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「“ゲーム業界を元気にする”方法とは?」対談、松山洋氏 & 中村隆之氏(前編)
攻めの姿勢のゲーム制作を続けていきたい!

会場:サイバーコネクトツー

 

 東京ゲームショウの入場者数が史上初の20万人を突破。この年末には新型インターフェイスとして遂に発売となる「PlayStation Move」やXbox 360の「Kinect」、そして2010年2月には新型携帯機「ニンテンドー3DS」が発売される。まさに空前の盛り上がりを見せるゲーム業界……と思いきや、関係者の表情は暗い。業界に停滞感が漂っているようにも見える。

 国内ソフト市場は数年来の横ばいが続き、海外市場も見通しは不透明。大手企業ではリストラが進行し、中小ディベロッパーには売り上げ不振で倒産、業態変更といったところも見られる。ファミコンバブル以降、何度目かのゲームバブルも過ぎ去った。出口の見えない荒波で、もがいているのが現状だ。

 しかし、だからこそ叫ばなければならない。「ジャパニーズゲーム・ネバー・ダイ!」と。あまりに多くの情報や、目先の問題に振り回され、業界全体が自信を失いかけているのではないか。そこで高い志とゲーム作りの情熱を持つ2人のプロデューサーに、「ゲーム業界を元気にする」方策について思う存分、語ってもらった。また、司会を「ガンバレット」、「鉄拳」シリーズなどを手がけた神江豊氏にお願いした。

【松山洋】
株式会社サイバーコネクトツー 代表取締役社長。博多にある元気なゲーム制作会社サイバーコネクトツーの代表兼ディレクター。開発の傍らで毎月、60冊の漫画誌を読んでいる大の漫画好き。アニメや映画、もちろんゲームも漫画も幅広く、こよなく愛している。非常に“濃く”“熱い”人間である。
代表作:「.hack」シリーズ(世界累計280万本)、「NARUTO−ナルト− ナルティメット」シリーズ(世界累計690万本)。最新作は現在絶賛発売中の、PS3/Xbox 360「NARUTO−ナルト− 疾風伝 ナルティメットストーム2」、ニンテンドーDS「Solatorobo それからCODAへ」。そして……新プロジェクト開発中!!
【中村隆之】
現在フリーのクリエイティブプロデューサー。代表作は知的好奇心をくすぐるパズルゲーム「ことばのパズル もじぴったん」シリーズ。1995年ソニーにて携帯電話開発エンジニアとして勤務。1997年ナムコ(当時)に入社。プログラマとして業務用ゲーム機の開発に関わった後、もじぴったんシリーズ等のディレクター、プロデューサーとして活躍。2010年バンダイナムコゲームス退社。
【司会・神江豊】
1991年ナムコ(当時)入社。代表作「ガンバレット」、「鉄拳」シリーズなど。2006年に退社後、企画プロデュース会社ソルエンタテインメントを立ち上げる。2008年にインディーズゲーム制作集団「O-GAMES」を立ち上げ、「Impetuth」、「UNDERCOVER LIVE Episode 0」を発表。本業のかたわら、会社の枠にとらわれないゲーム開発も続けている。


■ 攻めの姿勢のゲーム制作

対談は会社説明会や新作の発表などで松山氏が忙しい中、サイバーコネクトツーの東京スタジオで行なわれた

−−(神江)今日はよろしくお願いします。お2人の対談を通して、ゲーム業界を元気にするような提言を、どんどん出していきたいと思います。はじめに今、業界でどんな企画やタイトルが求められているのか。それを実現するために、どんな工夫が必要なのか。松山さんはいかがですか? 新作タイトルがその答えだとも言えると思いますが。

松山氏: そうですね。直近ではバンダイナムコゲームスさんから、PS3とXbox 360で「NARUTO−ナルト− 疾風伝 ナルティメットストーム2」が、10月21日に発売されました。当初からワールドワイドでミリオンタイトルを狙っています。もっとも、国産アニメテイストのゲームって、欧米市場ではいらないって言われるんですよ。売れないから。

−−漫画やアニメの人気が高いのはフランスくらいで、その中でもニッチですよね。

松山氏: ええ。だから現在、アニメ系のタイトルを作る時は、国内市場で採算が取れることが大前提になっています。しかし、その姿勢がそもそも間違っているんですよ。国内でペイするためには、開発費を抑えるしかない。人も時間もお金もかけられないので、現場が悲鳴をあげるしかない。そうなると、良いモノができるわけがないんです。そうではなくて、世界の誰もが無視できない、すごいゲームを作れば良いだけの話なんですよ。

