インタビュー

「FFXIV」プロデューサー吉田直樹氏 G-STAR特別インタビュー

中国展開の現状と海外展開の今後の展望について。2015年は「蒼天のイシュガルド」の年に!

中国展開の現状と海外展開の今後の展望について

でぶチョコボの顛末を語る吉田氏。中国市場は一筋縄ではいかないようだ
11月に中国で実施されたでぶチョコボキャンペーン。888元(約16,000円)払って買うか、それとも30時間以上プレイしてクジを引くか。このキャンペーンは日本にも飛び火する形で多くの中国ユーザーから反感を買った

――中国で正式サービスがスタートして数カ月が経過しましたが、状況はいかがですか?

吉田氏: 今シャンダさんがバタバタしているので、ちょっと福岡のプロデューサーレターLIVEが終わりしだい中国に行って、この先のPR計画とパッチの話をしてこなきゃと思っています。

――中国のバージョンは今いくつですか?

吉田氏: パッチ2.2が入りました。ちゃんとコアプレーヤー層がしっかりできて、全プレーヤーの1日辺りの平均プレイ時間が6.5時間あたりまで行っています。

――従量制なのに6.5時間って凄いですね。

吉田氏: ただ、それはキャンペーンの影響もあって、ログイン時間に応じてマウントがもらえますというものをやっていたのでそれで伸びている部分もあります。

――多少キャンペーンでプレーヤーから反感を買ったような雰囲気でしたが。

吉田氏:でぶチョコボの件ですね(苦笑)。事前にお聞きしていなかったので、先方に連絡をして意図を確認した上で、キャンペーン内容は調整していただきました。ログイン時間に応じて、全員がでぶチョコボを貰えるという内容に。中国市場は尋常ではないくらいにF2Pというモデルが全盛です。どうしてもそのイメージがあっての施策内容になってしまったようです。この点も含めて、次の打ち合わせで根幹を確認しようと思っています。

――そういうことだったんですね。ちなみに累計のユーザー数はどのくらい集まっているのですか?

吉田氏: 100万は超えていますね。

――この数字としては、計画としては悪くない?

吉田氏: そうですね。今F2Pしかない中国市場で、十分なスタートです。この数字は立派なものだと思います。

――これで中国、韓国と展開地がさらに広がっていくわけですが、グローバル版のユーザーからすると、中国や韓国のユーザーを感じられるようなリージョン横断的なイベントにも期待が集まりますが、そういう可能性はあるのですか?

吉田氏: うーん、レイテンシの問題があるので、かえって喧嘩になりそうな気がするのですが(笑)。

――たとえばその期間だけコンテンツファインダーで繋がって交流ができるとか、3すくみでそれぞれの国のユーザーと戦いができるとか。

吉田氏: その場合、コンテンツクリアは回線品質に直結するので、やっぱり揉めそうです(笑)。それだったらフロントラインを使って、対抗戦をやった方が面白いのかなと思います。例えばですが、日本でまず3国のチャンピオン、24人対24人対24人を選ぶ大会をやって、中国でも韓国でもアメリカでもヨーロッパでもそれをやって、各地域の3リージョン代表チームがそれぞれ選出されます。それを一堂に招いての大会。例えば双蛇党のワールドナンバーワンはこの国のこのチーム!という方が僕は面白いし好きです。

――PvPと絡めるわけですね。

吉田氏: やはりその方が大会が絶対に盛り上がるし、帰属意識での応援もそうですし。僕もずっとeスポーツの中継を見るのが好きで、「FFXIV」をプレイしながら横で中継を流していたりするので、そういう方向性に調整してみたいです。

――そういう絡ませ方ならリージョン横断型のイベントとしてありではないかと?

吉田氏: もちろん、一筋縄ではいかないですし、まだ「FFXIV」のゲーム内でそういった準備が足りないのは重々わかっているので、時間を掛けて準備をしてからになります。やりたいことがあり、それは順々に叶えさせてもらっているのですが、PvPに関しては日本単独ですらまだちゃんと実施できていないので、着実に一歩ずつです。

――海外展開については次の展開はどうなりますか?

吉田氏: 僕は半分冗談半分本気で中東と言っているのですが(笑)。冗談はさておき、しっかり市場調査はしていますが、グラフィックスの修正コストが尋常ではないので、なかなか難しいという雰囲気です。

――宗教的な問題でグラフィックスに修正を加える必要がある?

吉田氏: ええ。肌の露出がほとんどできません。ゲームだからこそ、色々な格好を楽しみたいと思うのですが、規制がかなり厳しいです。また、「神」という単語が一切使えないので、世界設定に関して全部置き換えが必要になってきます。

――そうした規制を乗り越えて中東で運営しているMMORPGはあるのですか?

