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「サイコブレイク2」ディレクター、ジョン・ジョハナス氏インタビュー

様々なプレイスタイルが可能、間口の広さと変わらぬ“恐怖”を!

9月21日~24日 開催

会場:幕張メッセ

 ついに我々の前に姿を現わした「サイコブレイク2」。今回、TGS会場で本作のディレクターを務めるタンゴゲームワークスのジョン・ジョハナス氏に話を聞いた。

 「サイコブレイク2」の注目ポイントの1つがジョハナス氏である。前作「サイコブレイク」でディレクターを務めた三上真司氏は今作ではエグゼグティブプロデューサーとなり、ジョハナス氏がゲームを構成していく。ジョハナス氏の想い、今作の方向性はどのようなものだろうか。

 45分の試遊を通じて見えてきた前作との違いや、“自由度”を感じさせる新しいゲーム性など気になるところは多い。こういったポイントを中心に質問してみた。なお、本作のインタビューは会場での体験プレイを下敷きにしている。プレイレポートも合わせて読んで欲しい。

ある地域ではグッと行動範囲が広がる、“ひょうたん”のようなゲーム性

 最初にジョハナス氏と前作である「サイコブレイク」の関わりを聞いてみた。ジョハナス氏は前作では企画として参加、主に洋館でのステージを担当した。そしてDLCの「アサインメント」と「コンセケンス」の2本のディレクターを務めたという。

本作のディレクターを務めるタンゴゲームワークスのジョン・ジョハナス氏
圧倒的な殺意にさらされる恐怖など、前作の要素も明確に引き継がれている
娘を救う、はっきりした目的が提示されることで物語への没入感が高まる
探索を進めることで強力な武器が入手できることも

 「もちろんプレッシャーもありましたけど、楽しさもありました。非常にスケールも大きい、色々な意味で“デカいタイトル”なので、ユーザーの期待に応えるにはどうすれば良いかを考えて、“ユニークな作品”にしたいと考えています」と、ジョハナス氏は語った。

 次に、プレイの感触に話題を移してみた。今回序盤で明確に感じたのは「明確なプレイ目的」である。前作はセバスチャンが突然不条理な世界に巻き込まれ、生きぬくために必死に前進する物語だった。しかし今作では、セバスチャンは娘を探すため、STEMの世界に向かうという明確な目的があり、そのための手がかりであるメビウスの調査チームに接触するという具体的な道しるべも設定されている。何も見えない暗闇の中を手探りで進むような感覚と、大きく異なる。

 ジョハナス氏は「明確な目的の提示は、意図的にやっています」と答えた。「サイコブレイク2」を制作するにあたり、チームは集まり議論を重ねたという。その中で決まったことの1つが「セバスチャンの明確な目的を提示すること」。前作は生きぬくことが目的で、セバスチャンは明確な目標を持っていなかった。このためキャラクター性として感情移入がしづらい点もあったのではないか、という想いがあったという。

 今回強調していることの1つが「セバスチャンのキャラクター性」である。彼は何のためにこの世界に入り、何をしようとしているのか。セバスチャンが前進するのはどうしてか。ここを明確にすることでプレーヤーのモチベーションを高めに維持できるのではないか、というのが1つの方向性だという。

 プレイの「難易度」も大きなポイントだ。前作は「サバイバルホラー」としてプレーヤーが命の危険を常に感じさせる仕掛けが多く盛り込まれていた。弾の所持数が増えると敵が強くなったり、常に危機感が強調されるシステムだった。難易度も調整できたが、今作ではそこからさらに一歩踏み込み、「カジュアル」にすることで多くのプレーヤーがクリアまで遊べる難易度となっているとのことだ。

 もちろん“楽勝”ではなく、危険さ、生き残る強さは感じさせている。そして「ナイトメア」にすると、ぎりぎりの戦いが楽しめる。プレーヤー自身に難易度を選ばせるようにしたのである。「コアユーザーの求める難易度もちゃんと用意してあります」とジョハナス氏は語った。

 何故カジュアルという難易度を設定したか? それは「本作のストーリーを楽しんで欲しいから」とジョハナス氏は答えた。そのストーリーの根幹となっているのが「娘を救いたい」というセバスチャンの想いだ。その根幹は決してぶれない。状況は刻々変化し、様々なドラマが盛り込まれていく。

 STEMという精神世界は現実と異なり繋がりはめちゃくちゃで、セバスチャンの道のりは平坦ではなく、その場その場で「やらなければならないこと」は変わっていく。しかし「娘を救う」という大きな目的は決してぶれない。

 「娘を救うという目標と、セバスチャンは“糸”で繋がっていると僕は思っています。その糸は振り回され、時にはたわみ、折れ曲がったり、ねじれたりするかもしれない。でも決して切れない。娘への想いはセバスチャンを感情的にし、キャラクターとしての共感も生みます。娘を救いたいという想いは、セバスチャンとプレーヤーを一体化できる要素だと思います」とジョハナス氏は語った。

 また、ゲーム性の部分では“自由度の高さ”が注目ポイントだ。チャプター3から始まる“街”へむかうところ。ここでは探索できるところが大きく増えている。この要素もまた「ユーザーの選択肢を増やす」部分だ。「サイコブレイク2」ではプレーヤー自身が「プレイスタイル」を追求できるようにしたかったとジョハナス氏は語った。

 目標を決めて最短でプレイするのもありだし、アイテムを得るために様々な“寄り道”をしてもいい。今回は弾薬や回復アイテムだけでなく、弾薬や回復薬を作れる素材、さらには様々な武器も手に入る。試遊ができるフィールドでも探索をがんばれば「スナイパーライフル」など、様々な武器が入手可能だという。

