インタビュー

「新生FFXIV」プロデューサー吉田直樹氏「パッチ2.3」インタビュー

すぐに追いつける現状は第2世代MMORPGの究極の形

パッチ2.3でメインストーリーは折り返し地点

メインストーリーに出てくる謎の美女。あの人かなと思ってしまうが、そんなに単純でもないらしい
イシュガルドの登場を予感させるようなシーンも

―― メインストーリーにちらりと出てきた謎の美女について、いろいろな憶測がネットを飛び交っていますね。

吉田氏: そうですね。そういう時期が一番楽しいかもしれませんね。

―― 正解はありましたか?

吉田氏: まだ出てないような気がします。それほど単純ではありません。そこはお楽しみにしていてください。もうシナリオは全部上がりました。

―― 拡張版までのシナリオが全部完成したのですか?

吉田氏: これからはシナリオに添って僕らがパッチを作っていきます。メインストーリーのチームは、かなりハードなスケジュールだったので、ボイスの収録の間少しだけ休んでもらいます。もう3.0のプロットは上がっているので、休み明けからはそれを台詞に分解していくことになります。

―― 「旧FFXIV」では惑星ダラガブが落ちてくるという非常にドラマチックな展開になりました。「新生FFXIV」でもああいった形で、クライマックスに向けて盛り上がっていくのですか?

吉田氏: 僕が「旧FFXIV」を引き継いだ時に4つのキーワードを出しました。その中の1つ“REBUILD”というキーワードに関しては、既に新生になりましたので除外するとしても、“LIVE”とか“FUN”というキーワードについては今も変わらず重要な要素です。例えばパッチ2.2の中でサンクレッドの過去が判明したり、ユウギリというキャラクターが出てきたことで、新クラスや新ジョブの存在をストーリーに組み込みました。世界を壊す、というのはさすがにもうないと思いますが、拡張パックに向かって、かなりドラマチックな展開を用意しています。ちょうどこのパッチ2.3が折り返しくらいで、ほぼコマは出そろったと思います。

―― かなり伏線を張られているのですか?

吉田氏: 結構あります。新生スタート時のメインクエストの中のセリフにも、伏線になっているものがすでにいくつかあります。「旧FFXIV」のラストでダラガブからバハムートが出てきた時、振り返ってみると事前にいくつものセリフに、それが示唆されていたようにですね。アルフィノのセリフや、色々なキャラクターのデザインもそうですが、複線をかなり張っているので、そろそろ回収フェーズに入り始めます。

―― 盛り上がってくると、ますますパッチを早くしろという声が高まりそうですね。

吉田氏: 今でもスタッフに相当無茶をお願いしているので、これ以上はしんどいですね……。3.0の開発もやらなければいけないですし。メジャーアップデートだけで無く、できるだけ毎月マイナーアップデートもかける方針にしていますので、なんとかこのペースを維持していきたいと思っています。

―― このレベルで定期的に約束を破らずにパッチを出しているMMORPGは少ないですね。

吉田氏: そう言っていただけるととても嬉しいです。海外のメディアの方からも「尋常じゃないよ」と言っていただけています。

すぐに追いつける現状は第2世代MMORPGの究極の形

エンドユーザー用やりこみコンテンツの「ゾディアックウェポンストーリー」。少しずつやればのんびり遊べるが、根詰めるとつらい

―― 個人的な感想ですが、今の「新生FFXIV」ではやらされ感が強いと感じることがあります。吉田さんがプロデューサーとディレクターを兼務していることで、その2つがぶつかって生まれる多様性みたいなものが表現しづらいということはありますか?

吉田氏: 僕もそろそろゲーム業界20年になりますが、たとえ2人に分かれていたとしても、そんなふうにディレクターとプロデューサーがぶつかり合って作っているゲームにほとんど遭遇したことがないです(苦笑)。

―― 映画などでは、ディレクターが作品自体に、プロデューサーが制作に関与しますよね。ゲームではそういったことはないのですか?

吉田氏: うーん、それはプロデューサーというより、個人差だと思います。もちろん予算でぶつかり合うことはありますが、組み合わせ次第という印象です。

―― 今の「新生FFXIV」はみんな同じ方向を向いているというか、もう少しユーザーイベントがあったり、好き勝手やっている人がいるような多様性があってもいいのではないでしょうか?

吉田氏: それはたぶん「新生FFXIV」が第2世代MMORPGの中でも、特に無駄の無い作りになっているからだと思います。開発期間が短かったこともあり、必要なものばかりある、だからあまり余裕が無いように感じられてしまう、というのは事実かもしれません。まもなくMMORPGも各社努力で第3世代になるかと思いますが、そうなれば、もう少しユーザークリエイテッドコンテンツが入ってくると思います。

―― 無駄の無い作りとは?

吉田氏: 「FF」シリーズで、世界中の人にキチンと遊んでもらえて、忙しい人たちでも1日に2時間か3時間あれば、長期間にわたって十分遊べるゲームを作ろうと思った時、たどり着いたのが今の状態です。第1世代のMMORPGとの最大の違いは、レベリングが中心かそうじゃないかという所です。

 レベリングに時間がかかると、突っ走っている人とそうでない人に歴然とした差が付きます。でも、これはこれで良いこともあり、同じレベル帯でない人とは交わらない。だから進行が遅い人は、遅い人同士で集団を作って低レベルコンテンツに留まり、突っ走っている人は先頭集団の細い所に集まる。それぞれの遊びは被らないし、それぞれが得る装備もまったく違います。同じコミュニティの中に、進行度が違う人がいる場合、一緒に遊ぶために「じゃあ今日はFCで夏祭りをやってみよう」という風に、繋がりを作ろうという意識がより強く働きます。

―― 追いつきやすい第2世代MMORPGではそういったことが発生しにくいということですか?

