コーエーテクモ、ソーシャルゲームプロデューサーインタビュー(前編)
今後のソーシャルゲームの事業戦略と各新規タイトルについてガッツリ聞いた
今年の東京ゲームショウで大きな存在感を示していたソーシャルゲーム。国内大手メーカーも含め、至る所で新しいソーシャルゲームを見ることができたほか、セミナーやフォーラムでもソーシャルゲームは主要なテーマのひとつとなっていた。ソーシャルゲームメーカー各社は、新しいユーザーを獲得するために、新規タイトルを通じて様々な取り組みを行なっており、ソーシャルゲームは一過性の存在ではなく、日常の中にある当たり前の存在として、国民の娯楽としていかにより浸透させていくかに腐心する様子を目の当たりにすることができた。
そうした中で、オールプラットフォームに展開するゲームメーカーとして攻めの姿勢を見せたのがコーエーテクモゲームスである。同社のソーシャルゲームは、「100万人」シリーズや「のぶニャがの野望」など、シミュレーションゲームの老舗として、カードベースのシミュレーションゲームが多かったが、東京ゲームショウ初日に実施した「コーエーテクモラインナップステージ」では、3本のソーシャルゲームを発表し、うち2タイトルはアクションの要素を備え、「真・三國無双 SLASH」に至っては完全にリアルタイムアクションゲームになっており、同社のソーシャルゲームが新しいフェイズを迎えたことを内外に示した。
今回は同社のソーシャルゲームの事業戦略と新規タイトルの内容について、ソーシャルゲームを含む、ネットワーク事業全般を統括する専務取締役 ネットワーク事業部長の小林伸太郎氏と、常務執行役員 ネットワーク事業部 副事業部長の藤重和博氏、そして「真・三國無双 SLASH」プロデューサーの越後谷和広氏、「100万人のNINJA GAIDEN」プロデューサー天野幸芳氏の4名に話を伺った。
ロングインタビューとなったため前後編でお届けする。前編では主にコーエーテクモゲームスのソーシャルゲームの事業戦略について話を伺い、後編で「真・三國無双 SLASH」と「100万人のNINJA GAIDEN」の具体的なゲーム内容について話を伺っている。
【コーエーテクモラインナップステージ】 | ||
---|---|---|
コーエーテクモラインナップステージでは、初公開となる「真・三國無双 SLASH」のほか、発表会当日の9月20日より正式サービスを開始した「100万人のNINJA GAIDEN」、「100万人の無双OROCHI」の3タイトルを発表した |
■ 同社初のソーシャルアクションの企画経緯について
コーエーテクモゲームス専務取締役 ネットワーク事業部長の小林伸太郎氏 |
常務執行役員 ネットワーク事業部 副事業部長の藤重和博氏 |
「真・三國無双 SLASH」プロデューサーの越後谷和広氏 |
「100万人のNINJA GAIDEN」プロデューサー天野幸芳氏 |
――「コーエーテクモラインナップステージ」の第1部で発表されたソーシャルゲームは、攻めの姿勢が感じられる内容でした。これまでどちらかと言うとコーエーテクモさんは、カード系といいますか、シミュレーションゲームが中心でしたが、今回はアクション性を前面に押し出してきた。これはどういった意図があるのでしょう?
小林伸太郎氏: 「真・三國無双 SLASH」にしても、「100万人のNINJA GAIDEN」にしても、元々アクションゲームがベースにありますけれど、やはり今のカードゲーム全盛時代に、どう差別化していくかを考えました。それとやはりワールドワイドの展開と、スマートフォンのパフォーマンスをどう活かしていくか。カードではないところでのゲーム性やパフォーマンスを最大限に発揮するために、今回、差別化にもなるし、パフォーマンスも発揮できるということで、アクションにトライしてみようということになりました。
――「100万人のNINJA GAIDEN」と「真・三國無双 SLASH」はそれぞれアクション性が高いゲームですが、開発はいつくらいから行なわれていたのですか?
小林氏: 「100万人のNINJA GAIDEN」は1年前くらいですかね。このIPで行こうと思っていたのはもう少し前ですが、実際に着手したのは1年くらい前です。「真・三國無双 SLASH」はもっと後です。
――どういう基準で、これでいこうと決めたんですか?
