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韓国Gravity CTO堀誠一氏特別インタビュー
韓国でついに「RO」が完全無料化! その狙いと今後の展望について聞く!


11月収録

会場:釜山国際展示場(BEXCO)


 韓国Gravityのフラッグシップタイトル「ラグナロクオンライン(RO)」が2011年、サービス開始から10年目を迎える。10年というと長寿タイトルといって差し支えないが、今年もシステムの根幹に手を加える大胆なリニューアルアップデートを実装し、日本を含む、全世界で会員数の増加に結びつけたほか、年に1度の「ラグナロクオンライン」の祭典「Ragnarok World Championship(RWC)」を今年も開催するなど、依然として精力的に活動を行なっている。

 そうした中、お膝元の韓国では、11月24日から「完全無料化」という、大きな転換点を迎えた。韓国では、月額の定額制と基本プレイ無料のアイテム課金制を同時並行して走らせるというユニークな運営スタイルでサービスを行なっていたが、定額制の不振に伴い、すべてのサーバーを無料化し、ビジネスモデルを完全に基本プレイ無料のアイテム課金制へ切り替える決断を行なった。

 また、リニューアルアップデート後の展開もまだ見えていない部分だ。日本での運営元のガンホーは、12月26日に2011年の展開を発表するとしているが、今回は一足先に開発元のGravityに、韓国サービスの完全無料化の意図と、今後の「RO」の展開について話を伺ってきた。

 インタビューに応じていただいたのは元ガンホー取締役開発本部長で、現Gravity CTOの堀誠一氏。ご存じのように元々ガンホーで「RO」の立ち上げに尽力してきた人物だ。運営から開発へと立場を変えて、どのようなスタンスで開発に望んでいるのだろうか。




■ Gravityでは「ラグナロクオンライン」専属のCTOに

Gravity CTOの堀誠一氏

編: まずは堀さんのGravityの担当業務を教えてください。

堀氏: 「ラグナロクオンライン(RO)」に関する開発統括と、Gravityシステム部門の統括を行なっています。本質的にGravityはデベロッパーですが、パブリッシャーとしてオンラインゲームの提供にも力を入れてきているため、システム部門の役割が広がってきています。そのため、システム部門の業務再編とコンテンツ支援の強化を行なうと共に、「RO」の海外支援の強化に取り組んでいます。

編: CTOとしてどのコンテンツを担当しているのですか。

堀氏: メインで担当しているのは「RO」です。

編: 「RO」専属のCTOということですか。

堀氏: GravityにはCTOは2人いまして、私が担当しているのは先ほどお話しした「RO」とシステム部門ということになります。Gravityまたは子会社等が開発・サービス提供している他のタイトルに関しては、運営業務または社内レビュー・検討会等で見させてもらうことがあります。

編: そもそもどういう経緯でGravityに行くことになったのですか?

堀氏: 約1年前に海外への「RO」のリニューアルアップデートの導入、パブリッシング事業の拡張という課題があり、赴任することになりました。Gravityには大野代表や、COOの北村が先に赴任していたため、日本からは私が3人目となりますね。

編: 赴任からすでに1年が経過してリニューアルアップデートも終わりましたが、Gravityに居続けている理由は何ですか?

堀氏: 今年世界各国にリニューアルアップデートをお届けすることができましたが、「RO」は全世界のユーザーさんに遊んでもらっているタイトルであり、まだまだやるべきこと、学ぶべきことは多いと考えています。「RO」を改めて育てていくというつもりで取り組んでいます。そのためには当然開発スタジオの力だけでは不足で、支援部門としてのシステム開発やデバッグ・検証チームの育成も必要です。私としては就任から1年弱が経過して状況の理解と共に、韓国での仕事の進め方に慣れてきたというところです。日常生活には問題ありませんが、どうしても言語や慣習の壁を感じることがありますので、開発スタッフとの協議などには通訳のスタッフに協力してもらっています。

編: この1年間における具体的な成果としてはどのようなものがありますか。

堀氏: リニューアルアップデートの推進がありますが、具体的にユーザーの皆さんに見える部分よりはサービス提供の仕組み作りの方が多いです。「RO」をサービスしてくださる海外パブリッシャーの皆さんに対する支援、Gravity、または子会社・支社のシステム支援、デバッグ、検証力強化のために、QA部門の体制強化などを行なっています。

編: Gravityはパブリッシングを行なっているとはいえ、本業は開発にあるわけですが、現在開発パイプラインは何本あるのですか?

