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【夏休み特別企画】君は抜群の発信力を誇るゲーセン「ファンタジスタ」を知っているか?

Twitchを使った配信も実施! イメージキャラクター「ジスたん」誕生秘話

Twitchの公式チャンネル
大会の様子

――ファンタジスタは格闘ゲームの対面台が多いですね。最近はあまり乱入しなくなったのかと思っていました。

大島氏: まだまだありますよ。やはりワンコイン入れて対戦するのは別格の重みというか楽しみがあるので。家庭用だとプレイは無料なので、ワンプレイあたりの内容が軽くなってしまう傾向が少しあると思います。

――対面だと、それがないですか?

大島氏: 家庭用のゲーム大会なんかでは、隣同士で対戦したりしているんですが、隣同士だと相手がボタンを押すのがわかっちゃうんです。だからゲームセンターでやるのとは、ちょっと違う感覚になってしまうので、ゲームセンターのほうが好きという人は多いですね。台の反対側でやるのが1番という。うちのお客さんの中にも家庭用でプレイしている人もたくさんいるのですが、やはりゲームセンターにはゲームセンターの良さがあるということで。

――無料なら、負けてもいいやって思ってしまいますものね。

大島氏: そうなんですよ。100円入れてると技の1発1発にかける重みみたいなものが違う気がします。しかも今はカードシステムで結果が残るので、負けたら負けが1付いてしまうんですね。それを付けたくないという気持ちもありますので。そういう意味で誰でも真剣勝負が楽しめる場所と言えるかなと。

――結果が残るのは、緊張しますね。

大島氏: 結果が残るなら集中力も発揮されやすいですよね。でも時には結果を残さない遊びをしたいという気持ちもあるので、そこは難しいところです。

――自分のメインキャラで遊ぶには、カードを使わざるを得ないですものね。でも、それだと結果が残ってしまうと。

大島氏: カードを使わずに遊んで、本気じゃないと思われても嫌ですし、難しいですよね。カードで相手の名前がわかるようになったので、それがコミュニケーションのきっかけにはなるんですが、名前だけじゃなくどのくらいのレベルなのかもわかってしまうので、相手を選んじゃうことがあって、強い人を避けることもあるし、逆に弱い人を避けることもあります。ああ、この人は初心者だからやめておこうという感じで。それで結果的に対戦が起きなくなることもあるので、どちらがいいか言い切るのは難しいです。初心者の人は上級者の人に本気でやってほしいと思っているかもしれないし。

――ボコボコにされると、もう2度とやらないと思ってしまう人もいるかもしれないですね。

大島氏: そういう人もいるかもしれないですね。いわゆる初心者狩りみたいなことが問題になります。○○という名前のやつが初心者狩りに入ってきたと、ネットで晒されたりしていますからね。今は、先にツイッターでコミュニケーションをとって、そこからゲームセンターに来るという人もいます。プレーヤーはゲーセンを探す手段に使えますし、お店は情報発信したり、お客の意見を聞ける機会が増えるので、インターネット、ソーシャルネットワークサービスはゲームセンターとものすごく相性がいいですね。これらを上手に使っていければ、ゲームセンターもまだまだいけるんじゃないかと思います。

――大会もかなり開催されていますね。1人でこなすのは大変そうです。

大島氏: だんだんと、お客様が自主的に手伝ってくれるようになってくれています。最初は本当に僕1人でやっていたので、知識のないゲームでも自分で実況をしたりしなければいけなかったんです。本当にしどろもどろで、状況を説明するのが精いっぱいだったんですが、最近はお客さんがマイクを持ちたがってくれるようになって。

 今はゲームの実況プレイがすごく流行っていますが、当時はそんなものはなかったので、みんなマイクを持つのを恥ずかしがっていて、なかなかやってくれる人がいなかったんです。ただ、まだ格闘ゲームの大会をやっている店がそれほど多くない時期だったので、今度はこんな大会をしませんかと、お客様が企画も持ってきてくれるようになりまして、そういう人はそのまま実況とかもやってくれて。そういうパターンがだんだん増えてきましたね。ファンタジスタなら大会やってくれるだろう、みたいなイメージがついてくれたのもあるかなと思います。

――今のようにブログもやり、ツイッターもTwitchもやりというのはいつからですか?

大島氏: ちょうど3年前からですね。

――何かきっかけがあったんですか?

大島氏: お客様がうちでやっているイベントをネットで配信したいと言われたんです。それまでは配信もしていなかったので。その配信の環境を整えるために、じゃあツイッターに登録しますという格好で、本当に結果論ですね。告知用というか。配信を今からやりますとか、そういうお知らせをするためにツイッターを始めて。それでお客さん1人1人とツイッターで会話ができるじゃないですか。それがものすごくよくて。それまではお店に来てくれたお客さんと店内でちょっと話をする、くらいしかできなかったのが、ツイッターのおかげでもっと深いところまで話せるようになって、お客さんが求めているものとか、こっちが何を提供できるかとかそういう話がどんどんできるようになりました。ゲームの配信もなかなか好評だったので、配信できるゲームをどんどん増やしていって、どんどんそれも宣伝していって。その配信を見てきてくれたお客様もいますし。

――配信はどういった形でやられているんですか?

