ヘッドロック、mixiアプリ初の本格MMORPG「ぼくらのファンタジア」開発者インタビュー
成長システムの詳細や、マイミクをNPC傭兵できる機能などを紹介
「ぼくらのファンタジア」のロゴ |
株式会社ヘッドロックは、11月13日、mixiアプリ用のアクションMMORPG「ぼくらのファンタジア」を正式発表した。本作はソーシャルネットワーキングサービスmixiがサービスをしているソーシャルアプリケーション「mixiアプリ」では初めての多人数同時接続型のゲームとなる。クライアントの事前ダウンロードなどは必要なく、mixiの会員なら誰でも遊ぶ事ができる。
この記事では、発表されたばかりの「ぼくらのファンタジア」について、ヘッドロック代表取締役社長の岡田信之氏、制作本部長の高屋敷哲氏、企画運営部の甲斐聖現氏の3人へのインタビューを通じて、一足早くその詳細をお伝えする。mixiアプリとして開発をした理由や、今後の展開、サービスの方向性など、気になる点をひととおり聞いてきたのでぜひご注目いただきたい。
■ mixiアプリ初! 多人数が同時にチャットやパーティープレイを楽しめる本格MMO
「mixiアプリ」で動く初めての本格MMORPG |
ヘッドロック代表取締役の岡田信之氏 |
ヘッドロック制作本部長の高屋敷哲氏 |
ヘッドロック企画運営部の甲斐聖現氏 |
「ぼくらのファンタジア」は、「エミル・クロニクル・オンライン」や「アルカディアサーガ」の開発などを手がけているゲーム開発会社ヘッドロックが現在開発している「mixiアプリ」用のMMORPGだ。「mixiアプリ」は、株式会社ミクシィが手がけているソーシャルアプリケーションのサービス。その中でもゲームは、ソーシャルゲームと呼ばれ、mixiの会員であれば誰でも手軽に、ブラウザ上で遊ぶ事ができる。
多くのソーシャルゲームは、同時接続を必要としない非同期型のコミュニティをベースにしている中、「ぼくらのファンタジア」は「mixiアプリ」では初めての多人数同時接続型のサービスとなる。「mixiアプリ」は基本的にアプリを提供する側が、そのためのサーバーを管理する事になっている。そのため、本作では開発会社のヘッドロックが運営も担当することになる。開発会社が運営を行なうことになった理由について、代表取締役の岡田信之氏と、制作本部長の高屋敷哲氏は以下のように語る。
――なぜ「mixiアプリ」でサービスをする事になったのですか?
岡田信之氏: 当社は受託開発をしている開発会社なので、当然パブリッシング機能はありません。このゲームは全て自己資金で作っていますが、最終的にはどこかに売るか、パブリッシングを依頼しなければならないと考えていました。約1年前から開発を進めてきたのですが、ちょうど終わりが見えて来た頃に、ミクシィさんが「mixiアプリ」をやるという発表をされた。MMORPGの第1弾として、サービスをしてもらえればいいのでは、とミクシィさんに言って頂いたこともあり、「mixiアプリ」へ提供する事になったわけです。
――つまり、パブリッシャーとしてmixiを選んだという考え方が近いのでしょうか?
岡田氏: パブリッシャーというよりも、プラットフォームとして選んだという方が近いです。当社は「ディプスファンタジア」というオンラインゲームで運営を手がけた事がありまして、その時に得たノウハウがありますので、アップデートなどの運営はできるのです。何ができないかというと運営広告です。新規ユーザーを集めて来るという事について、当社にはノウハウがまったくないので。mixiアプリにする事でその部分がクリアできるのかなと期待しています。
――もし、別のパブリッシャーさんから、「ウチでもサービスして欲しい」と言われたらどうするのですか?
岡田氏: 特にmixiにこだわっているわけではありません。このゲームはたまたまFor mixiとして作ったのであって、他のプラットフォーム用のものが作れないわけではありません。
――「mixiアプリ」のアプリケーションとして気を付けた点はありますか?
岡田氏: 最初は結構本格的に作っていたのですが、mixiで動かすと、MMORPGの経験が少ないライトユーザーが相手になりますよね。モンスターががんがん襲って来るとすぐに死んじゃうかもしれないのでノンアクティブを多くしたりと初心者向けになっています。
――開発期間はどのくらいですか?