藤重和博氏: まずIPの問題があります。テクモブランドのIPで本格的なソーシャルゲームを作っていこうという話があったんです。そもそもグローバルを意識していましたので、「100万人のNINJA GAIDEN」はグローバルに強いブランドでもあるし、ぜひやってみようと。アクションをどうソーシャルで表現するという課題はあったのですが、とりあえず企画を作ってみようと。
――今はまだスマートフォンはハードのスペックが毎年ぐんぐん上がっているような状態ですが、どのあたりをターゲットにしているのでしょうか?
天野幸芳氏: 「100万人のNINJA GAIDEN」に関してはAndroid 2.2から対応していますので、普及している端末に関しては対応できる状況です。
――結構古い端末からカバーしているのですね。「真・三國無双 SLASH」はどうですか?
越後谷和宏氏: 「真・三國無双 SLASH」はAndroid 2.3です。だいたいFPSの基準で考えているんですが、FPSでいうと、機種にもよりますが、2.3でようやくPSPよりも少し弱いくらいまでのグラフィックスは出せるようになりました。当社はPSPでは何度か出していた実績もあるので、その辺りを狙っていくのがいいだろうなと考えました。iOSは5.5から対応しています。
天野氏: 「100万人のNINJA GAIDEN」は5.0です。iPhone 3GSでも遊べます。
――今回発表されたソーシャルゲームは海外展開を前提にしているということですが、実際に想定されている展開エリアはどのあたりですか?
天野氏: 「100万人のNINJA GAIDEN」は北米です。
藤重氏: 「真・三國無双 SLASH」も北米を中心にして、後はアジア。中国、韓国、台湾あたりで展開予定です。
――実際にそういったエリアからの引きといいますか、作ってよみたいな依頼はあったのですか?
小林氏: そもそも開発する時からそれぞれのパートナーと話をしながらきているので、やはり「100万人のNINJA GAIDEN」に関しては北米、「真・三國無双 SLASH」に関してはアジアと、それぞれのプラットフォーマーとのミーティングを重ねた上で、開発していくようにしています。ソーシャルゲームなので、基本的に強いプラットフォームに乗せないとビジネスになりませんし。
――対応言語はどのあたりまでサポートしますか?
天野氏: いまこの段階では日本語ですが、今英語版も大体もうシステムが固まってきたので準備をしています。
越後谷氏: 基本的には「真・三國無双 SLASH」も同じです。
藤重氏: 中文へは対応は、この先していくと思うのです。やはり市場にあった言語で展開していくのは大切なことだと思うので。ヨーロッパはまた言語が多数あって複雑なので、コストとの兼ね合いになるかもしれないですけども、基本は第一言語をしっかりやっていこうと思っています。
――グリーさんのGREE Platformは多言語対応を表明していますが、だからといって必ずしも十数カ国語に対応するつもりはない?
藤重氏: そうですね、今はコンソールゲーム機でもそこまでやっていないですし、例えばヨーロッパでソフトを販売する際も、3言語程度の対応になっています。それはいくつか理由がありますが、トランスレーションする時の品質を保つということもあります。例えばパートナーによってはテキストを渡したら自分たちで翻訳するよというところもあるのですが、それをやると、今度は私たちが確認できなくなってしまいます。そうなると意図どおりの翻訳になっているかわからないですよね。ゲームはちょっとしたところで演出が変わったりしますので、ちゃんと世界観や品質を大事にトランスレーションしていきます。
――ちなみに中国に関しては、各社が勝手サイトを立ち上げていて、カオスな状態ですが、どのような形で展開する予定ですか?
小林氏: 現時点では基本的に中国はグリーさんないしDeNAさんのいずれかと組んで展開しようと思っています。両社はそれぞれ中国展開の方針が違うんです。DeNAさんはどちらかというと自社の看板でプラットフォームを立ち上げて、そこから広げていくという展開です。グリーさんはどちらかというと現地の有力プラットフォーマーと提携して、例えばテンセントさんのプラットフォームを借りてサービスするという形になります。
――場合によっては日本と海外で展開するプラットフォームが違うこともありえますか?
