ニュース
NVIDIA、ノート向けGeForce GTX 10シリーズを正式発表
いよいよノートPCでプレミアムVRがフルスペックで楽しめる時代に
2016年8月16日 13:00
米NVIDIAは米国時間の8月15日、Pascalアーキテクチャを採用したノート向けGPU「GeForce GTX 10」シリーズを正式発表した。ラインナップはデスクトップ向けと同様に、ハイエンドのGeForce GTX 1080を筆頭に、1080、1070、1060の3モデル展開。本シリーズよりモバイル向けを示す末尾の「M」は付けず、スペック、性能共にほぼ同一としている。価格は未発表で、搭載ゲーミングノートPCの発売日は近日中を予定。
5月にデスクトップ向け「GeForce GTX 10」シリーズが発表され、ずば抜けた性能を持つGeForce GTX 1080の発売以来、注目が高まっていたノート向けシリーズがついに正式発表された。デスクトップ版と同じPascalアーキテクチャを採用するだけでなく、CUDAコアや周波数、搭載メモリも同一で、デスクトップ版と同等の性能を発揮するとしている。
正式発表に先駆けてタイのバンコクで開かれたアジアメディア向けブリーフィングでは、ノート向け「GeForce GTX 10」シリーズのプレゼンテーションとハンズオンが行なわれた。プレゼンテーションは情報漏洩を防ぐために録音、撮影、一切禁止という厳しい条件で行なわれ、ハンズオンでは、「GeForce GTX 10」シリーズ搭載ゲーミングノートPCを使ったVRの試遊をはじめ、実際にそのパフォーマンスを試すことができた。各社のノートPCをずらりと10台以上並べた光景からは、ゲーミングノートPC市場を一気に10シリーズに塗り替える準備は万端といった印象を受けた。試遊レポートについては別稿にてお伝えするとして、本稿ではプレゼンテーションの内容をまとめておきたい。
ノート向け「GeForce GTX 10」シリーズの最大のトピックは、VRへの完全対応だ。「GeForce GTX 900M」シリーズはかろうじて最上位のGeForce GTX 980Mのみが対応していたが、「GeForce GTX 10」シリーズではエントリーモデルのGeForce GTX 1060からVRに対応する。デスクトップ向けだとGeForce GTX 970以上、ノート向けだとGeForce GTX 980Mのみが享受できたPCならではのプレミアムVR体験をノートPC環境で楽しめるようになるわけだ。
VRが楽しめるということは、リッチなグラフィックスを採用したAAAタイトルはもちろんのこと、4Kディスプレイ搭載モデルなら4Kゲーミングも楽しむことができる。すなわち、ノート向け「GeForce GTX 10」シリーズは、ノート環境であらゆるPCゲーミング体験をフルサポートする初のGPUということになる。
NVIDIAが計測したベンチマーク結果によれば、GeForce GTX 1080環境で、NVIDIAイチオシのFPS「オーバーウォッチ」では、フルHD環境で147fps、4K環境で89fps、「DOOM」ではフルHD環境で145fps、4K環境で70fpsという極めて良好なパフォーマンスをたたき出せるということで、その後に行なわれた「DOOM」のデモでは120Hz表示対応のMSI製ゲーミングノートで、ヌルッヌルの超快適プレイを見せてくれた。
また、Pascalアーキテクチャを採用していることからオーバークロック耐性も高く、メーカーレベルでのオーバークロックにも対応する。その分、冷却や排熱には特段の工夫が必要になりそうだが、2016年2月に登場して話題を集めたASUSの水冷ゲーミングノートPC「ROG GX700VO」のような強力な冷却システムとセットで、オーバークロックを実現したチャレンジングなゲーミングノートPCが次々に誕生しそうだ。
そのほかノート向け「GeForce GTX 10」シリーズの細かいアップデートとしては、Pascalアーキテクチャによる省電力化に伴い、バッテリー駆動時間が30%程度伸びており、かつNVIDIA独自のバッテリー駆動最適化ツール「Battery Boost」もパワーアップ。具体的にはこれまで可変だったフレームレートが安定するようになり、バッテリー駆動時でもより安定したフレームレートでゲームが楽しめる。
また、NVIDIA独自のディスプレイ同期テクノロジーG-Syncもノート向けに改めて最適化され、ゲーミングノートPCのモニターの性能向上に合わせて、G-Syncも120Hz表示に対応し、フルHD(1,920×1,080)を上回るWQHD(2,560×1,440)までの表示にも対応する。担当者によればG-Sync採用メーカーも増え、今後より多くのゲーミングノートPCでG-Syncのメリットが享受できるようになる見込みだ。
そしてVR。VRについては、VR向けライブラリ「NVIDIA VRWORKS」が多くのVRタイトルで採用され、GeForce GTX 10シリーズに最適化されていることをアピール。具体的には「Pool Nation VR」、「EVEREST VR」、「Unreal Tournament」、「Obduction」、「ADR1FT」、「RAW DATA」などのタイトルを取り上げ、これらの多くは、実際にハンズオンセッションでGeForce GTX 10シリーズ搭載ゲーミングノートを使って試すことができた。
さらに、VR対応と並んでGeForce GTX 10シリーズの魅力のひとつであるスクリーンショット撮影ツール「ANSEL」も、ノートPCでフル活用できるようになる。目玉タイトルのひとつで対応が遅れていた「Witcher 3」もようやく「ANSEL」に対応し、ゲームをポーズして自由な視点から撮影できる「フリーカメラ」や、従来の33倍(63,360×35,640)という解像度でスクリーンショットが撮れる「超高解像度」、自家製のお手軽VRコンテンツとしてはき出せる「360度キャプチャ」など、「ANSEL」独自の機能をフルに活かした画面撮影がノートPC上でも楽しめるようになる。
現時点でノート版GeForce GTX 10シリーズを採用表明しているメーカーは、ALIENWARE、HP、Lenovo、ASUS、GIGABYTE、MSI、Razerなど13社。気になるのは価格だが、今回のプレゼンテーションではGPU単体の価格は明らかにされず、PCベンダーがGeForce GTX 10シリーズ搭載ゲーミングノートPCを発表するまでわからない。GPU単体ではおそらくデスクトップ版より高くなる見込みで、ハイエンドのGeForce GTX 1080搭載モデルは30万円を超えてきそうだ。ともあれ、PCゲーマーには要注目のノート版GeForce GTX 10シリーズ。発売日が待ち遠しい限りだ。