インタビュー

「FFXIV 蒼天のイシュガルド」プロデューサー吉田直樹氏インタビュー

新ダンジョンには「大迷宮バハムート」のギミックを導入

新ダンジョンには「大迷宮バハムート」のギミックを導入

アイテムレベル170の夜叉装備。「3.0」にはさらに強力な装備も存在する
二転三転するメインストーリーのネタバレにならないよう、今回はストーリー関連をすべてマスクした、と吉田氏

――すべてのジョブついて言えることですが、今まで作っていたマクロやマクロパレットは組み替えたほうがいいのでしょうか? それとも現状のものに新しいアクションだけを足せばいいですか?

吉田氏: 60になった時に組み替えればいいと思います。必ずしもすべて組み直しになるかというと、そうではないと思うので。ローテーションが変わったものについては、当然作り変えが必要になってくると思いますが、究極のローテーションを考えていくのはレベル60になってからなので、それまでは今までのローテーションでやっていても、それなりに数字がでるようにしています。

――今回2レベルごとに新しいアクションを覚えることになりますね。頻繁に遊び方が変わることになりますが、これはどういう意図なのでしょうか。

吉田氏: レベル60に上げるには、レベル1からレベル50までのレベル上げと、ほぼ同じくらいの時間がかかりますので、新アクションはこれくらいの頻度で覚え、2レベル分の進捗で馴染んでいただければと思っています。

――そんなにかかるのですか?

吉田氏: そうですね。特に1ジョブ目は時間がかかります。

――1、2週間程度では無理ということですか。

吉田氏: 1日に何時間プレイするかによります(笑)。やる方はめちゃくちゃプレイされるでしょうから。ですから、時間単位ならともかく、期間では計れないかなと。

――レベリングのメインは何になりますか?

吉田氏: ストーリードリブンなので、1ジョブ目はストーリーを追っていくのが一番速いと思います。後はメインクエストで訪れることになったフィールドマップを全部開けて、メインストーリーで必須のダンジョンを1~2周くらいのペースでやっていけば、だいたい完成するように計算しています。

――今回はストーリーが入っていない状態でしたね。

吉田氏: 今回のバージョンではクエストは残らずすべてマスクしてあります。ストーリーに関してはもう実装は終わっているのですが、とにかくネタバレをなくしたいのです。今回のストーリーは区切りに思えるタイミングの直後に二転三転するのですが、たった1つの何気ないキーワードから、ネタがばれてしまう可能性があるので隠しています。

――今回の試遊でキャラクターが夜叉装備という装備を着ていました。名前からして和風な感じですが、どういう設定の装備なのですか?

吉田氏: 設定はありますが、結構レベルの高い装備なので今はまだ秘密です。プレイして見ていただきたいです。

――アイテムレベルが170ですが、あれが「3.0」の最高級品なのですか?

吉田氏: あれより上が結構あります。夜叉装備は60になってから最初に目指す装備ではありますが、まだまだ段階はありますね。「新生」時の哲学装備くらいに思っておいてください。ほかにも禁書装備や機工城アレキサンダーのノーマルとハードもありますしね。

――ノーマルとハードは違う装備になるのですか?

吉田氏: 見た目は同じですが、性能が違いますし、ハードの方はカラーチェンジできます。

――夜叉装備は和風で、アウラも和風な感じですが、ストーリーの中にも和風な要素が出てくるのですか?

吉田氏: それほど和風を意識させるようなことはしてはいないですね。ドマの人たちが特定のシチュエーションで重要な助けをしてくれたりと、関わってくることはありますが、それほどドマを意識させて和風を強くということはやっていません。今回はどちらかというとゴシックファンタジーな方に寄せているので、世界観がブレないようにしています。ただ、60になった後は装備バリエーションがたくさんあったほうがミラプリも含めて楽しいと思うので、色んなジャンルを入れているというものの一環です。

――おしゃれ装備もあるのですか?

吉田氏: 入ります。いくつだっけなあ……。

――そんなにたくさん入るのですか?

吉田氏: おしゃれ装備というよりも、装備全体のバリエーションが多すぎて、2レベルごとに着替えできるくらい装備種類が多いので、覚えられないのです(苦笑)。ぱっと見せられて、これがどこのダンジョンでドロップする装備ですかとクイズを出されたら、見た目から推測する程度で、多分分からないです(笑)。

――ダンジョンごとに装備のドロップが違うのですか?

