インタビュー

宮本茂氏 発売記念インタビュー、自信の仕上がり!! Wii U「ピクミン3」

「ピクミン3」では自然の摂理通りのことを見せ、あるべきことを描いている

全部やらなくてもいいが、たくさんのことができるように。「ピクミン3」では自然の摂理通りのことを見せ、あるべきことを描いている

―― GPAD画面の「リプレイ機能」(※8)ではどのようなことが確認できるのでしょうか? また、どのように使ってほしいとお考えですか?

宮本氏: プレーヤーやピクミンの移動ルート、アイテムの場所、全部確認できます。夕方になって、助けにいかなければならないピクミンがどこに残されているのかひと目でわかります。ミッションモードでスコアアタックをする場合にも、取り忘れているアイテムがどこにあるかすぐにわかります。また、リプレイを見ると、無駄な動きがすぐに見つかるので、いかに効率良くプレイできたかどうかひと目でわかるんです。

※8: 「リプレイ機能」はストーリーモードだと1日が終わったリザルト画面から閲覧できる。再生速度は2段階から選択可能。

―― インタビュー前に少し遊ばせてもらったのですが、リプレイは実に面白かったです。分業できていない、無駄な行動しているなど、反省会になるんですよね(笑)。誰かにプレイさせてみんなで行動を検討するのも絶対面白いと思います。

宮本氏: 使う人のタイプによるのですが、(ゲームプレイで工夫しようと)ちゃんとやってくれる人にとっては、面白いんじゃないかなと思います。また、じーっと見ていると地図が頭に入ってくるんです。特にストーリーモードの地図は少し複雑なので役に立つと思います。ルートを切り拓くゲームなので、ショートカットができてくると、後ろにあると思っていたスタート地点が間に現われたりしますが、地図全体を見ているとその辺りが良くわかるんです。詳細はGamePadのGPAD画面では見えないので、うまくなってくるとプレイ中にGamePadの画面をスクロールしてゲームの時間を止めつつ、TVモニターの画面で詳細な状況を確認して、操作するみたいなことをしていますね。

―― GamePadのGPAD画面を触るとゲームの時間が止まるんですよね。

宮本氏: 大サービスです(笑)。あえて止めていまして、止まっている最中に状況を確認して遊ぶのが攻略の秘訣です。

―― 3人のキャラクターでの分業、GamePadで操作中以外のキャラクターの移動指定など、やろうとするとやれることが本当に多いですね。

宮本氏: 全部やらなくてもいいですけど、たくさんのことができるようにしてあります。初心者でも上級者でも面白くするには、まず難易度は初心者に合わせることが不可欠で、上級者に合わせたら無理なんです。上級者というのは自分でやることを見つけられます。「ピクミン」は、次に自分で何をしようか考えることによって面白さが決まってくる遊びです。どの要素を掘り下げてもらうかはその人次第ですが、色んなことをしようと思えるように作っています。一生遊べるソフトです。(「ピクミン3」をプレイしていれば)「ピクミン 4」はいらない(笑)。

 攻略ビデオとかがあれば、見た瞬間に目からウロコになって、また遊べるかもしれないですね。正直、ビデオの露出にはかなり期待しています。これだけ攻略ビデオが面白いゲームは自分で作った中にはなかったですね。地道に進める人、戦略的に進める人、猪突猛進に行く人と、同じコースで遊んで同じスコアが出ても攻め方が違ったりするので、面白いんです。無理だと思っても、できる人のビデオをみると「できんねや!」とやる気になったりしますから。そういうものを目指して作ってきたのですが、これくらいできているものは自分の中ではないですね。……なんだか自画自賛している(笑)。

―― それだけ手応えがあると!

宮本氏: 面白いと思いますね。女の子でも、「かわいい!」とか「気持ち悪い(笑)」とか言いながら楽しめるでしょうし(笑)。手際よく遊んでいると、「見事!」とか「鮮やか!」だと思うはずです。自分で遊び方を見つけてください。まず、買わないと遊び方は見つけられないのでお願いします。本当に世界中のゲームを遊ぶ人に遊んでもらいたい。

 僕はアクションゲームを作ってきていますが、日本ではアクションゲームはかなり衰退したというか、もう十数年前からRPGがないとハードは売れないと言われてきました。でも、海外ではRPGがなくてもハードは売れています。つまり、日本固有のことなんですね。任天堂もRPGを作ったりしていますが、プレーヤーの(ゲームへの)関わり方で変化がでるようにしている物が多いです。

 例えば、「マリオ&ルイージRPG」シリーズでもタイミング良くボタンを押すことでダメージがアップするようになっています。ただ、それでも苦手な人がいるんですよ。同じように平等にコツコツやってたら上がれるようにしてもらいたいみたいな。「それが面白いのかな?」とも思うのですが、そういうお客さんも多いので、なんとかそういうお客さんにも遊んでもらえて、そうでないひとにも楽しんでもらいたいというのが悩みなんです。

