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VRは“風適法”の制限を受けるか? 「VR Safety」勉強会を開催

テレビゲームって何? 法律と安全面からVRを考える

3月29日開催

 “法律と安全面からVRを考える”。VRが盛り上がっている昨今、様々なビジネスが生まれてきた。しかし例えばプレイ料金がかかる場合は「アーケードゲーム」という扱いになるのか? 安全面で求められる法律はあるか?……こういった問題を提示する業界関係者の集まり「VR Safety」の勉強会が開催された。

サードウェーブテジノス マーケティング部の林田奈美氏
フリーランスの林田貴光氏
GTMF(Game Tools & Middleware Forum)の代表を務める大和智明氏
林田貴光氏が提言する「テレビゲームとみなされないVRコンテンツ」

 「VR Safety」はサードウェーブテジノス マーケティング部の林田奈美氏と、GTMF(Game Tools & Middleware Forum)の代表を務める大和智明氏が中心となって立ち上げたコミュニティであり、今回は第1回目の勉強会である。

 現在、VRは“体験してもらうこと”、“盛り上げること”で、ゲームをはじめとした業界は大きく盛り上がっており、今後は商業施設なども積極的に展開される。しかし、その扱いはどのようなものになるのか? 何かがあったとき、規制されてしまうようなことはないのか? 「VR Safety」は今後の動きの中で、いきなり制限が加えられ業界自体が失速してしまうようなことがないように、まず知見を共有し、業界に働きかけていこうという目的で立ち上がった。今回の勉強会ではハードウェア関連や、VRコンテンツ制作者としてゲーム関連だけでなく、教育関連の関係者、メディアも参加した。

 林田氏は前職が消防関連であり、プレーヤーがVRゴーグルをつけ、VRコンテンツを体験している場合、消防法上での危険性が高い、と言うことに気が付いたのがこの「VR Safety」の立ち上げのきっかけだという。法律は“実際の事故”が起きたときに大きく変わる。林田氏は事例として1987年に起きた老人ホームの火災事故を例に挙げた。この事故では初期消火が間に合わず、寝たきりの17名の老人が焼死してしまった。この事故がきっかけにスプリンクラーの設備など、施設に対する安全基準が大きく引き上げられた。

 VRゴーグルをつけて、ヘッドフォンをつけていては、もし万が一火事が起きた場合、そこに気が付かない場合もある。もし事故が起き、規制が適用された場合、施設そのものの装備などでコストが大きく膨らんでしまったら、小さな施設などではVRコンテンツを運用できなくなってしまう。そうなる前に、店が「緊急通知スイッチ」などでユーザーに危機を知らせ、被害を抑えるシステムなどが必要なのではないか、という提言も行なった。

 フリーランスの林田貴光氏は、アーケードゲームの保守作業など、アミューズメントセンターでの知識が広く、VRコンテンツサービスで想定される法律の区分などを紹介した。ゲームセンター(アミューズメントセンター)は、風適法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)の対象となる施設だ。このため様々な規制が適用される。年少者の入場は時間によって制限されるし、賞品の提供も禁止されている。施設として見通しの良さ、設置物の規制なども課せられる。

 ゲームセンターは風適法における「5号」という扱いになり、「テレビゲーム」を展開していることで、5号の認定、許可が必要となる。「テレビゲーム」の定義はブラウン管、液晶などに画面を表示、勝敗を競い、数字や他の表示で遊戯の得点が表示され優劣を競う、射幸心を煽るもの。これらは原則テレビゲームに定義される。現在、製作され、プレイされているVRコンテンツはテレビゲームに分類されるものが多いのではないだろうか?

 VRコンテンツの内、ジェットコースターの疑似体験ができたり、映像を見るような「ライド系」のものは、結果などの優劣がないため、テレビゲームには分類されない。VRコンテンツ制作者、サービス担当者は、こういった区分にきちんと留意する必要がある。また、大型店舗や、ホテルや旅館などの遊戯コーナーは5号認定でなくてもテレビゲームの運用が認められている。こういった“コンテンツをどこで、どのようにユーザーに提供するか”は今後考えていく必要があると林田貴光氏は語った。

 これまで、ゲーム会社は、様々なゲームを盛り上げるため、規制を受けない方法を模索してきた。コクピット型筐体でのシミュレーションとして運用させることを狙ってみたり、ゲームの成績に応じた賞品を“上位成績者のみの抽選”にしてみたり、高い賞金を提示したり、しかし結局規制の対象となり、縮小やサービスの変更・制限を受けざるを得なかった。「VRコンテンツも抜け道を探そうという気持ちはわかるが、規制対象になるのは目に見えている」と林田貴光氏は語った。

 その中で、林田貴光氏からの提言として、「テレビゲーム」として認定されないためには「ライド、アトラクション系」に割り切ったコンテンツ。産業や、教育目的として作ることであるという。例えば「住宅やマンションをVRで紹介」というコンテンツでも、「隠しアイテムを見つけられたら記念品贈呈」といったギミックを入れてしまったら、テレビゲームになってしまう。ゲームに慣れた我々は、コンテンツを面白くするためにそういった要素を盛り込みがちだが、そういった“工夫”は、規制の対象になることは考えていかなくてはならないという。

 この後のQ&Aでは「老人向けのドライブシミュレーターも点数表示が出る。これはゲームになってしまうのか?」、という質問が出た。林田貴光氏の見解では「教習所のシミュレーターも同じだし、“運転技術向上のため”というゲームとは違う目的なので大丈夫だと思う」ということ。こういった例を考えると、区分の難しさを改めて感じた。逆に、本当に頭ごなしに規制の対象になり、全面的に制限されかねないということも考えさせられた。

 “規制”や“法律”はコンテンツでの楽しさや、可能性を考慮してはくれない。「安全のためにはなくしてしまえ」という動きに繋がりかねない。だからこそこういった規制への関係は「もっと楽しく、もっと面白く」という想いを実現するために、避けては通れない道である。頭ごなしに制限されるようなことが起こる前に、現在の規制を学ぶことは、よりよいコンテンツを作ることにも通じるし、これからのVRビジネスを安全に盛り上げるための対処法を模索する上で必要だと感じた。

【VR Safety】
ゲームセンターが強く規制を受けた背景には、テレビゲーム筐体を使って違法賭博が行なわれたという過去がある。しかし「アーケードゲームだからこそ実現できる楽しさ」は確実にあり、現在のゲーム文化の一端を担っている場所であり、VRはゲームセンターを大きく盛り上げる可能性を秘めている。安全対策などが議論されていくことで、VRはアーケードゲーム業界に大きな活力を与えてくれると思う