吉田氏: 中東内で作られたゲームは、それなりに多いですよ。

――ブルカをかぶったようなキャラクターばかりが登場するようなMMOですか?

吉田氏: いや、肌を出せないだけなので、そこまでではないです(笑)。例えばですが、グローバル版だと半袖やノースリーブだったとすると、腕のところに布が当てられる感じです。面積の何パーセント以上が隠れてないといけない、という規定があったりして。ただ、アラビア語対応することで、シンガポール辺りにサーバーがあれば、そちらが全域カバーできたりもするので可能性としてはゼロではありません。

――となると有力なのは東南アジアですか?

吉田氏: そうですね。あとはやっぱり台湾でしょうか。

――台湾は「FF」ファンがすごく多くて、「FF」シリーズの中文版もすでにいくつかリリースされているので有望な市場だと思うのですが、やはりパブリッシャー選定に時間が掛かっているのですか? Actoz Softさんのような熱意のあるパブリッシャーを捜している?

吉田氏: はい。そこがないと続かないと思います。だから、まずは韓国で展開して、その次にお話があれば是非にとは思っています。

――台湾、東南アジア、それ以外に可能性が高いところは?

吉田氏: 後はロシアですかねやはり。相手先がいらっしゃれば。ただ本当にロシアこそ政治的にもそうですが、すごく複雑な国ですから。サブスクリプションという概念も一切ありません。

――となるとどうなるのですか?

吉田氏: F2Pでいくしかないです。マーケットとしては大きいです。北米、ヨーロッパ、アジアがあり、南米はこれから間違いなく伸びる市場だと思っています。サイズで言えば、伸びる南米とロシアはいずれも巨大で、非常に迷うところではあります。

2015年は「蒼天のイシュガルド」の年に!

2015年はやはり「蒼天のイシュガルド」の年になるようだ
パッチ2.5で実装予定の「ゴールドソーサー」ラフスケッチ。東京ファンフェスでは実機映像が見られるだろうか?
晴天の海雲台ビーチをバックに記念撮影。ストロボを焚かないと真っ白になってしまうほどの快晴だった

――少し気が早い質問ですが、2015年はどういう年にしたいですか?

吉田氏: 何はともあれ3.0かなと。最初のエクスパンションなのでしっかりと。

――2015年は「蒼天のイシュガルド」をきっちり成功させる年にしたい?

吉田氏: はい。まだ幸いに、幸いという言い方はだめなのかな……「FFXIV」からすれば幸いですが、まだ「FFXV」が開発中ですので、3.0発売のタイミングだと我々が「FF」最新作です(笑)。

 また「FF」のナンバリング最新作!というつもりで、いろんな要素を詰め込んでお届けします。まずはそれをきっちりリリースして、3.0シリーズというものを軌道に乗せる1年でありたいなと思います。

――3.0に関しては12月20日からの東京ファンフェスでまた色んな情報が出てくるようですが、もう仕込みは終わったのですか?

吉田氏: 情報露出の準備や、動画の準備は事前に公開するものを徹底的に決めてあるので、着々と進んでいます。僕の基調講演時に写すパワーポイントの資料だけ、まったく進んでいません。1行も書けてないです(笑)。内容はすでに決まっているので、あとはアウトプットの時間だけあればいいので、なんとか再来週ぐらいには、一気に仕上げようと思います。

――ちょっと話がわき道にそれますが、吉田さんは忙しすぎだと思います。そろそろプロデューサーとディレクターの分離を考えてもいい時期なのかなと見ていて思いますが、吉田さん自身にその意思はないのですか?

吉田氏: 「FFXIV」の開発も軌道に乗りましたし、ディレクター業務についても効率化されてきているので、引き継ぐ意思がないわけではないです。が、相手がいないという状況です。

――“NQひろし”の愛称で親しまれているアシスタントディレクターの髙井さんがディレクターではダメなのですか?

吉田氏: 髙井さんにはやってもらいたいこともありますし、そもそも今もアシスタントディレクターなので、ディレクター業務の多くを肩代わりして貰っています。それは権代や前廣にしても同じです。

――「やって貰いたいこと」とは「FFXIV」以外でということですか?

吉田氏: まず「FFXIV」の中でやって貰いたいことも一杯ありますし、そもそも現在「FFXIV」は、スクウェア・エニックスの中野第5ビジネスディビジョンという事業部のようなものの中に位置しています。僕はそのディビジョンの責任者ですし、「FFXIV」のコアメンバーは、そのまま第5ビジネスディビジョンのコアメンバーでもあります。みんな実はめちゃくちゃ忙しいというのもあります。

――それでは来年も引き続き吉田さんがプロデューサー兼ディレクターを務めますか?

