インタビュー

セガネットワークス編成局副部長 秋山隆利氏インタビュー

ソーシャル、アーケード、オンラインのノウハウを活かした「チェインクロニクル」の魅力に迫る!

今夏サービス開始予定

利用料金:無料(アイテム課金制)

 セガネットワークスが今夏にサービスインを控えているスマートデバイス向けの大型タイトル「チェインクロニクル」。カードバトルが多いソーシャルゲームの中にあって、ストーリー性やキャラクターの育成などRPG要素を前面に押し出したタイトルだ。

2005年、ゲームオンで「SiLKROAD ONLINE」のプロデューサーを務めていた頃の秋山氏

 今回は「チェインクロニクル」の正式サービスに先駆けて、セガネットワークスでソーシャルゲームを担当している編成局副部長の秋山隆利氏に、「チェインクロニクル」の魅力について話を伺った。秋山氏は、コアなオンラインゲームファンならご存じの通り、ゲームオン、NHN Japan、そしてCJインターネットジャパンと、一貫してオンラインゲーム畑を歩んできた人物だ。

 「チェインクロニクル」は、カテゴリとしてはスマートデバイス向けのソーシャルゲームだが、開発はセガ本体のアーケード部門、そしてプロダクトマネージャーは数々のオンラインゲームのプロデューサーを務めてきた秋山氏と、複数の分野にまたがるユニークな人材によって生み出されている。その結果、どのような化学反応が生まれ、ゲームとしてどのような魅力を生み出しているのか、たっぷり聞いてみた。

企画経緯について。「ざっくりいうと『ファイアーエムブレム』をタワーディフェンスに落とした感じ」

「チェインクロニクル」
セガネットワークス編成局副部長 秋山隆利氏
「チェインクロニクル」のベースになったという「百鬼大戦絵巻」

――「チェインクロニクル」の企画経緯を教えて下さい。

秋山氏: 企画経緯は、セガのアプリ戦略というところで、セガの持っている技術を活かしたハイブリッドなコンテンツということで企画しました。ちょうど去年の年末にセガらしいリッチなタイトルを出していましたが、その流れのひとつです。

――ハイブリッドというのは何と何のハイブリッドですか?

秋山氏: 1つはセガが持っているアーケードや家庭用ゲームと言ったやり込めるリッチなゲームを作る技術です。もう1つはモバイル向けのゲームで使われているような、ソーシャルの仕組みや、簡単操作等のノウハウ、その2つを融合させることで、セガだけのオリジナルコンテンツが作れるのではないかというのが当初の構想だったのです。

――開発チームは?

秋山氏: 第一研究開発本部です。「戦国大戦」や「アンサー×アンサーライブ! ダブルアンサー(An×An)」など、主にアーケードゲームを開発する部門です。スマートデバイス向けには「百鬼大戦絵巻」などを制作しています。今回の「チェインクロニクル」では、ソーシャルゲームの開発を体験した人間や、アーケードゲームの開発を体験した人間、コンシューマゲームの開発を体験した人間と、僕はPCオンラインゲーム畑の人間ですから、これら全員が集まって作りアイデアを出し合ったモデルになっています。

――いわば、「チェインクロニクル」は、セガのエース集団が全力で作ったソーシャルゲームですか?

秋山氏: そうですね。今回は特に本気で取り組んでいますよ。

――「チェインクロニクル」は、同名のタイトルがテーブルトークの分野にもありますが、これと関連性がなにかあったりしますか?

秋山氏: 特にありません。たまたまです。もともと「チェインクロニクル」は、「百鬼大戦絵巻」のようなタワーディフェンスゲームをRPGっぽい雰囲気でクエストを付け加えていく方法がないものかということで議論された結果として、本作は企画されています。

――本作はセガの「百鬼大戦絵巻」が土台になっているのですか?

