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2017年モバイルゲームは次のステージへ

基調講演でGoogleが推す新作5タイトルを紹介

2月27日~3月3日開催

会場:San Francisco Moscone Convention Center

 GDC 2017初日となる2月27日(現地時間)、Googleは「Google Developer Day at GDC 2017」と題して、終日にわたってゲーム開発者向けのトークセッションイベントを行なった。中でもDeveloper Dayの幕開けとなるKeynote(基調講演)では、大成功を収めたNIANTICとPokemon Companyとの協業作品「Pokemon GO」のみならず、今後Google Playを通じてリリースされるパートナー5社による新作ゲームタイトルを続々と紹介していった。

 多くのゲーム開発者はゲームファンであることから、基調講演に相応しいセッションであったように思う。本稿では、Googleがバックアップする、これらバラエティ豊かな最新タイトルを紹介する。

GoogleのChief Game Designer、Noah Falstein氏

 最初に登壇したGoogleのChief Game DesignerのNoah Falstein氏は、Googleがゲーム会社だと定義する。この意味するところは、Googleがゲーム開発者をバックアップする取り組みとして、プラットフォームやツール群の提供、ストアでの販売支援を行なっており、人気ゲームを影から支えているからだ。

 プラットフォームという意味では、昨年11月にリリースされたモバイル利用VRヘッドセット「Daydream」やARデバイスの「Tango」といった、新しいプロダクトを次々と投入しており、またゲーム開発者との対話を重視し、多くのフィードバックを受けてツールやSDKの提供を行なっている。

Google PlayのProduct Management Director、Paul Bankhead氏

 ストアでの販売支援の部分では、Google Playストアの改良を継続的に行なっている。続いて登壇したGoogle PlayのProduct Management Director、Paul Bankhead氏からは、Google Playの現況が報告された。成長を続けるモバイルマーケットでは、2016年にブラジル、インド、アジア諸国といった新興マーケットで、新たに3億人のユーザーを獲得しており、この結果が10億を超えるアンドロイドデバイスの普及につながっている。そのうち、136カ国1億人のユーザーがGoogle Playの新課金方式を追加しており、新課金方式によって仮想のアイテムを購入するユーザーは70%以上増大しているとした。

 ユーザー体験を豊かにするために、プラットフォームにおいてはバッテリーの持ちやカメラの画像品質といったデバイスの細部まで考慮するとともに、ストアにおいては、ゲームタイトルの見せ方や価格訴求についても工夫を凝らし、ゲームプレーヤーがゲーム購入者へと転換する支援を行なっている。

Google Playストアのゲーム紹介
同じくGoogle PlayのGames Strategic Lead、Jamil Moledina氏

 ビジネス面でのGoogleの取り組みに続いて、Bankhead氏と同じくGoogle PlayでGames Strategic Leadを担当するJamil Moledina氏からは、Googleがバックアップするゲームが紹介されていった。

NIANTICのCEO、Phil Keslin氏

 ゲームを提供する側から、まず最初に登壇したのは、NIANTICのCEO、Phil Keslin氏だ。同氏は、「Pokemon GO」の礎となった「Ingress」から、「Pokemon GO」誕生に至った経緯を振り返った。9人のエンジニア、5人のデザイナー、2人のプロデューサーで始めた「Pokemon GO」の開発は、決して大所帯のチームではなかったにも関わらず、その期待のほどから大きなプレッシャーを感じていたようだ。

 第2世代の「Pokemon GO」として、「ポケットモンスター金・銀」から新ポケモンの追加がつい先ごろアナウンスされており、アバターのカスタマイズ要素も進化する。たびたび繰り返して発言されている通り、NIANTICはこれからも「Ingress」と「Pokemon GO」でゲームプレーヤーを屋外へと連れ出し、ゲームを通じて人と人とがコミュニケーションを楽しめる要素に注力していく。内容は明確にされなかったが、この線でまだ1つ2つの隠し球を用意しているとのことだった。

ご存知「Pokemon GO」のプロモムービーより

新作タイトルを続々と発表

KABANのCTO Jeff Howell氏とExecutive Producer Mike McCartney氏

 これ以降に紹介されたいった5タイトルは、すべて新作ゲームだ。なかでも、再度登壇したMoledina氏が、モバイルでありながらコンソールクオリティだと強調していた2タイトルのクオリティは圧巻だ。

