インタビュー

AC「maimai」開発チーム楽曲配信Vol.2記念インタビュー

洗濯機(?)の形はなぜ生まれたか? など聞いてみた

12月17日収録

――踊りに繋がるダンス譜面はどのように作っているですか?

小早川氏:ダンス譜面と通常の譜面とではワークフローを分けています。制作途中でダンス通りの譜面を作ってみた所、ダンスには合うんですが、音楽ゲームとして楽しくないし、難しいという問題に直面した時機があったんです。いろいろ模索した結果ではあるのですが、この曲は踊っていい曲だから踊れる譜面にしよう、この曲はユーザーさんが段階を踏んで遊びを覚えてもらう譜面にしよう、と割り切ることにしたんです。「BASICレベル」なんかではそのような形で実現しています。

Hiro師匠:今度入る「デコボコ体操第二」でベーシックを選んでもらえれば中の人(光吉猛修氏※)と同じダンスができます(笑)。そういう譜面もあります。

【「デコボコ体操第二」】
ニコニコ動画でも配信中

※光吉猛修氏…セガのサウンドコンポーザーの1人。サウンドチーム「H.」のヴォーカルを務める。代表曲に「デイトナUSA」BGMや「バーチャファイター」の主題歌がある。

小早川氏:それと、純粋に踊れる譜面の話ではないのですが、「音楽ゲームとしてもダンスゲームとしても十分に楽しめるもの」を試行錯誤しながら検討した結果、maimaiの譜面の1つ完成形として「踊った気になる譜面」というものも実現できたと思っています。主に中上級者向けの「EXPERTレベル」で実現したつもりでいるのですが、音楽ゲームとして必死にプレイしているつもりが、気づいたら全身を動かされてしまって、結果、「あっ!?今踊ってた!?」みたいな感覚になる、他のゲームにはない新しいプレイ感覚を作ることが出来たかなぁと思っています。

Hiro師匠:Twitterで言う所の「踊らされている気がする」ってやつですね。そういうのを見ると、うちらとしてはやった!という気持ちです。慣れてくると踊っている感じになると思うんですよ。

――踊っている感覚を生み出すダンス譜面はどのように作っているんですか?

小早川氏:実際に「踊ってみた」の映像を実機にいれて、譜面と映像が一致して遊べているか、特に「配置」をデリケートに気にしながら制作を行なっています。また、音楽ゲームとしてもしっかりと遊べるように、リズムのとり方については、踊りとのバランスを考えながら、色々と検討しながら作成しています。

Hiro師匠:他の音ゲーだと、1,2,3、ダン! となる所で必ずボタンを押すじゃないですか。でも「maimai」だと手を挙げたりといったパフォーマンスをしてもらいたいので、わざと抜いたりしていますね。

――幅広い楽曲が収録されていますが、どのような楽曲がユーザーには求められているのでしょうか? “舞い”というコンセプトから楽曲の傾向が似てきたりしないのでしょうか?

Hiro師匠:多く選ばれているのは、アップテンポ、展開の多い曲ですね。あとは気分が乗りやすいAメロ、Bメロ、サビとハッキリわかる曲です。

小早川氏:ちょっとポップスに近いような、わかりやすいような展開のダンス曲が本作には合っているのかなという印象です。当初はいろんな曲を提供しようというポリシーでしたので、初期のラインナップや今回追加した楽曲については実験的な曲が含まれている形での提案にはなっています。

――尺は通常のBGMと比べると短めになっていますよね。

Hiro師匠:そうですね。1分半から2分半くらいですが、基本的にオリジナル曲はフル尺で作っています。そこからおいしい部分を切り出したものがゲームに入っています。逆のパターンでゲームバージョンを作ってから尺を伸ばす場合もありますね。

小早川氏:フィジカルを使うゲームですので、あまりゲーム時間が長いと疲れちゃうんです。なので、2分いかないように1分45秒くらいを意識しています。個人的に「maimai」のいいと思うのが、画面をなぞるアクションがあることでBPMがスローの曲でも遊べる、というところです。初期のラインナップに関しては、BPMを速い方向に振り切らずに入れることができました。ただ、結果的にお客様はBPMが速いものを好まれているので、その嗜好に合わせて今後速い曲を入れていこうと思っています。

――実験的な曲があると先ほど伺いましたが、どの曲で、どのような実験なのですか?