小林氏: ありえると思います。まだ現実的な話はないですけれども、我々もビジネスですので、いずれのプラットフォームが1番かを見極めたうえで、パートナーを探していこうと思っています。
――今回発表したソーシャルゲームもタイトルごとにGREEだったり、Mobageだったりするわけですが、この選択の基準はなんなんですか?
藤重氏: 特にこのタイトルはどこと決めているわけではなく、なりゆきみたいなところもあります(笑)。先方から「このタイトルはウチで!」という話もありますし、バランスを考えることもあります。他社さんは、同時リリースをやられているところもありますし、今後はそういう可能性もあると思っています。
■ 今後はスマートフォン/タブレットにフォーカス
「真・三國無双 SLASH」と「100万人のNINJA GAIDEN」はネイティブアプリになっている |
――発表の中で印象的だったことがいくつかあるのですが、1つは今後スマホに特化していくという基本スタンスです。その意味するところを伺いたいのですが、まず今はまだフィーチャーフォンがかなりのシェアを占めていると思うのですが、これはフェードアウトすると考えていいのですか?
小林氏: 長い目でいくとそうだと思います。
藤重氏: 今のスマートフォンの普及スピードはとんでもないスピードですし、海外のデータを見るとやはりスマートフォンユーザーの方がリッチで、客単価が高いということもあります。それと先ほどお話しした差別化というところです。カードゲームでいう差別化は、たとえばカードのビジュアルの綺麗さがありますよね。我々がゲームメーカーとして、今後高いパフォーマンスで勝負できるのはやはりスマートフォンかなと考えています。
――スマホ系のアクションゲームが最近増えていますが、いわゆるユニバーサル対応で、iOSとAndroidだけではなくて、タブレットにも全部対応しているものが多いです。コーエーテクモさんの場合はどうなるのでしょうか?
小林氏: すべてを考えています。マルチプラットフォーム、マルチデバイス展開です。
――それではAndroidタブレットとiPadにも対応していると。
藤重氏: そうですね。基本的にはそういうスタンスです。
越後谷氏: TGSではiPadのデモも展示しています。
藤重氏: もうそこに市場があるのはわかっているので、デバイスを限定するとせっかくの市場の広がりに水をさす部分があります。最初からスマートフォン向けのタイトルだからこそ、タブレットなどにも対応できるわけです。フィーチャーフォン向けのタイトルを無理にスマートフォン対応やタブレット対応にすると、ビジュアルからなにから全部作り直さないといけないので大変です。
――今後、ソーシャルゲームの提供の形はネイティブアプリですか?
藤重氏: 必ずしもそうではないです。それはコンテンツの性質によって変えた方がいいと思いますので。ただ、「100万人のNINJA GAIDEN」と「真・三國無双 SLASH」についてはネイティブです。アクションを高いレベルで表現しようと思うと、どうしてもネイティブアプリにしないと厳しいので。
――「100万人の無双OROCHI」はネイティブじゃなさそうですね。
藤重氏: 「100万人の無双OROCHI」はアクションゲームではなく、従来型のカードゲームなので、ネイティブアプリにはしていません。やはりゲーム性によって分けていくという形がいいと思っています。ただ、アクションゲームはそうはいきません。アプリの形をしたWebゲームは今も多いですけど、私たちはアクションに関する部分はしっかりとしたリソースを自前で管理して、それ以外の例えばインターフェイス部分はWebで管理できるようにするなど、バランスが重要だと思うのです。
――Webゲームの形も取りうるという点では、今後もPC向けのブラウザゲームとか、Facebookアプリみたいな展開もあるのでしょうか?
藤重氏: それも当然ゼロではないです。Facebookに出すかどうかは別ですが、今後ブラウザ用のゲームをリリースする可能性は十分にあります。実際に2年前に小林事業部長になって体制が変わった際に、ソーシャルゲームをいくつか作ったのですが、その中には、ブラウザタイプのタイトルも出していってどう市場が広がっていくのかを見ようと作った「のぶニャがの野望」があります。そのほかにも「100万人のモンスターファーム」もリリースしました。結果、ブラウザタイプのゲームはしっかりビジネスになって、売り上げをキープできているんです。グローバル展開でも、台湾で「のぶニャがの野望」は賞を獲得するほど大人気ですし、アジアを意識するとブラウザゲームは捨てがたいです。
■ 開発環境について。すでにソーシャルゲーム向けのフレームワークを構築済み。今後はWii Uも視野に
「真・三國無双 SLASH」(上)と「100万人のNINJA GAIDEN」(下)は、3Dグラフィックスを採用したアクションゲーム。開発は自社で行なっているという |
――次に印象的だったのが積極的な3Dグラフィックスの採用です。開発は内製で、自社エンジンをつかっているのですか?
