インタビュー

【ChinaJoy 2014】「新生FFXIV」プロデューサー吉田直樹氏インタビュー

中国サービスはグローバル以上の規模!? 気になる中国展開の詳細と、パッチ2.35以降の行方を聞く

7月31日〜8月3日開催(現地時間)



会場:上海新国際博覧中心(Shanghai New International Expo Centre)

 「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」が、8月27日に正式サービスからついに1周年を迎える。現在、1周年を記念したイベントの準備に加え、直近でも中国のChinaJoyや、ドイツのGamescomといったゲームショウへの参加に加え、8月23日には1周年記念イベント、それが終わったら東京ゲームショウや、ファンフェスティバルと、プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏を筆頭とした「新生FFXIV」チームは息つく暇も無い忙しさだ。

いよいよ8月25日、中国でサービスが開始される

 そうした中、日本市場とは直接関係ないため、あまり情報が入ってこないものの、「新生FFXIV」はビジネスの面で大きな正念場を迎えている。それは中国版「新生FFXIV」、「最終幻想XIV」のローンチだ。吉田プロデューサーが目標として掲げる「World of Warcraft」は、欧米ローンチ数年後の中国展開ではじめて大ブレイクしたのはよく知られている話で、吉田氏としては、今回の中国ローンチで、230万人のユーザーベースを倍加させたい考えだ。

 中国版「新生FFXIV」は、現在の予定では8月25日より、実質的な正式サービス開始となるオープンβテストをスタートさせる。ビジネスモデルは、「新生FFXIV」初の試みとなる従量課金制が予定されている。その動向に注目が集まるところだ。

 今回は、ChinaJoyの開催に合わせて中国上海にて吉田氏にインタビューし、中国展開の抱負やその詳細について話を伺ったほか、注目されるパッチ2.35以降の展開についてもその方向性を確認してきたのでぜひご注目頂きたい。

【ChinaJoy Shandaブース】

「最終幻想XIV」のβテストの状況について。人気殺到で販売した全サーバーがダウン

「新生FFXIV」プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏
クローズドβテストの参加権は39元(約600円)で販売された
購入先によって特典アイテムも違うため、かなり人気が高かったようだ

――今回ChinaJoyのインタビューということで、「新生FFXIV」の中国展開をメインに質問したいと思っています。まずは7月22日から始まったβテストの状況について教えてください。

吉田氏: 今回は2回目のβテストになっていて、最大同接で50,000人まで参加できるだけのアカウントを配るということで、約7万のアカウントを配りました。中国でも珍しいパターンで、無料で配るわけではなくて購入いただくという形にしました。それもただクライアントとして購入していただくのではなくて、オープンβテストから、引き続き従量課金がスタートします。中国に関しては、今回お支払いただいた金額が、オープンβ以降の従量課金分として使えるというものになっています。だからクライアントのためにお金を払ってくださいではなくて、いずれそれは基本使用料に充当されますので、先行してお金を支払っていただける方にご参加をお願いしますというパターンです。

 これは今回Shandaさんの試みとしても初めてで、中国でも「World of Warcraft」以来10年ぶりということで、どれくらい人が来てくれるのかということに関してはShandaさんもドキドキしていたみたいです。趣旨は中国のメディアさんにもよく聞かれるのですが、中国のメディアさんの言葉を借りると、「いま中国のゲームプレーヤーはファストフード文化になっている」と、つまりF2Pのゲームをちょっとつまみ食いをして、すぐにいなくなってしまう。それくらい今はゲームが多く、有料になりそうになると次のゲームに移動するという感じになっている。

 この現状を、どのメディアさんもどのメーカーさんも心配されています。結果どうなるかというと、ゲーム会社が本格的なゲーム、大型のゲームを作りにくくなってしまうのです。お客様がそうなのであれば、ある程度ゲーム性が低くても初期回収できてしまうものを開発する。新作を出して、すぐに次のゲームを作るという方向に、どうしても業界全体が考えがちというか、そちらへ行きがちになってしまうのです。それによって、ますますファストフード化が進む……悪循環ですね。

 今回Shandaさんの戦略としては「新生FFXIV」はそういうものではないと。ですので、お金を払ってでも、ゲーム体験を優先的にプレイしたいという、コアプレーヤーの方を中心軸に据えて、ロイヤルユーザーをしっかり作ってから無料の人たちに入ってきてもらいたいというところがShandaさんの決断とのことです。幸い色々なパートナーさんのサイトでキーを1万個とか5,000個とか、時間と日付を決めて販売していったのですが、全サイトでサーバーがダウンして、ついこの前最後のラスト2,000キーをバイドゥとのコラボレーションで出したのですが、バイドゥも落ちたとのことです。バイドゥが落ちるって相当ですね(笑)。

――トータルでいくつ売れたのですか?

