インタビュー

3DS「さよなら 海腹川背」クリエイターインタビュー

シリーズのファンはもちろん初めての人にも遊びやすく

シリーズのファンはもちろん初めての人にも遊びやすく。今の時代に合わせた「海腹川背」を遊んでみてほしい

シリーズ1作目の「海腹川背」を作り始めたときというのは、どういうところからスタートされたのでしょうか?

酒井氏:こんな話をするのはちょっとアレかもしれませんが、当時私はゲームを作るのをやめようと思っていた時期きがあったんです。実際にやめて一時期バイトとかをしていたのですが、やっぱりもう1回ゲームが作りたいなと思って、でも作りたくないゲームを作るのだけはもうやめようというのがあり、どうしたら確実に面白いものをちゃんと作れるかというのを考えたときに、まず面白くなるまで作るしかない。試作をちゃんとやって面白いプロトタイプを作って、それを初めて制作ラインに乗せればいいだろうと。なかなかできないんですけれど、それが1番確実だろうということで、仕事をしないで貯金を食いつぶしながら、自宅でいろいろと思いついたアイデアをプロトタイプとして作っていき、その中で最終的に「海腹川背」のプロトタイプに落ち着いて、これなら面白くなるから製品ラインに乗せようと知り合いの会社に持っていって作り始めたんです。

 アイデアとしては結構理詰めで、狙って撃って当てるというところにテクニックは介在するから、それを成功させる面白さというのは絶対にいるだろうと思い、何かを敵に撃って当てるというゲームにしようと。ただ、それだけだとありきたりだし、ワイヤーアクションが結構好きだったので、撃つものにひもをつけておいて、それをたぐりよせたりとか色々できるんじゃないかと。それを壁につけたらぶら下がれるんじゃないかとか、ぶら下がってプラーンといったら向こうの足場にいけるんじゃないかとか、それがうまいことハマッてできたのが「海腹川背」のプロトタイプという感じですね。

持っていった会社ではいい反応があったのでしょうか?

酒井氏:当時はバブルでゲーム作ってるんだか作ってないんだかわからないような会社だったので、見込みがあるならぜひやろうというか、持っていったから作ろうみたいな感じだったですね。

近藤氏:自分もその会社に出入りをしていて。自分と酒井さんは平成元年くらいにシステムサコムという会社に半年くらい入社していた時期があったんです。同い年なんですけれども、会社的には酒井さんが先輩で、そこのメンバーというのが優秀なんだけれどもすごく変わった人がいっぱいいたんです。その後、システムサコムの人たちがバーッと散っていって、その中の1人がやっていた会社なんですね。

 そんな中で酒井さんのほうが、こんなゲーム考えてきたんだけれども、パッケジ・キャラクター描いてくれないかとこっちに話がきたんです。

ある意味、19年「海腹川背」を作り続けているわけですが、そろそろ違うゲームを作りたいという気持ちはあったりするのでしょうか?

酒井氏:そうですね。それはもちろんずっとあって。自分でちゃんと企画して監修したものというと「海腹川背」くらいしかないんですけれども、基本的には他にも色々プログラマーとしての仕事はずっとしているので、むしろまた「海腹川背」をやるとは思っていなかったというくらいの感覚でした。作りたいという意味では常に作りたいとか思っているんですけれども……。

1番初めに「海腹川背」をやったときみたいに、アイデアがあったとしても作るのは難しかったりするのでしょうか?

酒井氏:「海腹川背」のときは、その会社も含めてうまく回ったというのはあるんでしょうけれども、思うところがあってもなかなかこう実現にこぎつけるのは難しい感じですね。

近藤氏:アイデアがあっても、バブルが弾けてから基本的にはシリーズ作というか……新しいものにお金を出してくれるパブリッシャーさんっていうのはすごく減ったという部分もあって、こちらのアイデアとか作り手側の問題だけではなくて、ゲーム業界の中でパブリッシャーさんも含めての動きの中で、新しいモデルのチャレンジってできたりできなかったりというところがあるので。

 そういう意味では、ある意味バブルの頃はよかったなというのはありますね(笑)。好き勝手にゲームを作らせてくれるという意味で。

例えばスマートフォンだとか最近はコンパクトに作れたりというのがあるじゃないですか。もちろんゲームの企画のやりたいことと合致しないこともあるのでしょうし、デバイス的にも合致しないとかもあるとは思いますが、そのあたりはいかがでしょうか?

酒井氏:やろうかなと思ったことはあるのですが、なかなかスマホアプリだと商売にするにも、むしろマーケティング的な仕掛けがないと難しいでしょうし、面白いゲーム作りましただけではダメだろうというのもあるので、難しいところですね。

それでは最後に、楽しみにしているファンの皆様へメッセージをお願いします。

酒井氏:繰り返しになってしまうのですが、いろいろと遊びやすくなっているので、ぜひ新規の人も手にとっていただきたいと思います。

近藤氏:PS「海腹川背・旬」からだと十何年という時間を経ての新作です。自分の中では「海腹川背」は特別な作品ですので、自分を世の中の人たちに認知してもらえた作品だったので、スタジオ最前線という会社を始めたという中で「海腹川背」の新作を作ってみたいなという思いはあったので、移植ではなくて新作というところで、待っていてくれた人たちにはぜひ遊んでほしいですし、知らなかった人にも今の時代に合わせて非常に遊びやすくしていますので、ぜひ遊んでいただけたらなと思います。

ありがとうございました。

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(菅原哲二)