ニュース

【必見! エンタメ特報】「劇場版 マジンガーZ / INFINITY」レビュー

ロケットパンチ! ブレストファイヤー! 思わず一緒に叫びたくなる戦闘シーン

1月13日より公開中

 「劇場版 マジンガーZ / INFINITY」が1月13日より公開されている。筆者はこの映画の公開を待ち望んでいた。以前、バンダイより発売される「メタルビルド マジンガーZ」のインタビューで、劇場版マジンガーZをデザインしたメカデザイナーの柳瀬敬之氏から、「劇場版 マジンガーZ / INFINITY」がいかに力を込めて作られた作品かを、聞かされていたのだ。

2月発売の「メタルビルド マジンガーZ」。インタビュー時のお話で、映画がとても見たくなった

 柳瀬氏、そして商品担当のバンダイコレクターズ事業部の佐藤央氏のインタビューでは、映画に関しての話も多く出た。映画スタッフがマジンガーZにいかにこだわり、アイディアを出し、柳瀬氏がその想いやコンセプトに対しデザインでどう応えていったか……商品はもちろんだが、映画もとても見たくなった。そして公開されたPVはその期待をさらに膨らませてくれた。

 「劇場版 マジンガーZ / INFINITY」はマジンガーZファンはもちろん、ロボットファン全般にオススメの劇場映画である。マジンガーZ、グレートマジンガー、そして機械獣、もちろんボスボロットにも制作者達の愛が溢れている。キャラクター性の強い「マジンガーZ」のロボット達が、思いっきり動き、戦うのだ。映画の感想と、オススメポイントを語っていきたい。

【「劇場版 マジンガーZ / INFINITY」予告編1】

これぞマジンガーZ! 機械獣軍団相手に大暴れする戦いをぜひ見よう!

 「劇場版 マジンガーZ / INFINITY」は、アニメ「マジンガーZ」及び続編の「グレートマジンガー」での戦いから10年後の世界が描かれる。マジンガーZ、グレートマジンガーの活躍で未曾有の危機から脱した人類は、新エネルギーである「光子力」を平和的に活用することで、復興の道を歩んでいた。

 その中で戦士として戦ったマジンガーZのパイロット・兜甲児は科学者として光子力の研究を続けており、パートナーの弓さやかは新光子力研究所所長として活躍、弓弦之助教授は日本の首相を務めていた。剣鉄也は軍人となり、ボスはラーメン屋を開業するなど、かつての仲間達は皆新しい道を見つけ、新しい生活を開始していた。

平和な世界で科学者として光子力を研究する道を歩む兜甲児

 そんな中、光子力を生む新元素ジャパニウムが採掘できる富士山の地中深くで“遺跡”が発掘される。それは全高600mにも及ぶ、巨大な「魔神」だった。そしてその中から少女の姿をしたアンドロイド・リサが現われる。彼女はインフィニティと名付けられた巨大魔神のコントロールユニットのようだ。彼女は甲児を慕い、インフィニティの研究を手伝うこととなった。

 しかしその平和は巨大な影によって脅かされる。死んだはずの悪の科学者、Dr.ヘルが幹部であるブロッケン伯爵、あしゅら男爵、そして機械獣軍団と共に謎の復活を遂げたのだ。Dr.ヘルは機械獣軍団と共に日本を急襲する。彼らの目的はインフィニティ。Dr.ヘルはなぜ復活したのか、インフィニティを使って何をしようとしているのか? 人類の危機に、兜甲児は再び立ち上がる!