堀氏: Barunson Interactiveなどの子会社、共同開発のラインを除き、社内の開発ラインとして動いているラインは5ラインほどです。

 「RO」、「RO2」、「レクイエム」などのPC向けMMORPGのほか、最近では、SNSゲームの「Fashion Star」やiPhoneのゲームアプリ「GRAFFITI HERO」、「JaJa: Cheer Dancing」といった他のプラットフォーム向けの開発・提供も進められています。

編: 「RO2」は未だβテスト中ですから、売り上げの柱は相変わらず「RO」ですか?

堀氏: そうです。海外展開サービスの規模を見ても、中心となっているのはやはり「RO」となっています。

編: 今後は「RO2」をリリースして、「RO」と「RO2」の両輪で売り上げを伸ばしていくという考えですか?

堀氏: そうですね。また「ラグナロク」はGravityのメインタイトルですので、「RO」、「RO2」だけでなく、「ラグナロク」というIPを活かしたラインナップを広げていきたいです。

編: 「ラグナロク」IPそのものを活かしたラインナップというと、過去にモバイル向けがありましたが、現在どのような状況ですか?

堀氏: 日本では「ラグナロクオンライン モバイルストーリー」などが展開されていますが、韓国でも同様にモバイルゲームの開発が進められています。「ラグナロクオンライン VIOLET」のように、ストーリー性を持ったモバイルアクションRPGのほかにも、ラグナロクの世界観、キャラクター、ルールなどを、個別に特化したモバイルの計画・開発が取り組まれています。プラットフォームについてもスマートフォン、Webゲーム、SNGといった新しいジャンルでの展開も進められているところです。



■ もうすぐ10周年を迎える「RO」の韓国での状況について

「RO」のアップデートにまだまだ自信を覗かせる堀氏。やりたいことは無数といった印象

編: 今までガンホーで運営のトップとして「RO」というタイトルを見ていたわけですが、開発のトップに就任してみて、改めて「RO」をどのように見ていますか?

堀氏: 「RO」はもうすぐ10年になるタイトルです。海外のいろいろな地域で「RO」を遊んでいただいており、ワールドワイドで「WRC」のような大会ができるタイトルは少ないと思います。「RO」というタイトルに関して、ガンホーのスタッフとして見てきた視点と、こちらに来て感じたことは大きく異なっています。ようやくわかりかけてきたところなのですが、「RO」に対するユーザーの遊び方、楽しむポイントは万国共通ではなく、地域によってすごく異なっています。アジア各国の遊び方、ヨーロッパ、北米、ロシアでの遊び方、もちろん日本も楽しみ方はそれぞれ似通っているものの、ゲームに対して臨まれているものが違い、これに対応しなければならない事に難しさを感じています。

編: そのあたりを解決すれば「RO」はまだまだ伸ばしていけるということですか?

堀氏: そう思っています。今回G-Starを見てきましたが、印象としては、非常に綺麗なグラフィックス、新しい技術、新しい要素を盛り込もうとしたタイトルが多く出てきていると感じました。その市場の中で「RO」はとてもオーソドックスなゲームになってきていると思います。

 しかし、オーソドックスであるために、長年蓄積されたゲーム要素が十分にあり、初心者は初心者なり、上級者は上級者なりに遊び続けることができるのは「RO」ならではだと思うのです。また世界を視野に入れた場合、PCのスペックも各国によってまちまちです。地域によってはPCの価格や電力の関係で自宅にPCを持っておらず、ネットカフェを利用することが中心の国や、あまりスペックの高くないPCを利用している方々も多いです。そういった地域にも「RO」は展開できる強みがあります。世界で遊ばれているといっても、まだまだ「RO」が遊ばれていない地域はたくさんあります。そういう地域の方々にも「RO」を提供していきたいです。

編: 現在最も力を入れている地域はどこですか。

堀氏: 韓国はもちろんですが、やはり日本市場です。ユーザーの皆さんが多く、いろいろな反響をいただく日本をとても重要視しています。また、今回のリニューアルアップデートでもっとも反響が大きかったのは台湾で、同時接続者数で10万人を突破しました。台湾も長年「RO」を遊んでいただいている国ですので、力を入れています。

編: 10万というと日本の数を超えていますよね。

堀氏: 超えていますね。リニューアルアップデートでは、すべての国で遊んでいただいているユーザーさんが増えています。

編: リニューアルでユーザーが増えたのは、大々的に行なったゲームのチューニングを各国が評価したからですか?