吉田氏: そうですね。多いですね。

――楽しみですね。そういえば、先ほど見せていただいたトレーラーでアルフィノもコートに着替えていましたね。

吉田氏: アルフィノはむしろ今までの装備が寒すぎたんじゃないかと(笑)。「新生エオルゼア」のストーリーの中でもクルザス地方に行ったときに、アルフィノが「寒い」と言ったりしてましたし、さすがにイシュガルドに来て、フォルタン家にお世話になりながら冒険に行くのに、あの足のところが開いたままの格好はないよねという話をして(笑)。コートも、ちゃんと誰が用意したものかということをストーリーに入れています。

――アウラは実際に触って、エモートなどを見ると結構思っていたよりも陽気なお兄ちゃんと、つつましい女の子だなという印象を受けました。

吉田氏: そうですね。そちら側に寄せているのは確かです。

――アウラの吉田さんが考えているイメージを教えてもらえますか?

吉田氏: キャラメイクで極端に自分の中のアウラの設定を変えられるようにしています。僕が基本路線として守れと言ったのは、ちょっと影があって守ってあげたくなるような女性のキャラクターメイクが今まで「FFXIV」にはないので、そこが維持できるようにと。誤解の無いように補足しておきますが、女性はそうあるべき、という意味ではなく、そういう設定のキャラクターが作れるように、というお話です。

 最低限そういうエッセンスが出せるようにという指示をしているだけで、同時に悪魔的でサキュバスのようなキャラメイキングもできるようにという話をしているので、一本道ではないのです。ただエモーションは1種類しかないので、女性キャラは控えめなものにして、あまりキャッキャしているキャラにはしないでと。男は逆に、暗黒をやった時に中二っぽくアピールできるような感じにしてという話はしています。

――エモートは新しいものは入るのですか?

吉田氏: 1、2個増えますが、今回は尋常ではないリソース量だったのであまりそっちに回している余裕がなかったです。

――エモートは今後順次実装ということですか?

吉田氏: そうですね。また「3.1」以降にそういった生活系のものを。今回は「蒼天のイシュガルド」の物量を、まずはゲームとして作りきることが最優先だったので。

ダンジョン「ソーム・アル」には、レイドダンジョンにいたボスに似た攻撃を使う敵がいる
フィールドのどこかには、野生のチョコボも棲息している

――今回ダンジョンを2つほど体験させていただきましたが、内容については比較的オーソドックスだなと思いました。「蒼天のイシュガルド」におけるダンジョンの位置づけはどういうものなのですか?

吉田氏: 意味合い的には変えていません。時間のないプレーヤーでもMMORPGをコツコツ続けられるように、極端に複雑なルートにはしないですし、慣れたりアイテムレベルが上昇していけば、決まった時間できっちりクリアできるというところを保証しています。

 短い時間の中で、計画的にリワードがもらえるからこそ毎日少しずつ遊んでいてもエンドに到達できるというところは崩したくないですし、インスタンスダンジョンはその役割だと定義しているので、今後も大幅には変わりません。ただ、パッチ「3.X」のシリーズの中では、毎回の出会いや、シチュエーション変化、迷う、探索、といったキーワードを持つコンテンツを入れていこうと思っていますので、そういった要素はインスタンスダンジョンではなく、新コンテンツにご期待頂きたいと思います。

――今回、「ソーム・アル」というインスタンスダンジョンに挑戦しましたが、途中に「大迷宮バハムート:侵攻編」のボスに似た敵がいますね。

吉田氏: 「蒼天のイシュガルド」に最初からある8つのダンジョンには、広範囲に散らばっていますが、簡易化された「大迷宮バハムート」のギミックと似たものが入っています。

――それはどういう意図があるのですか?

吉田氏: 「大迷宮バハムート」へ行っていない人たちにも、経験の無いギミックや敵の技を少しずつ覚えて頂こうということからです。それをしないまま拡張を続けていくと、プレーヤーの体験知識差が開いていき、パーティーを組んだときに意思疎通がしづらくならないようにと思っています。クリスタルタワーシリーズは、大迷宮バハムートに行かない方でも、楽しんで頂けた多人数レイドですが、「暗闇の世界」で発生する「シェアダメージ(複数のプレーヤーで攻撃を受けて、ダメージを頭割りして耐える技)」に戸惑っている方を多数拝見しました。どうしても「避ける」イメージが強いためです。難易度は当然いつものインスタンスダンジョンくらいで作っているので、1つずつ体験して、レイドに行っていた人と行っていなかった人との差を埋めるような作りになっています。

――バハの予習ができるということですか?

