「もっとおかわり、リン・レン ルカ」収録のミニゲームを監修したトラボルタ氏特別インタビュー
「トエト」をゲーム化する際の秘密に迫る

7月8日収録

場所:セガ本社

 

 株式会社セガは7月1日、PSP用リズムアクション「初音ミク -Project DIVA-」の追加楽曲集デラックスパック2「もっとおかわり、リン・レン ルカ」(以下、本作)の配信を開始した。本作は、メインとなる鏡音リン・レン、巡音ルカを使用した、18曲もの楽曲とエディットデータはもちろん、巡音ルカを使用した楽曲の中でも人気の高い「トエト」のミニゲームや、収録された18曲をハイポリゴンモデルで楽しめるPVプレイヤー、PSPで使用できる鏡音リン・レンと巡音ルカのカスタムテーマを収録した、大ボリュームの内容となっている。

【楽曲およびエディットデータ】
本作のメインコンテンツとなる18曲分もの楽曲とエディットデータ。インストールすることで「初音ミク -Project DIVA-」上でプレイ可能となる。これらのデータは6月23日から配信されているPS3「初音ミク -Project DIVA- ドリーミーシアター」や、7月29日発売の「初音ミク -Project DIVA- 2nd」でもプレイ可能だ
【PVプレイヤー】
PVプレイヤーでは、収録されている18曲のハイポリゴンムービーを、PSP上で楽しむことができる
【カスタムテーマ】
鏡音リン・レンはオレンジ、巡音ルカはピンクを基調としたカスタムテーマを用意。アイコンもギターとバラを模したものに、それぞれ変更される

 今回、本作に収録されている「トエト」の原作となる動画を作成し、ミニゲーム「トエト」の監修も行なったトラボルタ氏と、「初音ミク -Project DIVA-」開発スタッフにインタビューをする機会を得ることができた。実際に「トエト」をミニゲーム化する際のトラボルタ氏と開発スタッフとのやりとりや、ちょっとした裏話も聞くことができたので、ミニゲームの簡単な内容と合わせて紹介していこう。


■ 「初音ミク -Project DIVA-」発売直後から
  ミニゲーム化はスタート!

トラボルタ氏は顔出しNGのため、代わりにトエトのフィギュアをゲームやCDとともにご紹介

GAME Watch編集部: まずは簡単な自己紹介をお願いします。

トラボルタ氏: ニコニコ動画を中心に、VOCALOIDを使用したオリジナル楽曲を投稿して遊んでおります、トラボルタと申します。よろしくお願いします。

編: 今回、トラボルタさんはミニゲーム版「トエト」の監修をされたとのことですが、具体的にはどのような部分を担当されましたか?

トラボルタ氏: まず、トエトの世界観や設定をお伝えしました。それと、すべてのBGMを担当させていただきました。効果音はほぼ開発の方にお任せで、カーソルを動かしたときの「コン、コン」という音など、いくつか作ったぐらいです。

編: ニコニコ動画のPVを見せていただいて、PVでは触れられていない要素が多数追加されているように感じたのですが、ミニゲーム版「トエト」の内容が、最新の内容なのでしょうか?

トラボルタ氏: 当時、PVに入れられなかったものとかも結構あったんですよ。いろいろ考えたはいいのだけれども、使いどころがない、みたいな。そういうのも入れてもらったみたいなところもあったりしますね。ねこぼうしから扉が出てくるとか。

編: ねこぼうしから扉が出てくるところを初めてみたときはびっくりしました。

トラボルタ氏: 四次元ポケット的な感じですよね(笑)。

編: 「トエト」をミニゲーム化したい、というオファーを受けたのはいつごろだったのでしょうか?

「初音ミク -Project DIVA-」開発スタッフ: オファーをしたのは去年の秋頃だったと思います。

編: トエトのPVが公開されたのは去年の2月くらいだったと思うのですが、そのころから「もっとおかわり、リン・レン ルカ」は作るつもりだったのでしょうか?