高屋敷哲氏: 1年弱くらいです。弊社はこの12月10日でちょうど10年になります。その前後に併せてなにかイベント的なことをしたいな、どうせなら10周年記念作品を作ろうという話になったのです。
――現在の完成度は何%くらいですか?
高屋敷氏: サービス開始後3カ月程度のアップデート要素まで考えると、70%くらいでしょうか。
――mixiアプリは携帯やPDAにも対応していますが、このゲームはどうなるのでしょうか?
高屋敷氏: 現状では携帯へのサービスは考えていません。ただサブコンテンツ的に、携帯で時間進行型で育てておいて、自宅でPCで遊ぶときには少し育っているといった形のものは考えていきたいと思っています。
■ 「戦士型」、「魔法使い型」、「万能型」の3つの性格がキャラクターの方向性を決める
発表時に公開されたキャラクターのイメージイラスト |
キャラクターは装備やアバターでグラフィックスの変化を楽しめる |
プレーヤーが最初に作る事のできるキャラクターは1人だけだ。名前はmixiで使っているユーザー名がそのまま使われるが、変更することも可能。キャラクター作成で選べるのは、このゲームならではのシステム「性格」を始め、顔と髪型、性別などだ。移動はマウス移動が基本だが、設定を変更すればキーボードによる移動操作も可能だ。
アクションRPGなので攻撃はノンターゲットで行なわれる。攻撃のエフェクトが当たる範囲まで近づいてから、通常攻撃やスキルを使えばいい。クラスという概念はないので、選択する武器によって攻撃方法が変わる。スキルも魔法使いだから魔法を覚えるといった縛りはなく、好きなものが覚えられる。キャラクター成長の自由度はかなり高いといえそうだ。
――1アカウントに作成できるキャラクターの数は?
高屋敷氏: 今の所1キャラだけです。システムとしては複数のキャラクターが持てるようになっていますが、サービス当初は1キャラで、名前はmixiで使っている名前になります。変更することはできますが、ユーザーさんはあまり変更しないのではないかと考えています。どうしてもmixiネームではないキャラクターで遊びたいという要望が大きくなったときには、複数キャラクターを使えるようにするかもしれません。仕組みはありますから、これから判断していく事になると思います。
――性別もmixiに登録したものを使うのですか?
高屋敷氏: 性別だけは選べるようになっています(笑)。他にも髪型と顔は選べます。各5パターンです。
――キャラクターの「性格」というパラメータについて説明していただけますか?
甲斐氏: 「性格」はキャラクターの成長の方向性を決めるものです。例えば、戦士タイプの「性格」を選ぶと、レベルアップしたときに戦士に必要な力や体力が上がるといったものです。種類は、「戦士タイプ」、「魔法タイプ」、「盗賊タイプ」、「防御タイプ」の4つがあります。
――クラスの概念はあるのですか?
高屋敷氏: 今はありません。はっきりしたスキル制ではありませんが、スキル制に近い、最近では珍しい形になるかなと思います。ですからキャラクターを作っては消し作っては消しというプレイスタイルにはならないかなと予想しています。mixiの名前を付けたキャラクターを大事に育てたり、スキルを付け替えて色々な可能性を探りながら遊んでもらうような形がいいのかなと思っています。
岡田氏: 沢山のキャラクターを無料で作る事ができると、捨てキャラを作ってモラルに反するようなプレイをする人が出てくる可能性もあります。1キャラしか作れないと、モラルに反した行為を行なうと自分の居場所がなくなってしまいますから、ユーザーさんがセルフコントロールする必要があるわけです。そのほうがコミュニティーを形成するうえでは良好になると思うのです。ユーザーさんからの要望が非常に大きければ複数キャラを持てるようなシステムも考えますが、いけるのであればそのまま1キャラを大切に育ててもらえた方がいいですね。
――武器の種類は?
甲斐氏: 武器は、短剣や長剣の近距離タイプと、弓や杖の長距離タイプなど、全部で9種類です。
――杖は魔法専用ですか?
甲斐氏: いいえ。剣を装備していても、スキルを覚えていれば魔法を使う事ができます。杖にはパッシブスキルとして、魔法を強化する効果がついていたりとか、魔法の攻撃範囲を広げるような効果があります。
――攻撃手段はどのような形が主体になるのですか?