堀氏: 評価のポイントはまちまちだと思います。新規の職業が受け入れられているということもありますが、パブリッシャーさんとの協議で独自の追加仕様を入れている地域にその効果は現われていると思います。プロモーション・イベントなど、色々なものの相乗効果だと考えています。

編: 「RO」のユニークな点としては、開発国の韓国が商業的に厳しい状況が続いているというところですが、この点は、堀さんはどのようにお考えですか。

堀氏: 韓国で作られているゲームですので、韓国のユーザーに遊んでもらいたいという気持ちは当然あります。

編: 韓国における目標はなんでしょうか。「AION」や「WoW」に勝つことですか?

堀氏: もともとそういったタイトルを競合とは見ていません。「RO」の魅力はキャラクターやコミュニティ、スピード感などのゲーム独特のテンポだと考えています。3Dの背景に、2Dのキャラクターといった画面イメージ、キャラクターを見て「『RO』だ」と直感していただけるキャラクター性、様々なゲーム要素、安定したコミュニティ、そういった要素が「RO」のオリジナリティだと思います。そのイメージを大切にしながら提供し続けるのが、「RO」の立つべき位置だと思います。

編: 台湾が再び盛り返してきているという情報は意外でした。台湾以外の各国の状況を教えてください。

堀氏: 台湾の次は日本、タイ、フィリピン、ブラジルといった国で人気です。インドネシアで先日RWCが開催され、現地のユーザーの皆さんが大勢観戦に来られました。会場には「RO」を題材にユーザーの皆さんが描いた漫画が提示されていましたね。そういった楽しみ方がインドネシアでもされていたのを初めて知りました。

 北米に出張した際、Anime-Expoというコンベンションを見学させていただきましたが、そこでも「RO」のコスプレをしている方がたくさんいて、漫画、コスプレといった二次創作の楽しみ方が海外でも広がってきていることを感じます。その北米ではリニューアルアップデートの後、ユーザーの皆さんからゲームに対する要望、回収のアイデアが多く寄せられています。ゲームのルール、仕組みをとても研究されていて、日本のユーザーに近いゲーム感覚があると感じています。

 また、フィリピン、タイといった「RO」を長く遊んでいる地域に加えて、最近はブラジルでユーザーが増えてきています。「RWC」でもブラジルはインターネット中継が行なわれていました。ヨーロッパ、ロシアといった地域は少し遅れてアップデートが行なわれていましたが、最新の「RO」を遊んでいただけるよう、アップデートを急いでいます。

編: ブラジルはかなり早いタイミングでサービスが開始されましたが、なかなか伸びませんでしたよね。

堀氏: ブロードバンド環境の整備状況等が関連していたと思いますが、ユーザーさんの注目は高いと思います。個人的には10年前の日本を見ている感じで、今後多くの皆さんに遊んでいただける地域になると期待しています。現在、同時接続者数で1万人以上の方に遊んでもらっています。ビジネスモデルはアイテム課金です。

編: 月額制が残っているのは日韓だけですか。

堀氏: 定額制を導入しなくなった国は増えていますが、日韓以外にも北米などはプレミアムサービスという形でサービスしている国はあります。ただ、台湾では月額課金のサーバーはなくなりましたし、定額でやっている国は減っているのは事実です。



■ 韓国サービスがついに“完全無料化”。その狙いとは?

韓国版「RO」のタイトル画面。完全無料化に合わせて導入された最新アップデート「マルランド」のイメージイラストが使われている
マルランドの全景。見事に猫の手の形をしている
マルランドに登場するモンスター達。水棲生物のような姿形をしたものが多い

編: その韓国でもついに11月24日に完全に無料化に踏み切るという話ですが、この意図は何ですか?