 「ピクミン」はそうしようと思った訳ではないのですが、結果的に出来上がってきたものを見ると問題を解決しています。「ピクミン」というゲームは、ピクミンを呼んで投げるだけですし、ジュースがあるとゲームオーバーにはならないし、コツコツやっていたら経験値が自分の中で積み上がって、それなりになんとかなります。そして、その日に与えたボスのダメージは次の日に繰り越しされるんです。

―― 敵のHPを減らしたら次の日には減った状態から始まると。

宮本氏: そうです。僕のゲームとしては初めてなくらいです。今までだとボスまで辿り着いて、やっと倒した思ったら第2形態とか言われて、なんとか第2形態を倒したと思ったら今度は第3形態で、その時には妖精がない! とかなってまた最初から……になったと思うんですが(笑)、「ピクミン3」では、いったん引き上げて、次の日に行ったらボスは「ハァーハァー」言ってますから(笑)。だから3日かけて倒すといったこともできるんです。最終面のボスは、1日で倒すのは無理だと思いますね。僕も最初は5日くらいかかりました。

 けど、コツコツやってたら倒せるので、(自分に)経験値をためながらだんだんと進んでいくという感じの遊び方もできますし、ピクミンも2〜3日たつとペレット草が生えてきますから、そこで増やしていけば大丈夫なんです。100日近くあれば、ゆっくりでも遊べる。けど、極めようとすると自分の目標次第で、難易度を自分で上げられる。コツコツ遊んでいても自分で操作して歩いているのでアクションゲームって楽しいなと思ってもらえると思うんです。

戦う原生生物。今回はボスもかなりの強敵だという。しかし恐れるなかれ! 1度撤退して再度挑めば、敵のHPは減ったままなので、プレーヤー側に有利に働くという。左スクリーンショットは「ヘビガラス」で、右スクリーンショットは「ペロチャッピー」

 「ピクミン」て色んなものを目に見える形にしています。「見える化」です。「パックマン」とか「ドンキーコング」とか、あの頃のゲームはまさにそうで、タルがころがってくるとか、時間を見える形にしていました。目に見えることが自分の理解に繋がって面白かったと思うんですよ。後がない感じだとか、2回曲がるのと、直線で行くのはどっちが速いかを瞬時に自分の頭のなかで見計らって遊ぶのが面白かった。

 それが絵が豪華になって3Dになったら、距離感がわからなくなった。ダイナミックになって、臨場感は出たけど、自分の理解度は下がってる。ハリウッド映画みたいなものと僕はよく言うんですけどね。アクションシーンでワイヤーもなくやっていた頃は、「スタントであれは危ないやろ!」ということがはっきりわかったし、「本人がやってるのか!?」とか色々な情報を自分が理解して楽しんでいたのですが、今はCGで100人いても「元の動きは1人なんでしょ?」とわかってしまったりする。

 必要なものをどんどん描かないとおかしいから、おかしくないようにどんどん描いていき、描かれていることが当たり前になっていて、自分の実感のスケールで考える余地がない。結果的に情報過多で疲れていっているような気がしているので、「ピクミン」では絵はリアルですが、「見える化」に努めています。カメラももっと下げたら迫力は出るんですけど、あれくらいのほうが面白い。

 「ピクミン」や「ピクミン 2」では壁をガンガン崩して、壁が崩れるタイマーを壁が崩れる絵で見せていました。橋も同じように延びていきます。橋がかかっていくのと、壁が崩れるのは絵が違うだけで同じことなんです。完成までの時間を「見える化」しているだけです。

 「ピクミン3」では橋の部品を持っていくんです。運ぶ距離で「見える化」しているので、橋の部品が橋からどれだけ離れているかで難易度が変わる。作業分担という意味では、遠くにある橋はちょっと大人数で部品を運ばせた方がいいし、近くの橋の部品は少人数でいい。1対2で分担すると、2つの橋が丁度同じくらいの時間で組み上がる……とか色んな計算ができる。それらが「見える化」されている。

 結局、見えているものに対して考える人は作戦を考えます。ゲーム上手な人っていうのは、見えにくくなっているものを見つける力がある。理解して遊んでくれるんですね。逆に理解しようと思わない人には見えないので、何が面白いのかわからない。ゲームを理解しながら遊んで欲しいので、それを見えるようにしているんです。結構クラシックな見せ方を先端の絵でしています。理解さえしてもらえれば、あとはどう遊ぼうと自由ですから。あまりこういうのは語るもんじゃないですけどね(笑)。

「ピクミン3」で重要な要素の1つがいかに分業させるか。各キャラクターに作業を割り振り、一方が行動している間に他方を操作するといった“考える”ことが重要なゲームとなっている
橋を組み立てていくピクミンたち。材料から橋までの距離が長ければ、たくさんのピクミンを投入し、材料から橋までの距離が短ければ、少ない数のピクミンでも迅速に完成させることができる……といった戦略を立てることが重要だという

―― 考える余地がなくなり、それが当たり前になっているユーザーに対してどうしていくのか、開発者として悩む所だと思うのですが、それに対する答えはありますか?