開発スタッフ: 「初音ミク -Project DIVA-」発売した後、何かやりたいという話は出てましたが、まだそこまで具体的には固まっていませんでしたね。

編: トラボルタさんは、オファーを受けたときの率直な気持ちはいかがでしたか?

トラボルタ氏: いや、ビックリしましたよね。「『トエト』がゲーム化かぁ、すごい」みたいな。

編: そのころから、どんなゲームにしようかといった話はあったのでしょうか?

開発スタッフ: その時点では、セガ側で企画をまとめてトラボルタさんにお送りさせていただいて、ご承認していただいてというあたりですね。

編: その段階では、どんなゲームになるのか楽しみにしていたという感じですか?

トラボルタ氏: そうですね。

編: 「トエト」のミニゲーム化が発表された際、トラボルタさんの周辺の方たちや、ファンの方からはどんな反応がありましたか?

トラボルタ氏: 特に予想外な反応みたいなものはないですけれども、「すごーい!」というものだったり「へぇー」というものでしたね。でも、基本的には喜んでみたいで嬉しいです。


■ トラボルタ氏は勇気の花を咲かせるという目的や
  ねこぼうしから扉が現れるアイデアなどを提案

動画そのままの雰囲気から始まる、ミニゲーム「トエト」。トエトとコミュニケーションをとることで、さまざまなイベントが発生していく
恥ずかしがりやのトエトは、自分の気持ちをうまく伝えられない。表示されるアイコンやちょっとした言葉からトエトの気持ちを察してあげよう

編: ミニゲーム版「トエト」はトエトとのコミュニケーションがメインのゲームとなっていますが、こういった内容になったのは、トラボルタさんの要望によるものですか?

トラボルタ氏: コミュニケーションゲームにするという企画は開発者さんからの提案で、全然僕も問題なかったので、「それでお願いします」という感じでした。

編: トエトと会話した際に、四葉のクローバーみたいなものや、ハートマークなどの反応が頭の上に出ますが、それぞれどのような意味があるのでしょうか?

開発スタッフ: 最初、トエトの頭上にはなにも表示しない予定でした。感情表現を数値で表すのは「トエト」の世界観に合わないというのもありましたので……。ただ、トエトがどういう気持ちなのかわからないとプレーヤーさんも困るので、パラメータの変化が起きたときにそういったアイコンを出すことで、状態の変化を伝えています。あまりトエトにかまいすぎていると、「イライラッ」というマークとかが出てくるので、それで「今はかまっちゃダメよ」というのがわかったりだとか……。

編: トラボルタさんのほうから、「こういったものを表示したらいいのでは?」と提案したことはありますか?

トラボルタ氏: それはしなかったと思います。

編: トエトが最初から覚えている言葉を決めたのはトラボルタさんでしょうか? その場合、どのような基準で決めていったのでしょうか?

トラボルタ氏: そのへんは開発者さんにおまかせしています。

編: トエトに言葉を教える際のコツみたいなものはありますか?

開発スタッフ: 自分の好きな事、興味のある単語を入力すると良いと思います。ふとしたきっかけでトエトが教えた言葉をしゃべってくれるのは不思議な感覚を受けると思います。

オンスクリーンキーボードを使って、さまざまな言葉をトエトに覚えさせていこう。ミニゲームのしりとりをすれば、楽しみながら言葉を覚えさせることもできる

編: 勇気の花を育てるというのが目的のミニゲームとなっていますが、こういう目的にしようというのはトラボルタさんから提案したのでしょうか?

トラボルタ氏: そうですね。これは当初、これをやったらエンディングみたいなものがなくて、「勇気の種を手に入れて、勇気の花が咲いたらエンディングというのはどうでしょう?」みたいな提案をしました。

編: 発売から1週間くらい経って、実はまだ勇気の種を手に入れていないのですが、どうやったら勇気の種は手に入りますか?