大島氏: 最初はUstreamを使っていたんですが、途中で仕様が変わって、アーカイブスの保存期間が1カ月になってしまったので、そのタイミングでニコ生かTwitchに移動することにしました。ちょうどその頃に、Twitchの日本の担当の方とお話をする機会があって、もっとゲームの配信の地位を上げたいというTwitchの理念を聞きました。それにものすごく共感したのがTwitchにした最大の理由です。もう1つ、ニコニコ生放送は割と年齢層が低くてちょっと荒れる傾向があって、それがあまり好きではなかったこともあります。コメントが欲しいだけならニコ生が1番だとは思いますけど、Twitchは匿名ではないので、発言に責任があり荒れにくいこともあって、Twitchに切り替えました。その時のことに関してもブログに記事を書かせてもらっているので、そちらのほうにもう少し詳しく書いてあると思います。

――普段は店内にカメラを設置して配信しているのですか?

大島氏: ゲーム機に映像の出力端子があるので、それをコンバーターで変換、分配してPCにつないでいます。PCを2台店内に置いていて、いろいろなゲーム機から配線を出して、天井を這わせてPCにつないで無線LANで配信しています。

――直接画像を流しながら、それに実況をつけて配信しているのですね。

大島氏: そういう形ですね。マイクもPCに繋いで、ゲーム音とミックスしています。

――お店の協力がないと絶対に無理ですね。

大島氏: そうですね。でも今はやっているお店が増えたんじゃないかなと思います。僕が昔働いていたお店さんなんかは、そういうゲームマニアはあまりターゲットにしていなかったみたいなんですけど、最近はそういう対戦ゲームが好きな人に対しても対応しているようです。

――もう実況文化が無視できなくなっているんですね。

大島氏: そうですね。ゲームをプレイする、と言うだけにとどまらないゲームの楽しみ方ができてきてるんじゃないかと思います。

――いま毎週のように大会を開催されていますが、あれはすべてご自分で企画されているんですか?

大島氏: 最初のきっかけとしては基本的にお店で考えているんですが、お客様のほうからこのゲームの大会をやりたいという意見をいただいて、じゃあ1回やってみましょうということで、やってみて、それでお客様が来てくれたら、じゃあ毎月やりましょうということになって、それをずっと続けている状態と言うほうが近いかも知れません。

イメージキャラクター「ジスたん」4コマ漫画も連載中

公式イメージキャラクター「ジスたん」
ジスたん専用のツイッターアカウントもある
「ポプテピピック」の大川ぶくぶ氏による4コマ漫画も公式ツイッターで連載中

――イメージキャラクターなどのブランド戦略について、教えてもらえますか。

大島氏: イメージキャラクターの「ジスたん」を、作らせていただいてます。「ムラタ式最大反撃」という格闘ゲームを応援するドリンクがあるんですが、それを作っている方と親しくする機会がありまして、割とその方がなんでも思いついたことはチャレンジしてしまおうというタイプだったので、僕もそれに影響を受けました。それからは、やってみようかどうしようかと思ったことは、全部挑戦するようにしています。

 その中の1つとして、イメージキャラクターを作りました。とりあえずやってみようと。でもやるからには、一発屋にならないように、大事に扱っていこうと思いました。ファンタジスタというお店を愛してくれるお客様たちは、もっとファンタジスタをほかの人にも知って欲しいと思ってくれているみたいなんです。それを後押しする役割をしてくれています。

――かわいいですよね。IP管理はどうされているんですか?

大島氏: 商標登録なんかも調べたんですが、お金がかかるので、なすがままです(笑)。逆にこれを利用してもらって、お客様が喜んでくれるなら嬉しいです。使用に制限はないので。

――誰でも使っていいんですか?

