したり、我々が困らないように周囲へ指示をしてくれたり……。だからフィルさん、「いつでもウェルカムな準備が出来た!吉田さんとも話している!」というのは、まさしくその通りです。

 今の「FFXIV」はDirectX 11ベースのゲームですので、PC版を発展させていくにしても、どこかでDirectX12対応をやらなくてはいけません。そのあたりも積極的にアドバイスや、協力しますと言ってくださっています。続報がありましたら、キチンとお知らせさせていただきます。

 もちろん、僕たちは旧「FFXIV」を立て直し、PS3版のリリースをお待ちいただき、それから今日まで非常に手厚いサポートを続けてくださった、SIE(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)の皆さんにも大変な恩義があります。僕にとっては、各パートナー企業の皆さんも、とても大切なお客様ですので、失礼のないように、しっかりとこれからのビジネス拡大に取り組んでいくつもりです。

――最後にパッチ5.3を期待しているファンにメッセージをお願いします。

吉田氏: 冒頭で新型コロナウイルスの影響について話をしましたが、「FFXIV」の開発・運営という意味ではこの2カ月弱を頂いてチーム自体は進化ができたと思っています。まずはこれをパッチ5.3でお届けしたうえで、この先のパッチで、例えば開発規模が日本中に広がって、スタッフ1人1人のライフワークバランスの向上をクオリティに反映していきたいです。パッチペースも元に戻るので、しっかりと開発や運営をお見せすることで、「FFXIV」ってすごいな、ということを再度実感していただけるように、頑張りたいと思います。何より、それがここまでパッチリリースをお待ちいただき、絶えずご声援をくださっている、プレイヤーの皆さんへの恩返しだと思っています。

 当然既存のプレイヤーの方に向けたものだけではないです。新生エリアのフライングマウント対応や、クエストの改修だったり、システムのテコ入れも、ものすごい数がパッチ5.3に詰まっています。多方面に膨大なコンテンツと進化スピードが詰まったパッチになっています。本当にたっぷり遊べるパッチになっていますので、お友達やご家族などお誘いあわせの上で、この夏はぜひエオルゼアに遊びにきていただけると嬉しいです!

――ありがとうございました。