堀氏: これまで定額制のサーバーがあることで、「RO」は無料サーバーはあるけれども定額であるというイメージが強かったのではないかと思っています。完全無料化を実施することで、「RO」に触れてもらえる機会を作りたいと考えています。

編: それなら無料サーバーをアピールするキャンペーンを実施すればいいのではないですか? 月額制のサーバーを無くす理由としては弱いような気がするのですが。

堀氏: 定額制のサーバーは、良く見知った仲間同士で気楽に遊ぶ、いわゆる嵐を好まないユーザーが集う場所として、無料サーバーとは違う需要がありました。しかし、韓国では「RO」は長年運営されているタイトルというイメージが強く、また無料化されたオンラインゲームが非常に長く遊ばれている国でもあります。新しいユーザーの皆さんが定額制のサーバーを利用するという機会は少なくなってきており、コミュニティが縮小しています。

 我々が定額制を残し続けていることでコミュニティが縮小してしまうのであれば、完全無料化に踏み切り、サイドコミュニティを活性化させようという考えです。当然、今回の無料化にあわせて新規の施策も設けています。完全無料化という話題を提供し、再び韓国のユーザーの皆さんにに参加していただいて、変化し続けながらも、遊びやすさの変わらない「RO」を実感してもらおうと考えています。

編: 現在の会員比率は無料サーバーと定額サーバーでどれくらいの割合ですか。

堀氏: アクティブユーザーの割合は3対1ぐらいだったと思います。

編: 圧倒的ですね。つまり、定額制のサーバーは効率が良くないという判断ですか。

堀氏: というより、プレミアムサーバーで皆さんが仲良く遊んで頂いているとはいえ、新しい人が入ってこなければコミュニティがしぼんでしまいます。次第にその状況が深刻化してきたので何とかしなければならないという判断です。今回の完全無料化で新しい人が入り、活性化してくれればと考えています。

編: 月額制のサーバーと無料サーバーでは、経験値やアイテムドロップ率などに違いがありますが、今後はどうなりますか?

堀氏: 完全無料化によって、すべて無料サーバーのバランスに変更されます。ドロップ率や経験値の獲得率、アイテムの販売項目等、細かな点が無料サーバーと同様に調整されます。今回の完全無料化では「マルランド」というアップデートが同時に実施されます。“マルラン”は韓国語で猫や犬の“肉球”のふにゃふにゃした柔らかで弾力のある感触を表現した言葉です。という意味で、直訳すると“肉球島”という意味になります。猫の手サービスの本拠地になり、猫の手サービスのバックグラウンドに関わるサイドストーリーが展開されていきます。

編: 「マルランド」以外で、11月24日の完全無料化に合わせて計画している新規施策の内容について教えてください。

堀氏: 昔からお馴染みのイズルードダンジョンに6Fが追加されます。海底神殿のさらに下に行くことができるのですが、こちらはネットカフェからのみ入れるダンジョンとなります。海外でも要望があった内容で、日本のガンホーの「ラグナロク」運営チームからもアイデアをもらった新規モンスター等も登場します。また、台湾で先行して実装された「騎乗生物」ですが、全職業が乗れるようになり、韓国でも実装されます。そのほかにもコスチュームアイテム、ルーンナイトのスプライト変更、アイテムからカードを分離するカード分離システム等の細かなシステム変更も用意されています。

 「マルランド」についても若干補足しておくと、新規のメモリアルダンジョンが2種追加されます。1つはマルランドの地下排水路を舞台としたメモリアルダンジョンで、もう1つはいくつかのミニダンジョンを攻略した後にボスモンスターと戦うというタイプのメモリアルダンジョンです。12月にもキャラクターの外見に追加される背中装備など、新しい要素の導入が予定されています。また、ゲーム内やネットカフェ限定のイベントも多数計画されています。

編: 韓国の公式サイトには「ミニゲーム」が追加されるとありますね。

堀氏: 猫の手サービスのキャラクター達と簡単なゲームを行なうクエストが追加されていますね。ちょっとしたかわいいグラフィックスが表示されるミニゲームですので、メインクエストの合間に楽しんでいただければと思います。

編: 内容盛りだくさんですが、定額制で遊んでいるユーザーさんの反応が気になるところですね。

堀氏: 海外へのリニューアルアップデート導入と同時に開発が進んだ内容なのですが、告知を公式ページに流した段階でユーザーからのかなり素早い反応がありました。中には「無料化ではないか?」という想像をされた方もいたようです。