富士山中より現われた大魔神インフィニティ
インフィニティの制御ユニットであるリサ。彼女はなぜ人の姿をしているのだろうか

 「マジンガーZ」は1972年、“人が乗り込むロボット”を描き、当時の子供達に大きな衝撃を与えた。何者も寄せ付けない無敵の「超合金Z」で作られ、超科学により様々な必殺技を駆使し、そして知恵と勇気、仲間との力で強力な機械獣と戦うマジンガーZと兜甲児の姿は大人気を博し、その後の作品にも大きな影響を与えた。マジンガーZは、ロボットアニメ史にその名を残す大きな存在だ。

 「劇場版 マジンガーZ / INFINITY」はそのマジンガーZを“復活”させるべく制作されたアニメ映画である。物語の設定、キャラクターは明確にかつてのアニメから引き継がれており、10年の時を越えて復活した宿敵・Dr.ヘルと兜甲児の対決が繰り広げられる。

 マジンガーZは原作者である永井豪氏のリメイク作品が作られているし、オマージュした作品となれば膨大な数に上る。「劇場版 マジンガーZ / INFINITY」はそれらの作品だけでなく、全てのロボットアニメに“挑戦”するような気合いで作られた作品であるといえる。映画を見ることで制作者のマジンガーZへの、ロボットアクションへの強い想い入れが伝わってくる。“極上のロボットアクションエンターテイメント”を目指した作品なのだ。

 そのスタッフ達の気合いが爆発するのが、マジンガーZが機械獣軍団に立ち向かうシーンである。空に、地に、視界を覆い尽くす膨大な機械獣軍団。兜甲児が駆るマジンガーZは恐れることなくその軍団に立ち向かい、多彩な必殺技で敵を粉砕させていく。

 目から発射する光子力ビーム、腕を飛ばすロケットパンチ、肘から発射されるドリルミサイルに、腹から発射されるミサイルパンチ、腕から刃が飛び出すアイアンカッターに、翼から発射されるサザンクロスナイフ、胸の放熱板からの強力な熱放射ブレストファイヤー……マジンガーZは必殺武器の塊だ。

「俺達はこんなマジンガーを観たかった、描きたかったんだ」というスタッフの強い想いが画面から強く伝わってくる」

 マジンガーZは空を飛んで敵を切り裂き、地上の敵を強力な攻撃で粉砕する。しかし機械獣だって負けてはいない。2つの長い首を持つダブラスM2はその首を活かしてマジンガーの動きを封じようとするし、ガラダK7は側頭部についた鎌を手に持ち替え、マジンガーに振り下ろす。トゲトゲのダムダムL2はその鋭利なスパイクで串刺しにしようとする。

 機械獣はその膨大な数こそが力だ。マジンガーの強力な攻撃に破壊されながらも瞬時に包囲を復活させ、マジンガーを取り囲みあらゆる角度から攻撃を加えてくる。マジンガーは吹っ飛ばされ、叩きつけられ、突き上げられて、木の葉のように機械獣軍団に翻弄される。だが、兜甲児とマジンガーZがやられっぱなしでいるはずがない。倒されても立ち上がり、さらなる力で機械獣を叩きのめしていくのだ。

 「思いっきり戦うマジンガーZをたっぷり見せたい」というのが、「劇場版 マジンガーZ / INFINITY」の明確なテーマである。監督を含め、制作スタッフの強いこだわり、想い入れがその戦闘シーンに炸裂している。マジンガーの強さ、機械獣の躍動感、そして強敵を倒していく爽快感……思わず拳を握り熱くなってしまう戦いを見ることができる。

 そして、この激しい戦いを一層楽しくさせてくれるのが本作で兜甲児を演じる森久保祥太郎さんの“叫び”である。森久保さんは兜甲児を演じるにあたり、アニメ「マジンガーZ」で兜甲児を演じた石丸博也さんの演技を意識したとのことで、伸びのあるトーンで様々な必殺技を叫ぶ。叫びと共に放たれるマジンガーZの攻撃と、爆発していく機械獣。「これこそがマジンガーZだ!」とこちらも叫んでしまいそうなシーンが連続するのである。これから「劇場版 マジンガーZ / INFINITY」を見に行く人は、何よりもまず、機械獣とマジンガーZの戦いを楽しみにして欲しい。

【マジンガーZの戦い!】

成長したキャラクターと、現代ならではのテーマ性にも注目

 もちろんマジンガーZ以外のロボットにも活躍シーンはある。「劇場版 マジンガーZ / INFINITY」に関しては、特にグレートマジンガーファンは心配ではないだろうか。本作の主役はマジンガーZである。「グレートはひょっとして……」と思っている人にはちゃんとグレートならではのド派手な戦闘もきちんと楽しめる、ということは宣言しておこう。スタッフのこだわりと想い入れが十二分に詰まった活躍シーンが用意されている。