秋山氏: 参考にはしていますし、同じスタッフが関わっています。それとアーケードの「戦国大戦」シリーズも土台になっていると聞いています。

――にしてはどちらとも印象が違いますね。

秋山氏: そうですね。開発を担当している者の中には、カードゲームを実際にプレイしている人間が多くおり、楽しんでいる一方、他のアプローチもしたい、と言う意見が出ました。まずはバトルのギミックをモックで作ってみようよということになり、今度は作ってみたら意外に遊べるよねということで企画を詰めていき、キャラクターとキャラクターが出会って、仲間に入って、そのキャラクターの内容をさらに深堀りして体験をして、メインのストーリーはさらにキャラクターを入れ替えながら追っていくという形をとれば、十分にRPGとしての構成を保ちつつ雰囲気を楽しむことが可能だろうと言うことでブラッシュアップした結果、でき上がったのが本作ということです。

――ゲームコンセプトに「カード集めはもう古い!」とありますが、セガネットワークスの中では、“カードゲームを作ったら負けかな”みたいな雰囲気があるわけですか?

秋山氏: そうではなく、カードゲームのようなジャンルについては、協業各社と一緒に開発をしていますが、やはり様々な形で有用な技術と言うのを入れていきたいというところはあります。一方で、セガがこれまでに培ってきたコンテンツを作る技術やノウハウを活かした形で事業展開したいということや、セガらしいコンテンツをどうやって作るかという悩みがありますので、そうするとハイブリッドって考え方がとても重要になるわけです。だから頭からカードゲームを否定せず、それぞれの良いところをどう使ってコンテンツの中に組み込んでいくか、そして新しい価値をどう作るのか。そういったところを丁寧に追って行こうと考えています。

――とはいえ、日本はカード系のソーシャルゲームは多いですからね。

秋山氏: そうですね。そんな中であえて「チェインクロニクル」のようなものを出してみようかと考えたのです。スマートデバイス向けゲームとしてはかなりの質を実現できていると考えています。

――私が「チェインクロニクル」に抱いているイメージと言うのは、「ファイアーエムブレム」シリーズのような感じです。主人公がいて、ヒロインにあたる女性がいて、それらに関連したキャラクター達が続々と参集して、大きな軍勢となって巨悪に立ち向かうような。御社でいえば「シャイニング」シリーズのような。基本はそういうシミュレーションRPGのイメージでいいのでしょうか?

秋山氏: 近いかもしれないです。ざっくりいうと「ファイアーエムブレム」(任天堂)をタワーディフェンスに落とした感じですが、感覚的にはストーリーが厚いゲームなので、「幻想水滸伝」(コナミ)のほうが近いのではないかなと。ただ、「幻想水滸伝」は何人かのキャラクターで戦いますが、「チェインクロニクル」では登場キャラクターはすべてバトルに参加させることができます。

――ゲームジャンルとして「シミュレーションRPG」を選んだ理由はなんですか?

秋山氏: 実は今名前を変えていて、“チェインシナリオRPG”という名前にしたんですよ。

――セガさんはいろんな呼び方を考えますよね(笑)。

秋山氏: 面白いですよね(笑)。どういうことかというと、キャラクターとキャラクターのシナリオに関連性を持たせて、特定のキャラクター同士が加入するとチェインシナリオというのがドンと起こって、このシナリオの中でさらにその人の人間関係を深堀りしたりするとか、単に入手したキャラクターの中身をもっと追い求めて絆を深めるなど、話がチェインするというのもあったり。バトルにもチェインコンボみたいなものがあって。

――なるほど、“チェイン”にこだわっているんですね。

秋山氏: はい。チェインにこだわってます。だからチェインシナリオRPGだねと。

――質問を変えますが、なぜセガさんが得意とするアクションでは無く、RPGを選んだのでしょう?

秋山氏: やはりRPGって広い分野に適用可能だと思うのですね。あとは“マスネイティブ”というジャンルをどう実現するかという、社内的な課題もありますので、RPGに近いジャンルであるチェインクロニクルを開発する事にしました。

――マスネイティブというと?

秋山氏: より広い人たちに楽しんでいただけるようなネイティブアプリのことです。

――それはセガでいうところの「ぷよぷよ!!クエスト」だったり、ガンホーの「パズドラ」だったり?