吉田氏: 約70,000で売り切れました。いくつ売れた、ということではなく、販売上限を決めていたので、約70,000のキーが即完売した、という意味になります。

――それでは数を制限しなかったらもっと売れていたということですか?

吉田氏: どこまで伸びるかは不明ですが、混雑から考えると、もちろんもっと売れたと思います。今やっているCBTが8月4日でクローズするのですが、OBTが8月25日であることをβテスト中のインゲームで発表しました。

――従量課金が始まるのはいつなのですか?

吉田氏: OBTからです。OBTのプレイに課金が必要になります。

――日本のOBTとはかなり意味が違うのですね。最終的に1時間いくらになるのでしょうか?

吉田氏: 中国の場合は、OBT=正式サービスと思っていただいてOKかと思います。金額は今度OBT向けの発表会があるのでそこで発表します。

――発表会はいつですか?

吉田氏: 8月中旬の予定です。色々なパートナー企業さんたちにも来ていただき、どれくらいのポテンシャルなのかという話もそこでさせていただきます。

――クローズドβテストの手応えはいかがですか?

吉田氏: まず数字に関しては、僕らが中国に入ってShandaさんと打ち合わせをして、速報ベースで色々と数字の分析をいただきました。すごかったのが、アカウントのアクティブ率が98%という数字です。これは普通のMMOではありえない数字で、クライアントを購入していただくタイプのMMORPGでも、アクティブ率は80%くらいです。残留率もものすごく高いので、これまでShandaさんが歴代運営してきた中だと、1番だということです。数字的には非常にいいスタートだと思います。Shandaさんも同接の数字をちょっと気にしていて、キャパシティがたりないのではないかと、追加でサーバーを購入されたとご報告を受けました。

――いまサーバーはいくつくらいなのですか?

吉田氏: 追加購入していることもあり、数はわからないですね。中国は2大通信会社さんごと、そして地域ごとにデータセンターを作成し、そこにワールドがぶら下がるという構成になります。

――それはグローバルサーバーを抜くほどの規模ですか?

吉田氏: いえ、そんなことはありません。今はまだアカウントの数は限定して配っています。ただ、OBT開始時には、中国版の方が規模が大きくなると思います。

――中国のユーザーからの反応はいかがですか?

吉田氏: Shandaさんが今まとめてくださっています。プレーヤーの方のコメントでShandaさんが1番嬉しかったのは「ゲーム本来の楽しさを思い出した」というものだったそうです。「新生FFXIV」のオート機能は、中国のオンラインゲームの水準から考えると限定的な方で、最近だとクエストアイコンをクリックすると自動でワープしてその場へ行くゲームなんかもありますし、クエストは全部床にラインがひかれていて、ただその通りに走っていくものなどが一般的ですが、今回の中国版では、我々は意図してこれを実装しませんでした。

 ゲームのストーリーを楽しんでもらうときに、感情移入するためにも、なぜそこへ行かなくてはいけないのか、それはどこなのかなどを理解してもらうことが大切で、自動で移動できると、地名を一切覚えなくなってしまいます。そういうところは、本格的に長く遊ぶゲームだからこそ大事にしています。確かにとっつきやすさや、単純さは必要だと思いますが、それ以上を踏み越えてしまうと、もはや僕の中で「FF」でもRPGでもなくなるので、リクエストされてもやりませんという話をShandaさんとしたのです。

 そこについて、今回CBTに参加してくれた中国のプレーヤーの方から「ゲーム本来の楽しさを思い出した」というコメントをいただきました。ゲームってこういうものだよねと。真剣に一生懸命やるものみたいなコメントがあったのを喜んでいました。