 ボスボロットはもちろん、せわし博士、のっそり博士の乗る多脚砲台、マジンガールズ達が乗り込むビューナスA軍団も活躍する。注目はバイザー型の顔を持つ、“量産型”の記号がふんだんに盛り込まれたイチナナ式という量産型マジンガーだろう。マジンガーが昨今のロボットアニメ風に“大量生産兵器”になったらどうなるか、というデザインが面白いし、活躍シーンや武器など“解釈”もとてもいい。

制作スタッフが「グレートもちゃんと活躍させるぞ!」という想いを持っているのがよくわかる、グレートの戦闘シーン
もちろんボスボロットも活躍する
“量産型メカ”の記号がふんだんに盛り込まれたイチナナ式

 そして、ドラマの注目ポイントはキャラクター達の“未来”である。戦いを終え、復興の10年を経て、戦いの日々を過ごしていたキャラクター達はそれぞれ成長している。たとえDr.ヘルという過去の亡霊が出てきても、兜甲児をはじめとした登場人物は単純に戦っていたあの頃に戻るわけではなく、それぞれがその後の成長を経た考えで新たな脅威、困難な状況に立ち向かっていくのだ。しっかりと「その後の世界」が描かれているところは好感を持った。

 「劇場版 マジンガーZ / INFINITY」でのストーリーの鍵を握るのはインフィニティの“鍵”であるリサだ。新キャラクターである彼女が物語をどう展開させていくか、ここに制作スタッフが本作に託したテーマがある。「劇場版 マジンガーZ / INFINITY」はただのノスタルジー、ファンにのみ向けた作品ではない。「現代のロボットアニメはどう描くべきか」を考え、議論されて生み出されていることもしっかり伝わってくる。

 東日本での原発事故、その後の復興は現在の日本の全てのクリエイターに大きな影響を与えた。現在の北朝鮮の暴発と日本での議論など、今の時代は世の中の多くの人々が様々なことを考える機会が多い。その中で、「今の人達にメッセージを届けたい」という強い意欲が本作には込められている。エンターテイメント作品として、きちんと考えさせられるテーマも提示したい、と言う気合いも感じさせる作品である。

 ただ、個人的な好みを言わせてもらえれば、問いかけに関してはちょっと“量”を盛り込みすぎたかな、とも思う。尺に対して問いかけが多すぎたためか、いささかセリフ回しや場面が直接的すぎて、物語としての“血肉”の感触が薄く感じた部分があった。ここはあえてもっとテーマをシェイプさせた方が、より共感できるストーリーテリングができたのではないだろうか。

 とはいえ、本作は多くの人、何よりマジンガーファン、ロボットアニメファンの心を震わせる作品であることは間違いない。筆者は初回上映後に行なわれた出演者と監督、そして原作者の永井豪氏が登壇した舞台挨拶も取材した。舞台挨拶で永井氏は「本当に楽しんで見たというか、自分が観たかったのはこれだった! というくらいの想いで感動して観た」とコメントしているが、ファンの想いも同じだと思う。10年後、「マジンガーZ」のキャラクター達がどういう想いでいるのか、どう成長したか、それを見せてくれる作品だったと思う。未見の方はぜひ劇場に足を運んで欲しい。

丸の内TOEIで行なわれた舞台挨拶

【舞台挨拶】
原作者の永井豪氏。「自分が観たかったのはこれだった!」という想いも抱いたという
監督を務めた志水淳児氏。「この映画はスタッフみんなで情熱を込めて作りました。2度3度とみてもらえればと思います」とコメントした
キャストの森久保祥太郎さん、宮迫博之さん、上坂すみれさん
花江夏樹さん、茅野愛衣さん
テーマソングを歌う水木一郎さん。舞台挨拶では客席にも歌詞カードが配られ、会場全体で「マジンガーZ」を歌った