甲斐氏: 攻撃は近距離の物理攻撃と、弓をつかった遠距離の物理攻撃、魔法攻撃があります。スキルには近距離の物理スキルと、遠距離や範囲攻撃をする魔法、プレーヤーを強化したり、敵を弱体化させる魔法があります。
――スキルは武器依存ですか?
甲斐氏: 違います。違う武器でも同じスキルを覚えられます。
岡田氏: 少し変わった形でスキルを覚えるのです。街でもらえる「カード」にスタンプラリーのようにスタンプを集めるとスキルがもらえます。
甲斐氏: スタンプは、指定された条件でモンスターを倒したり、モンスターの特殊攻撃をわざと受けたりする事で集めることができます。使われる言葉など、既存のMMOの知識そのままではなくて、一般層にもなじみのある言葉にしてみました。
――ゲームの基本的な流れは、スタンプを集めていくことなのですか?
甲斐氏: スキルを覚えるためにはスタンプを集めなければなりません。ただ、スタンプを集めるのはあくまでもスキルを覚えるためで、ゲームの基本的な流れはモンスターを倒して、集めたアイテムで武器を強くする事です。
――パッシブ(自動発動)のスキルはあるのですか?
甲斐氏: パッシブ系のスキルは覚えるのではなくて、武器につけることになります。例えば武器を強化して、力を増幅するスキルがつくと、その武器を装備している間は自動的に力が強化されるといった形です。
――回復のスキルはないのですか?
高屋敷氏: ありません。アクションゲームなので、あまり回復されたのではバランスが悪いというのもあります。殴られても後ろからドンドン回復するといったようなプレイスタイルは避けて欲しいと思っていますから。回復用のアイテムは用意しますが、それをたっぷり持ってガブ飲みしながら突き進むという展開にはしたくないです。ただ当然、デバフ(能力弱体)系の魔法とか、遠距離と近距離の武器の使いわけもあるので、盾役と火力という役割分担は発生してくると思います。
――防御はあるのですか?
甲斐氏: 操作が複雑になるので、基本的には入れないつもりですが、スキルなどで入る可能性はあります。防御スキルという形で使えます。
――レベルキャップはどのくらいなのですか?
甲斐氏: 最初の段階では25か30くらいの予定です。到達するにはある程度時間はかかると思いますが、レベルを上げるというよりは、ダンジョンにもぐって武器を入手したりといった事がメインになりますので、それほど気にせず上がっていくと思います。
――装備のグラフィックスはどの程度反映されるのですか?
甲斐氏: かなり細かくわかれていまして、武器2種類と防具5種類の全7箇所がグラフィックスに反映されます。
――対人戦はあるのですか?
高屋敷氏: 今の所は入っていませんが、いずれやりたいと思っています。ただ単純なPKは絶対に入れません。
キャラクターのバリエーション。当初の衣装は100種類ほどで、その後も追加されていく予定だ | ||
スキルの発動画面。スキルはショートカットアイコンから発動する |
■ ダンジョンを巡ってアイテムを集め、武器を強化する
街のイメージ画像。街はあちこちに集まれるよう、少し広めに設計されている |
スキルを覚えるには街の「ハンコ」屋でもらえるスタンプを集める必要がある |
武器の強化はキャラクターの強さに大きく関わってくる |
本作では、ダンジョンで敵と戦い、クエストをこなしてスキルを覚えたり、アイテムを獲得して武器を強化したりというプレイが基本となる。武器の強化はキャラクターを成長させる方向を決める重要な要素だ。
街はロビーのような役割を持っている。狩りに行くときには街から直接ダンジョンへ飛ぶ事になり、いわゆるフィールドは存在しない。1つのパーティーは最大4人が参加でき、ダンジョンへは3パーティー12人が同時に入ることができる。
――街にはどのような機能がありますか?
高屋敷氏: プレーヤーが冒険の拠点とする場所で、ショップがあったり、クエストを受けたり、武器を修理したり強化したりする工房があったりします。
――街は何種類かあるのですか?
高屋敷氏: 1種類だけです。
甲斐氏: 街の中心にチャパパというキャラクターがいるのですが、このキャラクターがチュートリアルや、ヘルプ的な役割を果たしてくれます。
――メインストーリーのようなものは存在するのですか?
