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SIESH、中国上海でプレスカンファレンスを開催
今年は「FFXV」推し。サプライズは世界同発でのPS VR中国展開の発表
2016年7月28日 00:08
ソニー・インタラクティブエンタイテインメントジャパンアジアの中国法人SIESH(SIE上海)は7月27日、中国上海でプレスカンファレンスを開催し、2016年のタイトルラインナップと共に、PlayStation VR(PS VR)の中国での発売日をグローバルと同日の10月13日とすることを正式発表した。
翌28日より開幕するChinaJoyに先駆けて毎年恒例行事となっているSIESHのプレスカンファレンス。例年はE3スタイルで次から次にクリエイターを壇上に招き、2時間にわたって新作タイトルをたっぷり紹介していくスタイルが採られるが、今年は全体を1時間に絞った上で、その中の1/3にあたる20分を「ファイナルファンタジーXV」に割き、今年の中国展開は「FFXV」推しで行くことを明確にし、その上で中国展開を貫くストラテジーを紹介するというメッセージ性の高い内容だった。
最初に挨拶を行なったSIEJAデュピティプレジデントの織田博之氏は、中国市場はSIEグループ全体として依然として非常にプライオリティの高い市場であると語り、3つのアプローチで中国市場の拡大を目指していることを明らかにした。
1つは海外の有力タイトルの中国展開。1つは中国独自タイトルの創出。そして3つ目が中国デベロッパー向けの開発支援となる。この3つのアプローチは、昨年の進出開始から続いている内容ではあるが、今回新しかったのは、具体的な開発支援プロジェクトとして「China Hero Project」が発表されたことだ。
「China Hero Project」は、SIESHが中心となって、SIEと関係の深い、Epic GamesやSilicon Studio、CRI Wareといったミドルウェアメーカーとタッグを組み、中国のゲームデベロッパーに対してコンソールゲームの特別な支援を行なうというもの。
発表会では、その支援第1号タイトルとしてStudio Surgical Scalpelsが手がける「Project Boundary」が正式発表された。Unreal EngineベースのPS4専用タイトルとして開発されており、ゲーム内容は、宇宙空間を舞台にしたスペースシューティング、といっても宇宙戦闘機ではなく、宇宙服に身を包んだ人間による銃撃戦で、モチーフと良い、クオリティといい、おそらくE3で「Call of Duty」シリーズの新作といっても、ほぼ全員が信じてしまうぐらい高いクオリティを実現していた。
この「China Hero Project」がユニークな点としては、BtoBの一環として水面下のみで交渉を進めるのではなく、Whiz Partnersらパートナーメーカーと組んでファンドを設立し、公募を掛けるところ。募集は8月15日から9月15日までで、PlayStation中国のサイトで行なわれる。来年、再来年には、このプロジェクトから、続々と中国産PS4タイトルが生まれるかもしれず、非常に楽しみだ。
さて、本発表会のメインイベントとなった「FFXV」パートでは、ディレクターの田畑端氏が登壇し、20分にわたって「FFXV」劇場が展開された。公開された情報そのものに初公開情報は含まれていなかったものの、E3までに公開された最新トレーラーに簡体字を被せ、非常に丁寧な仕上がりだった。
田畑氏は、「FFXV」が中国で展開される初のコンソール向けナンバリングタイトルであることから、「FF」とは、そして「FFXV」とは、最後に「FFX」ユニバースについてトレーラーを交えながら紹介。CG映画作品「キングスグレイブ ファイナルファンタジーXV」や、ショートアニメ「ブラザーフッド ファイナルファンタジーXV」なども取り上げ、中国展開に向けて準備を進めていることを明らかにした。
