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ホラーのために!「バイオハザード7」開発者インタビュー
本編のフルVR対応、ホラー要素への特化。様々な変革について聞いた!
2016年6月16日 19:12
今回のE3ではカプコンより「バイオハザード7 レジデント イービル」が2017年1月26日に発売されることが発表され、大きな注目を集めた。前作「バイオハザード 6」とは明らかに作風が大きく変わっていることや、ゲーム全編がフルでPlayStation VRでのプレイに対応すると明かされたことは、シリーズのファンのみならず多くの人に大きなインパクトをもって受け止められている。
今回、E3 2016の会場にて、カプコンで「バイオハザード 7」のプロデューサーを務める川田将央氏と、ディレクター中西晃史氏、マーケティングプロデューサー神田剛氏にインタビューを行なうことができたのでお伝えしよう。
川田氏「まごうことなく、ホラーのために作っているタイトル」
──昨年のE3で披露されたVRデモ「KITCHEN」と、「バイオハザード7」の関係について教えて下さい。
川田氏:そうですね、もともとは「バイオハザード7」で企画したものをもとに、去年のE3でVR出展する際に「KITCHEN」と名付けたコンテンツを作りました。それをまとめた集大成として「バイオハザード7」になっています。ただ、当時はVRの試行錯誤をしていた段階ですので、当然「KITCHEN」の仕様は違います。今回はその「KITCHEN」での結果も含めて“VRに対応すべし”と結論づけましたので、「バイオハザード7」では全編をVRで遊べる、フル対応という形まで持ってきました。
──「KITCHEN」を作った時点では、本編をVR対応させるというのは決まってなかったわけですか。
川田氏:はい、VR完全対応というのは決めていませんでした。
中西氏:VR対応はするつもりだったのだが、どういう形で対応するかについては「KITCHEN」がテストになっていたんです。
──いま通常の体験版が配信されていますが、PS VRの発売に合わせて、VR対応の体験版は配布されますか?
川田氏:E3で出しているものについては検討したいと考えています。
──E3出展版をプレイさせてもらいましたが、今回、すごくホラー寄りになったと感じました。
川田氏:実は「バイオハザード」ってホラーだったんです(笑)。まごうことなく、ホラーのために作っているタイトルになっています。そのためにファーストパーソンビュー、日本ではアイソレートビューと呼称するものになっていたり、世界観の設定に関してもホラーを意識したものになっています。
中西氏:そう受け取ってもらえれば、メッセージングは大成功です。今回のデモはそれだけを伝えたくて作ったテイザーでもあります。基本的にはユーザーさんがいかに怖い体験をできるかというところを軸に、システムしかり、世界設定しかりで組み立てています。
川田氏:例えば主人公も、強いマッチョなヒーローではなくて、何も知らないような、何もできないような普通の人間が出てきます。プレーヤーの等身大に近いほうが「生き残れるのかな?」と不安になれますよね。
──従来の「バイオ」とは全く違う世界に?
中西氏:そういう意味では、別にリブートしているわけではないです。あくまでシリーズの世界の中に位置づけられるタイトルです。体験版の部分ではチラっとしか絡んではいないんですけれどもね。
川田氏:体験版をプレイして「バイオ」らしくないんじゃないかと感じられる方も多いかと思いますが、本編をプレイすれば、やっぱり「バイオ」なんだと感じていただけると思います。
中西氏:基本的には、今回の「バイオ」はなにか違うぞ、新しいぞ、ということを感じていただきたくて今回のデモを作りました。そういう意味では、ユーザーの皆さんのリアクションで「カプコン見なおした」みたいな意見を見られるのが非常に嬉しいです。王道ホラー、やればできるじゃんみたいなことを言われて、励ましてもらってますね。今回のデモでは戦闘がありませんので、ずっとコレ?という心配もあるかと思うんですけども、僕らはそういう風に作っていませんので、最終的には皆さんが期待するような「バイオハザード」の経験ができるようなものになると思っています。
──FPS視点になったことで、戦闘要素はどのように変わっていくのでしょうか?
中西氏:まだあまり話せないんですけども、「バイオハザード」はサバイバルホラーであるというように、戦って生き残る、切り開いていくというのがポイントになっているので、いわゆる敵に相当するものと戦闘は重要な要素になっています。主観視点になることで自分自身が襲われているとか、戦っている印象が高まります。「KITCHEN」ではぐわっと寄られるシーンとか、すごく怖いんですよ。ああいったものが「バイオ」の戦闘でも感じられるようになりまして、非常にテンションの高いものが作れています。
──「KITCHEN」でナイフを突き立てられるシーンは、幻痛を感じるレベルでした。
中西氏:私達も、たまにやると忘れててビックリするんですよ(笑)。
川田氏:先端恐怖症の方には嫌でしょうね。私はむしろ「KITCHEN」の場合ですと、顔が近づいてくるところなどで、何か口の匂いとか、鼻息がかかってくる感覚を、幻覚として得られるくらい臨場感が高かったなという印象があります。
中西氏:そこは3人称視点だとなかなか出せない感覚です。1人称視点にすることで、より自分で体験している感じというのが、作中のいろんなところで出せていると思います。
──「KITCHEN」の段階ではフルにVR対応することは決めていなかったとのことですが、実際にフル対応することになって、ゲーム内容への影響はありましたか?
