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Wargaming、ベラルーシ ミンスクの「World of Tanks」開発オフィスを初公開
2,000人が勤務する一大開発拠点。豪華なサウンドスタジオやミュージアムがお披露目
2017年7月10日 07:00
Wargaming.netは現地時間の7月4日、ベラルーシミンスクにある開発拠点を海外メディアに初お披露目を行なった。代表作である「World of Tanks」の開発スタジオや、サウンドスタジオ、ミュージアム、食堂、休憩スペースなど、通常は入れないエリアも見学でき、どのように「World of Tanks」が開発されているのかを肌で感じることができた。本稿ではミンスクオフィス視察レポートをお届けしたい。
Wargaming.netはご存じのようにベラルーシ ミンスクで設立されたゲームメーカーで、このオフィスはもともと本社だったところだ。現在は本社機能のみキプロス ニコシアに移転しているが、「World of Tanks」や「World of Tanks Blitz」など主要タイトルの開発チームは、そのまま残っている。Wargamingは現在グループ全体で約4,500人のスタッフが在籍しており、その約半数にあたる約2,000人がこのオフィスで働いている。
Wargamingが入居しているビルは16階建てで、その全部を使用している。1階は総合受付と食堂、イベントスペースがある。2階以降は社員専用エリアで、一部テストマーケティングがユーザーイベントを行なうスペース以外は、一般には開放されておらず、厳重なセキュリティで管理されている。
まず1階から紹介していくと、Wargamingらしいオブジェとして、ソ連軽戦車MS-1の実物と、フランスの名軽戦車AMX ELC bis、それからP51Dマスタングの1/2モデル、そして受付のバックには、巨大な軍艦が描かれるなど、同社が題材にしている兵器が存在感を放っている。
1階は誰でも入れるようになっており、イベントスペースにユーザーを集めてユーザーイベントを実施したり、食堂で食事することもできる。スタッフは社員証を見せることで半額になり、500円以下で食事を取ることができる。ちなみにMS-1は、Wargaming所有で、自由に登ったり、中に入ったりしていい。ユーザーにとっては格好の記念撮影ポイントとなっている。
2階以降は、セキュリティを通過した先のエレベーターから上がるようになっている。4基のエレベーターには、それぞれ「World of Tanks」、「World of Warships」、「World of Warplanes」のイメージがあしらわれており、ロシア圏で採用例が多い、先に行く階を指定してエレベーターを呼ぶシステムになっている。ただ、この日、10回以上、エレベーターを利用して上がり降りを繰り返したが、ビルの規模、勤務するスタッフ数と、エレベーターの数、キャパシティがマッチしておらず、タイミングによってはかなり待たされたり、階段を利用する事も多かった。
今回は「World of Tanks」の開発フロアを視察することができた。スタッフ専用エリアに踏み込んでみて驚かされたのは、日本や北米で多い、フロアぶち抜きの大部屋やオープンアドレスではなく、各部署毎に部屋が用意されているところだ。しかも、各階ごとに20以上の小部屋で区切られている。「World of Tanks」開発チームは複数のフロアを占有しているため、実に何十もの部屋に分かれて開発を行なっているわけだ。
各フロアの中央には端から端まで伸びる長い通路があり、左右に一定間隔でドアが並んでいる。ドアには部署名と、セクションリーダーの名前が書かれており、その部屋が何をしている部署なのかわかるようになっている。部屋によってはデザインが凝っていたり、名刺が張ってあるだけだったり、個性があって、自由な雰囲気が伝わってくる。
通路の壁には戦車や軍艦、戦闘機が描かれた歴代のキーアートが掲示され、常にゲームの主役達が目に入るようになっている。12階の休憩スペースには、床にメディアのコメントを刻印したプレートが埋め込まれ、壁には“初心を忘れないように”という想いでWargaming.netの処女作である「DBA Online」の特大のアートイメージが描かれている。
各部屋を尋ねてみて再度驚いたのは、ほとんどの部屋で照明が消され、薄暗い環境で作業を行なっているところだ。スタッフの手元にはペーパーの類いはほとんどなく、各デスクに置かれた複数台のPCで作業を行なっているため、暗さによる作業への支障はほとんどないとはいえ、薄暗い空間で複数人が作業する光景は異様に映る。
中でもデータアナリティクスのチームは、遮光カーテンでさらに暗さを高め、その上で、デスクライトのみを付けてモニターを見ながら打ち合わせを行なっており、その光景は、さながら灯火管制下でのレジスタンスの秘密会議のようだ。暗い中で作業を行なう理由は、明るいと気が散るためで、暗ければ余計なものが目に入らず、それだけ作業に集中できるからだと言う。
今回は2D/3Dグラフィックス、ビジュアルエフェクト、ゲームデザイン、レベルデザイン、UI、サーバー管理、アナリスト、企画、ミュージアムなど様々な部屋を視察することができた。
サーバールームではCISサーバーの接続状況がリアルタイムでモニタリングできるようになっていたり、レベルデザインルームでは未知のマップ、2Dグラフィックスチームでは、未知の勲章や搭乗員などを見ることができた。そして3Dグラフィックスルームでは、現在進められている既存マップのHD化が着々と進められていた。NDAの関係で、詳述できないのが残念だが、新たなアップデートコンテンツが着々と作られていた。
今回訪れた部屋の中で最も印象的だったのはミュージアムだ。このミュージアムは、ユーザーイベントを企画するカスタマーイベントルーム内にあり、世界中のユーザーから送られたファンメイドアイテムのみをコレクションした世界唯一のミュージアムで、様々な素材で作られた戦車や、戦車に翼をつけたり、動物化したようなファンタジックな戦車、ロゴや戦車をモチーフにしたグッズなど、ユーザーのゲームに対する愛情が伝わってくる内容になっている。
そして今回、もっとも時間を割いて紹介されたのはサウンドスタジオだ。「World of Tanks」オーディオチームのリード兼サウンドプロデューサーのアレクセイ・トマノフ氏の案内で、スタジオ内に8つもあるというレコーディングルームが披露された。オーディオチームにはトマノフ氏を含め、6名のサウンドデザイナーが在籍し、様々なシチュエーションで同時平行してレコーディングが可能になっている。
現在「World of Tanks」では、グラフィックスのHD化に合わせて、サウンドのHD化を行なう“Music 2.0”プロジェクトが進行しており、今回のお披露目はそのキックオフを兼ねたものだった。気になる内容の詳細については8月のGamescomや9月の東京ゲームショウで順次発表を予定しているということで、「WoT」ファンは発表を楽しみにしたいところだ。