ちなみに「FFXV」本編を含めた「FFXV」ユニバース全体の中国でのライセンスは、中国最大規模のメディアグループ東方明珠が獲得しており、センサーシップが通り次第、中国展開が始められる準備が整っている。東方明珠といえば、SIEやMicrosoft Chinaが合弁会社を設立しているメーカーで、SIEとしてはパートナーに恩返しする絶好のチャンスでもあり、並々ならぬ力を注いでいるのも頷ける。このあたりのストラテジーは、中国市場に強いスクウェア・エニックスらしい選択と言える。
田畑氏がゲームの紹介の中で、注意深く織り交ぜていたメッセージは「正規品」という言葉だ。正規品の「FF」シリーズは今回が初だが、過去に「海賊版」の「FF」シリーズは大量に販売され、だからこそ、中国では初の展開であるにも関わらずすでに多くのゲームファンが付いている。田畑氏は、正規品を購入してもらうことで、買ってくれたユーザーとアフターサービスとして長い接点を持ち、「FF」シリーズが使命として掲げる“コンソールゲーム市場を開拓していく役割”を中国市場においても目指していく考えを明確にした。
中国のゲームファンにとっては残念ながら発売日は明らかにされなかったが、「FF」シリーズは過去に「FFX X-2」や「FFXIV」など、いくつかのタイトルで中国のセンサーシップを通過しており、発売日がアナウンスされるのは時間の問題と言える。田畑氏は、通常版に加え、初回限定版も用意していることを発表し、さらに中国のゲームファンにとってベストゲームになる挑戦を行なっていくとし、「体験したい方はPS4を購入して、発売日の発表を待って下さい」と語りかけ、「FFXV」劇場を終えた。
SIESH総裁の添田武人氏からは、そのほかの主要ラインナップが発表された。まずファーストパーティータイトルとしては、「GT Sport」、「The Last Guardian」、「GRAVITY RUSH 2」の3タイトルがアナウンスされた。いずれも発表される度に歓声が上がり、PSファンが根付き始めていることを感じさせてくれた。
サードパーティーでは、スクウェア・エニックスと並んで、アジア市場における最重要パートナーのコーエーテクモゲームスから「討鬼伝2」、中国でもっとも人気の格闘ゲームシリーズ最新作「THE KING OF FIGHTERS XIV」、韓国Joycityが開発し、中国では完美世界が販売する「3on3 FREESTYLE」。
そして完美世界からもうひとつ「Neverwinter Online」のPS4展開もアナウンスされた。「Neverwinter Online」は、完美世界がMicrosoft Chinaと組んでXbox One独占タイトルのひとつとして開発したMMORPGで、Xbox Oneの中国展開の起爆剤として期待されたタイトルだ。Xbox Oneの中国販売不振を受けての判断なのか、もともと1年程度のタイムエクスクルーシブ契約だったのか、その点はわからないが、いよいよPS4でも「Neverwinter Online」が遊べるようになる。
添田氏は、「時間の関係ですべて紹介できないが、そのほかにもまだまだある。今後も国内外の素晴らしいタイトルをどんどん中国に展開していきたい」と語り、発表会を締めくくった。と思いきや、添田氏は笑みを浮かべたまま、会場の反応を伺っている。会場からは「VR!」、「VR!」のかけ声が次々に掛かり、我が意を得たりとばかりに「もうひとつ発表があると語り」、織田氏とバトンタッチした。
織田氏からは満を持してPS VRの中国展開が正式発表され、間髪入れずに10月13日という世界同時となる発売日、そして価格まで発表され、まさか発表されるとは思っていなかった会場からは大きな歓声が上がった。
パッケージは、PS VR単体(2,999元、約45,000円)に加えて、PS Cameraを同梱したPS VR基本セット(3,299元、約50,000円)、PS CameraとPS Moveコントローラーを同梱したPS VR高級セット(3,699元、約55,000円)の3種類を用意し、いずれも中国独自の1年保証を付け、並行品をシャットアウトする。翌7月28日からは22店舗のゲームショップと、7店舗のオンラインショップで予約受付を開始するという用意の良さで、同時に22店舗では、体験コーナーも常設し、触った上で予約できる。
今年のSIESHのスローガンは「下一個主角 就是你!(次の主役はあなたです)」。中国でも即予約完売の“PS VR旋風”を巻き起こせるか注目したい。