甲斐氏: 準備中です。お話的にも、武器の強化が目的になっていて、ひたすら何かを集めていくという形になります。
――クエストはありますか?
甲斐氏: 街のクエスト屋から受けられます。モンスターを倒して来いとか、何かを取って来いといったものです。
――ユーザー間の売買は可能なのですか?
甲斐氏: 露店を出したり、オークションを使うことで可能です。
クエスト屋 | 素材屋 |
装備屋 | 道具屋 |
ダンジョンのモンスターは装備品や武器強化のための素材をドロップする |
――ダンジョンは、プライベートダンジョンになるのですか?
高屋敷氏: そうです。フィールドは用意していないです。基本的には町に集まって雑談をした後、ダンジョンに狩り行く感じです。アバターもどんどん実装しくていく予定ですから、街をコミュニティスペースとして使っていただければいいのかなと思います。入った時に誰か知らない人がいるというのは、まだまだmixiにはないと思います。
岡田氏: 最大12人で1つのダンジョンに入る事ができます。最深部にボスがいるのでマイミクと一緒に力をあわせて攻略してもいいでしょう。作戦を立てて、役割分担をしていっせいに戦ったりという事もできます。
――浅い階層での戦闘はあまり駆け引きがない印象ですね。
岡田氏: 最初の方は難しい事を考えなくても倒せるようなバランスにしてあります。難しくする事もできるのですが、あえてアクティブモンスターは少なくしています。MMORPGは喋りながら戦うことが多いですが、初めてプレイする人は忙しくてなかなかチャットができないと思うのです。モンスターがアクティブだと、チャットを打っている間に死んでしまうような事も考えられますから、最初はぬるめがいいかなと思っています。
――ダンジョンの数はいくつあるのですか?
高屋敷氏: サービス開始当初は3ダンジョンで始めたいと思っています。ダンジョンは階層があって、最初のダンジョンでは最大3階層くらいです。ある程度プレイに慣れてくると、「みんなでダンジョン」という協力プレイダンジョンが中心になってくる予定です。
――それはどういったダンジョンですか?
高屋敷氏: 1度倒した敵が出なくなる、制限時間式で遊んでもらうダンジョンです。
――それは既存の3つのダンジョンとは別のものなのですか?
高屋敷氏: その3つのダンジョンで行ないます。遊び方が違うという事です。時間制限があるほうが、経験値もいいですしアイテムもかなりレアなものが出るので、効率よくアイテムを手に入れることができます。
――階層が10階層以上あって、下のボスまで行くとなるとかなり時間がかかりそうですが?
高屋敷氏: 短めのダンジョンなら10分くらいで遊べます。淡々と倒していくというよりも、目標に向かって突っ走っていくという形です。普通に素材を集めて武器を鍛錬するような遊び方もできます。
モンスターのイメージイラスト |
■ マイミクとパーティーを組むだけではなく、NPC傭兵にして一緒に育てる事も
チャットでのコミュニケーションは、いままでの「mixiアプリ」のゲームにはあまり見られなかった |
パーティーを組んで戦うだけではなく、傭兵としてマイミクを育てる事もできる |
ソーシャルゲームは、SNS上のデータベースを使って他のプレーヤーとコミュニケーションを取ったり、人と関わりを持つことで様々なボーナスが得られるといったシステムが多い。さらにそういったコミュニケーションが、同時接続のチャットなどではなく、時間差があっても成立する非同期型で行なわれている事が特徴だ。
本作でも「mixiアプリ」ならではの、非同期型のコミュニティシステムを使っている。それがマイミクを使った傭兵システムだ。これは、自分のマイミクのキャラクターをNPCとして連れて歩けるというもの。傭兵キャラクターは、オートで動いて戦闘を助けてくれる。連れて歩く事で、そのキャラクターにも経験値やアイテムが入る。
――マイミクを誘うためのシステムはゲーム内に存在しているのですか?
高屋敷氏: 画面の下にマイミクの顔の写真が出たりするので、そしてその友達を誘ったりプレゼントを送ったりもできますし、マイミクに干渉していく機能はどんどん追加していっています。そこがブラウザ型からソーシャル型に変わって追加している機能です。それ以外にも、どうしてもmixiは非同期コンテンツだと思うので、マイミクのアバターをNPCとしてダンジョンに連れ出す事ができるようにしています。
――マイミクをNPCにして、そのNPCとパーティーが組めるという事ですか?
