「Master of Epic」アップデート先行体験レポート&運営チームインタビュー
5年ぶりにチュートリアルを一新し、新規ユーザー獲得を目指す
株式会社ロッソインデックスは、MMORPG「Master of Epic」において、7月27日、大規模アップデートを実施する。このアップデートではチュートリアルがリニューアルされ、サービス開始から5年ぶりにゲームの入り口が変わる。
「Master of Epic」は2005年4月よりサービスを開始しているMMORPGである。サービス5年目で今なぜチュートリアルをリニューアルするのか。今回はロッソインデックスでチュートリアルを先行体験すると共に、運営プロデューサーの小村益民氏にインタビューを行なった。
■ 多くの人と共に、自由に学びたいものを選べる新チュートリアル
チュートリアルフィールド「モラの隠れ里ネヤ」のマップ。目的の場所に行く事でチュートリアルが受けられる |
ネヤではモラ族から冒険の基礎が学べる。何人か他種族のNPCもいる |
「Master of Epic」は、最初はハドソンが開発を行なっていたが、現在はロッソインデックス社内で開発を引き継いでいる。本作は、「ウルティマオンライン」のようなスキル制のMMORPGで、プレーヤーは木を切ったり、戦闘したり、魚を釣ったり様々な行動をしていくことでスキルを上昇させていく。
現在、ゲームで実装されているスキルの数は57種類ある。スキルの熟練度の上限は100であり、熟練度の合計は最大850となっている。たとえば8種のスキルを100にして1つを50にするとか、70のスキルを12種取るなど、プレーヤーが思い描いたキャラクタータイプに従って、スキルを習得していくのだ。
今回行なわれるアップデートの内容は「チュートリアルのリニューアル」である。「Master of Epic」はスキル制のため様々なアクションを通じてキャラクターを強くしていく。これまでのチュートリアルでは、洞窟のような閉鎖空間で、教官役のNPCと1対1で「あれをやれ、これをやれ」といった形で詰め込み学習的な上に、教えられる要素も少なく、1度出てしまうとまたチュートリアルフィールドに戻って来れないため、多くの行動は結局実際ゲームが始まってから試行錯誤するか、他のプレーヤーに教わる、ということが多かった。チュートリアルでゲームを投げ出すプレーヤーもいたという。
リニューアルされたチュートリアルは「モラの隠れ里 ネヤ」と呼ばれるフィールドで行なわれる。ここには身体の小さな「モラ族」と呼ばれる種族が住んでいる。彼らは「Master of Epic」の冒険の舞台となる「ダイアロス島」では時に迫害される存在であり、ひっそりと隠れるように住んでいる。冒険者はこの島に漂流してきた存在で、モラ族に助けられる。冒険者はモラ族にこの世界を歩く基礎を学ぶ。モラ族が何故親切にしてくれるか、というのは、実はゲームのストーリーでの大きな伏線だ。
リニューアル後のチュートリアルは「自由度」がセールスポイントだ。プレーヤーはネヤを自由に散策することができる。マップには「戦闘を学ぶ」、「魔法を学ぶ」、「釣りを学ぶ」といったマークが描かれており、そこに行きNPCと会話することで目的の行動と、スキルの基礎を学ぶことができる。チュートリアルは様々な項目があり、「Master of Epic」の奥深さを垣間見させてくれる。
面白いと感じたのは最初のキャラクターの操作がWで前進AとDで視点を左と右に回転、Sで後退、というFPS的な操作方法にしているところだ。他のMMORPGではこの操作方法とクリック型を併用しているところも多いが、運営プロデューサーの小村氏は「この作品でもクリック型の操作は用意しているのですが、『Master of Epic』はキャラクターの“向き”が重要になるゲームで、多くのプレーヤーがFPS形式に移行していくんです。このため、最初からこの方式に慣れて欲しいと思いました」と語った。
チュートリアルでは特殊なアクションの習得の仕方、ショートカットの登録の仕方、木の切り方や釣りの仕方、水泳での息継ぎや、魔法を使うためには触媒が必要なことなど、様々な要素が学べる。世界観を重視しているためちょっとメッセージが流れるのが早く感じたが、楽しくスキルを学ぶことができた。1つ1つのスキルを使うために持ち物を持ちかえたり、ショートカットのアクションと併用したり、「手順」が必要なところも凝っていて楽しい。シンプルさを最優先にしているゲームも多いが、開発者のこだわりがやはり楽しい。
面白いのは「落下スキル」を学ぶというところ。本作では高いところから飛び降りるとダメージを受けてしまう。落下スキルを習得していれば高いところから飛び降りてもダメージが軽減されるのだが、このスキルの基礎を学ぶために、高い台まで上がって飛び降りるのだ。台の上には教官役のNPCがいて回復魔法をかけてくれるのだが、優しげな口調でかなりスパルタである。
