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「AnimeJapan 2017」、「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT」最新活動を発表

自動運転や人工筋肉ロボを表彰、「タチコマ」イメージの防壁プロジェクト発表

【AnimeJapan 2017】

3月23日~26日 開催(一般日:25日~26日)

会場:東京ビッグサイト 東展示会場1~6ホール

入場券:
中学生以上 前売 1,800円(税込)
中学生以上 当日 2,200円(税込)
小学生以下無料

 アニメ「攻殻機動隊」の世界を現代の先端技術でどこまで実現できるか? 2015年より始動している「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT」はこれまでは「攻殻機動隊」というキーワードの元、産業界,国や地方自治体,大学や研究機関を“メディア”として繋げ、紹介する活動を行なってきた。今回、Anime Japan 2017で、「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT the AWARD 2016」を開催、3つの活動を表彰し、あらに新プロジェクトの発表も行なわれた。

 「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT the AWARD 2016」は、「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT」の公式ページにおいて、独自取材や、提携メディアキュレーションによって掲載された125の“攻殻機動隊らしいニュース”において、多くの読者、インプレッション数を獲得したニュースから上位10位を順位付けし、選考メンバーによって「電脳(人工知能)部門」と、「義体(ロボット)部門」のグランプリ、さらに「審査員特別賞」の3部門が発表された。

「電脳(人工知能)部門」グランプリを受賞した富士重工(スバル)と、日本IBM

 「電脳(人工知能)部門」グランプリを受賞したのは、「次世代『アイサイト』は人工知能『Watson』を活用へ」というニュースで、富士重工(スバル)と、日本IBMが受賞した。受賞コメントはスバル第一技術者車両研究実験第四部部長の樋渡穣氏が行なった。

 アイサイトはスバルが実用予定のビデオカメラを活用した運転支援システム。スバルは28年以上前から運転支援システムの研究を行なっていた。アイサイトは世界中の走行データをデータベースとし、日本IBMのサーバー技術で情報を共有、そしてデータを使った解析技術を活用するために両社が協力し、アイサイトを共同開発している。

 今後、走行データを人工知能でディープラーニングさせ、より精度の高い画像解析を実現、システムを搭載したスバル車にフィードバックさせ、より安全な自動運転システムを構築していくことを目指すという。スバルは2017年中に、自動運転システムを搭載した市販車を出荷予定。IBMとの共同開発のシステムを搭載した車は2020年予定となるという。

【攻殻機動隊 REALIZE PROJECT】
アイサイトはスバルが実用予定のビデオカメラを活用した運転支援システム
東京工業大学 鈴森・遠藤研究室

 「義体(ロボット)部門」グランプリは、「人工筋肉を備えたロボット、将来は人間との区別がつかなくなる!?」で、東京工業大学 鈴森・遠藤研究室が受賞した。受賞コメントは東京工業大学工学院教授の鈴森康一氏が行なった。

 研究者達が「骸骨くん」とよんでいるロボットはケーブル状の人工筋肉を人体の骨格を模した“骸骨”に接続している。人工筋肉は電気信号を加えることで25%以上収縮する。これは人間の筋肉と同じくらいだという。東京工業大学 鈴森・遠藤研究室ではロボットのメカニズムを中心に研究を行なっており、「骸骨くん」は学生達が医学書・解剖書を読み人体を研究し、整形外科の医師の協力も得て、人体と同じように人工筋肉を配置したという。

 「骸骨くん」はこれまでと大きく異なるロボットとなった。これまでのロボットは足1本に対し4つか5つのモーターで動かしていたが、「骸骨くん」は人工筋肉を片足だけで約1,000本。このシステムによりこれまでにないしなやかで、生物的な動きを実現できているという。従来のロボットとは大きく異なる、新しい可能性を持ったシステムとして今後も研究を行なっていくとのことだ。

【攻殻機動隊 REALIZE PROJECT】
「骸骨くん」はケーブル状の人工筋肉を人体の骨格を模した“骸骨”に接続している。人間のようなしなやかな動きが特徴
東京大学医科学研究所臨床シークエンス研究チーム

 審査員特別賞は「人工知能が、特殊な白血病患者の病名を10分ほどで見抜き、その生命を救った」で、東京大学医科学研究所臨床シークエンス研究チームが受賞した。受賞コメントは東京大学ヒトゲノム解析センター宮野悟氏が行なった。