高屋敷氏: そうです。中身がいなくても連れて歩けます。操作するという形ではなく、一緒にいてサポートしてくれるという感じです。そうすることでマイミクのキャラクターにも経験値やアイテムが手に入ると。
岡田氏: 傭兵のような感じです。
――所有者がセットしたスキルなどを使うのですか?
高屋敷氏: 完全にオートになってしまいます。だからやはり中に人がいた方が、遙かに強力なサポーターになると思います。本当にくっついて一緒に戦ってもらうというものです。傭兵として使う事で「○○君がキャラクターを育ててくれたよ」といったメッセージが相手にも届きます。それを見て、じゃあ入ってみようかというような、これまでにない形になると思います。
――自分が使おうと思ってログインした時に、マイミクが自分をNPCとして使っていたらどうなるのですか?
高屋敷氏: それはそっちはそっち、こっちはこっちという形で同じキャラが出てきます。
――では、自分をNPCとして連れているマイミクとパーティーを組むこともできるのですか?
高屋敷氏: できますね。
■ ダンジョンは今後も定期的に追加。ヘビーユーザーでも楽しめるようなゲームに
全てが初めての試みなので、色々な事に挑戦したいという事だ |
本作では、MMORPG初心者がスムーズにゲームに慣れていけるよう、最初はコンテンツを絞った形でサービスが開始される。サービス開始時点には入らないオークションや上述の「協力プレイダンジョン」については早い段階のアップデートで入れていくとの事だ。スタート時のコンテンツが少なめなので、MMORPGに慣れたコアユーザーにとっては物足りなく感じてしまうかもしれない。次回のアップデート以降、コアゲーマーでも楽しめるような要素が増えていくとの事なので、少し気長に見守ってみるのがよいだろう。
よくスーパーの野菜売り場などに「私が作りました」と生産者の顔が表示してあるが、本作では開発がユーザーから見える場所に出てきて、運営と共にユーザーとのコミュニケーションを取るという大胆な試みを模索している。ホームページ上で、この部分は誰が作りましたといった形に、誰がどこを作ったかを明らかにするというのだ。
――正式サービス後のアップデートはどのような形で予定されているのでしょうか?
高屋敷氏: ダンジョン型なので、ダンジョンのアップデートは随時行なっていきます。他にも街を増やしたりといった事も可能です。システム的な部分でも、スキルを増やして職業的なニュアンスを出したりもしたいと思っています。
――サービス開始後の直近のアップデートはどういったものが実装されるのでしょうか?
甲斐氏: オークションであるとか、マイミクというコミュニティを楽しませる機能などです。
――そのあたりの要素は最初からは入らないのですか?
高屋敷氏: 最初にあまりたくさんのコンテンツを入れてしまうと、初心者の方はかえって敬遠してしまうかもしれないので、最初はなるべく機能を抑えた形で始めて、プレーヤーの方がゲームに慣れてきた段階で、新しい物を入れたので遊んでね、と1度引退した方にも戻ってきてもらうような流れを考えています。mixiアプリではコンテンツの消費速度がものすごく速いので、普通のMMOのように2年、3年ずっとプレイしてもらって当たり前という感覚ではおそらく成功できないだろうと思っています。
――ここまで開発を続けてきて、どのような手ごたえを感じますか?
