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「DISSIDIA FINAL FANTASY NT」プロデューサー・ディレクターインタビュー

「FF」キャラクター大集合、間口が広く、楽しい戦いを実現させるゲームを!

6月13日~15日 開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center

 スクウェア・エニックスが発表したプレイステーション 4向けパーティ対戦型アクション「DISSIDIA FINAL FANTASY NT (ディシディア ファイナルファンタジー エヌティー)」。2018年初頭に販売を予定している本作だが、今回E3会場で出展され、大きな人気を得ていた。

最終日までプレイ待ちの行列が途切れなかった試遊台

 「DISSIDIA FINAL FANTASY NT」は、歴代ファイナルファンタジーシリーズの登場キャラクターを操作し、爽快なアクションバトルを楽しむことができる「DISSIDIA FINAL FANTASY」シリーズの最新作であり、アーケード版「DISSIDIA FINAL FANTASY」の世界観、ゲームシステムをベースに家庭用オリジナルの要素を追加した作品となる。

 本作の魅力はクラウドやスコール、ライトニングなどのキャラクターが一堂に会し、激しく戦いを繰り広げるところにある。殺伐とした戦いではなく、ゲーム内のスキルを思わせるド派手な必殺技、決め技の時の華麗なカメラアングルと演出など、シングルプレイのRPGの楽しさをふんだんに盛り込み、キャラクターへのあふれるばかりの愛を感じさせる。それでいながら、接近戦キャラクターと遠距離キャラクターとの攻防、3人対3人の戦いでの連携の楽しさや戦略性などゲーム性も奥深い。カジュアルでありつつ、コアな楽しさも持っているのだ。

 アメリカはアーケードゲーム市場は大きくない。「DISSIDIA FINAL FANTASY NT」が初めて触るシリーズ作品という人も多かったと思う。しかしユーザーは気軽に、そして興奮して楽しんでいた。プレーヤー達からはキャラクターへの思い入れも確かに伝わってきて「FF文化」がきちんと北米ファンにも根付いていると実感させられた。

 今回は本タイトルの出展に合わせて渡米したプロデューサーの間一朗氏、ディレクターの鯨岡武生氏に話を聞いた。ゲームの詳細やモードなどは今後情報が出てくると思うので、今回は出展の感触や、本作、そして本シリーズに込めた想いと、今後の展望を中心に質問してみた。

【会場の風景】
ユーザーから伝わってくるのはキャラクターへの想いと、戦いを積極的に楽しもうという雰囲気だ

「FF」キャラの競演! 立ち回り重視の間口の広いゲーム性

 最初に聞いたのは今回の北米ユーザーの反応だ。2人は素直に「うれしい」と語った。E3は今回初めて一般参加者がいたのだが、そのためか長い長い待機列ができた。それは間氏にとって意外な光景だったという。やはり北米市場なため、FPSとかは人気を集めると思っていたが、自分たちのタイトルをここまで楽しみにしてくれる人がいたのはうれしかったし、驚いたし、すごく手応えを感じたとのことだ。

プロデューサーの間一朗氏
ディレクターの鯨岡武生氏

 キャラクターへの愛情はこちらでもすさまじい。ユーザーの熱意には圧倒されたと鯨岡氏は語った。イベントでも出演者達の「FF」に対する理解の深さにこちらがびっくりさせられるという。間氏は「みんな本当にありがとう」という気持ちになってしまうとのことだ。それはユーザーだけではなく「ファイナルファンタジー」という文化を作り続けているクリエイターみんなにも声をかけたくなると間氏は語った。

 鯨岡氏はユーザーがまず「ファイナルファンタジー? うーん」という感じでスルーしようとしていた人が、「対戦ゲームなのか!」と、いきなり目を輝かせて列に並ぶ人がいた、というスタッフの話を聞いて、ゲームとしてのユーザーの好みも実感した。キャラクターだけじゃなく、ゲーム性の部分でも評価を得られたと感じたという。「対戦ゲーム」という意味では、北米市場は日本以上にハードルが低い、すごく楽しくゲームに触れているというのが今回わかったという。

 本作はアーケードでの「DISSIDIA FINAL FANTASY」をベースにしている。家庭用にするにあたり、鯨岡氏は「やはりちゃんとしたストーリーを語りたい」と思ったという。しかしRPGのような本当に濃いストーリー要素を盛り込んでしまうと、それこそRPGを1から作り上げるような時間がかかってしまう。本作は「アーケードの楽しさを家庭用で」というのがコンセプトである。アーケードで稼動しているものを家庭用で出す場合、それほど間は空けられない。だからこそ今回はあえてストーリーコンテンツを従来と違う形で提供しているとのことだ。

