【特別企画】「ダンジョンズ&ドラゴンズ」最新ルール日本語版はいかにして実現したか

「ニコニコ生放送」がTRPGを変える！ 新たな層も開拓するホビージャパンの取り組み

　一方で、上田氏は「もし日本で最新版の『D&D』をサービスできれば、たくさんのお客様に評価していただける自信はあります。ホビージャパンは3版、3.5版、4版の実績もありますし、熱心なお客様の評価も得ていると思っています」と語った。

上田氏と伏見氏からは、「D&D」への強い思い入れが伝わってくる

ホビージャパンのニコニコチャンネル「テーブルゲームチャンネル」。TRPGだけでなく、ボードゲームやトレーディングカードゲームも扱う

　現在、ホビージャパンは「D&D」、そしてTRPGへの取り組みはどのようなことをしているのだろうか。現在ならではの要素として大きいのは、「ニコニコ生放送」でのゲームプレイの実況だ。ホビージャパンはニコニコで隔週火曜日に放送を行なっており、ボードゲームやトレーディングカードゲームの紹介に加え、TRPGのプレイも中継している。

　TRPGの放送は一昨年くらいから始めているという。視聴者は事前にDMが求めるキャラクターや背景を把握し、参加キャラクターが発表されている状態でプレイヤー達のやりとりを見ていく。ネット中継を意識したプレイは、通常のプレイとはまたひと味違った雰囲気となるところも面白い点だという。

　ニコニコの放送を始めてから、イベントなどの参加する若いユーザーが増え、プレーヤーの年齢層が引き下がったと伏見氏は語った。伏見氏は店舗でユーザー向けのTRPGのセッションなども担当しているが、若いプレーヤーが増えている手応えを感じている。「D&D」は30代以上のユーザーが多かったのだが、ニコニコをきっかけに高校生なども店舗に足を運んでくれるようになったという。

　プレイヤールールを提供した10月には、これを記念してのプレイを行なう放送となった。その時のプレイでは、何組もの足を持つトカゲ型のモンスター「バジリスク」が出てきたときは大きく盛り上がった。バジリスクににらまれると石にされてしまう。対抗するためには鏡でバジリスクに自分の姿を見させて魔法を跳ね返すのが有効だ。しかし、プレイヤー達は誰も鏡を持ってなかった！

　ここでプレイヤー達は機転を利かせた。この前に温泉があり、プレイヤー達はこの水を凍らせて盾にくっつけることで即席の鏡にしようとしたのだ。DMはこれを許可し、見事バジリスクを撃退した。伏見氏はこのプレイのように、まったく想定しないプレイ展開と、皆で何かを成し遂げる連帯感がやはり格別だと語った。現在このリプレイはアーカイブ化されて閲覧が可能だという。

　北米では、実際にゲームを開発している人たちや、小説を執筆している人などがゲームをプレイする動画なども公開している。開発者ならではのルール解釈や、奥深いロールプレイ、開発でのこぼれ話なども飛び出す楽しいセッションになっている。これらを字幕付きで日本向けに放送してくれれば大いに楽しめそうだ。映像配信が身近になる中で、TRPGの状況は変化しているとのことだ。

　一方、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストの動きにも注目したい。最新の「D&D」では、ボードゲームメーカーと組み、積極的なグッズ展開も行なっている。「D&D」のルールや世界観を活用したボードゲームなども発表しており、ミニチュアや、ダンジョンのジオラマなども販売している。以前からのシリーズもあり、こちらの今後の展開も興味深い部分だ。

　現在日本では、コンシューマ、オンライン、スマホ、ボードゲームなどなどゲームは非常に多彩で、それぞれに熱心なファンを獲得して盛り上がっている。その中で「D&D」は筆者のような“郷愁”を感じるファンだけでなく、新しいファンも獲得している。伏見氏は女性ファンの盛り上がりも指摘している。

　しかし現在は「日本版の販売とサポート」といういわば“幹”となる部分が満たされない状況だ。ファンの間での要望と、ビジネスでの展開がきちんと提示できれば、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストを動かすことができるかもしれない。今回のインタビューでは、“現場”の人たちの熱い想いを感じることができた。ファンの声の一層の盛り上がりに期待したい。

　伏見氏は「やはり『D&D』のプレイを見ていただくのは動画を見て欲しいと思います。TRPGを知らない人にも楽しさが伝わってくれると思います。ニコニコのアカウントをお持ちの方はぜひ見てみてください。今後も「D&D」はもちろん、様々なタイトルを扱っていくのでお楽しみに！」とユーザーに語りかけた。

　動画は下記、YouTubeの「『火曜の夜は冒険者！』ダンジョンズ&ドラゴンズ ベーシックルール日本語版公開特別放送」をご覧いただきたい。このほか、ホビージャパンでは多彩なゲームを扱った放送を行なっている。これらも注目である。