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元プロのミュージシャンによる異次元の音ゲー「The Artful Escape」プレビュー
地味なティーンエイジャーが多次元世界でロックミュージシャンに羽ばたく!
2017年6月17日 15:31
Xboxのインディ支援プログラムID@Xbox。今年発表された42タイトルのうち、実に25タイトルがID@Xboxタイトルとなっている。もっとも、ID@Xboxが、Windows 10も含めたデベロッパー支援プログラムになってからは、「黒い砂漠」のPearl Abyssや、「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」のBuleholeなど、すでに実績のあるメーカーも利用するようになっている。
そんなID@Xboxプログラムだが、今年出展されていたID@Xboxタイトルの中で、特に印象に残ったのが今回紹介する「The Artful Escape of Francis Vendetti」だ。「Xbox E3 2017 Briefing」で公開されたトレーラーで強く印象に残っている人も多いのではないだろうか。今回、Xboxブースでプレイすることができたので、インプレッションをお届けしたい。
「The Artful Escape」は、ミュージシャンを目指すティーンエイジャーFrancis Vendettiとなり、ミュージシャンとして成功するために、“魔法の扉”を開け、そこに広がる多次元世界で自身が追い求める音楽を探すために旅を続けていくアクションゲーム。
現実世界のFrancisは、伝説のフォークシンガーJohnson Vendettiを叔父に持つミュージシャンの卵として周りから注目され、ミュージシャンとしてデビューを迎えることになるが、彼らが求める音楽と、自身がやりたい音楽にズレがあり、思い悩むことになる。Francisは仲間達の助けを借りて、別世界へ導かれ、創造性溢れる世界で音楽探しの旅をしていくことになる。
と文字にすると複雑なゲームに感じられるが、実際にやることはオーソドックスなベルトスクロールアクションだ。Francisは、この多次元世界での心の解放を表すかのように、3段ジャンプが可能で、3段階目は、あたかもロックミュージシャンのように、ベースを空中でかき鳴らし、それによって滞空時間が伸びて、より遠くまでジャンプできたり、音楽に誘発されて足場が生まれたりなどの変化が発生し、シンプルなアクションで音と光の多次元世界に引き込んでいく。
途中でボス戦のようなものも発生するが、ボスの光る色に合わせて、ベースを弾くというもので、うまく弾きこなすことでハーモニーが発生し、ストーリーが進んでいく。また、ところどころ、その世界の不思議な住人達との会話シーンが発生し、自身のミュージシャンとしての覚悟を問われる。
ゲームとしてはオーソドックスなベルトスクロールアクションなのだが、ベースを弾くアクションに無限の創造性を詰め込んでおり、1回プレイしてまったく意味がよくわからなかったが、とにかくスゴいゲームだと感じた。強いて表現すれば、シンプルなアクションで、“音と光の世界”にダイブできるような、未だかつてかつてないリズムアクションゲームだ。
調べて見ると、開発元のBeethoven & Dinosaur(スゴい名前である)は、オーストラリアで活動していたロックバンド「The Galvatrons」のメンバーだったJohnny Galvatron氏が設立したゲームデベロッパーで、アーティスト、ミュージシャン、プログラマーで構成され、それぞれがそれぞれの分野で成功を収めた過去を持つ。
Galvatron氏は、大学でコンピューターアニメーションを専攻し、ゲームが好きだった経歴を活かし、ゲーム開発者への転身を果たしたという珍しい人物だ。「The Artful Escape」は、彼が学生時代に音楽業界に抱いていたイメージをそのまま具現化した世界ということで、どこまでも幻想的な世界観となっている。
このアイデアを実現化するために2015年にSteam Greenlight、2016年にキックスターターに応募し、見事開発費を得ることに成功。2017年、ID@Xboxプログラムを利用してXbox独占タイトルとしてリリースされる。発売時期は未定としているが、ゲームの完成度はかなり高く、ローカライズが必要な部分はテキストのみに限られるため、日本語版への展開も容易に行なえると感じた。個人的には音ゲー大国である日本のゲームファンが、このゲームをどう評価するかだ。とりとめのない才気迸る残念なインディゲームと捉えるか、元ミュージシャンらしい創造性に満ちた音ゲーの新境地と評価するのか、わずかな試遊ではとても評価できないゲームであることは間違いなく、もう少し遊び込んでみたいと強く感じた1本だ。