スクエニ、PS3/Xbox 360「マインドジャック」プレイ&インタビュー
あらゆるキャラクターにハックし、乗り移りながら戦い続ける!
ストーリープレイに、協力、対戦が融合した新感覚タイトル!

7月14日収録

収録場所:スクウェア・エニックス本社

 

 スクウェア・エニックスより2010年10月に発売が予定されている新タイトル、「マインドジャック」の体験プレイレポートとインタビューをお届けしよう。本作のプラットフォームはプレイステーション 3/Xbox 360。ジャンルは“マインドハックシューティング”となる。

 「マインドジャック」はFPS/TPS等のいわゆるシューターゲームを基本としながらも、“シングルプレイ、マルチプレイの垣根をなくし”、“自分のキャラクターという概念にも縛られない”という、新感覚のタイトルだ。そのプレイ体感は、従来のFPS/TPSとはかなり異なったもので、それだけに“マインドハックシューティング”という独自のジャンル名がしっくりくる。

 この記事では、そんな「マインドジャック」がどんなゲームなのかを詳しくお伝えすべく、体験プレイレポートとインタビューを収録した。インタビューでは、プロデューサーの山岸功典氏にお答えいただいた。新感覚の“マインドハックシューティング”がどんなゲームなのかを掴んでもらえれば幸いだ。



■ 「マインドジャック」を実際にプレイ!シングルプレイがシームレスに対戦、協力のゲームに変わる

 

主人公の2人。男性がジム・コービン、女性がレベッカ・ウェイス。2人1組のツーマンセル体制でステージを進んでいく
画像は敵キャラクターを捉えて盾にしながら攻撃する「ヒューマンシールド」。その他にも多彩なアクションが確認できた

 インタビューに入る前に、開発中のテストバージョンをプレイさせて頂いた。プレイしたバージョンはE3に出展されたものとほぼ同等。本体を2台繋いでの同時プレイを行なった。

 ステージは序盤にあたる空港ビルの中。遮蔽物が多く、あまり広くはない場所だ。主人公のジム・コービンとレベッカ・ウェイスが空港内の奥へと進んでいくシーンだが、前方には敵勢力の兵士やガードロボットのようなマシンが多数出現して銃撃による激しい攻撃をしかけてくる。

 画面のレイアウトや基本的な作りは、オーソドックスなTPS(自キャラの見える後方視点タイプのシューターゲーム)で、操作に関してもTPSタイトルを代表するタイトルのひとつ「Gears of War(ギアーズオブウォー)」とほぼ同じになっている。これはインタビューを読み進めて頂けばわかるが、主なFPS/TPSタイトルと同じ操作に揃えてあるからだ。

 障害物に近づいてボタンを押すと、スッとしゃがみ込んで影に隠れる。いわゆるカバーアクションで、手と銃だけを出して射撃するアクションもあるし、カバーしている場所から近くの別の場所に素早く移るアクションもある。直線的にはなるが、移動速度がアップするダッシュもある。敵キャラクターを掴んで盾にする「ヒューマンシールド」もあり、TPSタイトルの主要なアクションがしっかりと揃っている。

 だが、独特なアクションももちろんある。違いのひとつは、カバーしている場所から別の障害物へ移動しながら射撃するアクション。遮蔽物間の距離を飛び移りながら、その一瞬に射撃できる。また移動中にスライディングし、地面を滑りながら撃つという動きもあった。こうした凝ったガンアクションはスタイリッシュな動きで、ある種の日本的なかっこよさが感じられた。

 一通り操作を理解してきたあたりで、前方の敵がいるあたりに赤い霧のようなモヤモヤとしたものが動いているのが見えた。電子的な幾何学模様が密集したような外観をしている。それが敵兵士の1人に近づいていって、身体の中に吸い込まれていった。敵兵士の身体は赤いオーラのようなものに包まれ、途端に動きが機敏になった。

 

デジタルな模様をした霧のようなものがハッカーことプレーヤーである「ワンダラー」。敵対するワンダラーは赤、味方となってくれるワンダラーは青だ。キャラクターに近づき身体を乗っ取ることでそのキャラクターを操れるようになる

 これが「マインドハック」だ。赤い霧は“ワンダラー”と呼ばれる相手プレーヤーの本体で、敵兵士をハックして自分のキャラクターとしたのだ。当然ながらプレーヤーが操作している敵は、AIの動きとは明らかに動きが異なっていて猛然と攻撃をしかけてくる。