また、「Master of Epic」はキャラクターの死亡に関して特殊で、キャラクターが倒れると、その場所に装備を付けた死体が残り、プレーヤーはそこまで取りに行かなくてはならない。「ウルティマオンライン」や「エバークエスト」では見られたシステムだが、最近のタイトルでは見られなくなった要素である。この基礎を学ぶために「では、実際に死んでみてください」とNPCに言われる。ちょっと衝撃的なセリフだ。
小村氏はチュートリアルのリニューアルで最も大きい点はこのネヤが「MMOフィールド」であるというところだと指摘する。これまでのチュートリアルではプレーヤーが1人で詰め込み学習をさせるMOフィールドだった。MMOフィールドになることで同じようにはじめた他プレーヤーと一緒に様々なことが学べるようになったのだ。
「『Master of Epic』は“親切なプレーヤーさんがたくさんいる”というところもセールスポイントだと思っています。ネヤは新規プレーヤーだけでなく、既存のプレーヤーも自由に行き来できる。既存のプレーヤーさん達がネヤに来て、困っている初心者さんを助けられるようになったのもチュートリアルリニューアルのポイントです」と小村氏は語った。
今回のチュートリアルは、世界観とゲーム性がきちんと両立した、ゲームシステムだと感じた。ゲーム性がユニークなだけに覚えなくてはいけない特別ルールも多いが、「Master of Epic」がもつ暖かな雰囲気が感じられ、またモラ族のミステリアスな雰囲気も垣間見られ、世界にグッと引き寄せられる。続くインタビューではリニューアルの意図や、これからの展開などの質問を重ねてみた。
■ ユーザー達のふれあいがゲームの基本となり、GMイベントが活性化を促すゲームのコミュニティ
ロッソインデックス企画運営部門ゲーム運営部プロデューサーの小村益民氏 |
ネヤのコンセプトアート。神秘的な場所だ |
編: 最初に、サービス5年目にしてチュートリアルを一新した今回の意図を教えてください。
小村氏: 「Master of Epic」は根強いファンに支えられているMMORPGです。我々自身も良いゲームだという自負はあるのですが、もっと楽しんでもらえるポテンシャルはある一方、初心者に対しては奥深さが逆に取っつきにくい部分があります。従来のチュートリアルは細かく良くできているのですが、スタンドアローン状態で、詰め込み式でした。今回1番やりたかったのは、チュートリアルをMMOゾーンでやりたかったのです。リニューアルで、他のプレーヤーと肩を並べてゲームを学ぶことができるようになります。
初心者がたくさんいるようなフィールドでより入り込みやすくなると思います。「Master of Epic」では「チャンネル」という概念はないので、全ての初心者がネヤに訪れるようになります。また、この場所から出ても「Master of Epic」は初心者向けの場所の奥に中級者向けの場所があったり、いくつかの町を中心に、初心者から上級者までが入り交じる光景となっています。ネヤで出会ったプレーヤーと他の街で再会する、ということも頻繁に起こると思います。
編: チュートリアルの要素で、特に見て欲しい、という部分はあるでしょうか。
小村氏: 画面をより見やすくし、FPS操作を主軸にとらえました。このインターフェイス部分の変化を見てもらいたいですね。この判断には議論が重ねられたのですが、マウス移動をデフォルトでフォローしていないのは、本作では慣れたプレーヤーはFPS系にしています。これは「Master of Epic」のゲーム性がアクション性が高いためで、ゲームをより楽しんでもらいたいという判断です。
今回のアップデートに関しては、運営側が「ユーザーをもっと増やしていきたい」という要望に対して企画側が応えたという形になっており、その提案でチュートリアルを作っていきました。今回の要素は中級者、上級者の直接の恩恵はないのですが、実は上級者でも生産に手を出したことがない、という人や、戦闘はやってないという人に対しても、改めて魅力を伝える、というところのきっかけになってくれればと思っています。
これまでのチュートリアルでは「ケール・タングン」というダンジョンがありました。これは上~中級者が初心者を助けるというコンセプトのダンジョンで、一緒に冒険できるものでした。ただ、このシステムは押しつけをしかねない部分もありました。今回、上級者や中級者が初心者とパーティーを組み、ダンジョンに誘う、という形でリニューアルします。「ケール・タングン」自体は色々な仕掛けもある人気の場所だったので、新しい形で楽しんでいただきたいと思っています。