藤重氏: そうです。
――例えば採用事例の多いUnityを使うことはないのですか?
藤重氏: 考えていないです。しばらくは考えないと思います。
――それはどうしてですか?
藤重氏: 仮にゲームエンジンにUnityを使ってもソーシャルゲームを展開できますというのは、その通りだと思うのですが、それに使えるためのリソースを調整していかなくてはならなくなる。私たちはコンソールゲーム機で、フレームワークを自社で持っていて、カプコンさんのように大々的に名前を宣伝しているわけじゃないですが、1つ作るとすべてのプラットフォームに展開ができるという形にしています。そのためのリソースのコンバーターみたいなものとかも全部ありますし、それをスマートフォンにもこれから広がるだろうと思って、もう2年前から準備をしているのです。そういう環境があるのであれば、いまUnityを使う理由はあまりないわけです。
――なるほど、すでにスマホ向けの開発環境がしっかり整備されているわけですね?
藤重氏: はい。この1年というか、2年前に社長の襟川がソーシャルゲームに力を入れていくぞと宣言したときに、スマートフォンが広がろうとしていたこともあり、フレームワークをスマートフォンに対応させました。ノウハウを集中させるという意味でも、「100万人のNINJA GAIDEN」、「真・三國無双 SLASH」などは、このフレームワークで製作しています。
小林氏: その当時から各プラットフォーム、今ではPS3、Xbox 360、Wii Uですが、どのプラットフォームも、どんどんネットワーク機能が強化されてきて、その延長線上でスマートフォンという流れになっているので、うちも最初からマルチプラットフォーム対応で技術を含めて対応してきました。そうでなければいちいちデバイスごとに開発を変えていかなくてはならないので。
――ちょっと話がそれますけれど、任天堂のWii Uはまだ全貌が見えているわけではないですが、WiiU向けに、例えばこのWii Uゲームパッド向けにソーシャルゲームを展開する可能性はあったりするのでしょうか?
小林氏: ソーシャルを含むネットワークゲーム全体というくくりで展開する可能性はあると思います。
――なるほど、ソーシャルゲームだけでなく、オンラインゲームの展開もということですか?
小林氏: うーん、その先はまだ言えない(笑)。
藤重氏: もちろん、考えてないわけではないですよ(笑)
小林氏: 私どものセクションにはすでに据え置き型にしても、携帯型にしても、各プラットフォーマーさんからの要望を受けて、オンラインゲームを展開できる体制にはなっているので、タイトルを供給して欲しいという話はいずれからも来ていますし、できる体制もあるし、単純にいえば、あとはビジネスの問題ですね。
■ ネットワーク周りについて。非同期プレイにすることでアクション性を確保
姉妹作である「真・三國無双 Online」。藤重氏と越後谷氏は、それぞれプロデューサー、ディレクターという立場にある |
――ネットワーク周りについて質問ですが、藤重さんと越後谷さんとは「真・三國無双 Online」の開発初期の頃からインタビューさせていただいていますが、当時はとにかくレイテンシーとの戦いだったわけですけど、スマートフォン向けのオンラインゲームというのはそのあたりはどうなのでしょう? 例えば3G回線でちゃんと動くのですか?
藤重氏: 3Gで動くことは動きますよ。
越後谷氏: というより、やり方がオンラインゲームとはちょっと違いますね。
――なるほど、「真・三國無双 Online」のスマホ版という形ではないわけですね?
