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SIEJAデピュティプレジデント織田博之氏インタビュー

中国でのPS VR展開経緯や独自のセンサーシップなど中国最新事情を聞く

7月28日~7月31日開催



会場:Shanghai New International Expo Center

 ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジアは、7月27日に中国上海、翌7月28日に香港でプレイステーションプラットフォームに関するプレスカンファレンスを開催した。それぞれ現地で翌日から開催されるゲームショウに合わせてのプレスカンファレンスで、SIEJAでアジア市場を統括する織田博之氏は、その両方でホスト役を担った。本稿では、中国での発表会直後に行なわれたメディアインタビューの模様をお届けしたい。中国での発表会の模様は現地レポートを参照いただきたい。

「中国の皆様に喜んで頂くためには、世界同発、アジアで最初の発表しかないと考えた」

発表会後にインタビューに応じる織田博之氏
プレゼンテーションを行なう織田氏
アジア地域のセールス状況を発表する織田氏。中国単体では発表していないが、他のアジア地域同様、堅調に推移しているようだ
中国でも10月13日発売!

――中国展開開始から1年が経過しましたが、どのような感想をお持ちですか?

織田氏:一番の印象は、今までプレイステーションを遊んだことがないという新しいお客様にお買い上げ頂いているのが非常に嬉しいです。

――事業として目標に対して達成はしているのでしょうか?

織田氏:そうですね。これはパートナー様とも話していることですが、中国では14年間、コンソールゲームが販売できない状態でしたので、まずは市場を作るために、お客様を増やして行きましょうということで活動しておりますので、その意味では徐々に成果が上がっているかなとは考えています。

――中国ではe-Sportsのプレイ人口が1億人いるという話もありますが、この力をプレイステーションプラットフォームで利用するという考え方はありますか?

織田氏:そうですね、やはりPCオンラインゲームで大きくなった市場なので、コンソールゲームで同じアプローチは通用しないと思いますので、コンソールゲームならではの体験とか、提供の仕方、プロモーションの仕方などで、少しずつこちら側に来て頂ければと考えております。

――VRについてもハイエンドはHTC Vive、ローエンドはGoogleのカードボードまで中国ではVRが来ている印象があります。それを踏まえて今回、PlayStation VR(PS VR)を中国で世界同時発売することについての抱負を聞かせて下さい。

織田氏:私のプレゼンテーションでご紹介しましたけれども、中国のローカルでVRを作られているデベロッパー様、パブリッシャー様が非常に多いんですね。これは他の地域と比較してもかなり前のめりで(笑)、VRに入っていこうというお客様が多いです。これはデベロッパー様だけでなく、ユーザー様もそうで、優れたVR体験を望んでいることは肌で感じていたので、ここは何としても世界同発で行きたいと。

――PS VRのアジア展開はある程度予想できていたことですが、中国で最初に発表した意図とは何でしょう?

織田氏:PS4そのものは2015年から展開していますが、PS VRはこれから発売されるデバイスで、これだけ中国の皆様に興味を持って頂いているので、我々としてできるコミットメントとして中国の皆様に喜んで頂くためには、世界同発、アジアで最初の発表しかないと考えました。

――それはVRについては台湾や韓国よりも中国のほうがプライオリティが高いということですか?

織田氏:どこが重視と言うよりも、ご存じだと思いますが、中国は、台湾や韓国と同じようなタイトル展開が出来ない中で、熱心にお待ち頂いている中国のユーザー様にメッセージをお届けしたいと考えました。

――ということは、アジアでは中国先行というわけではなく、アジア全体が世界同時発売ということですか?

織田氏:それは明日、香港で全アジア向けの発表させて頂きますので、それを楽しみにして頂ければと(笑)。(編注:既報のようにアジア全体で世界同時発売することが発表された)

ChinaJoyでの出展タイトル。センサーシップ通過前のためかグローバルと比較して大人しめのラインナップだが、「Ace Banana」など中国独自タイトルが含まれていることに注目したい

――中国でのローンチタイトルはどうなりますか?

織田氏:それはまだ決まっていませんが、明日からのChinaJoyでも14タイトルを出展します。ただ、中国ではセンサーシップもありますし、ゲームのチューニングもあります。10月13日の発売まであと2カ月以上ありますので、なるべく多くのタイトルを揃えていきたいと考えております。

――やはり中国は独自のセンサーシップがあるので、グローバルとローンチタイトルが同じというわけにはいかないわけですか?

織田氏:そうですね、まったく同じというわけにはいかないと思いますが、逆に中国ローカルの独占配信という形で中国のユーザーさんに楽しんでいただけるかもしれません。

――今回、完美世界さんやSoftstarさんなど中華圏のメーカーがPS4向けにタイトルを開発していますが、サードパーティーサポートはどのような内容なのですか?