中西氏:基本的なポリシーとしては、まずVR無しでもしっかり満足していただけるものを作ることが前提でした。VRはその上に載せているので、ゲームの要素は一切変えることなく、VR向けの調整みたいなことだけをしています。例えばカメラロックみたいなことをするとVRでは気持ち悪くなりますから、そういうのは一切除いたりとか、それくらいの違いですね。
──今回のVRデモではアナログスティックでの移動システムを採用したことで、VR酔いを感じる人も多いようです。そこは難しい判断だと思いますが、どのように考えていますか?
中西氏:今のトレンドは、ポイントを選んでワープするというものになっていると思いますが、それは逆に、アナログスティックで移動しても平気な人からすると正直、「もっとやらせろ」と思うんですよね。僕らとしてはVRにフル対応しつつ、なるべく多くの人にプレイしてもらいたいという考え方で調整をしています。
──では今後ワープ移動が導入されることはないと?
中西氏:まだなんとも言えません(笑)。そのあたりはまさに目下、いろいろとやっているところです。今回のVRデモも先週に完成したばかりなんですよね。
神田氏:ちなみに本編に関しては、VRで体験したい人はきちんとVRで体験できるようにした上で、VR酔いがきついという方は普通の画面で遊べるよう、VRと通常表示を本編の中で切り替えられるような仕様になっています。
中西氏:実は移動カメラのシステムについても、現在すでにいろいろなオプションを盛り込んでいます。今回は出展用ということで、選べないようにはなっていますが。
川田氏:VRについてはだいぶ研究を進めているところです。今回のショウでのフィードバックもいろいろな参考になるかと思いますので、忌憚のないご意見をいただきたいと思っています。
──VR版では、例えばPS Moveを使ったインタラクション等を追加することは計画されていますか?
川田氏:今はまだそこまでは考えていませんね。当面はVRに対応させること自体に集中してやっていまして、それ以上のことについてはそちらをクリアしてからになりますね。
中西氏「初めて『バイオ』を触った時のような経験を、今のユーザーさんにも」
──今回のタイトルには、邦題である「バイオハザード」と英題である「レジデント イービル」というのが両方出ていますが、この2つを一緒にした意図というのは?
川田氏:最初に見た時に、どういうふうに思われましたか?
──日本と海外でタイトルが違っているので、それをすり合わせて共通のタイトルとして認識させる狙いかなと。
川田氏:おお、近いですよ。
中西氏:日本のユーザーさんは、タイトルが「バイオハザード」なので、生物災害が起きてないと「バイオハザード」じゃないじゃんって言うんですよ。でも逆に、他の地域の皆さんは「レジデント イービル」なので、邪悪な住人さえいてくれればいいんですよね。そこのギャップには微妙に、僕ら苦しんでるところあるんですよね。
──そういったタイトルの付け方や、作風が王道ホラーに寄ったところも含めて、今回、シリーズを再定義するような意図を感じます。
川田氏:新しいマスターピース的なところは狙っていますね。シリーズとしては初代から「バイオハザード6」まで常に変わってきているのですが、大きな流れとして、1~3と4の間は随分大きく変わったと思います。その後4~6ときて、今回の7でまた大きな変革になっているのではないかなと思います。
中西氏:それがやっぱり、シリーズを20年間続けられてきた理由かなと思います。挑戦することをやめてはいけないという意識がありますよね。その中で、初めて「バイオ」を触った時のような経験を今のユーザーさんにも経験してもらいたいという思いがありまして。そのためにもホラーとして、先の読めない状況ですとか、生き残れるかどうかわからない不安だったりという点にフォーカスしています。はじめて「バイオ」を触れた人って、そういう気持ちになってたと思うんですよ。ゾンビの正体もわからなくて、こいつは何なん?っていう。という状況を本作でも作りたかったってのはありますね。
──最後に「バイオハザード7」の発売を楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いします。
神田氏:「バイオハザード」20周年の目玉となる本作を発表して、その魅力とその姿を皆さんにお伝えしていきたいと思っています。皆さんの期待を裏切りませんので、ぜひ期待していてください。
中西氏:発表できてとてもうれしく思っています。皆さんからは本当に温かいフィードバックをもらっていまして、仕上げるモチベーションがすごく上がっていますので、ぜひご期待ください。
川田氏:昨日もリアクション動画をYoutubeで漁っていまして、タイトルが出たときの皆さんの驚きみたいなものを見ていると、こういうものを作ってきて本当によかったなと実感できます。もうひとつ、今回のインタビューでお話しなかったことを付け加えると、今回QTEはありませんので、ご安心ください(笑)。まだこれから頑張って、できるだけ良い物に仕上げていきますので、皆さん期待して待っていてください。よろしくお願いします。
──ありがとうございました!