藤重氏: そこはちょっと違いますね。ゲーム性もちょっと崩している。パケットサイズもコンパクトにしているので。
――「100万人のNINJA GAIDEN」はどうなのですか? あれも動きが激しいゲームですが
天野氏: そうですね。ただソーシャルゲームなので、ソーシャルゲームの良さは非同期でもコミュニケーションが取れるということなので、そこを前面に生かして、アクションゲームとソーシャルゲームの融合を目指しています。
――その点では「真・三國無双 SLASH」はリアルタイムのアクションゲームなので、レテンシーは気になるところですが。
越後谷氏: 通信頻度が高くならないように工夫しています。
藤重氏: 同期をとらなければならないタイミングをゲーム性的にも少し減らしているんですね。
越後谷氏: 「真・三國無双 Online」と違って、完全に同期するわけではなくて擬似的な対戦になります。ただ、他のプレーヤーがそこに一緒にいる状態で、プレーヤーキャラクターは記録されたキャラクターも含めて登場はします。
――なるほど、リアルタイムで同期しないのであれば、通信量はかなり落とせますよね(笑)。
藤重氏: 「真・三國無双 Online」をスマートフォンで動かすというところから入って色々試してみたんですけども、本当にかちっとした対戦というのは厳しかったのです。
越後谷氏: 実際、現実世界で移動するときに、地下鉄の駅の間とか通信が届かない場所もあるので、そのときに切れてしまうのは面白くなくなってしまうから問題だよねと。そのため通信頻度は少なめにしてあります。
藤重氏: スマートフォンの場合、非同期性を保ちつつゲームにしていかないと面白くならないんです。
――素朴な疑問ですが、スマホでのアクションゲームというのは、非同期を維持しないとダメなのですか? それでサーバーから落ちたら文句をいわれて当然の世界ですか?
越後谷氏: だと思いますね。
――技術の壁というより、使い方の壁が大きいですね。しかし、そんなことを言っていたら、永遠にリアルタイムの対戦なんか実現できないような気もしますが。
越後谷氏: まあピア・ツー・ピアとか違う考え方で、それこそPSPの通信対戦のような形にすれば可能性はあると思うのですが、気軽に3G回線で遊ぶ形になるとやっぱりある程度は違うやり方を見ていたほうがいいです。
小林氏: でも、それを前提にすると、今度はグローバル展開が無理になると思うのですね。やっぱりコンソールの携帯ゲーム機も、海外は日本とは違った市場になるじゃないですか。日本みたいに同じ時間帯に遊ぶという環境ではないので。
■ 「真・三國無双」シリーズの作り手としてのアクションへのこだわり。「片手で縦持ち。通勤プレイも可」
縦位置でも横位置でも遊べる「真・三國無双 SLASH」 |
――非同期性にこだわった上で実現したアクションの部分についてですが、アクション性については、どこをこだわったのでしょう?
藤重氏: ソーシャルゲームやネットワークゲームでは一緒に遊んでいる人がいる、と感じられることが大事だと思うのですね。ここはゲームをデザインする中でも絶対に残さなくてはいけない部分でした。仮にアクションゲームであっても、カードゲームであっても同じだと思うのですが、自分がプレイしている画面の先にリアルな人がいるのだろうと想像させることが重要です。アクション性を追求するにしても、自分のアクションに対する反応がないとおもしろくありませんからね。
越後谷氏: アクションゲーム、特に見た目の反応みたいなところはできる限り残す。操作の方はスマートフォンなので複雑な操作は難しいので、そこは簡略化して、簡単な操作でもアクションを可能にしています。
――「真・三國無双 SLASH」に関しては、タッチ操作でどうやって多彩なアクションを発生させるのかが気になっているのですが。
越後谷氏: コンシューマゲームでできるアクションはなるべく搭載しています。基本は「真・三國無双 SLASH」というタイトルもそうですが、スラッシュやフリック操作ですね。フリック操作を色んな方向に行なうことで、例えばジャンプなら画面上へのフリックで、ガードは画面下へのフリックで行なえるようにしました。
――スラッシュするだけのゲームではなく、ガードやジャンプなどの戦術的な動きもできるのですね。
越後谷氏: そうです。それでも「無双」シリーズって複雑なコマンドを覚えることなく、ある程度ボタン連打で気持ちいいアクションができるというところがウリでもあるので、片手で連打してもらっていても、それなりに敵が倒せるような形にはなっています。
――いわゆる一騎当千の爽快感を実現するための“雑魚キャラ”は何人くらいでるのですか?
