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「Sid Meier's Civilization VI」プレビュー
内政から外交まで、興味深い進化を遂げた最新作
2016年6月17日 20:08
文明シミュレーションゲームの金字塔「Civilization」シリーズの最新作「Civilization VI」が10月21日に発売されることが昨月発表され、シリーズのファンはまた眠れぬ夜を期待する時期がやってきた。とはいえまだまだ本作について開示されている情報は少なく、いったいどんなゲームに仕上がるのか、ファンにとっては非常に気になるところだろう。
E3 2016の会場では2K Games/Take Two Interactiveのブースにて本作のプレゼンテーションを実施。それに加えて本作のリードプロデューサーを務めるFiraxis GamesのDennis Shirk氏に詳しいお話を伺うことできたので、そこからわかったことを本稿でご報告しよう。
土地柄が文明の性質に色濃く影響する、新たな都市建設システム
本作の開発は前作「Civ5」の拡張パックを担当した開発チームが担当しており、リードゲームデザイナーは「Civ5」のAIデザインを担当したEd Beach氏。ということもあって、ゲームシステムの根本部分は「Civ5」のものを踏襲する形になっている。本当に基本的な部分……ターンベースシステム、六角形のヘクスタイルなどだ。シリーズのファンであれば違和感なくプレイできることは間違いない。
その一方で、ゲーム中で取れる戦略的な要素についてはかなりの変化が加えられていることも確かだ。その“変化”の筆頭にあがるのが、都市運営における地形タイルの使い方である。
Shirk氏:「プレイスタイルの面でいうと、今作では探索要素が非常に重要になっています。特に地形をどう活用するかという点です。前作では都市を作る場所の周囲にどのような戦略資源があるかが主な関心事になっていましたが、今作では地形そのものを見極めることが重要になっています。これは我々が“Unstacking City”と呼ぶシステムの影響です」。
従来、都市の施設は基本的にその都市タイルの中に建設されるようになっていたが、今作ではすべての施設を都市周辺のタイルに“ディストリクト(地区)”として建設するようになっている。穀物庫や図書館、兵舎といった基本的な施設から、アポロ神殿やピラミッドといった世界遺産まで、すべてだ。そしてその全てがタイルの地形による影響を受けるようになっている。
Shirk氏:「例えば図書館や大学といった学術系の施設を山岳に立てると天文観測がしやすいので科学にボーナスが得られたり、商業施設を川沿いに立てると交易がしやすいので金銭的なボーナスが得られるようになっています。また、世界遺産は特定の地形タイルを必要とするようになりました。例えば“オラクル(アポロ神殿)”は丘陵に建設する必要がありますし、“ピラミッド”は砂漠タイルを必要とします」。
つまり、周囲の地形がどのようなものであるかによって、都市の特性が大きく変わってくるわけだ。「Civ5」以前も、丘陵の多い土地は工業都市に、河川の多い土地は商業都市にといった特化スタイルは存在したが、それがより極端に現れることになる。文明の立地が、文明の特性そのものを決める傾向が強まったといえる。ディストリクトの配置は戦略資源タイルとの絡みもあるので、都市機能を極限まで最適化するのはかなり手強いパズルになりそうだ。
これに拍車をかけるのが、本作でActive Researchと呼ばれる概念だ。これは、ゲーム中のあらゆるアクティビティが技術研究のスピードに影響を与える要素。例えば沿岸に都市を持つと“帆走”の研究に50%のブーストが与えられる。都市に“石切り場”を建設すると、“石工術”の技術研究が加速する。蛮族の野営地を潰していくと“青銅器”の技術研究が進む、などだ。
帝国の発展が、その立地によって強く方向づけられる。長期的な戦略を立てるためには地形の把握はもちろん、これまで以上にプレーヤーによる積極的な探索が重要な鍵を握ることも間違いない。
外交、勝利。ゲーム終盤をより面白く!
都市の建設システムが様変わりしたことと同様に、ライバル文明とのつきあい方も変化しているようだ。外交面で鍵を握るのは、各文明リーダーの行動規範となる“Historical Ajenda(歴史アジェンダ)”というシステム。従来の指導者性格を、より具体的な形に置き換える概念だ。
Shirk氏:「前作までは、各指導者の性格付けでAI文明の戦略が決められていました。例えばモンテスマやチンギスハーンは攻撃的、などです。今作ではそこにもっと歴史の香りや個性の幅を持ち込みたかったので、歴史アジェンダという概念を導入しました」。
例えば秦の始皇帝はできるだけたくさんの世界遺産を作るというアジェンダを持ち、それに競合しようとする文明を敵視したり、他文明の遺産を戦争で奪うことも考えるという。また、各リーダーは史実に紐付いたアジェンダのほかに、ゲームごとに決定されるランダムなアジェンダも持つ。プレーヤーが外交を有利に展開しようと思えば、各AIがどのようなアジェンダを持っているか、情報を集めることが必要だ。
情報収集は、交易路から伝わる噂や、より直接的な諜報活動で得られる。そうして得られた情報を駆使すれば、有利な条件で外交を展開できることはもちろん、他国同士を戦争させるといった計略を仕掛けることも可能になるそうだ。
そして最終的な勝利を目指すわけだが、シリーズを通して弱点となっていたのが、ゲーム終盤の操作量の多さや進行の遅さ、あるいは消化試合じみた退屈な展開に流れやすいということ。このあたりは開発チームとしてもよく把握していて、今作でも改善に取り組んでいるという。
Shirk氏:「そこはシリーズにとって永遠の課題です。ゲームの前半では世界の探索を進めて帝国を作っていくという1番面白い部分を楽しめますが、ゲームの後半もそれと同じくらいダイナミックで興味深い展開が楽しめるかどうかが大事です。それが私たちにとって大きなチャレンジになっています。例えば歴史アジェンダや諜報の要素といたものも、ゲーム中盤以降を面白くするための要素です」。
またこれに付随して、各勝利条件を達成するための戦略上の縛り、というものもかなり緩和しているという。例えば文化勝利を目指す場合、「Civ5」ではせいぜい3~5都市程度の小国ででプレイする必要があったが、今作では大国でも文化勝利を目指すことが可能だそうだ。つまり、ライバル文明が大帝国だからといって制覇勝利を目指しているとは限らない、といこと。情報収集の価値が高まり、終盤まで緊張感のあるゲームを楽しめそうだ。
前作から数えて6年ぶりの登場となる「Civilization VI」。シリーズのファンにとって理想の作品に仕上がることを期待したい。