 しかしそれでも「FINAL FANTASY」を関する作品であり、“オールスター”である本作ではストーリーも欠かせないところだ。このためカットシーンやムービーでしっかり提供したい、というところも決めている。ゲームを遊んでいく中で、バトルコンテンツを遊んでいくほど、様々なカットシーンなどがひもとかれていき、しっかりとオリジナルの、そして本作ならではの世界観を伝え、1つの話を語れるようにしていると鯨岡氏は語った。

 このほか、対戦コンテンツとして寄り幅広い楽しさを提示できる「バトルルールの追加」、「カスタムロビー」もきちんと盛り込んでいく。フレンドと共に戦闘に参加できたり、フレンドを招待するなどより細かい設定でフレンドと戦える環境も家庭用ならではの要素だ。アーケード以上にプレーヤーが望む戦いを実現させやすい環境を提供したいと考えているとのことだ。もちろん家庭用を楽しんだユーザーにアーケードでも楽しんでもらいたい、という想いも持っている。

 アーケードのアップデート要素は少しずれたタイミングで「DISSIDIA FINAL FANTASY NT」に実装されていく。元々本作のベースはアーケードと変わらない作品だ。アーケード筐体の基幹システムもPS4が元となっているため、同じものが提供できている。違う部分としてはアーケード版がサーバークライアント方式なところが、家庭用ではP2Pになる。できるだけ通信環境が良いところがホストになるようなプログラムや、負けそうになると退出するユーザーへのペナルティなどもしっかり盛り込んでいくとのことだ。

 本作の“対戦要素”については筆者は個人的に聞いてみたい質問があった。RPGなどでは自分のキャラクターは育て上げれば非常に強くなる。しかしオンラインの対戦上ではそうはいかない。無敵なはずの自分のキャラクターが、自分の腕が足りないばかりに負けてしまう、オンラインゲームならではの要素を、本作ではどのように“楽しさ”に昇華させようとしているだろうか。

 間氏は少し考えてからコメントした。「勝負が絡む世界ではそういう想い、勝ってうれしい、負けて悔しい、悲しいという感情は必ず出てきます。そこはキャラクターの強弱ではなく、プレーヤーの腕にある。そこに強弱が生まれてしまいますが、そのことでキャラクターそのものへの感情が変化はしないように、だからこそキャラクター性を重要視しています。もちろん理不尽なバランス、ずるさを感じさせてしまうような要素が出てくることがないように、鯨岡やコーエーテクモゲームスさんがしっかりと見てくれますので、そこは大丈夫だと思ってます。キャラクターの良さをきちんと再現しているので、そのキャラクターへの想いを対戦でも活かしてもらえればと考えています」。

 “対戦風景”に関しては、バトルダメージの表現などでキャラクター性を補強していると鯨岡氏は語った。激戦だったり、圧倒的な力の差があったりすると、自分のキャラクターの装備が傷ついてしまったり、汚れてしまう。しかしそれはあくまでキャラクターの格好良さを表現するフレーバーで、本当にズタボロになる姿などユーザーはファンとして望んでいない。キャラクター性を補強し、ある程度のリアルさを見せて、勝負の結果を提示するが、ファンの気持ちを傷つけるような演出や表現にならないように気をつけているとのことだ。

「FINAL FANTASY」のキャラクターが一堂に会する楽しさ
各キャラクターならではの表現は、強く引き込まれる
チームプレイは深い戦略性を生み出すが、ガチャプレイデモ面白い

 そして、戦いのバランス、「DISSIDIA FINAL FANTASY」としてのキャラクター表現においては、鯨岡氏は“尖らせたい”という想いを強く持っているとのことだ。技が同じで姿だけが違ういわゆる「コンパチキャラ」は絶対作らない、というところはこだわりの1つだ。そしてパーティバトルだからこそ、「このキャラクターならばこういう役割ができる」、「こういう立ち回りが理想的だ」というように各キャラクターならではのテーマを決め、そして組み合わせの楽しさ、戦いの駆け引きそのものの楽しさを追求している。自分は同じでも仲間が違うと自分の戦い方も変化する、そういう奥深さも実現できるように考えているという。