越後谷氏: 今のところ十何体くらいですね。後はもうスペックとの勝負になってきますけれど、出せるものであればもっと出せると思います。新しいスマートフォンであれば、スペックに余裕がありますので、相当出せると思います。そこはまだ試してませんが(笑)
――ハードによって表示数が異なるということは、オプションで設定できるのですか?
越後谷氏: そこは未定です。もしかしたら将来的に実装する可能性はあります。ただ、最新機種をお持ちのお客様のほうが良い結果が出るみたいな、ハードで差が付いても可愛そうなので、そこまでオプションをつけるつもりはありません。むしろ古い端末でも同じように楽しめるというところを基本に考えています。
――ゲームの解像度とフレームレートはどのくらいに設計しているのですか?
越後谷氏: 可変ですね。iPhoneの解像度で、Androidだともっと解像度が高くなっています。基本的にそこの機種に合わせた解像度で表示されます。
――機種によってはあまりフレームレートが出ず、重く感じることもあるだろうと?
越後谷氏: それはあると思います。
藤重氏: それは実際「真・三國無双 Online」もそうです。普通ゲーム機ではきっちり60フレーム、30フレームで管理してその中で処理していますけれど、PCやスマートフォンはお客様ごとに機種が違います。どれか1つに最適化しようとすると逆にゲーム性が阻害されてしまうことがあるので、基本はプレーヤーみんな環境が違いますという前提で、フレームレートは可変にしています。ただ入力のタイミングはしっかりとりますけど。
越後谷氏: 可変なのはあくまでも描画のフレームレートだけで、入力の方はその機種の1番細かいところでもってとっています。
――「真・三國無双 SLASH」の遊び方は、縦持ちで両手ですか?
藤重氏: いえ、縦で片手持ちを想定しています。今のスマートフォン向けのゲームはだいたい横ですよね。私も最初に越後谷に注文をつけたのは、「絶対に画面は縦」でした(笑)。ちなみに横にしたら横画面にもなるんですが、縦でも遊べないとダメです。両方遊べますが、やっぱり縦でできないとダメです。
――縦と横では操作体系が違うのですか?
越後谷氏: 基本は変わらないです。要はボタンの位置が変わるだけで。縦画面は縦画面なりの描画された部分に。
――縦だったら片手で遊べるわけですね。
越後谷氏: まあ、片手で普通に遊べます。横にしても、遊ぼうと思えば片手で遊べます。ちょっと持ちづらいかもしれないですが。
――「100万人のNINJA GAIDEN」はいかがですか?
天野氏: 「100万人のNINJA GAIDEN」も縦で遊べます。指1本で遊ぶこともできますけど、やはりこうアクションシーンは両手で遊んでいただいた方が面白いと思います。ちなみに縦と横では、繰り返すコマンドでいくつか出てくる技が変わります。
――なるほど。スマートフォンはコンシューマゲームやオンラインゲームの常識が通用しないので、どういう設計になっているのか聞いてみないとわからないものですね。ああそうなんだってことばかりです(笑)。
小林氏: 開発の都合ではなくて、ユーザーがどういう環境で、どういうシチュエーションで遊んでいるのかが重要だと思うんです。スマートフォンはゲームを横で遊ぶようにしていますけれど、基本的に電話じゃないですか。電話ってやっぱり片手だよね、と。
藤重氏: そうですね、フィーチャーフォンのころからもそうでしたけれど、オンラインゲームって基本的に夜遊ぶものじゃないですか。スマートフォンやフィーチャーフォンのゲームも夜にピークが当然あるのですが、お昼にも大きなピークがありますし、通勤時間の朝6時から10時くらいっていうのは、やはり一定のボリュームがあるのですね。そこから想像すると、やっぱり通勤時間はつり革を持ちながらやる人も当然いるでしょうし、お昼のご飯を注文して待っている間にやるとか食べながらとか、そうすると絶対に片手になるはずなのですよ。
――なるほど。通勤中にプレイすることを想定して開発しているんですね。
藤重氏: 通勤はかなり意識しています。
小林氏: スマートフォンやフィーチャーフォンのゲームをどれだけ長くやって貰うかは、イコール通勤で通学時間帯での遊びやすさに繋がりますので、そこに制約をつけていっちゃうと、自分で自分の首を絞めることになるなと。
(後編へ続く)
(C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.
(2012年 9月 24日)