開発スタッフ: トエトにたくさん言葉を教えたり、遊んであげてください。そうすることでできることが色々と増えていくと思います。またミク、リン・レンとの会話の中にヒントが隠されていますので見逃さないようにしてください。色々なエリアに種を植えて育ててあげるとトエトも喜ぶと思いますよ。

ほかのキャラクターと出会ったり、ミニゲームで勝利することで、さまざまなアイテムを手に入れることがある。彼らと会える場所には頻繁に訪れるといいだろう

編: 移動する際に、ねこぼうしから扉が出てくるのが印象的なのですが、これはトラボルタさんのアイデアでしょうか?また、トエトにねこぼうしをかぶらせるようになった、きっかけ等はどのようなものだったのでしょうか?

トラボルタ氏: これはもともと僕が勝手に考えていたもので、「トエトを使った4コママンガでも描こうかな」なんて思っていて、その4コマの話のひとつにそういう話があったので「あ、使える」と思って。

編: ちなみに、ねこぼうしなのは、トエトの歌詞の中で「猫かぶり」だからですか?

トラボルタ氏: そうですね。このキャラができあがった時点では歌詞はまだ途中だったのですが、「猫かぶり」の歌詞はできていてメロディにもバッチリハマってるお気に入りフレーズで印象深かったので、いたずら描きしてたらこうなりました(笑)

ねこぼうしから扉が出てくるのを初めて見たときは、誰もがちょっとビックリするのではないだろうか。これは当初からトラボルタ氏のアイデアにあったとのこと

編: ぼうし、ふく、花の種などのアイテムがありますが、特に見てもらいたいアイテムはありますか?

トラボルタ氏: やっぱり、勇気の花ですかね。ラストまでプレイしてみてほしいです。

編: 特別な能力を持ったアイテムがあるようですが、これらのアイテムはどのような条件で手に入れることができますか?また、こういった能力を設定する際に気をつけたことありますか?

開発スタッフ: ある程度能力を持ったアイテムはありますが、ゲーム性に影響を及ぼす程の能力はありません。トエトの能力を補助してあげる程度のものですね。条件は様々ですが、基本はミク、リン・レンから入手できます。能力設定に関しては、トエトということで、普段ゲームをプレイされないユーザーさんも多いと思いましたので、優しすぎず難しすぎずといったバランスで最後まで調整していました。

トラボルタ氏: やっぱり条件厳しいアイテムとかあったり?

開発スタッフ: そうですね。一部のアイテムは種を育てないと入手できなかったりするので結構大変かもしれませんね。種の育成はこれでもかなり緩めたんですよ。当初はすぐ枯れてしまったり、枯れたまま元に戻らなかったり。かなり育てるのがシビアでした。水やりに気をつけてあげれば育ってくれると思います。

編: 水をあげすぎると弱るということですが、例えば1回水をあげて、いろいろなところを一通り移動して、ミニゲームをやったりした後に再度あげても大丈夫ですか?

開発スタッフ: 水は連続してあげても大丈夫です。ただずっとあげ続けると弱ってしまい、育たなくなってしまいますので加減が必要です。

編: 逆に水をあげないと枯れるのですか?

開発スタッフ: 枯れてしまいます。生き物と同様に適度な栄養と休憩が必要ですね。

手に入れた花の種は、プレーヤーの好きな場所に植えることができる。ときおり水をやるだけで育っていくので、水をかけすぎないように注意したい

編: 花の種には種のほかにも球根、苗などがありますが、種類によって育てやすさが違うといったことがあるのでしょうか?

開発スタッフ: 育てやすさの違いは若干あります。種の種類によって成長速度が違います。花以外にも色々なものが咲きますので、是非育てて楽しんでいただければと思います。

編: 実は私はまだミクに会っていないのですが、トエトと仲が悪くなるように行動しないとミクに会えないとかあるのでしょうか?