小早川氏:例えば「オレンジの夏」は実験曲ですね。

Hiro師匠:“いい曲を作ろう!”として作った曲で、聞いていて心地いいものを目指しました。ただ、ゲームとして入れてみると盛り上がり感が伝わりにくい。

小早川氏:いい曲なんですけどね。譜面担当も“この曲いいですよ”と推してくれているのですが、音ゲーはイントロで曲を選択する所があるので、落ちついている感じだとなかなか選ばれにくいです。ジャズアレンジしたクラシック2曲もなかなか攻めたラインナップなんですけど。だからこそ、今回配信するのはいい試みかなと。是非聞いていただきたいです。

●「maimai SEGA Sounds Vol.2 -アダルト・ヒーリング・パック-」
 12月19日配信開始。1曲 150円、12曲セット 1,200円。

楽曲名アーティスト
オレンジの夏Hiro(SEGA) & タクマロ
虹と太陽GOSH(SEGA) & manami
True Love Song -G線上のアリア-Kai(SEGA) & manami
Color My World -悲愴-GOSH(SEGA) & 瀬口寛美
オレンジの夏(long Ver.)Hiro(SEGA) & タクマロ
虹と太陽(long Ver.)GOSH(SEGA) & manami
True Love Song -G線上のアリア-(long Ver.)Kai(SEGA) & manami
Color My World -悲愴-(long Ver.)GOSH(SEGA) & 瀬口寛美
オレンジの夏(Karaoke Ver.)Hiro(SEGA)
虹と太陽(Karaoke Ver.)GOSH(SEGA)
True Love Song -G線上のアリア-(Karaoke Ver.)Kai(SEGA)
Color My World -悲愴-(Karaoke Ver.)GOSH(SEGA)

iTunes Store/○Amazon MP3

小早川氏:言ってみれば「ネコ日和。」も攻めた曲ですよね。皆さん、テンションの高い、面白い曲が好きだなぁと。今、制作している曲もそれらのタイプが多いです。

――ここで言う“面白い”というのはどういう意味なんでしょう?

小早川氏:例えば「ネコ日和。」は、ネコの画像が出てくるハッピーな曲なんです。他のライセンス曲にはない個性というか味があります。こういうのがユーザーさんに好まれることがわかりましたので、これからリリースする曲に関してはユーザーさんを驚かせるような仕掛けを入れながら曲を作っていきたいです。

Hiro師匠:次は「犬日和。」が入ります(笑)。

小早川氏:ネタレベルで言うと「トリ日和。」、「キリン日和。」とかも(笑)。

――動物シリーズでいろいろいけますね。

Hiro師匠:干支で作ろうか? 「ヘビ日和。」とか映像が気色悪そうだけど(笑)。まぁ冗談はさておき、こういった普通の曲にはない、話題になるような曲を増やしていきたいですね。

小早川氏:今回、「ジョイポリス」という謎のカテゴリを用意させてもらっています。REDALiCEさん、Crankyさんといったその界隈では名の知れたコンポーザーさんにお願いしてできた曲です。こういった方にお願いしつつも、楽しい曲も用意させていただき、分厚い体制でいきたいと思います。

※「ジョイポリス」にカテゴライズされている楽曲は、東京ジョイポリスにあるアトラクション「ハーフパイプ トーキョー」で使われている楽曲。「HALFPIPE TOKYO Original Soundtrack」として、1曲 150円、16曲セット 1,200円で配信中。

○「HALFPIPE TOKYO Original Soundtrack」
 iTunes Store/Amazon MP3にて1曲 150円、16曲セット 1,200円で配信中。

Hiro師匠:今は言えないのですが、まだまだ面白い話があるんですよ。1月になったらお話できるんですけど。

小早川氏:来年もう1度来てくれませんかね?(笑)。今回の記事の評判が良ければ是非お願いします。

――わかりました(笑)。では話を戻しまして、先ほどサントラの話がありましたが、Hiro師匠は数多くの楽曲をCDでリリースされてきましたが、配信では手応えに違いはありますか?