中村氏: 僕は松山さんの考え方とちょっと違っていて、いま国内市場が落ち込んでいるのは、ゲーム好きのためのゲームをみんなで作っていて、ゲームをふだん遊ばない人や、ゲームから離れてしまったお客さんに向けてのアプローチが不足しているのかなと。そういうお客さんが今はケータイやソーシャルゲームを遊んでいるんじゃないか。もうちょっと継続的に、新しいお客さんを取り込んでいく必要があると思っています。

−−新規市場の開拓が不足していると。

中村氏: 誰もが「これはゲームだ」と認めるモノを作っている限り、お客さんは増えないと思うんです。だから、いろんな意味で固定概念を崩していかないといけない。海外の人はアニメテイストのゲームを遊ばない、というのも実は思い込みにすぎなくて、松山さんが言われたとおり、たとえアニメテイストでもすごいゲームだったらみんな遊んでくれるんですよ。それなのに、どうもみんな手が縮こまっている感じがします。

【NARUTO−ナルト− 疾風伝 ナルティメットストーム2】
(C)岸本斉史 スコット/集英社・テレビ東京・ぴえろ
(C)2010 NBGI
松山氏をはじめスタッフ全員がファンだという「NARUTO−ナルト−」。ゲームの最新作「NARUTO−ナルト− 疾風伝 ナルティメットストーム2」がPS3とXbox 360でバンダイナムコゲームスから発売された。これまで以上に作り込まれており、満足度も充分。松山氏は「ワールドワイドでミリオンタイトルを狙っています!」と語る、自信作

−−お2人とも「攻め」の姿勢が伝わってきますね。サイバーコネクトツーの新作開発タイトル「Solatorobo それからCODAへ(以下、ソラトロボ)」も、同じような気持ちで作られたのですか?

松山氏: うちは攻めしかありませんから(笑)。漫画家の島本和彦さんの作品「無謀キャプテン」で「柔道の試合に勝つために、まず受け身の練習だ!」、「受け身の練習では相手に勝てません!」というやりとりがあるんですが、まさにその通りだと思うんですよ。いろいろ世の中、ややこしくなっていますが、本来はもっとシンプルだったはず。作りたいモノがあるから作り手じゃないですか!

−−松山さんの姿勢って、漫画やアニメ云々ということではなく、ジャパンカルチャーを世界に発信する、ということなんですね。

松山氏: だって俺ら、日本人やん! 欧米人みたいなゲームは作れんよ。そんな感性はないもん。話は簡単で、本物を作れば世界中でヒットするんです。「ドラゴンボール」だって日本産じゃないですか。「ソラトロボ」も同じで、「構想10年、制作3年」などとCEDEC 2010でも話させていただきましたが、10年間ずっと作りたいという思いがあったから、作ったんです。もちろん商売として成立させるために、たくさんの作戦を立てました。

−−私もナムコ時代はプロデューサーの経験があるので、あの講演は衝撃的でしたよ。

松山氏: ただねー。これ最初に言いたかったことなんだけど、最近いろんなパブリッシャーさんやディベロッパーさん、それからメディアさんも含めて「今の業界が厳しい」という言い方をされますけど、最初っから厳しいですって。いつから楽になったと思ってたんですか? いつの時代も、どんな業界でも、本物だけが生き残るんです。だから今は良い時代ですよ。濡れ手で粟みたいなことを考える、悪い大人がいなくなったので。

(C)2001-2008 NBGI
2008年にWiiウェアで発売された「ことばのパズル もじぴったんWiiデラックス」。DSiウェアでも「眺めるだけで賢くなれる!もじぴったん しりとり時計」が配信中だ。携帯電話アプリも登場している

−−中村さんは「企画の通し方」について、どのように思われますか?

中村氏: いやー、僕のはあんまり参考にならないかもしれないですね。というのはパブリッシャーの内製チームにいたので、ちょっと余っている人間を集めて、プロトタイプを作っちゃうんですよ。「もじぴったん」は、完全にその例でしたね。さっと遊べるものを作って、おもしろかったら、製品にしちゃう。そんな流れだったんですよね。

−−プリプロダクション重視ということですね。

中村氏: ええ。その中でも1つだけコツがあるとしたら、できるだけシンプルに、おもしろさの部分がわかるレベルのモノを作って、プレゼンすることです。いきなり「製作費用が何億円」とか書かれている企画書を持ってこられても、簡単には通らないですよ。でも、それがみんな当たり前に思ってるんじゃないかなあ。よく言うんですが、「テトリス」の企画書を書いても、それだけでは通らないですよ。

