HUE、「グラナド・エスパダ ルネッサンス」運営インタビュー
理想的な成長ロードマップを設定、レベルキャップのある新サーバーの意図とは?


7月27日収録


 株式会社ハンビットユビキタスエンターテインメントは8月12日、MMORPG「グラナド・エスパダ プラス」のタイトルを「グラナド・エスパダ ルネッサンス」に変更し、様々な新規要素の追加、全面的なタイトルリニューアルを行なう。

 このリニューアルでは、新地域「カスティア」の実装、新キャスト、新PvP等多数の要素が実装される。また、ゲームバランスそのものが大きく変わり、レベル1からのキャラクター育成や、コンテンツをプレイするスピードそのものが大きく変わる。キャラクター成長のロードマップを見直し、これまでのバランスとは全く変わったものになるという。この他、課金アイテムの価格の見直しや、一部サービスの無料化も行なわれる。

 さらに新規ワールド「セレスタイト」をオープンする。このワールドは単純な“新サーバー”ではなく、キャラクターのレベルキャップ、そしてそれに合わせたコンテンツ制限を行なっていく。新規ワールドについては8月3日から事前登録を行なっているので、参加希望者はぜひ応募しておきたいところだ。

 多数の要素が追加・変更される「グラナド・エスパダ ルネッサンス」だが、今回はゲームバランスの変更、そして制限をかける新ワールドの“意図”にフォーカスを当て、ハンビットユビキタスエンターテインメント事業部長兼プロデューサーの中尾圭吾氏と、マーケティングチームの村松直也氏にインタビューを行なった。




■ 全コンテンツを見直し、キム・ハッキュ氏が理想とする成長ロードマップを提示。無課金によるクラスアップも可能に

「グラナド・エスパダ ルネッサンス」事業部長兼プロデューサーの中尾圭吾氏
マーケティングチームの村松直也氏。中尾氏の意見をまとめたり、概要などを語った

 まず最初に中尾氏が説明したのは、「グラナド・エスパダ ルネッサンス」のバランスの調整部分だ。今回のルネッサンスにあたり、開発を行なっているIMC Games代表のキム・ハッキュ氏は、このゲームバランス、コンテンツの消費のバランスに最も力を入れて調整を行なった。

 中尾氏は、「『グラナド・エスパダ ルネッサンス』でまず注目してもらいたいのは、新規コンテンツよりも、“完成度”です。ルネッサンスにより、MMORPGというよりも、コンシューマーゲームのようなRPGとしての完成度が高まりました」と語った。

 ここで中尾氏の提示する「RPG」というものはどんなものか、それは「短い時間で次々と新しいコンテンツ、新しい喜びを見つけること」だという。プレーヤーはレベル1からはじめて、次々と新しい場所、新しい敵、新しいクエストに挑戦していく。このスピードを見直し、快適に、楽しくキャラクターを育てていくことができる。コンシューマーゲームのシングルプレイRPGに劣らないコンテンツの厚さでゲームが楽しめるという。

 「グラナド・エスパダ」に限らず、多くのオンラインゲームは、初期段階では限られたコンテンツで正式サービスを開始し、数カ月のスパンで新規コンテンツを追加していく。ユーザーは、新規コンテンツを瞬く間に消費し、そして残りの時間をひたすら新規コンテンツを待ち、既存コンテンツを繰り返し遊び続ける。「キム・ハッキュ氏はこのバランスに対して大きな心残りがあった」と中尾氏は語る。

 数カ月おきに新コンテンツを追加していく開発スパンは、それに合わせるため、わざとユーザーを「待たせる」要素を盛り込んでいた。レアアイテムの収集や、レベルバランスなど、わざとハードルを高めにして、新規コンテンツが来るまで既存のコンテンツを繰り返し遊ばせ、時間を消費させるという意図を持たされていた。今回のリニューアルで、これまでのコンテンツを全て見直し、キム・ハッキュ氏が理想として考えるゲームバランスと、コンテンツ消費のスケジュールが提示できるようになった。これこそがキム氏の考える「グラナド・エスパダ」なのだという。