【マルランド】
マスコット達がいい味を出しているミニゲーム集。無料ということもあり、ぜひダウンロードしておきたい

【メモリアルダンジョン】
メモリアルダンジョンの設定画。入り口のイメージだという



■ 各国におけるポリシーの違い、公式のBOTシステム「マクロシステム」も準備中

各国における運営ポリシーの違いに驚いたという堀氏。現在は理解を示し「マクロシステム」を開発中

編: 今回の韓国での完全無料化ですが、これは今後日本市場も含め、各国へ波及していく流れになると理解して良いのですか?

堀氏: Gravityは「RO」というコンテンツを提供する開発会社です。韓国サービスはパブリッシャーとして独自の意志で行なっていますが、他国でパブリッシャーパートナーが運営している場合はそれぞれの国の事情を考慮しなければなりません。先ほどもお話ししたとおり、各地域でのユーザーの皆さんの「RO」に対する想いは様々で、それに対応するためには現地のプロデュースの協力が必要だと考えています。ですからこの点は各地域のパートナーのプロデュース指針にゆだねられると思います。

編: なるほど。今回の無料化はあくまで韓国限定、韓国固有のお話と言うことで、韓国が無料になったから、日本も無料になるということではないんですね。

堀氏: 韓国が無料化されたから、日本が無料になるということはありません。韓国の完全無料化はあくまで韓国の事情を考慮した韓国独自の施策です。

編: ちなみに堀さんにはビジネスモデルに関して理想型というか、ポリシーのようなものはありますか。

堀氏: 各地域の事情はパートナーのパブリッシャーが1番理解していると思います。Gravityはあくまでコンテンツでパブリッシャーを支援していくというスタンスです。本当に各地域ごとに実情は異なっていて、パブリッシャーの意見を伺わないと成り立ちません。たとえば例として、マクロツールに関する考え方などがあります。日本などでは、いわゆるBOTやマクロツールに関してコミュニティの拒否反応が強く、セキュリティ対策と共にBOT対策が強化されています。韓国、北米等も同様の状況です。しかし、他の国ではそういったことをしない国もあるのです。

 なぜBOT対策を進めないのか私も気になったので、色々な国の人から意見を伺いました。その過程でマクロツールを使うことに対してそれほどネガティブなイメージを持っていない国もあることがわかりました。もちろん、サービスに障害を与える不正なツールを使うことを推奨しているわけではなく、忙しくてゲームを遊べないときに利用できるマクロツールがあってもいいだろうという考えで、その考え方にユーザー間の強い意見相違がない国があるのです。

編: その国では当然、規約にもBOT禁止の条項はないわけですか。

堀氏: そうです。もちろん何でも良いというわけではなく、あくまで運営側での監視管理はありますが、日本のような厳しい対応でない国も存在しています。その場合、当然ながらキャラクターの成長するスピードが上がり、レベル上限となるキャラクターが増えますよね。その後、プレーヤーはどうするのだろうと効いてみましたが、レベル上限に到達したキャラクターは、成長に割く時間が必要なくなるので、コミュニケーションを十分に取ることができ、キャラクターの装備を見せ合ったり、攻城戦を毎週遊ぶことに集中することができるのだという話を伺いました。不公平感を感じられるということもありません。

 そこで、外部で作られた障害発生の危険のあるツールではなく、公式のマクロシステムを実装してくれないかという提案までもらっています。実際に「マクロシステム」という機能が導入される予定の地域も存在しています。公式に自動でゲームを進行させることができるツールということになりますね。

編: その要望に対して答えたGravityも凄いですね。

堀氏: やはり精神的な抵抗感はありましたよね。

編: 日本のゲームファンの標準的なメンタリティからすると、「それってゲームなのかよ」と思いますよね。

堀氏: BOT対策を何年も行なってきた私としては、極端な感覚の違いに戸惑いました。韓国スタッフも、あり得ない発想だと、当初は困惑していました。マクロシステムが具体的に検討され始めたのは今年の初旬なのですが、事情を精査していくうちに、地域によっては必要なものだろうと理解した上で導入することにしました。だからといってすべての地域に導入することに関しては否定的です。日本や北米はこの施策に対してはまったくノーでしょうね。ゲームに対する公平感の違いかも知れません。