秋山氏: そういうことですね。でも結果的に、本作はちょっとコアに進んでいるのですが(笑)。いろんな人に広く遊んでいただき、簡単に楽しめる。そして簡単に結果を返してもらって、これを毎日続けられる。このようなゲームが1番モバイルでは理想的だと考えています。かといって簡単だから面白くないのかというと、そうではなく、やはりセガらしいゲーム要素が含まれているかどうかが1番重要なポイントですので、我々はそういったテーマを追い求めていたりします。

ソーシャルゲームとしての特徴について。オンラインゲームやアーケードゲームのシステムを採用

オンラインゲーム的な発想から追加した仕様について語る秋山氏
彼が物語の主人公
「チェインクロニクル」では複数の操作スタイルに対応している

――このゲームには主人公がいて、ヒロインがいて、サポートするキャラがいるということですが、すべてのプレーヤーが同じ主人公を操作するわけですか?

秋山氏: そうなります。ただバトルの時は、多様なキャラクターから自由にパーティーを組み替えることができます。

――主人公は何者なんですか?

秋山氏: 義勇軍のトップで、軍団長ですね。基本的にはシナリオはこの主人公の物語を追体験をしているという立て付けではあるのですが、実際のバトルで操作するキャラクターというのは、義勇軍の中に参加しているどれかのメンバーという設定です。

――ゲーム概要の資料を見せていただきましたけれど、オンライン要素、ソーシャル要素というものがまだ見えなかったのですが、そのあたりはどうなるのですか?

秋山氏: ソーシャル要素については「レイドバトル」という非同期協力の仕組みがあり、「踏破イベント」という仕組みがあります。「踏破イベント」は、踏破専用マップをワールドとは別に用意していまして、その中には複数の拠点が描かれているのですね。その拠点をみんなでどんどんクリアしていって、最終ボスを倒しましょうというゲームルールです。拠点では、クリアする毎にポイントが手に入るような仕組みになっていて、そのポイントをどれだけ取れたかを競うような仕組みも入っていたりします。他には、バトルのパーティーメンバーに、他のユーザーのキャラクターを借りることができるなどの仕組みも用意しています。

――他のユーザーから最大何人借りられるのですか?

秋山氏: 1人だけです。全部で5体のプレーヤーキャラクターを使うことができますが、1体だけ他のプレーヤーから借りられるのですね。借りたキャラクターはフレンドになっていないとスキルが使えない仕様になっていますが、フレンドになると今度はアルカナというポイントが多く手に入るようになります。アルカナというポイントにより新たな仲間を得られたり、さらにスキルも使えるようになるなど、フレンドになるとプレイ上のメリットがいろいろ享受できると。

 さらに専用のSNSとかも用意する予定ですので、そういったところで、この人って実際どういう人なのっていうのをリアルで深堀りしていただいて、自分の手持ちキャラクターの状態を例えばみんなと共有してもらったりなどを想定しています。まあ、がつっとゲームの中でコミュニケーションをするというよりは、ゲームとオンラインコンテンツを全部込みでゆるーく繋がっていくと言うのが今回のソーシャル回りのテーマになっています。

――あくまで非同期のみで、同期して遊ぶ要素はないということですか?

秋山氏: そうですね。携帯は同期にするとものすごく鬱陶しいゲームになっちゃうので現在のところは予定されていませんが、今後導入を検討しています。

――ソーシャルゲームって行動力という要素がありますよね。それによって1回あたりにプレイできる量に一定の制限を付けるという。そういう要素はあるのですか?

秋山氏: あります。

――1回分の行動力でどのような遊び方を想定していますか?