開発スタッフ: いえ、基本的にトエトと仲が悪くなるようにしないとイベントが発生しないといったことはありませんので、そのままゲームを進めてもらえればいずれ会えると思います。

編: 最新PV「ソラトバズ」の鳥が登場していますが、このほかにもこんなキャラクターが登場しているよ、というものはありますか?また、これらのキャラクターはどのような意図で配置したのでしょうか?

トラボルタ氏: 僕のPVに関係しているのは「ソラトバズ」だけですね。

編: ほかにもウサギとか熊とか鳥とかがいますが、それに関しては何か要望したりはしたのでしょうか?

トラボルタ氏: そのへんもおまかせですね。

開発スタッフ: 「ソラトバズ」は、トラボルタさんに「出させてください」とお願いして出しています。結構タイミングによるんですけど、放っておくとトエトが蝶々を追いかけたりだとか、追いかけて途中で転んだりとかちょっとしたアクションをするので、そのあたりも見てもらいたいですね。

トエトと直接絡むことはないが、「ソラトバズ」の鳥のほかにもさまざまな動物が登場する。こういったさりげない要素に注目してみるのも面白い

編: しりとりから始まって、じゃんけんやリズムゲームなどのミニゲームがあると思うのですが、そのあたりにはトラボルタさんは関係しているのでしょうか?

トラボルタ氏: そのあたりもおまかせですね。僕はホント何もやってないんですよ(笑)。

開発スタッフ: いや、デザインとBGMはかなりしっかりやってもらいましたよ(笑)。

編: デザインということですが、海辺とか草原とかのステージは関わっていたりはするのでしょうか?

トラボルタ氏: それも、描いていただいた絵に対して「ここをもうちょっと色味を変えてください」といった感じですね。

編: ゲームの監修をするというのはおそらく初めてだったのではないかと思いますが、やってみた感想はいかがですか?また、監修した際に苦労した点や注意した点がありましたらお願いします

トラボルタ氏: まずは、僕がゲーム監修とかやっていいのかな?と思いましたね(笑)。基本的には開発者さんにほとんで作っていただく感じだったので、僕はそれの要所要所で出来上がったものを見せていただいて「ここをもうちょっとこうしてほしい」と言う感じだったので、僕自身は苦労みたいなことはあまりなかったですね。

編: ミニゲーム版「トエト」を作る際に、こだわった点はどのようなところですか?

トラボルタ氏: こだわったというわけでもないんですが、世界観は大事にしました。

編: トラボルタさんの要望で、ミニゲーム版「トエト」に追加した要素はありますか?

トラボルタ氏: 先程のねこぼうしから扉が出るのだったり、勇気の花だったり。あ、種を手にいれて自由な場所に植えて育てるという要素も入れて頂いたものでした。あと、スタート時に出るストーリーも「こんな感じでどうでしょう?」とお見せしたら、そのまま採用して下さいました。あとは、最初リズムゲームでボタンを押したときに音がなかったので、音を入れてもらいました。これぐらいですかね。

編: ほかに、もっとこうしたかった!という点はありますか?

トラボルタ氏: ゲームに対してではないですけれど、時間が限られていたもので、もっといろいろBGMを作りたかったなと思っています。

編: リズムゲームの専用の楽曲「アイマイヘントー」に関してはいつごろ作曲されたのでしょうか?

トラボルタ氏: 最初はあんな感じの歌モノにするつもりはなくて、「インストでいいですよ、スローテンポのトエトっぽいものを」とリズムゲームの曲をお願いされていたのですが……。全体がゆったりした感じだったので、アクセントとしてアップテンポのがあったら面白いかもと思って作ったら、メロディも歌わせたくなっちゃって……。VOCALOIDだからすぐ入れられますし。出来上がったらあんな感じになっちゃったって感じです(笑)。

開発スタッフ: 最初はトラボルタさんのスケジュール的な部分もあると思って「インストでいいです」ってお願いしていたんですが、上がってきたら「あれっ? 歌が入ってる!」という感じで(笑)。

編: 「アイマイヘントー」に関してはどんな歌にしようと思って作曲したのでしょうか?