 面白いのは、プレイしていたモードはキャンペーンモード、いわゆる自分1人でプレイしてストーリーを楽しむモードでありながら、他のプレーヤーがシームレスに参加してきたこと(ログメッセージは表示される)。「マインドジャック」にはモードという概念は“あって無いようなもの”で、シングルプレイもマルチプレイも融合している。自分はプレイ当初1人でストーリーを進めていたはずだった。だが気づいたら他のプレーヤーとの激しい戦いになっていた。こういうことが普通に起こる。

 簡単に言えば、「アーケードゲームを1人でプレイしているところに、協力プレイも途中参加できるし、乱入対戦も入ってくる」という感じだ。

 今回は2台使っての対戦プレイだったが、敵対するプレーヤーが参加するように味方のプレーヤーも参加してくれる。いわゆる協力プレイ(CO-OPプレイ)だ。味方のプレーヤーは青いワンダラーで、レベッカや一般市民にハックできる。もちろん自分自身もジムだけでなくレベッカや一般市民にハックして操作キャラを変更できる。

 プロデューサーの山岸氏にプレイ中に解説を頂いたので、併記しておこう。

    プロデューサー 山岸 功典氏:このゲームではプレーヤーたちはみな、空中を飛んでいる霧のようなワンダラーであり、「ハッカーたち」になっています。ハッカーがキャラクターの肉体に乗り移って操作します。それが「マインドハック」です。

     例えばFPS/TPSのタイトルだと、死亡した場合は復活まで少し時間を待ったり、次のゲームまで待ったりしますが、「マインドジャック」では肉体を借りているだけなので、待ち時間なしにすぐに別のキャラに乗り移ればいい。スピーディーなゲームになっています。

     敵プレーヤーと味方プレーヤーについてですが、ホストになっているプレーヤーは主人公のジムを操作します。同時に動いているNPCのレベッカはAIで動いていて、一緒に戦ってくれます。そして、このホストのゲームに、他のプレーヤーがオンラインで侵入してきます。

     侵入したプレーヤーは、侵入した時にホストのプレーヤーと“敵対”するのか“協力”するのかを選べるようになっています。「マインドジャック」では敵味方を色でわけていて“赤色が敵対プレイ”、“青色は味方でCOOPプレイ(協力プレイ)”になります。

     侵入してきたプレーヤーが、まず赤の敵側として参加した場合だと、操作するのは敵のキャラクターが基本になります。敵の戦闘メカであったり、敵の兵士です。

     青の協力プレイで参加した場合で操作できるキャラクターは、代表的な存在としてレベッカというキャラクターになります。レベッカは、ホストのプレーヤーが操作しているジムのパートナー的なキャラクターですね。

     あとは、中立の存在としてNPCがいます。戦闘に巻き込まれて避難しうずくまっている一般市民ですね。これには赤のプレーヤーも青のプレーヤーも、どちらも入って操作できます。



【ワンダラー】と【マインドハック】
敵対する赤のワンダラー以外にも、味方の存在になる青のワンダラーや、プレーヤー自身の白のワンダラーも存在する。ワンダラーはゲームに参加してきたプレーヤーそのもので、そのマップにいるキャラクターや戦闘メカ、一般市民等をハックして操り戦う

 このような解説を受けて見回してみると、そこかしこにうずくまっていたり逃げるように動いている一般市民がいる。彼らに対しても、自分も相手プレーヤーもハックできるというわけだ。

 基本的に自分側のキャラクターはジムとレベッカの2人だけなのに対して、敵側は数が多い。一般市民にハックして味方を3人にしたほうが少しは有利かもしれないと思える。だが、ジムとレベッカの両方が戦闘不能になったらゲームオーバーになってしまうし、片方がダウンした場合はもう1人を操作して救出しなければならないので、ジムかレベッカはプレーヤーが操作すべきかもしれない。

 

【マインドスレーブ】
ダウンした敵キャラクターを奴隷化させ服従させる「マインドスレーブ」。数的に不利な状況でもマインドスレーブで味方を増やすことでカバーできる

 と、こうしたことを考えているところで、もう1つ重要なテクニックを山岸氏から教わった。それは「マインドスレーブ」というものだ。ある程度攻撃を当ててダウンした相手の意識を支配し、味方にするというもの。

