ニュース
E3を騒がせ続ける謎のインディゲーム「Cuphead」最新情報
何故ここまで人を惹き付けるのか、その謎に迫ってみる
2016年6月18日 16:34
世界中のXbox担当を惹き付けて放さない謎のタイトルがある。カナダのインディデベロッパーStudio MDHRが手がけているアクションゲーム「Cuphead」である。カップ型のキャラクターを主人公に、1930年代のカートゥーン的世界観の2Dフィールドを舞台に、様々なボス戦を繰り広げていくアクションゲームである。
謎なのは、インディゲームなのに3年もE3に出ているということと、それなのにいまだに発売時期が2016年としかわからないこと、インディの試遊台は1台限定が暗黙のルールなのに4台もあり、下手なフルプライスゲームよりも人気があること、そして大半の人が3分持たずにゲームオーバーになるにも関わらず、満面の笑みを浮かべて試遊を終えることだ。
筆者はこの謎を解くために、「Cuphead」コーナーに通い詰めた。取材の手前に立ち寄り、終了後に立ち寄った。「Cuphead」は誰もが速攻でゲームオーバーになるため、1人が3プレイやっても10分掛からず終了し、回転が速いことを知っているからだ。E3会期中10回ぐらいプレイしただろうか。そしてようやく最終日に、なんとなく「Cuphead」の魅力の本質的な部分が見えてきたので、忘れないうちに書き留めておきたい。
「『Cuphead』って何?」という方は昨年のレポートをご覧頂くか、下記トレーラーをチェックしていただきたい。
1930年代のカートゥーンの手法でゲームが作られている!
このゲーム、書いている筆者自身が信じられないのだが、“1930年代のカートゥーン風のゲーム”という表現は実は間違いで、“1930年代のカートゥーンが技術で再現されたアニメーションがインタラクティブになっている”と表現する方が正しい。
カップ型の主人公をはじめ、ゲームに登場するキャラクターたちは、1フレームずつモーションが描き起こされ、1930年代アニメと同じような、目の動き、表情の変化、オーバーな手足の動き、さらにオーバーすぎるエフェクト表現が採用されている。
グラフィックスはすべて手描き、手付けで、その上に、1930年代フィルム風のノイズエフェクトを被せ、フィルムの傷や付着したちりや埃といったノイズ、そしてフィルムを当時の機材で投影する際の若干のボケ味すらも味にしながら、徹底的に1930年代のカートゥーンの手法でゲーム制作が行なわれている。だから2014年時点で、ゲームとして形になっていたにもかかわらず、2年経っても完成しないという話になってしまっているわけだ。
それでいてゲームの難易度設定は1980年代
1930年代には当然デジタルゲームはない。では「Cuphead」はゲームとして何をモチーフにしているかというと、こちらは1980年代のベルトスクロールアクションがベースになっている。具体的には「魔界村」、「ロックマン」、「悪魔城ドラキュラ」、「メトロイド」などなど、コンティニュー無しでクリアすることを想定していない強烈な難易度の時代のゲームである。
「Cuphead」もそっくりそのままその時代の味付けでゲームを作っているため、あまりの高難易度に絶えられず、みんなわずか3分足らずでゲームオーバーになってしまうわけだが、当時の手応えが蘇ってくるため、ついつい笑顔になってしまうわけである。このあたりゲームの本質を突いていて非常に勉強になる。つまり、1から100まで丁寧に説明して、突きっきりでガイドしてクリアさせるだけがゲームの面白さではないということをこのゲームは雄弁に語っている。
このゲームの敵は野菜や草木、海賊、悪魔、ガイコツなど、いかにも1930年代のカートゥーンで表現されていそうな、なおかつ子供が小躍りして喜びそうな造形のキャラクターばかりだ。その動きは実にユーモラスで、初見時にはおもわず吹き出してしまうほどだが、攻撃は絶えず熾烈で、アニメーションのセンスも現代とは全然違うため、「その予備動作からそう動くのかよ」、「ここまで攻撃届くのかよ」とついついツッコミを入れたくなるような予測不能な動きを連発してくる。これがまたおかしいのでゲームオーバーになっても笑みが止まらないわけである。
「Cuphead」は古き良き時代からの贈り物である
E3 2016でこのゲームに再開した時、あまり変わっていなかった(本当は変わっていたが細かいため気づかなかった)ため、このゲームを出す気はないのではないかと若干心配になったが、E3期間中に毎日プレイしていくうちに、彼らにとっての1年分の進化を確認することができた。開発は彼らにとっては順調に進んでおり、当初の予定通り1936(+80)年にリリースする予定は変えていないようだ。
一番大きく変わったのは、難易度の調整だ。E3 2015バージョンまでは、基本的にボス戦しかなく、ボスの動きをすべて覚えて、機械のように正確にキャラクターを操作するしか先に進む方法が存在しなかった。
これがE3 2016バージョンでは、新たにフィールドマップの随所に、横スクロールステージが追加され、このステージ自体も強烈に難しいものの、ここで獲得したコインを貯めることで、豚さんが営業するショップでパワーアップアイテムの購入が可能になる。買ったアイテムはその場で装備でき、次のバトルから使うことができる。アイテムには武器が3方向になるものや、ライフが増えるものなど、即効性があるものが多く、数回ボス戦をプレイしてダメそうなら横スクロールステージでコインを集め、捲土重来を図る、という遊び方が可能になっているわけだ。
さらにもう1つ、ボス戦自体の難易度設定が可能になっている。E3 2015バージョンは99%の挑戦を易々と撥ね除ける圧倒的な難易度を誇っていたが、さすがにこれはゲームとして問題があると考えたためか、ノーマル難易度に加えて、イージーが追加されていた。イージーではボスの攻撃パターンは、ランダム要素が減り、シンプルになり、ジャンプと攻撃というシンプルなアクションでもボスが撃破できるようになっている。
個人的にはこれらの調整に大満足で、一刻も早くリリースしてくれることを願っている。E3 2016では「Cuphead」の最新情報と言えるのは、「Cuphead」もまた、Xbox Play Anywhere対応タイトルになることが発表されたぐらいだ。つまり、いずれかのバージョンを購入すれば、Xbox OneとWindows 10 PCの両方でセーブデータをクラウドで共有しながら遊べるゲームだということだ。日本発売については未定なものの、これだけ話題なので前向きに検討したいということなのでこちらもかなり期待が持てる。ともあれ本当に今年発売されるかどうか要チェックである!