 一方、課金アイテムの見直しも計る。最も大きいものが「有料コンテンツの解放」だ。これまでの「グラナド・エスパダ」ではキャラクターがレベル100まで到達するとキャップに達し、1,000HC(1HC=1円)~1,200HCの「秘伝書」という課金アイテムを使うことで「ベテラン」、さらに「エキスパート」、「マスター」という新たなクラスにチェンジできた。それぞれのクラスはレベル10まであり、ベテランクラスでレベル10になると、秘伝書を使ってエキスパートクラスになれる、という感じだ。

 上位クラスになるメリットは、専用のスタンス(スキルや武器などの複合)や、挑戦できるクエストなど上位クラス専用のコンテンツにアクセスできるところだ。「グラナド・エスパダ」では1人のプレーヤーが3人のキャラクターを同時に操る。キャストと呼ばれるNPCを仲間に組み入れ、自分なりのパーティーを作っていくというゲームシステムのため、ゲームを進めるごとに多くのキャラクターを得られる。しかし、キャラクターをクラスチェンジさせるには1人ごとに課金アイテムが必要だった。仲間にできるキャラクターは課金キャラクターも含め、60人以上存在し、多くのキャラクターをクラスチェンジさせるにはかなりの現金出費が必要だった。

 しかし、「グラナド・エスパダ ルネッサンス」では、クラスチェンジに課金アイテムは必須ではなくなり、新たに課金なしでクラスチェンジできる選択肢が追加された。課金アイテムを使ったクラスチェンジは、従来と同様に、アイテムを使えば即座にクラスチェンジできる上に、「覚醒」という能力値が上がる特典がある。一方、無課金のクラスチェンジは、クエストクリアが必要で、覚醒もしない。しかしながら、これまで課金が必須だった上位クラス専用スタンスや上位クラス専用コンテンツに無料でアクセスできるようになり、プレイの幅を大きく広げることができる。クラスチェンジしたキャラクターが増えれば、より多彩なパーティー構成も楽しめるようになる。見逃せない大きな変化と言えるだろう。




■ レベルキャップ、コンテンツ制限により生まれる「サービス開始時の感触」。“新生”を目指す新ワールド「セレスタイト」

中尾氏の言葉を村松氏がポイントをまとめたり、その村松氏の意見からより感情をこめて中尾氏が語るなど、インタビューで息のあった関係がうかがえた
「グラナド・エスパダ ルネッサンス」はこれまでのサービスで多くのコンテンツを持っている。このコンテンツ量を理想的なタイミングで提示していくという新サーバーは、どんなユーザーコミュニティーを形成していくのか、注目したい

 「グラナド・エスパダ ルネッサンス」ではキム・ハッキュ氏が現時点でのコンテンツを見直し、彼の考えた理想的なゲームバランス、キャラクター育成のロードマップが描かれることになった。この結果、韓国では新たなゲームバランスが高く評価され、多くの新規ユーザーを獲得したという。

 このアップデートに合わせオープンする新ワールド「セレスタイト」への施策はHUE独自のものだ。セレスタイトはあえてレベル100までのレベルキャップを設定し、レベル100までのマップ・コンテンツしかアクセスできないように現状のワールドに比べて制限した形でのオープンとなる。大体、全コンテンツの4分の1程度の範囲が公開されるという。

 「グラナド・エスパダ」にはレベル100まででも、たくさんのコンテンツがある。レベルアップを促すクエスト、巨大ボス、メインクエスト、キャストを仲間にするためのクエスト……。特別な敵やダンジョンに挑戦できるPvE向けコンテンツも充実している。さらにPvPコンテンツもある。バトルロイヤルの「ローヤルランブル」、党(ギルド)対戦の「コロニー争奪戦」、そして2つの勢力に分かれて戦う派閥戦「ラティエラエルアラモ」、これらのコンテンツは全てレベル100までのキャラクターでアクセス可能だ。

 さらに、レベル100までの段階で40人以上のキャストが登場する。3人のキャラクターがレベル100に到達したとしても、プレーヤーはまだまだ他のキャラクターを育てられる。そして強くなったキャラクターが増えるほど、「回復重視」、「接近攻撃用」、「PvP用」、「ボス向け」といったように、テーマに合わせた組み合わせが楽しめるようになる。中尾氏は、「ゲームに慣れていない状態でレベル上げだけをさせるのでは無く、“色々なキャストを使用し組み合わせて遊ぶことの楽しさ”を伝えたい」と語った。