織田氏:海外の作品をパブリッシングする際に、現地パブリッシャー様の力を借りることが多いんですね。今回だと「THE KING OF FIGHTERS XIV」などがまさにそのパターンですが、現地パブリッシャー様とリレーションが作れたということがまず非常に心強いことだと思っていますし、このアプローチは今後も続けていきたいですね。

中国独自のデベロッパー支援プログラム「China Hero Project」
中国独自のPS4タイトル(一部)

――「China Hero Project」は大変感銘を受けました。中国のインディを育てる上で、日本や欧米との違いは感じましたか?

織田氏:日本欧米はコンソールゲームは20年の歴史があるのに対して、中国ではコンソール向けにゲームを作ったことがないというメーカー様が数多くいらっしゃいます。メーカーのファンディングだけでなく技術支援とか、コンソールゲームならではの作り方、ゲームエンジンの提供など、我々だけでなくてEpic様、Unity様をはじめパートナー様と一緒に、コンソール向けに開発していただけるメーカーを支援するという内容になっています。すでに反響が大きくて、我々としても重視していきたいプロジェクトです。

――パートナーにはシリコンスタジオやCRIWareといった日本のメーカーの名前もありましたが、これは日本のメーカーさんにも機会を提供しているということですか?

織田氏:機会というよりは、こちらからこういうことをやるんでとお話しさせていただいたら「ぜひ一緒にやらせて欲しい」というパートナー様が多くて大変助かっています。

――VRタイトルに関するセンサーシップは、通常のゲームのセンサーシップと何か違いはありますか?

織田氏:今のところ違いがあるという報告は受けていません。ただ、VR専門のセンサーシップもないということなので、審査する部門も同じで、完成版を提出してチェックを受けてローンチしていくというプロセスも変わりませんし、ゲーム以上に複雑化することはないだろうと考えています。

――センサーシップについて、以前のようなイレギュラーな印象はなくなったのでしょうか?

織田氏:プロセスそのものは大きくは変わっていませんが、お互いがお互いの顔と名前がわかってきたので、向こうもコントロールできているかどうかが肝心なので、ひどいことをしていないとか、コントロールしていないコンテンツを持ち込むとかしていないということを1年半やり続けていますので信頼関係が醸成できているというのは大きいかなと感じています。

中国のセンサーシップでは経験と実績を積み上げている「ファイナルファンタジー」シリーズ
昨年発表されたPS4版「FFXIV」は、まだサービス開始の目処が立っていないということだ

――センサーシップという点では、「ファイナルファンタジー」シリーズは、当局に信頼されているという印象がありますよね。だからこそ今回20分という時間を割いて「ファイナルファンタジーXV」の中国展開をアピールしたのでしょうか?

織田氏:仰るとおりです。ゲーム産業は中国は文化部が担っていて、彼らの目的はコンテンツを広める、中国のコンテンツ産業を育成することで、特に海外の良質なコンテンツを中国で販売して産業の発展育成に努めるというのが最大のモチベーションですので、「FF」は海外でこれだけ売れているタイトルですし、彼らの意図に合致したタイトルなので、非常にウェルカムと言うことだと思います。

――最近中国の3DCGスタジオの開発力が高まっていて、「西遊記」のような作品が興行成績も非常に高いと言うことで、PlayStation Networkにおける映像コンテンツの充実化についてはいかがですか?

織田氏:それは重要な宿題だと思っています。ご存じの通り、中国には様々な規制がありますので、ビデオサービスをどう展開していくかについて、継続的に勉強しているところです。

――今回会場の入り口には中国オリジナルデザインのPS4が展示されていましたが、「FFXV」でもオリジナルモデルを発売する予定ですか?

織田氏:それについてはまだお答えできません(笑)。

――「FFXV」の体験版はグローバルと同時配信だったということですが、中国での反応はいかがでしたか?

織田氏:それは非常に良くて、「いつ出るんですか?」という声を多数頂きました。

――昨年発表したPS4版「ファイナルファンタジーXIV」の準備状況はいまどのような状態ですか?

織田氏:PS4版「FFXIV」はまだ中国ではサービスインしておりません。Shanda様と話をしながら進めて行っている段階で、いつから始められるというお話はまだできる段階ではありません。

――ではひょっとすると中国では「FFXV」のほうが先になるかもしれませんか?

織田氏:それはちょっと私の口からは何とも申し上げられないですね(笑)。

――ひょっとすると今年両方楽しめるかもしれない?

織田氏:それもどうでしょうか(笑)

――中国発のAAAタイトルの開発はどれぐらい進んでいますか?

織田氏:今日もトレーラーで公開しましたが、「Neverwinter Online」。これはPCでも、Microsoft様が先に出していますが、PS4にも出して貰えることが決まりました。中国でのゲームの開発力は非常に高まっていまして、ぜひPS4にエクスクルーシブとは言わないまでも、開発していただけないかと話をさせていただいているところです。

――ありがとうございました。