吉田氏: 来年もというか、当面はそのつもりです。「自分にやらせてほしいです!」という人がいれば検討します。アシスタントプロデューサーにも言われますが、業務過多過ぎてスケジュールの調整もそうだし、僕の生活もヤバすぎませんか?そろそろ後任を、と(笑)。

――性格的にやっぱり全部やりたい?

吉田氏: いいえ、そういうことではないです。その点は誤解なさらないでください。僕は今回「FFXIV」を担当して、ここまでディレクターを兼任でやってきましたが、やはりゲームはチームで作るものだと強く思っています。しかしその一方で、特に開発初期には強いディレクターがいて、「このゲームはこれでいいんだ!」という役目も必須です。今回は緊急事態ということで、1人でプロデューサーとディレクターをやりましたが、この数年仕事してきて、今の社内やゲーム業界には、どちらかと言えばプロデューサーの方が足りないと思うようになりました。

 やはりゲームデザインが理解できて、ゲームが好きで、ゲームのPRができる人というのはそう多くはないのかなと。ただ、開発に関しては、若手にもとても優秀なスタッフがいて、凄い勢いで成長していますし、ディレクション部分は皆に任せて、僕はそのサポートに徹する方が結果として良いのかなと。いずれにせよゲーム作りには代わりはないからです。キャリアとしては、「プロデューサーはイヤだ、いずれディレクターに戻る!」と思っていたのですが、あきらめつつある、という感じです(笑)。

 しかし、「FFXIV」に関しては、皆が皆「吉田の後を引き継ぐのだけはイヤだ!」と。良い点も悪い点も、全部比較され続けるなんて、普通は堪らないと思います。ですので「俺に任せろ!」と自分から言ってくれる人が現われるまで、何より僕自身が「FFXIV」でまだまだやりたいことがありますし、当分このままだと思います。

――今回は韓国展開に関するインタビューなのですが、1つだけグローバル版について伺いたいのは、現行のグローバル版のパッチ2.4、2.41の手応えと、今後どう調整していくのか聞かせていただけますか。

吉田氏: 客観データとしていつも通り各種の数値データを見ていますが、数字は非常に良いと思います。

――それはユーザーの絶対数が増えているのですか?

吉田氏: もちろんそれもありますが、プレーヤーの方のリテンションもそうですし、新規フリートライアルからのコンバージョンレートも非常に良いです。このままのペースでキチンとパッチをお届けしたいと思います。今はどうしても拡張ディスクである「蒼天のイシュガルド」に開発コストを取られているので、パッチに割けるコストに限りがあります。それでもパッチ2.4は忍者が、2.45ではエターナルバンドが、パッチ2.5でもゴールドソーサーがあります。そうした目玉コンテンツは維持しつつ、うまくコストバランスを取りたいと思います。

 ひとつあるとすれば、竜騎士について、忍者の方がユーティリティが高くなってしまったことで、方向指定をミスした際や、被ダメージの際のミス許容範囲が不利になり、使いにくいという声をいただいている部分は、早めに調整させていただこうと思っています。具体的には竜騎士の強化を今進めているところで、なんとかパッチ2.45くらいではその調整をお届けしたいなと、目下その点に注力しているところです。

――ゴールドソーサーを筆頭としたパッチ2.5の情報はいつくらいから出るのですか?

吉田氏: 東京のファンフェスからを予定しています。東京ファンフェスの2日目にプロデューサーレターLIVEを予定していますので、そこからパッチ2.5のお話をしていけたらと思っています。

――最後にユーザーさんにメッセージをお願いします。

吉田氏: 今回は韓国に集中しているので、グローバル版のプレーヤーの方からすると、ちょっと寂しいなと、もっと俺たちの方だけ向いてくれ、というところもあるかもしれないですが、世界中言葉は違えどゲームを好きな人たちはたくさんいらっしゃいます。韓国にも「FF」や「FFXIV」を応援してくださる方がたくさんいるので、いつもの繰り返しになりますが、1人でも多くの方に「FFXIV」を遊んでいただきたいなと思っています。

 これから韓国の皆さんもエオルゼアの冒険者として、そして光の戦士の仲間になって頂きます。グローバル版の方は温かく見守っていただきたいですし、韓国のゲームプレーヤーの方には「FF」としても初めましてですし、「FFXIV」としても初めましてのご挨拶“アニョハセヨ”がやっと言えました。次はしっかり握手をして、肩を組んで、一緒にゲームを楽しみましょう、ということをPRしてやっていきたいなと思っています。ぜひ韓国展開にも期待をしていただきたいなと思います。

――東京のファンフェスにも期待しています。ありがとうございました。

(中村聖司)