 この仕様は中尾氏が日本独自仕様として推し進めていったという。中尾氏は「『グラナド・エスパダ ルネッサンス』をあえて、現在サービス開始したばかりのタイトル、という視点でプレイしてもらうために、このような形を用意してみました」と語った。特に新規タイトルの“お祭り”のような感覚を味わいたい方に、このワールドをプレイしてもらいたいという。

 通常と同じ新ワールドをオープンすると、既存ユーザーはコツを知っているのでどんどん先に進み、新規ユーザーと大きく差がついてしまう。そうなると、新規ユーザーは置いて行かれたような気がして、ゲームに対する情熱が薄れてしまう。そこであえて上限を設けることで、コアなプレーヤーは縦方向だけでなく、他のコンテンツを遊ぶ横方向のプレイを積極的にするようになり、プレイが盛んなボリュームゾーンが広がる。

 「私が『グラナド・エスパダ』を担当したとき、既にサービスが始まっていたので、色々とできなかった事が多かった。今回の企画の発端は、私自身が『もう1度このゲームの立ち上げをしてみたい』という想いからスタートしました。また、現時点の『グラナド・エスパダ ルネッサンス』は、コンテンツ量、ゲームの要素、そして今回新たに提示するゲームバランスで、現在、サービスを開始したばかりの新タイトルに比べても魅力的で、全く劣らない、むしろ“勝てる”ゲームだと思っているのです」と中尾氏は語った。

 セレスタイトワールドでは他のワールドとは全く異なったタイミングでコンテンツのアップデートが行なわれる。上位コンテンツの実装は、ユーザー達の希望によって追加していくが、基本的には初めて「グラナド・エスパダ」に触れるユーザー達のプレイスピードを意識してのものになるという。現在ワールド間のキャラクター移動サービスは行なっていないが、このセレスタイトでキャラクターを作り、一刻も早く上位コンテンツに触れることを希望するユーザーには他のワールドへの移行サービスも検討中とのことだ。

 新ワールド追加となると、既存ユーザー、新ユーザーを含めて、多くのユーザーが殺到することも考えられる。HUEはできるだけスムースなスタートを促すために、8月3日からクライアントのダウンロード、及びセレスタイトワールドへの先行登録を開始した。公式ホームページ内「新ワールドオープン事前登録」応募受付ページから登録を行なえば、キャラクター作成までは先行でできるという。8月12日のアップデート完了直後に、作成済みのキャラクターですぐにプレイができるというわけだ。また、このキャンペーンで登録したユーザーには、特典アイテムもプレゼントされる。

 最後に、ユーザーへのメッセージとしてマーケティングチームの村松氏は、「まず、本作の作品性を多くの方に味わっていただきたい、というのが私の願いです。これまで4年間運営をしてきましたが、まだまだ『グラナド・エスパダ』本来の魅力を味わったことがない人もいるのではないか、と思っています。もっともっと多くの人に触れていただくための施策を行なっていきますので、ご期待下さい」。

 中尾氏は「今回、開発も運営も相当の気合いを入れています。絶対に新規タイトルにも負けない、と思っています。キム・ハッキュさんはようやく理想の『グラナド・エスパダ』にたどり着いたといっています。さらに運営プロデューサーとして、新規ユーザーに向けて、“再出発”ともいえる新ワールドのサービスも行ないます。私自身、『グラナド・エスパダ』を最初からやってみたかった。そういうプレーヤー視点で、やってみたいサービスとしてスタートした企画です。ぜひ楽しんでください」と語った。

 リニューアル、新サーバー追加、といったサービスを行なうMMORPGは多いが、今回のようにあえてレベルキャップを設け、サービス開始時と同じような状況でプレイできる、という「環境」を提供するゲームは例がない。HUEとしてもこの“実験”に期待しているという。オンラインゲーム業界としても注目したいところだ。この新ワールドに参加したユーザー達の反応と、今後が楽しみである。


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