宮本氏: 楽しむ部分が変わってきているだけで、それに一緒にのっていこうとは思わないんですよ。昔、ゲームが広がって行った頃の魅力は、今の人にも通じる。そこをうまく導き出せれば、他とは違うジャンルが作り上げられると考えています。

 無理に新しいものに飛びつこうとも思いません。新しい技術を使って、本来あった良さをちゃんと作れば、そこに価値が生まれてくると思っています。中には意図的に昔のスタイルを守っているものもあります。ブームは繰り返しと言うじゃないですか。音楽もそうですが、若者向けと幅広いものがあるのと同じです。「ピクミン3」に関してはわりと両方の人達にうまくはみ出せています。そういうものを作り続けていきたいです。お父さんやお母さんが子供と一緒に遊んでもらっても絶対間違いないです。

 子供は頭良くなるかもしれません。作戦を考えるとか、方針を編み出す、何かを見つける。そして、数を数える。基本的に1から20までを数えるゲームなので。

―― 新しい形の脳トレなんですかね。

宮本氏: そうですね。脳トレといえば、料理をすることが脳に良いと言いますよね。料理はマルチタスクなので、段取りを常にするとボケないらしいんです。女の人の方が歳をとってもしっかりしているのは、男は仕事をやめると段取りしなくなるからだそうです。料理と同じように「ピクミン3」はマルチタスクなので、ワーキングメモリが鍛えられるんじゃないかな? と思ってます。子供からシニアまで。ゲーム初心者から上級者まで幅広く遊べます。マルチプレイ用にビンゴバトルもある。こんな贅沢なゲーム、なかなかないと思いますよ!

―― 「段取り」というワードは「ピクミン3 Direct」でもおっしゃっていましたね。

宮本氏: 見てもらえましたか。

―― ちゃぶ台のあるいい雰囲気の場所でした。どこで撮影されたんですか?

宮本氏: あれは東京ですね。

―― ダウンタウン 松本さんはどんな方なんですか?

宮本氏: 僕も対談だけのお付き合いなのであまりわからないですけど、「ピクミン」好きですよね(笑)。「マリオカート」とかも遊んでもらっています。

―― 松本さんの出演は「ピクミン」好きから決まったですか?

宮本氏: そうなんです。NHKで対談した際に、作っているとお話していたので、出来上がったら遊んでもらおうと思いまして。それで本当にカメラの前で遊んでもらいました(笑)。

ちょこちょこと付いてくるピクミンたち。デジタルの中の世界なのに、愛おしく思えてくるから不思議だ

―― ピクミンが食べられているのを見て「すみません、すみません」って言いながらプレイされていたのが印象的でした。ピクミンって、食べられたりしてしまうと、かわいそう、申し訳ないと強く感じるんですよね。

宮本氏: 残酷なんですが、「(ピクミンが)かわいそう」って思える人であって欲しいですね。子供の頃は結構残酷なことをして、大人になってから後悔・懺悔したりする。虫は殺したらダメだよ、命があるからと教えられながらやってきている。子供も遊ぶから、死ぬところを見せないというのは教育的におかしい。ピクミンが食べられるから子供には禁止ですと言われたり、海外では部位欠損になるので10歳未満はダメだったりしますけど、過剰に残酷な見せ方はしていないし、水に入ったら溺れるし、火に当たったら燃える。それは自然なことでそのままに描いているのです。「ピクミン3」では自然の摂理通りのことを見せ、あるべきことを描いています。

―― 最初からそういうことを考えて盛り込んだのでしょうか?

宮本氏: 生き物図鑑であったり、蟻の実験室のようにしたかった。できるだけ本物のようにしたかったんです。

―― プレーヤーがピクミンをかわいそうと思うことも想定されていたのでしょうか?

宮本氏: それは作りながら感じていました。これでいいんだろうかとも思いましたけど。けれどもゲームってそれまでに感じたことのない感情が掘り起こされたらいいなと思って作っています。小説とかでもそうですけど、自分の感覚で、いままでにいじられたことのない所がいじられると新しいと感じます。(ピクミンでは)自分の作ってきたゲームでは感じない部分が動いたので、大事にしていこうと。

 偶然なんですが、ゲームのピクミンの目ってまっすぐ向いているんです。どこを見ているかわからない。そういう目で見られると(見ている側が)不安になるんです。無垢なものを見ると守ってあげたいと思う。「ピクミン」を作っているときにデモでそれを思ったんですね。

 ピクミンの死に関してですが、ゲーム開発の最後に、1匹も殺さずにクリアできるかを確認したんです。今度はボスも強いし、色んな地形があるので、自信はなかったのですが、プロ級の人にプレイしてもらった所、できましたとのレポートがきてほっとしました。

―― 実証されたんですね。

宮本氏: 凄く時間はかかるみたいですが、可能です。ただ、そんなことはしなくてもいいんです。もっと楽しい遊び方を見つけて遊んでもらえたらいいです。

Amazonで購入

(木原卓)