 このように、各国のプロデュースの仕方は異なるのです。開発元としての感覚で「ゲームとしてどうなのだろう?」と感じることはあっても、その地域のユーザーさんが本当に楽しんでくれるのであれば対応協力をすべきという判断に繋がっています。実際にこれまで個別対応を行なってきた地域では、その施策をすごく喜んで遊んでくれているユーザーも多いです。

編: 数年前に台湾のGameFlierさんに「RO」について取材した際、台湾で「RO」のユーザーを大幅に減らした原因としては、「BOTが無限増殖してRMT市場が形成されてしまったこと」だと仰っていました。しかしそれがBOTを許容するということは、ユーザーさん自身がオンラインゲームという遊びに対する向き合い方に変化が出てきたと言うことでしょうか?

堀氏: オンラインゲームが増えてきて、変化が生まれてきているのかもしれませんね。ただ、今思えばそういった傾向は過去からあったのかもしれません。6年前に初めて「RO」のパブリッシャー同士でミーティングする機会があったのですが、フィリピンや台湾の方からなぜそんなにBOT対策に躍起にならなければならないのかと質問されたことがありました。僕も当時BOT撲滅は至上命題だと吹いていましたからね(笑)。逆にそんなことを言われて面食らいました。現在の立場になり、協議をしていく中で、ゲーム内でユーザーが感じる公平感の違いではないだろうかと認識するに至りました。



■ 今後の「RO」のアップデートの方向性について

今後の展開については、韓国でも未発表ということで口が堅かった

編: せっかくですから、「RO」そのものについて質問させてください。「RO」は長期計画として、ゲーム全体のバランス調整が終わり、3次職も実装し、異世界アップデートも終わりが見えてきました。今後の「RO」はどのような長期計画を考えていますか?

堀氏: 魔王モロクから異世界関連のメインストーリーは完結に向かっています。具体的なストーリーについてはまだ話できないですが、今後はミッドガルドと異世界を行き来しながら進むメインストーリーが展開されます。

編: 完結に向かっているということは異世界アップデートはまだ引っ張りますか?

堀氏: いえ、それほど長くはかかりません。次のエピソードの構想にすでに入っています。また、今後はエピソードという形以外のアップデートが増えると思います。完全無料化とも関連していますが、各国のリニューアルが完了したところで、それぞれの国において必要とされるものは変化してくると考えられます。

 今まで「RO」のアップデートは、エピソードを積んでいく形が中心でしたが、今後はそれぞれの国でアップデートする順番を組み替えられることを想定しています。たとえば日本でも発表した騎乗生物等はリニューアル後、導入するタイミングをエピソードとは関係なく検討することができます。そういった要素が今後もゲーム中に増えていきます。どれとどれをまとめてアップデートとするということを、こちらのアドバイスを含めながら各地域のプロデュースにゆだねるという形になります。

編: というと、今後「RO」のアップデートはBTO(Build to Order)みたいにコンテンツの取捨選択が可能になるということですか?

堀氏: エピソードを積んでいくアップデートを繰り返していくと、定期的にシナリオ、グラフィックス、ゲーム要素をある程度のボリュームでまとめて提供する必要があります。たとえば新しい遊びの要素を導入しようと思ってもエピソード内容と絡めなければならなかったり、開発期間が必要であった場合にはその間のアップデートが無くなってしまいます。今後はそういった事態にならないように、細かな要素に関してはエピソードとは関連せずに、それぞれの国で必要となるものをアップデートできるようにしようという考えです。

 ゲーム側がそれができる環境になってきたというのもあります。完全無料化の一環として「有料ダンジョン」、「ネットカフェ専用ダンジョン」等が導入されますが、これらはパブリッシャーからのアイデアを参考にしている点が多いです。台湾のアイデアから騎乗生物を作成しましたが、イズルードダンジョンの拡張は台湾と日本からアイデアをもらっています。

 パブリッシャー側の提案が具体的かつ開発可能な内容となってきています。現地のユーザーの意見を取り入れ、長年の運営経験から出されてくる提案ですから実現もしやすく効果も高い。せっかく実現したアップデート内容は他の地域にも提供していく。各地域の特徴を模したマップを提供する「ローカライズマップ」プロジェクトの発展系と言えるかも知れません。