吉田氏: 確かにそれもできると思います。レベル60になって、一通りのインスタンスダンジョンをクリアしたら、大迷宮にまだ挑んでない方も、さくっとバハムートに会いに行って欲しいなと思います。

――フィールドはものすごく広いですね。新しいモンスターも、ネコが羽を付けて飛んでいる可愛いのから、気持ち悪いのまで色々いますね。

吉田氏: 今回は久しぶりに野良チョコボもいますので戦ってください。

――戦うと、仲間になりたそうな目でこちらを見たりするとか?

吉田氏: そちらではないです(笑)。そういう要素も今後考えていきたいなという話はしていますが。チョコボはずっとゲストっぽくなってますが、もともとイシュガルドはチョコボの産地でもあるので、そういったもともとの設定を生かしたようなものがまだ見ていただけない場所にあったりします。

――野生の原種のチョコボがいたりするのですか?

吉田氏: そうです。そのチョコボを狩ることで生計を立てている村もあります。

――今回ずっとフィールドをフライングで巡っていて楽しかったですが、フライングを使った遊びはあるのですか? それとも今は飛ぶだけなのですか?

吉田氏: ゲームなので、飛ぶこと自体よりも、飛んで探して発見するということを重要視しています。

――ほら穴の中でドラゴンが死んでいたりして、あれはちょっと感動しました。探索によってああいう発見があるわけですね。

吉田氏: 今回は広くフィールドを作ったので、この先「3.X」シリーズでフィールドにいろいろなものを置いていきたいと思っていますし、その時には当然フライングマウントがないとたどり着けないとか、フライングマウントを使って発見をしていくというところはやりたいです。それにハウジングの飛空艇探索のアップデートの中で、皆さん自身が飛空艇にのって新しい空島に冒険に出ていく時に、その先でフライングマウントが活躍するように作っていきます。

――空島は今回触ったエリアとは別のエリアになるのですか?

吉田氏: そうです。

――そういう点で今後もフライングのシステムは活用されるのですね。

吉田氏: 今回で終わりではなくて、フライングがあることによってできる遊びを今後も増やしていこうとは思っています。フィールドの空中にリングを置いて、一定時間の中で最速で回れみたい遊びも企画には出ています。入れたかったのですが、余裕がなさすぎました(苦笑)。

――F.A.T.E.も比較的オーソドックスな印象を受けましたが、特殊なF.A.T.E.はあるのでしょうか?

吉田氏: 以前でいうレッドベリー砦のような、結果によって次に発生するF.A.T.E.が変わるようなものの新しいバージョンが複数用意されています。ベヒーモスやオーディンに相当するような敵も登場しています。

――今回F.A.T.E.4人で試したら、結構簡単に全滅して、意外と難易度が高いなと思いました。

吉田氏: イシュガルド地方は過酷な地域ですし、皆さん光の加護を一回失っていますから(笑)。今回のパブリックフィールドは、未開の地域ということを含めて多少強めに調整してあります。モンスター2体に絡まれて自分がソロだったら、死を覚悟するか逃げるかの選択肢を頭に入れておいた方がいいようになっています。

――最後に光の戦士達にメッセージをお願いします。

吉田氏: 「FFXIV」としては初めての、そして本当にお待たせした拡張パッケージ第1弾です。ちょっとスケジュールの読みを間違いボリュームを入れすぎてしまい、開発チームにも申し訳なかったですし、プレーヤーの皆さんにも僕らの想定より1カ月お待たせしてしまいました。今後、落ち着いたら開発ワークフローを見直すつもりですが、結果的にこれだけのボリュームをご用意できたことは幸いだと思っています。

 欧州のメディアの皆さんにも「こんなボリュームのエクスパンション見たことがない」と多数のコメントをいただきました。その期待に応えられるだけのゲームにしてお届けしたいと思っていますのでご期待下さい。まだまだ本当に最後の最後まで、おそらくアーリーアクセスの数日前までバランスチェックをやっているはずです。「新生エオルゼア」発売時の時のテンションがまた戻ってきますので、ぜひ新作RPG1本分くらいのつもりで挑んでいただけたらと思います。

――ありがとうございました!

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(中村聖司/石井聡)