 ダウンした敵にカーソルを合わせボタンを押す。すると、その敵は立ち上がって他の敵キャラクターに攻撃をしはじめた。

    山岸氏:赤の敵側プレーヤーのほうが操作できるキャラクターやジムたちを攻撃するAIキャラの数が多くて有利に見えますが、青側は「マインドスレーブ」という能力が使えます。これはダウン(瀕死)になった相手を奴隷化させて味方にするという力です。うまくマインドスレーブを使えば味方の頭数を増やせるわけです。

 相手プレーヤーこと赤のワンダラーの動きを意識し、それを優先的に倒しつつ、マインドスレーブで味方を増やしながら、なんとか奥へと進んでいく。一見ストーリーモード的なプレイ感だが、敵の動きはプレーヤーが操作する激しいもので、対戦しているという感触が同居している。このプレイ感は新しい。ちなみにマインドスレーブしたキャラクターは、もともと攻撃を当てて1度ダウンさせていることもあって残り体力が少ないのか、そんなに長くは持たず、すぐに倒されてしまう。

 

 赤のワンダラーは操作しているキャラを倒されることで、次第にハックできるキャラクターが減っていき、ステージの奥へとハックできるキャラを探しにいくことになり、こちらはその分前へ進める。ちなみに赤のワンダラーを完全に倒すということはできないので、攻防そのものには終わりはない。ステージの終わりがあるだけだ。この概念も斬新に感じられた。

 

ハックやスレーブできるのはなにも人間のキャラクターだけに限らない。戦闘メカ等も扱える

 空中を飛びまわるガードロボットのような機械を赤のワンダラーが操作して襲ってきたときには、「そんなものも使えるのか!」と驚かされた。マインドハックできるキャラの幅が広い。ステージによっていろんなタイプが用意されている。

 自分で一通りのプレイを終えた後、山岸氏とスタッフの方にお手本プレイを見せていただいた。その攻防は不慣れな自分のプレイとはまるで異なっていた。素早くマインドハックして次々に操作するキャラクターを切り替えている。例えば、正面同士で互いのプレーヤーが撃ち合っているなら、ハックするキャラクターをスッと替えて、相手の側面などのカバーできていない方向を突くのが効果的なわけだ。それをお互いが仕掛けあっている。

 ダッシュして相手側に突っ込み、スライディングしながらのショットなどを放ったかと思えば、すぐにそのキャラから抜け出て別のキャラをハックする。すると突っ込んだキャラはその場でAI操作で戦い続け、それを別のキャラを操作してサポートできる。そうして奇襲をかけられたプレーヤーは、突っ込んできたキャラクターを捕まえ、ヒューマンシールドにして自分たちの攻撃に活用する。

 「マインドジャック」ならではの戦略とテクニックが入り乱れていて、従来のTPSとはプレイ感が全く異なっている。これが、「マインドハックシューティング」だ。



■ ストーリプレイ、協力、対戦が完全融合!最大6人でマインドハックを駆使して戦う

 

本作のプロデューサーを務めるプロデューサー 山岸 功典氏

――遊び方についてなのですが、キャンペーンモード(シングルでストーリーを楽しむモード)で、オンラインの協力も対戦も楽しめるということでした。かなり斬新さを感じました。

山岸氏: 従来のFPS/TPSは、オンライン対戦とキャンペーンモードを完全に切り分けていて、マップも別々に作って用意していますよね。自分たちは「キャンペーンモードで慣れたマップでそのまま対戦も楽しめるほうがいいのでは」と考えたんです。

 ストーリーで1度クリアしたマップに関しては、どこからでもマップをセレクトして開始できます。クリア済みのストーリーのマップを、全て対戦マップとしても自由に使えるという作りですね。

――ストーリー用マップの1チャプター分が、対戦用のマップでもあり、協力プレイのマップにもなっているということですか?

山岸氏: そうです。プレイの区切りは1チャプターごとに付いて、チャプター終わりにプレイが評価されてポイントがもらえます。いくつかのチャプターがあり、その都度、評価があって、最終的にステージが終わっていく。そして、次のステージへと進んでいくという形になります。そのゲームに参加している人は、次のステージについていってもいいし、チャプターやステージ終わりの評価のタイミングで止めて抜けてもいい。抜けた空きの分、新しい人が入ってくると思います。

――プレーヤーの最大参加人数は何人になるのでしょう?

山岸氏: 最大で6人ですね。

――その場合、3対3が基本になるのでしょうか?