 キャラクター表現に関しては、スクウェア・エニックス社内での「ルール付け」はされている。その上で、様々なタイトルにおいて、原作キャラクターがそのまま集まるというシチュエーションは、「DISSIDIA FINAL FANTASY」シリーズと、「ディシディア ファイナルファンタジー オペラオムニア」といったディシディアを冠するタイトルだけだと間氏は語った。「レコードキーパー」では英雄達の記憶、というように、意味合いが異なる。キャラクター達が背景として原作の性格を保ちながら異なる世界のキャラクターと会話するというのは、本シリーズのみなのだ。

 このため本シリーズは他のタイトルとは立ち位置そのものが異なる。“本人達”が一堂に会する面白さ、そこは力を入れていると鯨岡氏も語った。彼らが集まるからこそ生まれる物語、それこそが「DISSIDIA FINAL FANTASY」シリーズの面白さだという。そしてだからこそ本シリーズとしてのファンも獲得できているとのことだ。キャラクターが集う作品はある中で、「DISSIDIA FINAL FANTASY」シリーズは独自の面白さを実現していると、鯨岡氏は自負しているとのことだ。

 間氏は少し話を戻し、ユーザーを“対戦”に誘う工夫としては鯨岡氏のゲームのアップデートの方向性が、トッププレーヤーや、声が大きいユーザーだけに応えたものではないと指摘した。本作は“間口の広さ”と他にない楽しさを追求しており、気軽に遊べ、そして深い戦闘を楽しめ、調整の方向も間口が広い。女性や初心者ユーザーのボタンやパッドをひっきりなしに動かすいわゆる“ガチャプレイ”でもそこそこ戦えるようにし、他のキャラクターもすんなり使える様に気をつけている。こうした鯨岡氏の提示する方向性が、他タイトルより多い女性プレーヤーの獲得にも繋がってるのではないかというのだ。

 もちろん「FINAL FANTASY」キャラクターそのものの魅力、彼らが一堂に会する楽しさも本作の間口の広さの大きな理由だ。鯨岡氏はこの人気の高いタイトルをコミュニティを通じて促進し、さらにユーザー数を増やしていきたいと語った。今後大会などもできれば、トッププレーヤー、自分たちはあまりプレイしなくても戦いを観戦するユーザーも増えていって欲しいという。

 「この作品は、とてもできないコンボとか、テクニックじゃなく、状況判断とか、立ち回りが大事なんです。うまいプレーヤーの動画を見ても『こんなコマンドこう入れられない』とかそういうのはないはずです。動画を見るとうまい状況判断がわかってくる。だから、初心者にも来て欲しいです」と鯨岡氏は語った。

 間氏は「俺はアーケードで7,000戦戦ってます、それでもちょっとずつしかうまくならない。家庭用でも絶対やっていきたいです。そして、下手だから、うまくなれないからゲームをやりたくなくなるって、それは違うと思うんですよ。プレイしてると技のつなぎ方や、戦略など、ルールを活用したセオリーができてくる。そのとき『こうじゃなきゃダメ』、『ああしないとダメ』みたいになると、不自由になるし、間口も狭くなる。そうならないように俺は率先していきたいです。勝てない、うまくならない、というのはゲームの面白さと関係はあるけど、イコールじゃないと思っています。そこは鯨岡と一緒に、きちんとユーザーに提示し続けていければと思います。これからもみんなと遊んでいきたいですね」と語った。

 最後にユーザーへのメッセージとして鯨岡氏は「家庭用になり、今までアーケードに来られなかった方や、アーケードの方も好きなだけ楽しんでいただけるものになります。『FINAL FANTASY』ならではの世界観も楽しめると思うので、ぜひ色々な方に楽しんで欲しいです」と語った。

 間氏は「アーケードゲームには“友達と並んで楽しい”という体験が間違いなくある。そこはこれまで通り続けていきます。しかしそこにはやはりハードルがある。家庭用は間口を広げて、好きなだけ遊べます。ぜひ楽しんで下さい」と語った。

 今回、会場でタイトルを見て感じたのは、「キャラクターへの溢れんばかりの愛情」である。慣れていないプレーヤーでも彼らが動かすキャラクタの技1つ、ダッシュ1つが格好良く、そして自分の手でさらにうまく動かしたくなる。アーケードゲームの魅力はまさに“並んで他の人のプレイを見ること”にあると思う。

 そしてそのアーケードゲームをできるだけ早く家庭用にしたい、というところにも好感を持った。より大きくなるユーザーコミュニティーにも期待したい。鯨岡氏の熱い想いを受けた今後の展開も楽しみだ。

【スクリーンショット】