チュートリアルという意味とは別に、「モラの隠れ里ネヤ」というのは長く構想にあったマップで、迫害されているモラ族がひっそりと住んでいる場所です。これまでもモラ族の村はあったのですが、他にも隠れ里があったことをプレーヤー達は知ることになります。この隠れ里には他の種族のNPCもいて、島の歴史の中でモラ族と共に暮らしている人がいることもわかってきます。
編: 実装後は初心者がこの街にたくさん訪れますが、ゲーム内イベントなどを実施する予定はありますか。
小村氏: 初心者さんが集まるマップなのでここに既存のプレーヤーがたくさん来るイベントはやらない方針です。8月には「フェローシップ勧誘キャンペーン」という、いわゆる“ギルド勧誘イベント”を行なう予定ですが、他の場所でやります。「Master of Epic」にはイベント専用のマップがあり、GMがそこへ誘導します。
編: 「Master of Epic」は他のMMORPG以上にGMが積極的にユーザーの前に姿を見せイベントなどで活躍しますね。ゲーム内でGMが出てくる頻度はどのくらいなのでしょうか。
小村氏: 随時という感じで、数日おきにGMがゲーム内に登場し、イベントなどを行なっています。かなりの頻度で積極的に行なっていく予定で、プレーヤーからの要望に応えてモンスターを出したり、ファッションショーの審査員をやったりもします。1カ月前に要望を出してもらえれば応える、という感じでイベントそのものだけでなく、会場に運ぶためのワープゲートを設置するといったこともしています。
編: 初心者に向けた要素として、GMの参加によるイベントというのはとても魅力的ですが、他にどんなアピールポイントがあるでしょうか。
小村氏: 「のんびり系のゲームである」というのは強調したいですね。多くのMMORPGは「レベル上げ」、「レアアイテムの収集」がユーザーのモチベーションになりますが、「Master of Epic」は1カ月もすればスキルの合計は最大値に達し、そこからどんなキャラクターを作っていくかを目指していきます。またアイテムもプレーヤーが作った良いアイテムを求めるところです。
「Master of Epic」はやはり「コミュニティーの面白さ」を体験して欲しいですね。GMとのふれあい、武器や防具もプレーヤーが作っているものが実用的なアイテムになります。他にも修理を頼んだり、プレーヤー達とふれ合うことでゲームが成立している。面白い要素としては「美容」があります。キャラクターは時間がたつごとに次第に髪がぼさぼさになり、しまいには頭の上にハエが飛ぶようになります。こうなる前に美容スキルの高いプレーヤーに髪を整えてもらわなくてはならないのです。
他にも食べ物を食べないとパラメーターが落ちるので、料理スキルの高いコックさんが必要です。料理人は戦闘を全くせずに料理だけでゲームが成り立ってしまう。この自由度とふれあいが最大のセールスポイントだと思っています。作り手とのやりとりは、露店や、ハウジングでの商店などでもできます。
編: 現在ユーザーが直面している問題、運営としての課題はどのようなものがありますか?
小村氏: 「アクセスエラー」などの不具合です。特にプレーヤーが良く集まる「城下町ビスク 西エリア」で、アクセスエラーが頻繁に発生し、ゲームが強制終了してしまうユーザーが多いです。この問題は現在開発のリソースを振り分け全力で対処しています。これをまず直して新しいシステムへ取り組んでいきたいと思います。
編: 次に、今後のアップデート予定の要素を教えてください。
小村氏: 10月にハウジングマップ第3弾「ゲオの深淵」というマップを実装します。ここは今までのハウジングマップより規模が小さく、これまでは3~400の家が建てられたのですが、今回は150しか家が建てられない住宅地となります。我々の現実の世界にある住宅地を思わせる整然とした街並みも面白いと思います。
11月にはこの住宅地の奥に「ゲオの深淵ダンジョン(仮称)」というダンジョンが実装されます。住宅地はこのダンジョンへ向かう準備や予備の武器などを提供するのに最適で、ダンジョンに向かう冒険者をターゲットにした商売を展開するなど独得な盛り上がりを期待しています。
編: 最後に、ユーザーへのメッセージをお願いします。
小村氏: 5年目を迎えている「Master of Epic」ですが、まだまだたりない部分もあると思っています。もっと魅力的に特徴を伝える努力が必要だと思っていますし、我々運営は“コンシエルジュ(ホテルでの客のあらゆる要望に応えるプロフェッショナル)”の様な役割を担っていければと思っています。良いユーザーさんの多い、良いゲームですので、ぜひ初心者さん達に参加して欲しいと思っています。
ROSSO INDEX K.K./ HUDSON SOFT
(2010年 7月 23日)