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よむネコ、VR脱出ゲーム「エニグマスフィア」をTaipei Game Showに出展

HTC Vive版がまもなく完成! 2017年はVRデベロッパーとして“4つの戦略”を推進

【Taipei Game Show 2017】

1月19日~1月24日開催

会場:台北世貿一館

 台湾最大規模のゲームショウTaipei Game Show 2017が1月19日、台湾台北市において開幕した。本日はAPGSと呼ばれるデベロッパー向けのカンファレンスと、B2Bコーナー、そこに併設されたIndie Game Festa (IGF)のみで、メインイベントとなるB2Cゾーンは明日より開幕となる。本稿では、Indie Game Festa (IGF)に日本から出展していたよむネコブースの模様をお届けしたい。

試遊者に遊び方を教える杉山智則氏(左)
日本でヒットした新氏のVR新書だが、新たに繁体字版がリリースされていた

 今年初出展を果たしたよむネコは、12月6日にOculus Rift専用タイトルとしてリリースしたVR脱出ゲーム「エニグマスフィア」を出展。参加していたよむネコ代表取締役社長の新清士氏と、取締役の杉山智則氏のおふたりに話を伺うことができたが、今回はTaipei Game Showでの出展ということで、台湾、中国といったアジア展開を計画しているのかと思いきや、アジア市場のリサーチのための出展で、アジア展開のためではないという。

 「エニグマスフィア」は、VR専用ゲームでありながら、東京ゲームショウのインディゲームアワードにノミネートされるなど、単純にVRゲームというだけでなく、優れたゲーム性が高く評価されている。しかし、Oculus RiftのモーションコントローラーOculus Touchのローンチタイトルとして開発したため、セールス的には伸び悩んでいるという。

 理由は単純にOculus Touch専用タイトルとして、対象となるユーザーの母数が限られているということと、Oculus Rift専用のストアからしか購入できないため、認知が広がらないためだという。ゲーム配信に関しては、やはりHTC Viveの母体であるSteamのほうが優れており、このため現在HTC Vive版の開発を急いでいる。

 HTC Vive版の完成は2月頃を予定しており、順調にいけば3月にはSteamでグローバル展開できるという。価格や必要環境はOculus Rift版と同じだが、現在同時平行してアップデートも進めており、内容が多少新しくなる可能性があるという。ちなみにHTC Vive版の開発に時間が掛かっている理由は、オンラインプレイ周りの仕様がOculus RiftとHTC Viveで大きく異なるためで、オンラインマルチプレイに対応したゲームで、両プラットフォームへの同時展開を考えているデベロッパーには留意すべき点だということだ。

 HTC Vive版のリリース以降の計画について聞いてみると、4つの戦略で動いていく構想を語ってくれた。1つは、先述した「エニグマスフィア」そのもののアップデート。これは現在20あるステージを100程度まで増やす計画で、それに合わせてスフィアを破壊するためのギミックも新たなものを追加し、さらに“スフィアの破壊”に加えて、“スフィアの探索”という遊び方も提案していきたいという。

 遊び方についても単純にクリアするだけでなく、タイムアタックやスコアランキング的な機能も入れ込み、さらにより繊細な操作が要求される高難易度ステージも実装していくという。これらのアップデートは夏頃までには具体的な形にいきたいということだ。

 2つ目はHTC Viveに続くマルチプラットフォーム展開。主要なターゲットとなるのはPlayStation VRとなるが、Oculus RiftでもOculus Touchの所有率の低さがネックになったように、PS VRでもPlayStation Move(2本)の所有率の低さ、挙動周りの精度の低さがネックで、精査するのはこれからでまだ決まったわけではないという。

 3つ目は11月18日から12月18日までの期間限定で実施された梅田ジョイポリスでのロケーションテストのようなアーケード展開。ちなみに梅田ジョイポリスでのテスト運用は大成功だったようで、セールス的には店舗内のアトラクション中2位で、今後も何かできないかと相談中だということだ。

 そして4点目は、「これは最終的にどうなるかわからないが」と断りを入れた上で、新作の開発も考えているという。現行の「エニグマスフィア」の延長線上にある「エニグマスフィア2」に相当するコンテンツになるのか、「エニグマスフィア」のVRゲームの開発ノウハウを活かしたまた別のタイトルになるのかはまだ未確定で、販路が大きく拡大されるHTC Vive版の結果やユーザーからの反応を踏まえながら決めて行きたいということだ。

 なお、ブースでは英語版が出展されていたが、中文版を用意しなかった理由は、単純にコスト的な問題だけでなくローカライズの問題もあるという。「エニグマスフィア」では、英語版の開発にあたり、ダイアログのテキストとボイスによる案内の両方を翻訳するフルローカライズが行なわれている。フルローカライズを行なった理由は、字幕を表示させると没入感が著しく削がれるため、音声もローカライズをせざるを得ないためだという。このためちょっと試しにローカライズ版を作って見るというわけにも行かず、VRタイトルの海外展開の難しさを実感させてくれた。

 開発を手がける杉山氏は、「今年はVRが普及するまでの我慢の年になる」と語り、大きなブレイクは期待せず、来たるべきVR時代に備えてノウハウを蓄積する段階だと捉えていると淡々と語ってくれた。代表取締役社長の新氏は、「VRは遊んでみないと魅力がわからないので、ぜひ1度触ってみて欲しい。ゲームのアップデートも行なっていきますし、タイムアタックのような新機能も入れて行くので、これからもぜひご期待下さい」とコメントしてくれた。先述したように「エニグマスフィア」は、3月には待望のHTC Vive版もリリースされる。新作を心待ちにしているHTC Viveユーザーはぜひ試してみてはいかがだろうか。

【「エニグマスフィア」スクリーンショット】