編: Gravityが定期的に各国のパブリッシャーにアップデートのメニューを送って、パブリッシャー側でチェックボックスをオンにしたものだけがアップデートされるようなイメージですか。

堀氏: そういうとカッコイイですが、現実にそんなにスマートではないです(笑)。開発的にはリニューアルを行なった時点で、さらなるチューニングの段階に移ったと考えています。各国の要望で良いものがあれば導入し、それを他の国にも提供できる形にしたい。リニューアルの前後を挟んだ「ブラジリス」アップデートから開発チームでもそういった意識が強くなってきています。

編: これまではどちらかというと各国の要望を順番に答えていくという感じでしたが、今後はまずは各国の意見を伺ってから最大公約数的なものを開発して日本を含む各国へ戻すということを考えているわけですか。

堀氏: そうですね。日本に関しては戦闘公式など特殊な状況もあるため、今後のアップデートでも調整点は多いと考えています。ちなみに、これまで「RO」は韓国でのサービスと、それを元にした海外でのサービスという形でリソース管理を2つに分けて行なってきましたが、日本については、別途調整点が多いため、別のリソース管理となっています。

編: すると「RO」内に3つのパイプラインがあるのですか。

堀氏: スタジオが3つあるわけではないのですが、3つのラインに分けて管理されています。もちろん、海外の個別の要望に合わせて修正したものは海外サービスとして一元管理されているのですが、日本に関してはリニューアルの際、最終的に別バージョンになりました。ただし、根幹の仕組みを一致させることで開発の影響を最小限に納めようという努力は行なっています。



■ 新職業はエクステンド職業の上位職を計画中、3次職はバランス調整も

G-Star 2010ではGravityはBtoBコーナーのみに出展。入り口には「RO」と「RO II」のポスターが掲げられていた

編: 新職業の追加に関してはいかがですか?

堀氏: ニンジャやガンスリンガーといった特殊な職業、社内ではエクステンド職業と呼ばれていますが、その上位職業も増えていきます。ただ3次職の導入結果として、再度調整しなければならないと考えている点も多いため、単純に新職業を追加していくだけではない対応が必要ですね。

編: 3次職について具体的に何をどう変えていくつもりですか?

堀氏: 日本では3次職の職業間バランスや、攻城戦でのバランスが問題視されているということを理解しています。現在ガンホーとも随時協議をしながら調整を進めています。韓国でもユーザーの皆さんの動向を踏まえて調整してきた点があり、日本の調整に関してもできる限りご要望に応えていきたいと思います。

編: 職業関連に関してはまずは3次職業の調整からというところですか。

堀氏: そうですね。その次にエクステンド職業の上位職ニンジャ、ガンスリンガー、拳聖、ソウルリンカーに手を入れていかなければいけないと考えています。エクステンド職業も、3次職実装に伴って城移植の追加が必要な状態だと思います。メインのキャラクターとは異なる成長過程をたどるキャラクター達ですから、メインとは異なる遊び方をさせられるよう実装していきたいです。

編: 異なる遊び方とは何ですか?

堀氏: あくまで企画チーム内での検討内容の話ですが、たとえばガンスリンガーのスキルに、いくつかのモンスターにターゲットをフォーカスして、移動しながらバンバン撃つようなアクションができないだろうかといったアイデアなども挙がっていました。そういった操作感の違う遊び方なども検討されたりしています。本質的には攻城戦やパーティープレイでメインキャラクターの役割を保管するようなキャラクターとしてエクステンド職業は位置づけられています。追加のエクステンド職業を作るかについては、否定的ではありませんが、現時点では新しいアイデアは挙がっていないです。

編: 既存コンテンツについて何か拡張を考えているものはありますか?

堀氏: 話はいくつかあります。たとえば攻城戦は常にディスカッションされるメインコンテンツですが、一方で過去に実装されていて今では遊ばれなくなっているコンテンツに手を入れることも必要だと考えています。「戦場システム」などですね。修正をして改めて遊んで貰えるようにしようということは話題に挙がります。

編: 攻城戦に取って代わるようなメインを張れるようなコンテンツは何か考えていますか?