――中国とグローバルで、キャラクターの好みに違いはありますか? 中国人は萌キャラではなくスラッとしたキャラを好みますよね。

吉田氏: 種族比率が、1位はヒューランで、2位がミコッテ、この2つは数パーセントの差しかなかったでですね。それでも1位はヒューランです。続いてミコッテ、ララフェル、エレゼン、ルガディンなのですが、ルガディンも結構多く、ルガディン12%、グローバル版では3%だったのですが、ただ、最近幻想薬が入ってからグローバル版でも増えたと思います。ですので、平均分布ではないでしょうか。うまく分散されている感は数字を見る限りありましたね。

――改めて、中国版とグローバル版の違いを教えてください。

吉田氏: 基本的にはありません。元々僕が「旧FFXIV」を担当した時点で、Shandaさんとの契約が旧体制で進んでいました。ですので、「旧FFXIV」をなんとかするというのはもちろんそうですが、中国でローンチさせるということ自体も最初から僕の中でマストの条件でした。「新生FFXIV」のゲームデザインはグローバル水準で、そこにはそもそも中国も含まれているので、特別に中国に対応しているということはありません。ただ、チートチェックであるとかツールのチェックは、一段厳しいものが入っています。これは逆に中国で上手く機能するようであれば早めにグローバル版にも入れようと思っています。

 あとは正式スタートのタイミングが、グローバル版は2.0からスタートしていますが、中国版はパッチ2.16の状態でスタートとなります。ただ、アラガントームストーンの取得数や上限について、グローバル版のパッチ2.16の状態で始めてしまうと、正式サービス後のコンテンツ配置としては、バランスが崩れてしまいますので、そこは2.0と同じ水準にしてあります。ですからグローバル版の2.16との違いがあるとしたら、そこくらいですね。ただ、2.16直後のグローバル版は、少しサーバーの安定性が良くなかったので、直後に入れたホットフィックスはすべて巻き込んでのパッチ2.16になります。ですから何もかもがグローバル版のパッチ2.16と同じかというと、そうでもないです。こういう点での細かい調整は中国版向けに行なっています。

――中国で展開するMMORPGとして、“疲労度”のようなシステムは入りますか?

吉田氏: それは中国政府が法律上必須としている、未成年者のための「中毒防止」というシステムがあります。中国にしても韓国にしても、国民番号がなければオンラインゲームはプレイできないので、低年齢の方はその日3時間以上のプレイ累積を超えると経験値が半分になったり、5時間以上になると0になったりというシステムです。ほかにもパブリックフィールドでPvPエリアに侵入する場合は、「PvPゾーンに侵入しますが、よろしいですか?」などの確認も必要です。「新生FFXIV」の場合、PvPはコンテンツへの移動になるので、このダイアログは対応していません。このように、中国の法律上必須になるものは、当然対応しています。

――コンテンツファインダーやサーバーのグループ化は行なわれるのでしょうか?

吉田氏: もちろんです。

――とすると、グローバル版と同じような感覚で遊べるのですか?

吉田氏: はい。すでに安定性が非常に高い状態になっていて、過去に1度エリアダウンしただけで、あとは負荷などでは一切ダウンしませんでした。

――中文版は、テキストが中文簡体字になっているのを確認しましたが、ボイスはどうなるのですか?

吉田氏: 全部中国ボイスです。

――声優さんは中国で有名な方を起用しているのですか?

吉田氏: たぶん(笑)。ボイス部分に関しては、すべて中国語になっています。

――ちなみに繁体字には対応しているのですか?

吉田氏: していません。やるならこれからです。

――それは意図的なものですか?

吉田氏: はい。台湾のサービスをどうするか次第になりますので、その時に一緒に考えようと思っています。

――役割分担としてはShandaが運営で、開発は従来通りスクウェア・エニックスですか?

吉田氏: 開発は全て我々です。ただGMのサポートであったり、GMさんが中国サーバーでのみインゲームのライブイベントをやったりというのは全てShandaさんにお任せしています。

――開発チームには中国だけを見る専任のチームもできているのですか?

吉田氏: 中国だけの独立したチームというものは存在しないです。ただ中国版専任のマネージメントスタッフもいますし、中国ローカライズチームももちろん複数人がいます。開発チーム内にも特にUIとレベルデザインには中国のスタッフもいるので、彼らがピックアップしてUIならこの辺りを対応したほうがいいのでは? などのアドバイスをくれます。あとは彼らが、中国側のフォーラムを見て、レポートをくれたりもしています。

(中村聖司)