大島氏: ジスたんがファンタジスタのキャラって言うのを添えてもらえれば、誰でも使って良いです。同人誌を出してもらってもいいし、コラ画像を作ってもらってもいいし、知名度が上がることがゲームセンターの生き残りに大事なことだと思うので。

――個人経営のゲームセンターでキャラ作ってるって、全国的にも類を見ないですよね。

大島氏: そうなんですよ。だからファンタジスタは一体どこに向かってるんだとお客様によく言われます。でも、そう思われるくらいのことをやっていかないといけない時期になってるのかなと感じます。そう思うようになったのもこの3~4年くらいかな。当初は細々とやっていこうという感じだったんですが、ある時期から足跡を残していこうという感じに、僕の意識も変わりました。きっかけはいくつかあるんですが、「アールの部屋」と言うネット番組の取材を受けたことと、ムラタ式最大反撃の人と出会えたことが大きな転機でした。ゲームセンター自体の存続が危ぶまれるようになったこともあって、自分にできることを改めて考えるようになったのもあります。またSNSでたくさんのお客様とコミュニケーションをとれるようになって、情報発信ができる立場になった事で、それを実現する手段を見つけた、という感じでしょうか。ブログもムラタ式最大反撃さんのブログサイトに寄稿する形式で書いてます。

――今は、岡山にファンタジスタありと全国的に知られてきましたね。

大島氏: 実物は大したことがないんですが、イメージだけ膨らんじゃってる気がするので、そのあたりはちょっと怖いです(笑)。

――すごいゲーセンだと思われてますよ。

大島氏: ほかのゲームセンターの方からも、あの有名なファンタジスタですかとか言われたりするんですが、そんな大したものじゃないので恐縮しまくりです。ゲームセンターってお店によってそこまで違うものではないんです。人気のあるゲームが一通りそろっていたら、どこに行っても同じような店になるじゃないですか。そういう意味では、今は名前が独り歩きしている感じで、怖いところでもあります。

――小売業でも年商1億円の店が実は小さいお店だったということがありますね。

大島氏: ほかのお店から参考にしたいから、何がすごいのか教えてくれと言われても、何も言えないですよね。めぐりあわせがうまく重なって、今がある感じなので。

――今後やってみたいことって何かありますか?

大島氏: やってみたいというよりは、やり続けたい、というのが1番ですね。ジスたんに関しては、まだ発表できないんですが、ちょっと面白い展開ができるんじゃないかというお話をいただいています。あとはご存知の通り、大川ぶくぶ先生に4コマ漫画を描いてもらっていますので、こちらは楽しんでもらえればいいかなと。個人的にはとりあえず年金がもらえるまで続けたいと思ってます。ラインナップが整ってようやくゲーセンとして完成してきた感じがあるので、ここからの機械の取捨選択は今までよりも難しくなりそうです。

 あ、やってみたいこと1つありました。以前クラウドファンディングを使ったゲーセン復活プロジェクトというのがあり(注:デイトナ志木復活プロジェクトのこと)成功したのですが、今現在進行形で残っているうちがクラウドファンディングを使って新作ゲームを購入したり、イベントを開催したり、ということができないだろうかと考えたりすることはあります。

――今後の目標はありますか?

大島氏: 以前はただ、ゲーセンやりながら生活ができれば良いや、程度に思ってたんですが、ここまで来ると最終目標は、ファンタジスタというゲームセンターがあったことをみんなに覚えててもらうことでしょうか。それだったら人生生きててよかったという甲斐があるじゃないですか。歴史に名を残すというといい過ぎですが、せっかく生きてるんだから、何か残せたらいいなという気持ちはあるので。みんなに覚えててもらえるのは、すごく嬉しいことですし、そのために何ができるかな、というのはいろいろ考えてます。それから、今遊びに来てくれてるお客さんともこれから一緒に年齢を重ねて、ずっとファンタジスタで一緒に遊んでいけたら最高です。

――どんどん支店を出して、100号店まで作るぞというような夢ではないのですね。

大島氏: 今後もこの1店舗でいきます。ファンタジスタ岡山店を出して、と言われることもあったんですが、たぶん出してもすぐにつぶれちゃうと思うんです。同じお店はもう二度と作れないので、今、みんなで作り上げたこのお店を守っていくことと、今来てくれているお客様がこれからも来続けてくれるように、お客さんが望んでいることをできるだけ提供できるように頑張りたいと思います。

――最後にゲームセンターのファンにメッセージをお願いします。

大島氏: 巷では「ゲームセンターは終わりつつある」とか言われてますけど、今の時代消えつつある他の業種に比べると、ゲーセンはプレーヤーひとりひとりの力が届く場所だと思います。世代を超えて仲間を作れるこんな場所はなかなかないと思います。いま、家庭用ゲームでも面白いものがたくさん出ていますが、ゲームセンターっていろんな人が出会える場所なんで、お店に来て自分が好きなゲームの仲間を見つけて欲しいですね。

 仲間ができたら、ゲームの楽しさが増えるのはもちろん、実生活も充実するし、もうやめられなくなると思うんです。コミュニティができますから。大会など家庭用では味わえない臨場感もありますし、ゲーセンはそういう盛り上がりを直接身近に感じられる場所でもあります。自分で大会を企画することもできますし、して欲しいですね。昔は不良の貯まり場みたいな怖いところだったんですが、今は全然そんなこともないですし、スマホばかりいじってるような若い子たちにも、是非足を運んで欲しいですね。

――ありがとうございました!