−−シンプルだけどおもしろいって、アーケードゲームに近いですね。

中村氏: そうですね。「もじぴったん」がシンプルで、短時間でパッと遊べるものにできたのも、最初がアーケードゲームだったからですよ。それが時流というか、お客さんの生活に合っていた。だからコンシューマ機に移植されたとき、ある程度のビジネス的な成功が収められた。後付けの分析ですけど、そう思いますね。


現在のゲーム業界に対して思うところのあるお三方による熱い対談となった

−−ただ、パッケージゲームだと数十時間、遊ばせるゲームデザインが求められます。

松山氏: 私は時間は関係ないと思っています。あるプラットフォームホルダーさんからも、「10時間程度、色濃い時間をプレーヤーに提供できれば、ちゃんと価値を見いだしてもらえる」と言われました。それに10時間程度で終わらないと、次のゲームソフトを買ってもらえないんですよ。今はお客さんにとって、1番大事なのは時間なんです。だから10時間でお客さんに買って良かったと思わせる商品を、我々が創り出せば良いだけの話です。

−−「15周年記念タイトル」というティザーサイトも公開されましたが、それも「一定時間、色濃い体験を提供する」タイトルですか?

松山氏: もちろん。「ストレルカ・ストーリーズ」という仮題です。「ソラトロボ」はまさに今の少年少女に向けた空想科学世界が舞台ですが、こちらは「かつて少年だった大人たち」に向けた内容です。「天元突破グレンラガン」や「新世紀エヴァンゲリオン」などが好きな方に楽しんでもらえるんじゃないかと思います。もっとも、クライアントやパブリッシャーの企画承認は得ていません。うちが勝手に作りたいから始めたタイトルなんです。

−−そのために東京スタジオまで作っちゃった。

松山氏: 正確には東京と福岡で連携して作ります。でも、そうですね。あのティザーサイトは「一緒にこのプロジェクトを進めませんか?」という、我々の宣言でもあるんです。スタッフにしても、クライアントさんにしてもそう。

−−すごいチャレンジですね。

中村氏: 複数ラインがあっても、スタッフの稼働率が100%なんて会社は、ほとんどないと思うんですよね。だから手の空いた数人のスタッフで何か作っちゃうというのは、やってやれないことはないと思うんですよ。僕は正直、どの会社でもやって欲しいと思っているんです。でも、勝手に動いちゃいけない的な雰囲気が、蔓延しているんじゃないかなあ。その中から新しい芽が生まれたら、それは会社のためでも、業界のためでもあるし、なにより開発者本人のためだと思うんですけどね。

−−話を伺っていて思ったのは、2人ともビジネス的な視点を忘れないで作られていることですね。かたやパッケージの大作、かたやリピート性重視のロジックゲームなんだけど、それぞれのジャンルで無駄なコストをかけずに、お客さんに訴えられるモノをいかに作るかという意識がしっかりあるから、良い商品を出せているんでしょうね。

松山氏: きれいにまとめるねえ。なるほどなあ。

【対談ダイジェストムービー】
松山氏と中村氏の熱い対談の一部をここにまとめましたので、ぜひともチェックしていただきたい!


【東京スタジオ探訪 その1】
東京スタジオのデスクに座る松山氏。プレイ中のゲームからコミックス、ファンからもらったという「東京スタジオ開設おめでとうチュッパチャプス」などなど賑やかなデスクとなっている。もちろん、ゲームのチェックができるようにハードからサラウンドまでシステムが組まれている
こちらは非開発の部署。左手奥に松山社長のデスクがある 有名な話だが、サイバーコネクトツーにはコミック雑誌などが全て完備されている。皆が好きで好きでたまらないコミックにいち早く接したいと言うことから、常に最新のタイトルがそろえられている。もちろん、資料でもある
非常に大きな会議室。東京スタジオ70名(予定)が全員収容できる。福岡本社には、この3倍の大会議室があり、最大220名が収容できる。両者は通信回線で結ばれており、毎週月曜日に全社員が参加してミーティングを行なっている
スタジオに取材に伺ったときはまだソフトが揃っていなかったが、映画やアニメーション作品の上映施設も整えられている。これももちろん資料として活用されることとなる 会議室の一面には大きな鏡が設置してあった。サイバーコネクトツーではモーションを手付けすることが多く、互いの動きを確認するために、複数人が同時に映る鏡があると便利なのだという


 第2部では「理想の開発環境」について言及します。博多に本社があるサイバーコネクトツーですが、そのメリット、デメリットとは?

(2010年 11月 2日)

[Reported by 小野憲史 ]