堀氏: 実験としては行なっています。韓国では去年イベントで行なったワールド対抗戦がありますが、そういったものを定期的に開催するコンテンツにできないかといったものです。僕が個人的に思っていることですが、自分のワールドとはまったく別の世界に転送し、自分のワールドから何も持って行くことはできずに、裸一貫から1週間色々なものを集めたり、同じワールドの仲間を増やしてもらう。結果として週末に攻城戦やPvPのような対戦方式でお互いに戦い合って、どのワールドが勝利するかを決める、というようなシステムはどうかと考えています。

編: 攻城戦の発展系といえるようなシステムですね。

堀氏: スピード感のある戦闘システムを持つ「RO」では人対人の戦いは1つの柱だと思います。もちろん、「RO」の魅力はPvPだけではないと考えています。たとえば来年の企画として生体ダンジョンの拡張が企画されています。日本でもユーザーさんに人気の高いダンジョンです。プレーヤーキャラクタと同じ生体モンスターが登場して戦いあいます。まだお話しできませんが、まだ様々なことを考えています。



■ 将来的には「コスチュームシステム」で自由に見た目が変えられるようになる!?

日本のパブリッシャーのガンホーは12月26日にユーザーカンファレンスの開催を予定。多くの新情報が公開されるようだ

編: 昔から要望の高い、各職業のアバター変更についてはいかがですか?

堀氏: 今回のアップデートでは韓国には「コスチュームシステム」が入ります。背中装備の追加とは異なり、頭装備の見た目を変更できるシステムです。例えば、機能は良いのだけどそのスタイルは好きではない。自分はそのスタイルは好きなのだけど、それでは機能的に弱いので攻城戦では付けられないというものがありますよね。実際の見た目を変更するだけの「コスチュームアイテム」を用意することで、そういたニーズに応えられないかと考えています。

編: なるほど。いまのMMORPGでは当たり前のように入っている実際の装備とアバター用の衣装が別で、2重に装備できて見た目はアバター用の衣装が優先されるというシステムですね。

堀氏: はい、小さなアップデートではありますが、キャラクターを飾る選択の幅を広げられるシステムです。初期には「RO」らしい、どちらかというとコミカルなアイテムが多いのですが、今後の追加アイテムでは見た目を重視したアイテムも提供されることになります。

編: ユーザーさんの要望は、胴の衣装を自由に変えたいということだと思うのですが。

堀氏: その話はしています。キャラクターの衣装をパーツ単位で変更することは難しいのですが、体全体ではどうだろうか、と話をしています。たとえば肩の鎧が異なるルーンナイトや、ジーンズではないブラックスミス、といった感じのものを選択して貰えるのはどうだろうと。これは今後開発チーム内で検討が進められると思います。

編: 「コスチュームシステム」実装のあかつきには防具屋さんや洋服屋さんがオープンして、自由に着替えられるようになるのですか?

堀氏: 初期の頭装備コスチュームはそうではありませんが、おもしろいアイデアですね。

編: いきなり何百、何千種類のアバターバリエーションが可能になるのですか。

堀氏: その数はさすがにちょっと厳しいですが、順次増やしていきたいですね。

編: 来年の「RO」も楽しみですね。

堀氏: 常に少しずつ変化を繰り返してきている「RO」ですから、今後も新職業、アバター、物語といった要素や新規の遊びの要素についてお見せできるよう、開発チーム一同がんばっていきたいと思います。日本での正式な来年のアップデート内容についてはガンホーからの発表をお待ちください。

編: 最後にアップデートを待ち望む日本のユーザーに一言お願いします。

堀氏: 現在、リニューアルアップデートの後にユーザーの皆さんの感想やご意見がガンホーに寄せられ、私たちもそれを共有して協議を進めています。大変時間を頂いてしまっている内容も多い状況ですが、Gravityとしても日本のユーザーさんの意見に注目し、修正に取り組んでいきます。また今後のアップデートには日本からも提供いただいたアイデアも盛り込まれてきています。是非長年楽しんでいただいている方も、改めて遊んでみようと思っている方も、「RO」の今後にご期待ください。

編: 頑張ってください。ありがとうございました。


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(2010年 12月 22日)

[Reported by 中村聖司]