 Moledina氏に招かれる形で、最初に登壇した、KABANのCTO Jeff Howell氏とExecutive ProducerのMike McCartney氏から紹介されたのは、「TRANSFORMERS: FORGED TO FIGHT」(以下「TF: FtoF」)だ。

 「TF: FtoF」はRPG要素を持った1対1の対戦格闘ゲームで、ソーシャル要素を併せ持つ。ビジュアルは完全な3Dで、モバイルでありながら、HDRのレンダー品質は確かにコンソールクオリティに達している。本作のためにKABANは、最新の物理エンジンを開発しており、金属のボディ同士や路面と接触する際の火花エフェクトなどで、同時に5万ものパーティクルが物理シミュレーションを経て描画される。

 この「TF: FtoF」、ベータ登録が、この紹介のタイミングをもって開始されるとともに、4月5日で事前登録を終了して、正式にリリースされることが明らかになった。

【「TRANSFORMERS: FORGED TO FIGHT」】
NetherRealm StudiosのSenior Producer、Erin Pipergerdes氏

 3番目に紹介されたNetherRealm Studiosの「Injustice 2」も、完全に既存のモバイルゲームクオリティを超えた作品であることは間違いない。モバイルでは珍しい部類のUnreal Engine 4(以下「UE4」)を採用したゲームで、「UE4」が得意とするリアルテイストでコントラストの高い絵に仕上げている。特に大技発動時のカットシーンでは、本場のアメコミヒーローであるマーベルキャラクターであるだけに、黙っていてもアクションの見栄えがするところ、アーケードやコンソールの対戦格闘ゲームを凌ぐ凝りようだ。

 キャラクターを強化すると、原作にはない視覚を持ったキャラクターにアップグレードすることも可能で、自分なりのビジュアルを追求するのも楽しめそうだ。

【「Injustice 2」】
Worldwide Creative DirectorのDonald Mustard氏

 この他、「UE4」を使用したゲームとして、本家Epic Gamesのターン制ストラテジー「BATTLE BREAKER」が、Worldwide Creative DirectorのDonald Mustard氏から紹介された。この「BATTLE BREAKER」の方は、3Dのシステムを利用したゲームでありながら、2Dで製作されている部分も多く、従来のモバイルゲームを継承した画面の作りになっている。エフェクトやオブジェクトの動作からは3Dであることがわかるものの、リリース当初から投入される250ものキャラクターのカットインなどは、2Dイラストの良さを活かしていると言えそうだ。

 こちらの「BATTLE BREAKER」も、事前登録はこのタイミングから開始された。リリース時期については、ごくごく近日中とのこと。Epicのモバイル新作ということで、こちらも楽しみだ。

【「BATTLE BREAKER」】
UBI SoftのStudio Marketing Manager、Loic Gounon氏とLead EngineerのFrea Mizac氏

 加えて、「Daydream」に向けたVRゲームからは、UBI Softの「Virtual Rabbids: The Big Plan」が紹介された。ユーモラスなキャラクターは楽しげであるものの、ゲームのプレイフィール自体は、ちょっと未知数だ。コミカルな振る舞いは文化による感じ方の差もあるため、我々にとってはゲームの世界観と雰囲気を楽しむゲームになりそうだ。

PRYFOCのChief Creative Officer、Daniel Cook氏

 最後に、Googleもメジャー同様に重視しているというインディゲームからは、SPRYFOXのVR街づくりゲーム「BEARTOPIA」が紹介された。こちらも「Virtual Rabbids: The Big Plan」と同様に「Daydream」向けのVRゲームで、狙っている雰囲気も近しいものが感じられた。デフォルメを効かせ、擬人化したアニマルキャラクターにコミカルな振る舞いをさせるというのは、モバイルハードを利用したVRの表現力に制約があり、それでもゲームをわかりやすくする必要性から、比較的採用しやすいということなのだろう。

【「Daydream」向けVRタイトル】
「Virtual Rabbids: The Big Plan」
「BEARTOPIA」

 1時間の基調講演で6タイトル+αと盛りだくさんの内容で、かなり駆け足ではあったが、Google、そしてGoogle AndroidとDaydream向けにゲームを提供する各パートナーの“本気”が伝わってくるセッションであった。プレイ可能になる時期が明確にされなかったタイトルもあるが、今回紹介されたゲームのほとんどは近日~この春の公開が予定されている。2017年は、モバイルゲームが、またひとつ次のステップに入っていくと言えそうだ。