Hiro師匠:1番違うのは海外で配信される所です。CDだと流通の事情があって、海外の人はなかなか日本のゲームの曲が買えない。ですが、iTunes StorやAmazon MP3ですと世界中で買ってもらえますし、反響ももらえます。

※「maimai」のサントラはiTunes Storeで世界63ヶ国、Amazon MP3で5ヶ国で配信中。

○「maimai SEGA Sounds Vol.1 -ウキウキ・わくわく・パック-」(1曲 150円 / 12曲セット 1,200円)
iTunes Store/Amazon MP3

○「maimai SEGA Sounds Vol.2 -アダルト・ヒーリング・パック-」(1曲 150円 / 12曲セット 1,200円)
iTunes Store/Amazon MP3

小早川氏:アジアで稼動しているので、アジア地域のお客様に提供できるのは嬉しい所です。

Hiro師匠:あと“楽”です。CDより手間がかからない(笑)。手間がかからない分、タイムリーに出せるんです。ゲーム発売と同時に配信といったこともできるし、曲単位で買ってもらうこともできますしね。今回はVol.2の配信ですが、Vol.5まではプランがあります。

小早川氏:今後、曲を先行リリースということもやってみたいですね。そういった時代に合った販売方法、プロモーションをしていきたいです。

――ゲームに収録されている曲はゲームサイズですが、サントラはどのように作っているのでしょうか?

Hiro師匠:サントラでは「game」、「long」、「Karaoke」と3バージョン用意してあります。「long ver.」はおいしい所を抽出する前の全てを聞くことができます。なぜこれがあるのかといえば、作りたいからです。それが1番大きい(笑)。まだ実現できていませんが、「Karaoke ver.」を使ってユーザーさんがニコニコ動画の“歌ってみた”の動画がアップロードできるよう調整しています。また、「long ver.」から切り出して、自分だけの曲を作ってみるのもいいですね。そうやって音だけでも遊んでもらえたらと思います。

小早川氏:Hiro師匠さんは、自分の作った曲で、ゲーム版の尺が合わないと悩んでいることがよくあるんです。思い入れが強すぎるらしくて。

Hiro師匠:全部のフレーズがかわいいです(笑)。自分でもどこを切ればいいのかわかっているんですけどね。

小早川氏:他人の曲はザクザク切るのに(笑)。

Hiro師匠:他人の曲は思い入れがないので(笑)。発注して上がってきたものに対して、入れ替えた方がいいと思ったら構成を変えたりもするんですが、自分のは構成すら変えたくない!

小早川氏:このように非常に愛のある楽曲が収録されているんです(笑)。Hiro師匠の作ったものだと「Baban! 甘い罠」とかも人気ありますね。

Hiro師匠:あと、曲もそうなんですが、曲名も大事だなと思うんですよ。

――よく曲名は後からつけるなんて話を聞きますね。

小早川氏:今だに後からつけてますけど(笑)。

Hiro師匠:「Baban! 甘い罠」も最初は英語のタイトルで、次に「甘い罠」となり、“まだ弱いな”ということで、サビの“Baban!”を足して「Baban! 甘い罠」になったんです。曲名はキャッチーで、詞の内容を表わしているものをつけないといけませんね。

小早川氏:リストを見てて、思わず選びたくなるようなタイトルを意識していますね。「ネコ日和。」はいい例です。あれは一瞬カーソル止まりますもん。

Hiro師匠:1番最初に見るのは曲名ですから。曲のリストをスクロールさせて、止まって少ししたらイントロが流れるので。

小早川氏:「炭★坑★節」もいろんなパターンがあったんです(笑)。両端に★とか、ハートが付いていたり。「炭★坑★節」を歌っている光吉(猛修)さん(※)のボーカルはノリがよくて僕は好きで、他の楽曲でも光吉さんが仮歌を入れているのを聴いて「光吉さんでいきましょう!」と言ったものの、Hiro師匠に押し切られて実現しなかった曲がいくつもあります。

Hiro師匠:却下した(笑)。合えばいいけど、合わない曲はね。彼のボーカルは熱いですから。

小早川氏:光吉さんのボーカルでOKだしたのに、完成したら「このボーカル知らない!」みたいな。

Hiro師匠:光吉は「仮」だからね。

小早川氏:仮で光吉さんを使うのは汚い(笑)。熱いボーカルなので、仮歌を聴くと、僕の中で熱い曲に仕上がっちゃうんですよ。だからマイルドに仕上がると許せない。本当に何回「光吉さんでいきませんか?」と言ったことか。

――そんなに多くなる予定だったんですか?

小早川氏:だいぶあったんですが火消しされて、今に落ちつきました。

Hiro師匠:あんまりあってもね(笑)

小早川氏:「光吉」ってカテゴリがあってもおかしくないくらいですよ。

Hiro師匠:今後は増えていきますので。この辺りも1月になったらお話できますので。

(木原卓)