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Twitch COOのKevin Lin氏、基調講演でTwitchの歴史と今後の日本展開を説明

ウメハラ氏も登壇。新たに2つのギネス記録を獲得し、伝説の試合を振り返る

9月15日~18日 開催

会場:幕張メッセ

入場料:
一般前売券 1,000円(税込)
一般当日券 1,200円(税込)
小学生以下無料
Twitch COOのKevin Lin氏

 東京ゲームショウ2016のTwitchブースでは、ビジネスデイ初日となる9月15日、同社の共同創始者でCOOを務めるKevin Lin氏による基調講演が行なわれた。

 Twitchは世界的な地位を獲得しているゲーム映像配信プラットフォーム。Lin氏はその前身となるJustin.tvからの歴史を語るとともに、今後の日本における展開についても語った。

 Justin.tvは、誰もが利用できるインターネット生放送プラットフォームとして2007年に誕生した。6,000万ユーザーに利用される巨大なプラットフォームになったが、その先に何ができるかを考え、ユーザーが何に興味があるのかを調べた。結果としてそれはゲームだという1つの答えにたどり着く。

 当時は「StarCraft2」のβ版が出た頃で、社員もプレイしていた。ただ、社員達はJustin.tvではなく、他のビデオプラットフォームを見ながらゲームをプレイしていた。ゲームユーザーはJustin.tvを使っていなかったのである。そこで、ゲームユーザーは何を求めているのかを聞き、その経験を元にゲーム配信プラットフォームとしてTwitchがローンチされた。

 Twitchの重要な要素になったのは2つ。1つは、ゲームをしながらファンと交流する人が現われたこと。チャットが搭載され、生放送している人と交流できるだけでなく、チャットそのものがコンテンツの1つであると考えるようになったという。

2014年の話題(問題?)作「Twitch Plays Pokemon」

 「他にも年に1度くらい不思議な現象が起こる」として紹介されたのが、2014年初頭に登場した「Twitch Plays Pokemon」。1人用RPGである「ポケモン」をTwitchユーザーみんなで操作してクリアを目指すというもの。意思統一された操作は困難で、混沌としたエンドレスコンテンツになるのかと思われたが、16日という時間をかけてクリアされた。世界中のユーザーが操作し、24時間フル稼働した「Twitch Plays Pokemon」は、様々な伝説やスラングを生んだ。

 もう1つは、視聴者はプレーヤーとともにゲームをプレイしたいと思っていること。Lin氏は「これから発表できるサービスにゲーム会社に向けたものがあり、大量のプレーヤーが遊ぶ前提で開発に活かせる」という。

 現在のTwitchは、月間1億、日間1,000万のユニークユーザーをを数え、1ユーザーごとに1日平均で2時間利用されているという。日本からの利用も昨年だけで700万ユニークユーザーで、なおかつ1日の平均利用時間は4時間と、グローバルで見た時の倍に達する。

 Twitchを日本でローンチした後、「色々と勉強し、すべきことがある」と感じたLin氏は、「ウメハラ」こと梅原大吾氏をグローバルアンバサダーとしてTwitchに招いた。「彼のおかげで日本のマーケットを理解したし、日本文化を世界に発信することに大いに役立ってくれた」という。2014年にはカプコンと連携し、カプコンプロツアーを発表。「格闘ゲームコミュニティは日本発祥のもの」として、各国の大会を日本語で実況することにも取り組んでいる。

 今後も様々な発表を予定している。東京ゲームショウ2016では、一般日初日の17日にスクウェア・エニックスの橋本氏を招いて「ファイナルファンタジーXV」についての発表を行なう。また10月にある「TwitchCon」でも発表できることがあるそうだ。さらに日本では、Twitchキャラクターのデザインコンテストを開催。本日から2017年2月末までの予定で、Twitchのキャラクターを募集する。日本のイラストレーターが参加するのみならず、描く様子を配信してもらうことも織り込まれている。

 最後に日本向けのサービスについて、2017年初頭までにサイトの日本語ローカライズの徹底を図るとしている。また検索システムも改善し、動画を見つけやすくしていくことにも取り組んでいく。Lin氏は「日本のゲーム会社がTwitchの世界の視聴者にコンテンツを届けられるよう、よりよいツール・サービスの提供に取り組んでいく」と述べて講演を締めた。

Justin.tvとしてサービスが始まったが、ゲームユーザーに対しての人気がなく、ゲーム配信に特化したプラットフォームとしてTwitchが立ち上がった
日本でTwitchのキャラクターデザインコンテストを行なうほか、サイトの日本語ローカライズの完全化など、日本向けの施策を展開する
ウメハラこと梅原大吾氏も登場。2つのギネス記録の授与式が行なわれた

 またこのステージには梅原氏も登壇し、同氏へのギネス認定証授与式も行なわれた。今回の記録は、「ウルトラストリートファイターIV」で9月8日に2,187,714ポイントを獲得し最高ランキングを得たことと、3月8日に行なわれたJustin Wong氏との「ストリートファイターIII」の試合が5,385,142回の視聴数を得て「最も視聴されたビデオゲームの試合」になったことの2つ。

 受賞について梅原氏は、「子供の頃、学校の図書室でギネスブックを読んでいた。まさか自分が取れるとは思っていなかったので、純粋に嬉しい。今後も受賞できるように活動していきたい」と述べた。

 イベント終了後、梅原氏とLin氏にコメントをいただいた。まずLin氏に、日本にはニコニコ動画という強力な生放送プラットフォームがあるが、Twitchはどう特色を出していくのかを聞いた。「違う点はいくつかある。我々のコンテンツは、日本の方が見られる世界的なコンテンツが多数ある。ニコニコ動画には独特な経験をユーザーに与えるという特徴があるが、我々はそのコミュニティも1つになれるような特徴を与えていきたい。そして我々は無料で居続けたい。無料で誰もがコンテンツクリエイターになれる、誰もが生放送を発信し続けられる場所でありたい」と述べた。

 梅原氏と言えば、2004年のゲーム大会「Evolution」において、Justin氏との試合で劇的な逆転勝利を果たした有名なエピソードがある。その動画は、今も最も有名なゲーム動画と言っても差し支えないだろう。これについて梅原氏に聞いたところ、「あの試合、あの動画のおかげで、プロゲーマーとしての立場が作られたし、あれがなかったらプロゲーマーになっていなかった気がする。当時は何も考えずに、ただその場を盛り上げようとやったことだったが、過去の自分に『よくやってくれたな』と思う」と語ってくれた。