吉田氏: もちろん、これでよい、と思っているわけではなく、これから運営の中でこうした遊びも余裕も、僕たち開発チームが必死でいれていこうとは思っています。ですが、現状ではまだまだ余裕がなく、結果的に窮屈に感じる部分があります。これだけゲームやエンターテイメントの選択肢が多い今の時代、レベリングで離された人たちがゲームを続けるとは考えにくく、結果的に新規プレーヤーも入りにくくなります。「旧FFXIV」のこともあり、成功したMMORPGも、失敗したMMORPGも見た上で、失敗する可能性が高いシステムやコンテンツをあまり採用していないという部分も影響しているかもしれません。

―― 確かに、新機軸を目指して失敗したMMORPGはたくさんありますね。

吉田氏: そういった試みは素晴らしいと思いますし、先ほども言いましたが、体制も整ったのでこれからはさらに「新生FFXIV」もそうしたチャレンジをしていこうと思っています。しかし、ベースがしっかりしないうちに、新機軸だよりのゲームデザインをしても、結果として受け入れて貰えなかった場合、規模が大きすぎてすぐに舵を反対側に切るわけにはいきません。気に入って残ってくれたプレーヤーがいたとしても、サービスが維持できなくなると、運営を止めざるを得ないのがMMORPGの宿命です。

 なるべく多くのお客様に遊んでいただいて、仮に何カ月かアカウントを止めていたとしても、大型パッチで遊べるものが大量に入ったら戻ってきて2カ月くらいたっぷり遊んでまた休んでもらうくらいの方が、結果的にトータルのプレイ時間は長くなるのかなと思っています。繰り返しになりますが、これですべてよし、と思っているわけではなく、キチンと自己分析をした上で、先ほどのご指摘のような部分も、皆さんのフィードバックを参考にさせていただきつつ、前向きにチャレンジしていこうと考えています。

多くの人が短時間でも楽しめるようなMMORPGを目指した1つの答えが今の「新生FFXIV」だと吉田氏

―― 今の形が、あまり声を出さない多くのプレーヤーにとって最適と判断されている部分もある?

吉田氏: そうですね。普通に遊べている日本の方は、あまり積極的にアピールはされませんので、感覚的には掴みにくい部分ですね。それと同時にやはり「FFXI」は偉大なタイトルで、その経験をもう1度味わいたいという方も多く、いずれも僕たちにとっては、大切なお客様ですので、しっかり受け止めさせていただこうと思います。

―― 初めて経験したMMOを超えるのは難しいというやつですね。

吉田氏: それも大きいとは思います。ですが、ニュアンスはコンテンツとして、できる限り取り込むチャレンジもしていきたいと考えています。

―― 「ゾディアックウェポンストーリー」なども、エンドユーザー向けのやり込みコンテンツのはずが、普通のプレーヤーを苦しめるコンテンツになっていますね。

吉田氏: それでも昔のMMORPGと比較すると、以前のゲームの方がもっとマゾかったと思います。が、やはりそこにコンテンツがあれば、皆さんトライするでしょうし、今の実生活の時間のやりくりでは、厳しいと思われる方もいらっしゃると思います。

――根詰めてアートマを集めた後、燃え尽きてインしなくなる人もいます。

吉田氏: E3インタビューでも、そんな時は休止していただいていいと言ったのです。もちろん続けていただくに越したことはないのですが、更に遠くの目標に向かって「今度はあそこまで走って!」と言い続けるのは、今の時代ではかなり厳しいと思います。ですので、コンテンツに緩和が入ってから、ゆっくりプレイされても良いようにデザインしていくつもりです。

―― また、今はコンテンツファインダーが便利過ぎて1人で遊ぶことが多く、コミュニティが育っていないことも気になります。

吉田氏: もう少しコミュニティの方同士が、一緒に遊ぶ時間を長くしたいと考えています。常にFCのメンバーと行動を共にしてくださいというのは、さすがにやり過ぎかなと思いますが、今の希薄さも決して良いとは思っていないです。例えばパッチ2.28では、ハイレベルとエキスパートのルーレットにパーティで参加できるようになりました。まずは小さな一歩ではありますが、FCのメンバーで集まって目標を達成しにいくとか、カンパニークラフトでFCメンバーみんなが力を合わせて新しいものを作って、それを使ってコンテンツに行くとか、そういうことをやっていこうと思います。

―― FCで遊べる要素が今後増えていくのですね。

吉田氏: 今のシチュエーションをガラリと変えて、なんでもFCでやってくださいというと、それはそれで極端な反発を生むと思いますので、少しずつ手を入れて行こうと思っています。もっとコミュニティと一緒にいてもいいのになと思いつつも、実は1人の気楽さというものもあります。コミュニティ側に傾きすぎると、ここまで窮屈じゃなくてもいいのに、とみんなが思うでしょうから、少しずつ要素を入れていこうと思います。

―― 最後に、パッチ2.3を楽しみにしているゲームファンにメッセージをお願いします。

吉田氏: パッチ2.3では例えばモブハントなどのフィールドを使った遊びであったり、新しいクラフトが大量に入ったり、サルベージという仕組みを使って分解したものから新しいものを生み出したりできるようになります。「クリスタルタワー:シルクスの塔」に行って24人でワイワイ攻略したり、72人で集まって戦争したり、「大迷宮バハムート零式:侵攻編」もあり、ハイエンドからカジュアルまで全方位が用意されているパッチになります。どれか1つは必ず気に入ってもらえると思います。今はお休みしている方も含めて、今後パッチ2.3のPRも更に加速していきますので、ぜひ楽しみにお待ちいただければと思います。

―― ありがとうございます!

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(石井聡)