山岸氏: いえ、それは決まっていません。同時にプレイできる人数が最大で6人なだけで、あとはホストのプレーヤーが設定したルール次第。1対5にわかれて遊んでもいいですし。

――遊び方はプレーヤーの自由なんですね。1対5はかなり厳しそうですが。

山岸氏: 1対5に設定してプレイするというのはかなりのマゾプレイというか(笑)。よほど腕に自信があれば、という感じですね。今、この組み合わせパターンを色々と作り込んでいるところです。基本的には、プレーヤーが参加してきたら、赤側、青側と順番に割り振る形が、ルール的には1番バランスが取れていてのだろう、といったことは考えています。

 例えば、いわゆる「3セット1ゲーム」といった感じで赤3人と青3人で戦い、赤と青が入れ替わりながら戦って、最終的な勝利を決めるゲームとかもよさそうですよね。これはまだアイデア的なものですけども。

 あとはこれもまだアイデアの域ですが、評価で得られるポイントを成績のトップ1人だけが総取りするようなルールだったりとか。これだと赤と青には一応はわかれているものの、実際は関係なく全員が競っているような遊びになりますよね。

 ルールを決めるインターフェイスの作り方によりますが、ユーザーさんが遊びを考えられるようにしたいと思っています。こちらのほうがある程度のルールとフィールドを提供するので、あとはユーザーさんにいろいろと組み合わせてもらって、新しい遊びを見つけてもらいたいな、と。そうすると開発者が考えている以上の面白さが生まれることもあると思います。

 

西暦2031年という近未来を舞台にしている本作。人格を乗っ取り操る謎の技術「マインドハック」、うごめく巨大多国籍企業。隠された真実を探っていく

――ストーリーに関してですが、どのような物語でしょう?

山岸氏: お話そのものは近未来の世界設定で海外ドラマのようなテイストですね。裏でうごめく陰謀とそれに対抗する組織というような。突然の裏切りやどんでん返しなんかもあって、色々楽しめると思います。

――世界感やストーリーはどういうアイデアから生まれてきたのでしょう?

山岸氏: 元々は開発ディレクターが随分昔から考えていたお話なんですよ。基本プロットはそこからで、シナリオを構築していったのはイギリスのストーリー制作会社です。当然作り方としても海外的になっていて、日本的な物語よりもリアリティを重視しているところがあります。

――開発期間はいつぐらいからスタートしているのでしょう?

山岸氏: だいたい1年半ぐらいなんですが、下地の部分から言うと実際は2年半ぐらいかかっています。

――だいたい2年前とすると、TPSタイトルでは「Gears of War 2」あたりが主流で遊ばれていた時期ですね。

山岸氏: そうですね。影響はかなり受けています。特に操作のキーアサインは揃えている部分があります。代表的なタイトルですし、それにみんな慣れているでしょうから、それと違う操作にすると単純に遊びづらいという話になってしまいますし。それなら最初から近い操作になっているほうが遊びやすいですよね。

――人間のキャラクターについては操作感覚も近いかもしれないですが、それ以外の、例えば戦闘メカをハックするということもできますよね。それらの操作感はどうなるのでしょうか?

山岸氏: クリーチャー系のモンスターだったり、メック(兵器)系でも空中を飛行する種類やローラーで移動するタイプなんかもありますね。やはりメインは人間にはなりますが、人間以外は操作感覚が変わってきます。動かし方が独特で、難しいこともあったりしますが、うまく扱えると相手に突進して転倒させたりできます。空中を飛ぶタイプなら、場所を選ばずに進んでいけますが、スピードがちょっと遅いとか欠点もあったりします。

 人間のNPCも全部同じではなく、持っている武器がいろいろ違っていて、ロケットランチャーを持っていたり、スナイパーライフルを持っていたりとバラバラです。それらが配置される場所もステージによって変わってきます。そのキャラクターをうまくハックできるかでも、戦略が変わってくるんですよね。先にベストポイントにいるスナイパーライフル持ちをハックしてしまえば、そこから狙撃での攻撃ができる、というように。

――そのキャラクターの存在自体が強力な武器のようなものですね。

山岸氏: そうです。それに加えて、ワンダラーそのものにもレベルアップで得られる特殊能力の「アーツ」がありますから。リロード速度が速くなるアーツを持っていて、狙撃のキャラクターをハックできれば、より高い性能で相手を撃てることになります。そのあたりも戦略につながっていきます。

マインドハックの技術は人間以外の存在も乗っ取り操れる。左の画像では、巨大なクリーチャーの「タイタンズ ゴリラ型クリーチャー」に赤のワンダラーがハックしているのがわかる。クリーチャー以外に様々なメックも登場する

――成長要素の「アーツ」(プレーヤー自身に特殊能力を付与できる要素)についてですが、やはりそれぞれのスタイルに特化するような枠組みになりますか?