 「でもスナイパーライフルを手に入れるのは難しいですよ。修理しないと使えないから行く場所は増えるし、スナイパーライフルに使う弾を作るにはリソースも多く必要です。探索すれば素材は多く手に入るかもしれないけど、敵も多いから弾を使ってしまうかもしれません。弾がなくなっても乗り切れるようにも調整はしているので、色々な進め方ができると思います。理想的には得られるものに対してプレーヤーがリスクを考え、やるかやらないかを考え、悩みながらプレイしてもらいたいです」とジョハナス氏は語った。

 自由度、という意味では本作は広い世界を自由に探索するタイプのゲームではなく、ある地点は道が決まっていて、ある地点は大きく広がるという例えるなら「ひょうたん」の様な構造になっているという。また以前のフィールドに戻ることも可能で、前作より大きな自由度を実現している。今回の体験でもこの自由度を感じて欲しくてプレーヤーがここまで到達できるプレイ時間を想定して試遊時間を考えたとのことだ。

アート、サウンドの“狂気のセンス”は変わらず全力!

 筆者が怪物をホーンテッドと呼んでいたことに対してジョハナス氏は「実は街で出てくる怪物は前作の『ホーンテッド』ではなく、『ロスト』という新しい怪物なんです」と新事実を明らかにした。ロストはその名の通り“失いつつある”怪物だ。彼らは元はSTEMに囚われた人間だ。彼らは手が失われていたり、頭の半分が溶け崩れていたり、体が徐々に“なくなっている”怪物となってしまっている。

新たな敵「ロスト」。その名の通り、何かをなくしてしまった人間の精神による怪物だ
表現の規制は「見比べてみてようやくわかるレベル」とのこと。本作の大きな魅力だ
狂気に彩られた世界。「これを作ったスタッフが怖い」と思わせる突き抜けたセンスに期待したい

 前作はSTEMに囚われた人々がルヴィクの精神によりゆがめられてホーンテッドになってしまったが、ロストは「溶け崩れつつある怪物」なのだ。こういった所もストーリーの謎になりそうだ。

 「サイコブレイク」は突出し、独特な世界観を持つクリエイター達が集まり、全力でその豊かな才能を主張している作品だ。独特のゆがめられた宗教観の様なセンス、人間の心の狂気が生み出した現実とは決定的に異なる“異世界感”、常人の想像力を超えたような恐ろしさを持つクリーチャー……そういった個性と才能豊かなリソースをジョハナス氏の元で組み上げていく。それは前作である「サイコブレイク」の経験が大きく活きたという。

 「もちろん話し合って方向性は決めるんですが、特にアートチーム、サウンドチームのセンスがスゴイです。大まかな方向性はこちらで提示するのですが、細かい部分は彼らに任せることでスゴイ世界が作れたと思います」。

 前作から受け継ぐところは「狂気の描写」であるという。狂った精神が生み出す歪んだ世界。それはプレーヤー自身がSTEMの狂気に捕らわれてしまいそうな危険な匂いがする世界の表現だった。「サイコブレイク2」でもそのセンス、自分の正気が侵されていきそうな狂気の描写は共通する大きな魅力だ。「あのゲーム作った人達、本当に何かがおかしくなってしまったんじゃないの? とプレーヤーの人達が思ってくれたら、うれしいですね(笑)」。ジョハナス氏はちょっと冗談交じりでこう語った。

 こういった「サイコブレイクならではのセンス」は、もちろん「ゲームとしての必然性」が“幹”にはなっている。「悪役が必要」、「ここは危険な地帯にしたい」など“必要な要素”が設定されている。しかしここからデザイナーのセンス、そして世界の狂気や、生み出す人々の歪みなど様々なアイディアが“ドミノ式”に動いていき、「サイコブレイクの狂気」へと結実していくとのことだ。

 「例えば頭を打ち抜かれた男にセバスチャンは遭遇しますが、彼は静止画ではなく、何度も死ぬ瞬間を繰り返している。あのシーンは色々な人のアイディアが詰まっています。『もっと血しぶきを派手に』、『もっとゆっくり倒れ込もう』といった意見も取り入れました。実は彼はまだ“死んでない”んじゃないか、という意見もありました。永遠に自分が死につつある瞬間を味わい続けている、それの方がもっと残酷で、嫌な感じだ。……こういった感じで色々な人の意見で『サイコブレイク2』の狂気は描かれています」。

 もう1つ、「表現の規制」も海外版とほとんど違いの内ぎりぎりのラインをきちんと実現できたことは大きなセールスポイントだとジョハナス氏は語った。前作はCEROレーティングでDにして、DLCでZにした。このため海外版と比べどうしてもセーブすることを考えてしまったとのこと。

 今回は最初からレーティングZで作っているため、規制を意識せず開発できた。例えば全く同じタイミングでプレイすればカメラアングルなどで小さな違いが出るところもあるが、ほとんど規制を気にすることなく、海外版とほぼ同じ感覚で描写されているという。

 一般日試遊を楽しみにしている人、そして本作の発売日を楽しみにしている人に向けてジョハナス氏は、「会場ではお待たせするかもしれませんが、試遊コーナーでは45分、入れ替えも含めれば1時間ほどゲームにどっぷりつかってもらえます。試遊台のモニターがですね、すごく豪華なんです。そして55インチのモニターでソファーにゆったりと座りながら『サイコブレイク2』を楽しめます。ぜひ会場に来て下さい」とメッセージを送った。

 繰り返すが、「サイコブレイク2」は新しい感触が味わえる。物語への感情移入だったり、世界の不気味さ、そして自由度の広がる瞬間、早く製品版をプレイしたくなること請け合いである。会場でまず、本作に触れて欲しい。

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