秋山氏: 本作では、バトルで経験値が入る仕組みにしてるんですね。ですので、バトルをたくさんプレイしていただいて、経験値を稼いでいただいて、他のプレーヤーからキャラクターをお借りして手に入れたポイントを使って新たにキャラクターを入手して、それを合成してさらにキャラクターを強化する。そのようなキャラクターの育成に勤しんでもらうような遊び方を想定しています。

――そのあたりのキャラクター育成周りの仕様というのは、セガさんのタイトルで言えば「ドラコイ」とか「ぷよぷよ」とか、あのあたりのタイトルに近いものになるのですか? それともそれらとはまた違うものですか?

秋山氏: 「チェインクロニクル」は、ソーシャルゲームの王道の設計のほか、オンラインゲームの設計、そしてアーケードの制作をしている人間がいるので、アーケード周りの設計を融合して開発していますので、特定のどれかに近いと言うことはありません。

――それらの融合によって、具体的にどういった新しい仕様が生まれたのですか?

秋山氏: まず、キャラクターに付与する「武器進化」やキャラクターの「合成強化」があります。あとは、「武器強化」という仕様が入っているのですが、自分と相性のいい強化アイテムを手に入れると一定確率で強化させることができます。ある程度キャラクターを手に入れ、それらを同時に強化することで100%の確率で進化させることができるなど、このような仕組みはどちらかというとオンラインゲームの設計を踏襲しています。

 他にも手持ちの武器をより強くしたい時のために、進化用の武器アイテムを用意しています。たとえばナイフだったら、ナイフを最大値まで育てて、ブロードソードの武器アイテムをくっつけることによって手持ちの武器をブロードソードに進化させる事ができます。ナイフの時に成長させた能力はそのままブロードソードに引き継ぐ事ができますので、最大限成長さえて進化させた場合には1番強い状態の武器になっています。このような形で何段階にも成長要素が用意されています。

――アーケードから来たノウハウって何がありますか?

秋山氏: アーケードはタッチのところとか、遊び方のところですね。

――たとえば基本的なUIとか? バトルの操作とか?

秋山氏: そうですね。爽快感とか、快適な遊び方というか、タッチして簡単にすぐに操作できるというところは特に注力いただいています。

――いま具体的になにか見せていただけますか?

(ゲームのデモを見る)

秋山氏: たとえば、タワーディフェンス系だと、敵を攻撃する際は、いったん味方をクリックしてそのまま敵までドラッグするのが従来のやり方だと思いますが、「チェインクロニクル」はそれにも対応してますし、味方と敵をタップすることでも攻撃できます。

――なるほど、両方のUIに対応していると。

秋山氏: だから、慣れてくると味方と敵を交互に高速でタップすると素早く入力できます

――確かに、慣れてくると、その操作だと楽に遊べますね。

秋山氏: はい。なので、ゲームの遊び方にあまり慣れていない人でも気軽に遊べますし、慣れてきたら今度は効率よくやりたいので、そういう遊び方にも対応している。これもよく考えられているUIだと思います。アーケードのノウハウだと強く感じたのは、例えば「戦国大戦」では、盤面でカードを動かすゲームですが、その操作感覚が本作で実現されています。ゲームが進んで、敵が多くなると、細かい敵にターゲティングするのが難しくなりますが、指の操作でこのキャラはこのキャラを攻めてとなぞると、綺麗にぴっとターゲティングがうまくいったりするのですよ。そのあたりの操作感覚はさすが第一研究開発本部だなというところです。

――「戦国大戦」のUIのノウハウが活かされているのは大きな強みですね。

秋山氏: ほかにも、アーケード的な部分では、バトルにも工夫があります。バトルに入るとルーレットが始まるのですが、ルーレットに当たって、自分のキャラクターと一致したマナを得ることでスキルを使う事ができます。バトルに揺らぎがある方がおもしろいんじゃないかということですが、逆にボス戦では、不快感を解消させるために画面の外からピリカ(相棒の妖精キャラ)がわーっと飛んできて、ランダムでマナをくれるなど、ギリギリで勝った、負けたを感じさせるような揺らぎをバランスよく起こすということにとにかくこだわっているのです。それってアーケードだと思うのですね。コンシューマではない。そういう小さい仕様、操作方法にはアーケードのノウハウが生かされています。

(中村聖司)