山岸氏: このマップならこれとこれだよね、というように状況によって付け替えができるよう考えています。スナイピングが面白ければそれ用のものを付けたり、広い地形なら移動速度を上げるものを付けたりとか。

――アーツのバリエーションはどれくらいになりそうですか?

山岸氏: 全部で30種類ぐらいになるとは思いますが、今はゲームバランスを考え、増やしたり削ったりしてバランスを調整しているところです。

――バランス調整の話ですが、ゲームバランスが非常に重要になるというか、うまく整えるのは大変そうな印象を受けます。

山岸氏: そうですね。そこを今重点的に取り組んでいます。どのあたりに基準を置くか、という状況です。基本的にはキャラクターの能力自体は変化しないので、通常のスタンドアローンのプレイでうまく整うようにはしています。ただ、そこに、侵入してきたハッカーのアーツやプレーヤースキルが絡んでくるので、そこのバランスの幅をどうみるかですね。

――対人であり成長要素もあるというのがバランスどりのポイントですね。

山岸氏: そのへんはやっぱりバトル&トライで。「これはマズイからこういう風に変えてみて」というように微調整を繰り返して、良くしていく感じです。いろんなことができることに対して、それらの対抗策も整っていないといけないですしね。

 

人間のキャラクターは所持している武器の性能もあり、さらに本人の能力に個性がある。画像は体力が高いというマッチョのキャラクター

――人間のキャラクターには武器以外にも特性というか、個性のようなものもあるのでしょうか?

山岸氏: ありますね。マッチョのキャラがいますが、ロケットランチャーを持っていて体力がメチャクチャ高いんですよ。多少の攻撃では倒れませんが、動きは遅い。一方で、キャビンアテンダントの女性がいるんですが、ものすごいスピードで走るんですよ(笑)。

――逃げ足が速いんですね(笑)。

山岸氏: そうなんです(笑)。どのキャラクターのどの特性を活かすかがポイントで、このステージならこのキャラクターでスピーディーに動けたほうがいい、とか。体力の多いキャラを使ってごり押しで突っ込んだ方が早い、とか。強力な武器をドンドン撃って暴れるというのもできますが、その代わり目立つので狙われやすいとか。そういうキャラクターのバリエーションはもっと増やしたいと思っています。

――バランスをとる意味でも、戦略の広がりとしても、たくさん欲しいですよね。

山岸氏: キャラクターの属性+持っている武器で変わってきますから。いわゆるショットガンなのか、マシンガンなのか、スナイパーライフルなのかで得意な距離が変わりますし、それらを持つキャラクターの能力もあるという。従来のTPSだとそのキャラクターでずっと進むわけですけど、いろんなキャラクターをその場の状況に合わせて変えていくという面白さを提供したいですね。

左はマッチョな謎の男性、中央は移動速度が非常に速いというフライトアテンダント、右は空港職員だ。いずれも青のワンダラーがハックしている模様。キャラクターの能力を活かして戦略を立てるのが戦いのポイントになる



■ ルールや遊び方が従来のシュータータイトルとは全く異なる。気軽に遊び続けられる新機軸のゲーム

 

システムや概念が非常に斬新な「マインドジャック」を、丁寧に解説してくれた山岸氏。特に重要視していたのは、“気軽に遊んでもらいたいゲーム”であること、“スピーディーに遊び続けられるゲーム”とのことだった

――バランス調節の面から細かな仕様を伺いますが、死亡して減ってきたNPCはどうなるのでしょう?

山岸氏: 基本的に死亡したNPCはその場で倒れて操作はできなくなりますので、使い果たしてしまう可能性があります。ただ、使い果たしてしまうと多人数で戦っているときにマインドハックが可能な対象がなくなってしまうという問題があります。なので、NPCが減ってきた時には、何かしらの演出で補充されるようにしようかな、と考えています。このあたりの仕様を今、調整しているところです。

――ホストのプレーヤーがゲームを終了した場合はどうなるのでしょう?