トラボルタ氏: 「トエト」の歌詞の雰囲気というか流れをそのまま使って、内容的にも「トエト」の歌詞に近いものにしています。

編: トエトが自分のことを歌っているイメージでしょうか?

トラボルタ氏: トエトがっていうわけでもないですね。今回の場合はルカが歌っていると言ったほうが近いかもしれません。

編: 今回のミニゲームを通して、どのようなメッセージをユーザーに届けたいですか?

トラボルタ氏: メッセージとは違うのですが、なごみというか癒しをお届けしたいです。のんびりとしてもらいたいですね。

さまざまなキャラクターと出会い、花の種を育てていくことで、最初は少しさびしかった風景も少しづつ変化していく。自分のペースに合わせて、のんびりと楽しんでいってはいかがだろうか


■ トエトは最初はしゃべらない設定だった!?
  今だから話せる裏話も明らかに!

編: 動画「トエト」の誕生時の秘話など、何か裏話がありましたらお願いします。

トラボルタ氏: もともとこの曲は趣味全開で作って、人に受けることをまったく考えずに作ったものなので、1万再生くらいされたら御の字と思っていて、アップロードしてみたらすごい勢いで再生数が伸びて、びっくりしましたね。

編: トエト以外にもゲーム化したい作品はありますか?

トラボルタ氏: 僕のアルバムで「トラボティック・ワールド」というのがあるのですが、ジャケットのなぎみそさんの絵自体がRPG風で、すぐにでもゲームになりそうな感じなので、ゲームになったら嬉しいですね。ほかの人がどう思うかはしらないですけれど(笑)。

編: トラボルタさんはほかにもいくつかPVがありますが、中でも「おてんば姫の歌♪」は、「ドラクエIV」のアリーナをモチーフにしていると思いますが、特に影響を受けたゲームやゲームミュージックなどはありますか?

トラボルタ氏: ゲーム音楽に大きく影響を受けている面があったりして、特に「ドラクエ」とか「FF」とか、特に「ドラクエ」とかってオーケストラものじゃないですか。だからその流れで、僕も結構オーケストラ系の音色を使ったりするといった影響はありますね。RPGに使われそうな音色が好きです。

編: 曲やPVを作成する際に、気をつけている点や大切にしている点はありますか?

トラボルタ氏: 特に曲なんですけれど、僕って100%の力を出しても平均点ぐらいなものしか作れないんですね。なので、100%以上の力を出して全力以上でがんばって作るぞ!みたいなのを毎回続けていますね。

編: PVの絵を描く際にも気をつけている点とかはありますか?

トラボルタ氏: 絵に関しては、気をつけているってことはないのですけれど……。絵は昔から描いているんですけど、一向にレベルがあがらなくて壁にぶちあたっているので、あきらめている部分もあります(笑)。一応ある程度、デッサンが崩れないようにしようとか、正面から見たとき左右対称になるようにしようというのを気をつけているぐらいですね。

編: 曲を作るときに、トラボルタさんはずっといじっているタイプですか?それとも「ここまで!」というラインを決めて、そこに到達したらOKというタイプですか?

トラボルタ氏: 僕はどちらかというとやれるだけやっちゃうタイプですね。特にミックスなんですけれど、ミックスって終わりがないんですよ。いくらでもできるし、正解がないし。自分の曲だけ聴いて「完璧なミックスができた!」と思って、ほかのと聴き比べてみたら、こっちに比べて高音が足りないな、みたいなことがあったり。じゃあ高音を出したら今度は低音が足りなくなったり……。何がちょうどいいのか、わけがわからなくなるときもあります。だから、終わりがなかったらずっといじっている、最後の最後で0.1dbくらい下げてとか。微妙な差をいじり続けて、やっぱり最初のほうがよかったと、戻ってみたりを繰り返したりばっかりですね(苦笑)。

編: では、時間切れになるまでずっとやっているタイプ?