 ガンは人の遺伝子の“システムが暴走”して起こる病気である。「次世代シーケンサー」というシステムにより人のゲノムを素早く、短時間で解析できるようになったが、その解析には人工知能の支援が必要となる。膨大なデータベースと、人ではできない素早い検索と解析ができる人工知能「Watson」によって、人のガンの原因となる数百から数百万の要因を探し出し、提示することで、それを読み解く医療関係者がより的確な病気を治す方法が採れるようになるという。

 「Watson」は膨大な数の研究の論文の要約、薬の特許情報、さらにこれまでの医師が行った対応など、様々なデータを抽出し医師をバックアップ、患者の症状や対処法を導き出す手助けをする。そしてその結果も学習し、さらにデータベースとして確固たるものに成長するという。遺伝子解析と、対処法の提示としての“量とスピード”においては、人間を遙かに超える力を持ったシステムとなっているという。

「攻殻」のデザインセンスを活かした新規プロジェクト始動

 さらに今回のイベントでは、2つの新プロジェクトが発表された。「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT」の実行委員長である武藤博昭氏が代表取締役を務めるコモンズと、筑波大エンパワーメント情報学プログラムが共同研究契約を締結した。

コモンズと、筑波大エンパワーメント情報学プログラムが共同研究契約を締結
国立研究開発法人情報通信研究機構による「Warp Drive」

 コモンズはテレビ番組などのメディアコンテンツの企画制作プロデュース、アニメなどのクリエイターとの橋渡しを業務としている。今後は商品化、研究開発品のデザインなどより“具体的・積極的”に関わっていく。

 「テクノロジー×エンターテイメント」をキーワードに、コモンズによる“メカデザイン”、“CG”、“デザイン”といったエンターテイメントの要素を、筑波大の研究と組み合わせていく。これらを研究するため、筑波大学エンパワースタジオ内に研究所を開設し、実用化を目指していくという。そして、テクノロジー研究や、展示会や舞台などでも、エンターテイメント要素を活かすべく、他企業の受託開発なども行なっていくという。

 もう1つのプロジェクトは、国立研究開発法人情報通信研究機構による「Warp Drive」。KDDI総合研究所、セキュアブレイン、横浜国立研究所などが「Web媒介型攻撃対策の実用化」に向けた研究開発を行なっていく。具体的なイメージは「タチコマ」である。“電脳空間における「タチコマ・リアライズ」”として、電脳空間でタチコマがユーザーを守ってくれるようなシステムを目指していく。

 ユーザーのPCに「タチコマ」をインストール。タチコマ達は情報を共有化し、ユーザー達のアクセスから「Web媒介型攻撃」を検知、攻撃を検知した際は防壁を展開。ユーザーに警告やアドバイスを与える。攻撃を行なってくるwebや攻撃方法などの情報を共有することで、タチコマは成長していくという。

 従来のセキュリティソフトにタチコマというイメージを付与し、より親しみやすく、わかりやすいシステム開発を目指すわけだ。「タチコマ」は、2017年にプログラムを無償配布予定であり、PCのみならずスマホ、さらにはwebカメラやホームルーターなども監視できるようにしていく予定とのことだ。

 「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT」は日本で行なわれている様々な研究に「攻殻機動隊」というエキセントリックなビジュアルイメージを持ち、コアなファンを多く獲得するSF作品の“雰囲気”を付与することで、研究をより多くの人に知らしめ、興味を持って貰おうというユニークなプロジェクトだ。

 より広範囲に、様々な分野を対象に、最先端技術をピックアップし、さらに前に進めようという動きは好感が持てる。そしてやはり士郎正宗氏や、アニメスタッフ達が思い描いた“センス溢れる未来”が、研究者達を後押しし、さらにそれをファンが応援すると言う構図が良い。コンテンツパワーが現実を動かす日本ならではの活動として、今後も注目していきたい。

【攻殻機動隊 REALIZE PROJECT】
「AnimeJapan 2017」では、karakuri productsの1/2モデル「リアルエージェント・タチコマ」と、Cerevoの「うごく、しゃべる、並列化する。1/8タチコマ」が出展されていた