山岸氏: その場でゲームが終了になってしまいます。ホストのプレーヤーだけは、参加者がいる時はプレイの評価がされるステージの区切りまではプレイして欲しいですね。ステージ途中での強制終了に関しては、なんらかのペナルティを設けないといけないかなとは思っていますが。

――上手い人同士の対戦だとどのようになるんですしょうか? 相手がマインドハックできるキャラクターを先手を打って潰しておくといったプレイ? けっこう長期戦にもなりそうですが?

山岸氏: NPCを全滅させてマインドハック先が無い手詰まりにさせるというのは、NPCが補充される仕様にするとなくなるとは思うのですが、うまくピンポイントに撃って敵のキャラを倒しつつ、自分も同じキャラに居続けないようにして、有利なところから攻撃する、という感じになるかなと思います。あとは、相手側のキャラを捕まえて盾にする「ヒューマンシールド」を使って、わざと撃たせるといったこともできます。

――なるほど。境界線がないという意味でも、従来のTPSタイトルとは概念が全く異なっていますね。プレイの区切りというか、止めどきが見つからないゲームになりそうです。

山岸氏: このような仕様にしているのは、“気軽に遊んでもらいたい”という思いからなんですよ。今までのTPSは、決まった人数のまとまりが必要で、ある意味、敷居が高いというか。気軽に入りづらいし抜けづらいといったゲームにはしたくなかったんです。

――確かにルーム制であること自体もそうですし、人数が減ったら補充されるまで待つような場面があって、入りづらさや抜けづらさはあるかもしれません。参加するならある程度以上のまとまったゲーム数を付き合うっていう前提を暗に感じていたりしますね。

山岸氏: 「マインドジャック」では、相手さえいればいいんですよね。人数差が絶対のゲームではないですし。ゲームの途中からでも乱入できるので、スッと入ってきてスッと出ていっても、おそらく問題ないと思います。

 あと、“死”という概念が基本的に無いんですよね。倒されても別のキャラにハックすればいい。プレーヤーにとって1番嫌なのは、死んでしまって次のゲームまでボーッと待っていないといけないことだと思うんですが、このゲームにはそれはないんです。そういう意味でも気軽に遊び続けられるゲームになっていると思います。

 

1人でプレイしている時でも、オンライン経由に他のプレーヤーが参加している時でも、ゲームの目標は変わらない。ジムとレベッカはステージの最深部なり目標を目指し、相手側はそれを阻止する。ジムとレベッカは2人ともが戦闘不能になった場合ゲームオーバーになる

――「死」がないというところで「マインドジャック」での対戦における、勝ち負けの概念を再確認させてもらいたいのですが、どういう条件になるのでしょう?

山岸氏: 赤側は、ジムとレベッカの2人を戦闘不能にすれば勝ちですね。で、青側はキャンペーンと同じなので、目的地にたどり着いたり、ボスのところまで進んで倒せば勝ち、とかですね。

――なるほど、他のプレーヤーが参加しているかどうかは関係なく、プレイの目的は同じなんですね。そのあたりの考え方も斬新です。

山岸氏: でも考え方としてはシンプルで、1人で遊び始めたところが、いつの間にか別のプレーヤーが操作する敵になっていたり、味方もプレーヤーが操作するようになっている、それで遊べるという。でも目的はプレイ開始時から基本的に変わらないんです。

――遊び方のバリエーションも凄く広そうですが、ボイスチャットの仕様はどのようになるのでしょう?

山岸氏: その仕様もゲームルール同様にセッティング次第ですね。全員に聞こえるようにするのか、赤と青で分けるのかというパターンと思いますが。ボイスチャットだけでなく、最初から3人集まって全員青側で参加者を待っていてもいいでしょうし、逆に3人で知らない人のゲームに乗り込んでもいけるような。

――なるほど。クランのようなグループをサポートする機能はあるのでしょうか?

山岸氏: それは今のところは考えていないです。それを入れちゃうと、フレンドが集まりやすく固まりやすくなりすぎちゃうんじゃないかなと思っていて。そのあたりは無くして、気軽にやってもらいたいという感じです。

――ルール等を設定するインターフェイスについては今煮詰めている真っ最中という状況でしょうか?