トラボルタ氏: 締め切りがなければ、延々とやっているかもしれないですね。

編: 動画をアップロードした後にもいじったりはしますか?

トラボルタ氏: なるべくそうならないように、アップロードしたものが最終形態でいじらないようにしようという気持ちで作っているので、それで長くなってしまうというのもありますね。CDにするときに微調整したりはしますけれど、動画はアップロードしたままで。

編: トラボルタさんの楽曲だと、マリンバ、バンジョー、スネアドラム・バスドラムあたりの楽器を使ったアコースティックな曲調が特徴的かなと思うのですが、好きな楽器があったりはしますか?

トラボルタ氏: そうですね。その辺の好きな楽器を使って、普段の歌謡曲とかで使わない曲を作ったりはしてますね。

編: 最近の作品だとストリングスが増えてきているのかなという気がしますが?

トラボルタ氏: そのときの気分次第でオーケストラものを強めに出してみたりとか、バンド系の楽器を出したりとかしています。そのとき作りたいものを作っているので、毎回違うものだったりすることもありますね。

編: ミニゲームの「トエト」はどれくらいのボリュームというかプレイしてもらおうと思っていますか?

開発スタッフ: それは開発現場でもすごく悩んだんですよ。やろうと思ったらいくらでもできてしまうので。最初は「1カ月くらいかな」と言っていたのですけれど、最終的には全ての要素を遊んで24時間くらいで終わるボリュームに落ち着きました。1日1~2時間遊んで2、3週間くらいは十分に遊べるかなと思います。あとは覚えさせる言葉次第で、その人なりのトエトを育ててくれるかによります。

編: 進むべき方向性というかゴールが見えにくいゲームではある気はしますよね。

開発スタッフ: 「トエト」のほんわかした世界観の中で、「あまりゲームゲームしたものっていうのはどうなんだろう?」という気持ちはありました。開発している中で、トラボルタさんが世界観をすごく大事にしているというのを常々感じていて、色味の部分だとかすごくこだわられていたので。開発の中でも、「その世界観に対して正直点数をつけたり数値化するというのはどうなんだろうね」という話をしていました。

 最終的に勇気の種を見つけて、育てて花を咲かせるとゴールなんですけれど、その間はその人なりの育て方とかトエトとのコミュニケーションのとり方で、いくらでも短くできたり長くなったりするので。トエトと一緒にこの空間の中でキャッチボールをしてもらえればいいかなという気持ちでトラボルタさんとお仕事をさせてもらったので、あまりにゲームゲームしたものにはしたくなかったですね。

 それでもやっぱり、プレーヤーさんからしたらわからないところがあると思うので、アイコンを出したり……、トラボルタさんに監修していただいたセリフまわりですね。トエトの機嫌が悪くなったときに、「あきらかに機嫌が悪くなったよね」というのを「トエトにどこまで言わせたらいいんだろう?」と、ご相談させていただいたことはありました。それでも、トラボルタさんが懐を広く構えてくださったので(笑)、かなり助かったりしましたね。

 トエトはモジモジしているイメージがあったので、最初から結構しゃべるので「違うじゃん!」と、最初の段階で開発の中でも揉めたんですよ、「しゃべらせすぎだろう!」と。でもしゃべらせないと、ゲームがわからない。

 結構開発が進んでから、セリフまわりの「すみません、ちょっとしゃべらせたいんですけれど」という風になって、セリフをこちらで起こして、トラボルタさんに監修していただいています。

コミュニケーションゲームとはいえ、トエトにどれくらいならしゃべらせいいのか?どれだけ自己主張させても大丈夫なのか?というのことが悩みだったようだ

編: これはちょっと言わせすぎだからダメ! といったことはありましたか?