山岸氏: そうですね。1番難しいのがゲームを開始するときのインターフェイスで。セッティングしたルールをどう見せて入ってきてもらうかというのがあって、入る側からしても、どんなルールでどんなマップか、というのがわかるようになっていないと入りづらいでしょうし。

 その人にとって魅力的なマップなのかどうか、ということもありますよね。様子見で接待プレイ的に遊ぶことになる可能性もあるのかもしれないし、逆に本気でガシガシ遊ぶのもあると思います。青側で入っての協力プレイがメインなのか、どんどん対戦するのか。そのへんは自然とわかれていくとも思うのですが。

――観戦モードのようなシステムは考えられていますか? どんどんハックしながら戦っている様子は見ているだけでも面白そうです。

山岸氏: 変な話ですが、ワンダラーの状態で浮かんで見ているだけなら、ある意味観戦モードなんですよね(笑)。

――ワンダラーがいてもいるだけなら特に問題はないということですか?

山岸氏: 別に構わないです。ハックして何かに入らない限りは、特に何もできないですから。ただ、実はここからまだアーツに加えようとしているんですが、ワンダラーの状態にも何かできるようにしようかと考えています。電撃を撃って、ちょっとした邪魔をできるようにしたり、相手のハックを押し出したりとか。どこまでやるかはバランスの次第ですが。


■ 「マインドジャック」は新しい遊びになるか!? 現在はバランス調整やインターフェイスを追い込み中!

 

バランスどりが非常に重要に感じられる本作。現在の開発状況はゲームルール等のインターフェイスとともに、バランス調整を詰めているということだった。プレーヤーが色んな遊びを作り出せる、そうして夢中で遊び続けるゲームになって欲しいと、笑顔で語ってくれた

――現在の開発状況はどのような状態でしょう?

山岸氏: ゲームルール等のインターフェースを煮詰めているところですね。なんでもかんでもホストプレーヤーが決められるというようにすると、キリがないというか。ゲームを始めるまでにかなり時間がかかってしまう。簡易設定と詳細設定を用意しようかと思っていて、ある程度のパターンを例えば10パターンぐらい用意しておいて選ぶだけでいいようにしたりするのはどうかな、とか。

 そのあたりを色々と試行錯誤しているところです。「こんなに細かいと、ゲーム始めるまでにすごい時間かかっちゃうよ(笑)」ってツッコんで、「せいぜい数分で決定できるぐらいじゃないとダメだよね」と話しあったり。

 広がりという点では、「マインドジャック」のシステムや作りに対して、開発メンバーの中でも「いろんなものに応用できるよね」という話が出ています。極端な話をすれば、RPGでもこういう作りで楽しめる。

 スタンドアローンのゲームでありながら、オンラインになっている。ゲーム機がネットワークに繋がっていることを前提として、みんなスタンドアローンで遊んでいるのに、いつの間にかオンラインのゲームに気づいたらなっていた、という。

――面白いですね。とっつきの良さや概念の新しさが日本人好みな印象を受けます。

山岸氏: 国内ではシューターゲームってまだまだなところはありますが、仕組みから興味を持ってもらえたらなと思います。発売は世界同時を考えていて、シューターゲームはやはり海外のほうが反響がありそう、とは思いますが、日本のメーカーが作ったTPSなので、日本的な発想も織り込んでいます。かつ、シナリオに関してはイギリス発であったりするので、幅広く受け入れてもらえたら、と思っています。

――E3に出展されていましたが、反応はいかがでしたか?

山岸氏: 大勢の方に遊んでもらえましたが、理解してもらうのが大変でしたね(笑)。本作の情報解禁がE3であったため、普通のTPSだと思ってプレイしている方も多く、自分のワンダラーが浮いている画面を見て「これどうするの?」と。「これを操作するとキャラに入れるんですよ」って教えると、「なるほど!」と反応してもらえました。そのあたりが課題ですよね。なにしろ概念が新しいので。そのへんを理解してもらいたい、知ってもらいたいですね。

――最初は困惑するかもしれないですけど、理解できてからはずーっと遊び続けられそうな感じがします。

山岸氏: そうなって欲しいですね。悪い言い方ですけど、中毒のごとくずっと遊び続ける人が出てきてもらいたい、みたいな(笑)。理解してもらうには触ってもらうのが1番なので、触ってもらう機会を増やしたいと考えています。

――楽しみにしています。本日はありがとうございました。

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※画面はすべて開発中のものです。

(2010年7月27日)

[Reported by 山村智美 ]