トラボルタ氏: うーん、なかったかな。

開発スタッフ: こちらで「これはやばいかな?」と思ったものも、「この程度ならいいですよ」と言っていただいたのが何個かあったりして。でも、トラボルタさんにはテキストの段階でチェックしていただいたのと、それが実際にゲームの中で、「トエトが吹き出しでしゃべったときにどうなるのかというのは組み込んでみないとわからない」、ということもあって、最後の最後まで試行錯誤しましたね。

編: トラボルタさんは、最初に考えていた「トエト」の世界観とキャラクターの性格付けと、ゲームになった段階との違いという部分に関しては、どう考えていらっしゃいましたか? ゲームだからいろいろなリアクションをさせなくてはいけなくなりますよね。予定外だったりする部分もあるかと思うのですが?

トラボルタ氏: 予定外というか……予定外なのかな。実はもう1発目からなんですけれど、当初の設定では……トエトはしゃべらない(笑)。

開発スタッフ: うわっ!(一同爆笑)

トラボルタ氏: トエトはしゃべらなくて、モヤモヤとした吹き出しの中で思ったりするというキャラクターだったんですけれど、それだと何もできなくなってしまうので、まあ別にいいやという(笑)。でもそこは、僕が勝手に思っていた設定で、いくらでも変えられる設定なので、いいですよということで、最初にお話しもしました。

編: そこはゆずれないわけではなくて、逆に作ってもらったことが良かったということですか?

トラボルタ氏: そうですね、やっぱりしゃべれたほうがいろいろできますよね(笑)。

編: ミニゲームになるという話がきたときに、トエトをしゃべらせなければいけないな、とは思ってはいなかったのでしょうか?

トラボルタ氏: 最初、どんなジャンルのゲームかわからなかったので。アクションゲームだったら、あまりしゃべる機会もないだろうと思っていましたし。でもコミュニケーションゲームだとしゃべりまくるな、と思いました。でもそこの部分にこだわりはなかったので、全然変更可能でした。

編: (開発スタッフに向かって)危なかったですね。開けちゃいけないものを開けちゃったみたいな(笑)。

開発スタッフ: ドキッとしました。あらためてトラボルタさんの懐が深くてよかったと思っています(笑)。

編: それでは、最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。

トラボルタ氏: これからも基本的に今までのスタンス通り好きな曲を気ままに作ってニコニコ動画にアップしたりして遊んでいくと思いますので、どうぞ宜しくお願いいたします!

編: 今後の活動予定などはありますか?

トラボルタ氏: 今年中にまたアルバムを出したいなと思っているのですけれど、いろいろとやることがあって、できるかどうか未定ですね。あと、トエトのフィギュアも出ていますので、こちらもよろしくお願いします。

編: 本日はお忙しいところありがとうございました。


■ 7月29日にはいよいよ「初音ミク -Project- DIVA 2nd」が発売!
  新たなステージへ進化する、シリーズの今後にも要注目だ

 今回のインタビューを通しては、原作者であるトラボルタ氏の温厚な人柄に加えて、「初音ミク -Project DIVA-」開発スタッフの心配りがあったからこそ、ほのぼのとした動画の世界観をそのままに「トエト」のゲーム化が行なわれたのではないかと感じられた。筆者はいまだ勇気の花どころか種すら手に入れていないが、今後ものんびりとトエトと付き合いながら、いつか勇気の花を咲かせてみたいと思っている。

 2つのダウンロードコンテンツやAC版の稼動、ドリーミーシアター発売など、発売から1年が経った今でもさまざまな話題を提供している「初音ミク -Project- DIVA」だが、来たる7月29日には、いよいよ続編となる「初音ミク -Project- DIVA 2nd」(以下、「2nd」)が発売される予定となっている。

 「2nd」では、同時押しや長押しといった譜面やゲーム性の強化のほか、2体のキャラクターが同時にダンスするデュエットや、エディットモードがより使いやすくなるなど、大幅にパワーアップした内容になることが明らかになっている。怒涛の展開をみせる「初音ミク -Project- DIVA」シリーズから、まだまだ目が離せない日々が続きそうだ。



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(C) トラボルタ / Crypton Future Media, Inc.
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(2010年 7月 28日)

[Reported by 菅原哲二 ]