高屋敷氏: mixiのユーザーさんに合わせた形でかなりライト向けにしましたから、あまり深く考えずに気軽に遊べるゲームになってきたかなと感じています。あとはサービスインまでに、バランス調整をうまく行なえればいいのですが。バランスに関しては、mixiのユーザーはシビアなMMORPGを求めているわけではないのかなと思いますから、なるべく簡単に。今後追加されていくダンジョンにボスや中ボスを置いていくわけですが、それらはできれば少し強めにしてヘビーユーザーでも楽しめるようなものにしていきたいです。
岡田氏: 実はこのゲームの街は、普通のMMOを楽しんでいるユーザーさんだと広すぎるんです。そういう意味では不便なのです。昔のMMORPGだとすごく広い街を作って「すごいだろ!」というものもありましたが、それは使いづらくて迷惑だからと、利便性をあげてきました。しかし「ディプスファンタジア」の時に気づいたのですが、ユーザーさんたちは、集団であちこちに固まってチャットをしている方が半分以上だったのです。そうしてある程度人数がそろったら、じゃあ狩りにいこうかと動き出す。メインになるのはみんなで集まるという部分なのです。あまり狭いと、隣に話が聞こえてしまいますから、このゲームではゲーム性を追及して狭くて便利な街を作るよりも、集まる場所がたくさんあるような形がいいのかなと。
こういったイラストも誰が描いているかがわかるようになるかも? |
高屋敷氏: オプションシステムとか屋敷システムは僕が考えました、みたいに1つ1つのコンテンツについて誰が考えたかがわかるようにします。
岡田氏: 受託でゲームを作っていると、完成したらすぐ次、という流れ作業になってしまって、自分が作ったものをユーザーがどういった形で捉えているのかを受け止める機会がないのです。ずっとその機会を作りたいと思っていたのですが受託開発だけだとそれはパブリッシャーさんの業務になる部分が多くなります。今回は自社でやりますので、ここのアップデートを考えたのはだれそれでした、ディレクターはだれそれといったように責任が明確になります。GMのだれだれがダメだということでよく叩かれると思いますが、それを開発者側まで落とし込んでいこうというものです。つまらなかったら叱咤していただき、面白かったら褒めてください。
■ 年内は接続人数を絞って、ワイプありのテスト期間になる予定
年内はワイプありのCBTの予定。期待しつつ待ちたい |
気になるサービスまでの予定だが、まず12月初旬にクローズドβテスト(以下、CBT)を行ない、その後ワイプを経て正式サービスへと移行するような形になるようだ。
実際にmixi上で動いているテストバージョンを見せてもらったが、動きは非常になめらかで、ダウンロードにかかる時間でイライラするような事もなかった。正式サービス後にはさらに帯域の太いサーバーを使用するとの事なので、オープン直後の過密時期をのぞけば、画面が表示されないといったストレスはそれほど感じる機会はなさそうだ。
――本格派のMMORPGと言うことで、さすがにダウンロード不要というわけにはいかないですよね。
甲斐氏: そうですね、最近のMMOに比べるとはるかに小さいのですが、そこそこ大きなダウンロードはしてもらいます。
高屋敷氏: ただリソースは、一気にダウンロードするのではなく、必要な時に必要なものをダウンロードする形になりますので、おそらくプレイを始める時に必要なダウンロード時間は数十秒くらいだと思います。殺到するとどうしても重くなってしまいますから、ローンチ時期に遊んでもらう方にはどうしても不自由な思いをさせてしまうことになるかもしれないです。基本的にはハードディスクに落としていく形になりますから、ある程度メモリを確保させてもらって1度落としたものは2度と落とさなくていい構造ですから、1度落としてしまえば遊びやすくなると思います。
――ということは、ハードディスク等のストレージデバイスは必須ですか?
高屋敷氏: 必須です。
――ハードディスク上にデータを持つことで、チートの心配はないのでしょうか?
高屋敷氏: チートされそうなデータについてはサーバー側で処理しているので、あまり心配していません。
――1つのサーバーで何人くらいがプレイできるのでしょうか?
高屋敷氏: 現状では、1つのサーバーに最大で1万人が同時接続できるような設計で考えています。オープン当初は少し絞った形で始めて、サーバーがダウンしましたという事がないようにしたいです。できるだけ早いタイミングで最大1万人に開放したいです。mixiでは一気に凄い人数が殺到してくる可能性もあるので、サービスの動向を見ながらサーバーの増設をしていきたいと思っています。
岡田氏: 街の中が50個くらいのチャンネルにわかれているので、そこで友達と待ち合わせをして欲しいと思っています。今までのmixiアプリは全部非同期型なので、チャットをしながら何かをするというのは新鮮なのかな、と思うのです。
――正式サービスまでのスケジュールを教えてください。
岡田氏: 最初は接続数を制限して1カ月くらい様子を見て、年明けくらいに正式サービスを考えています。
――ラグなく動いてくれればいいですが、現行のmixiアプリは割りと重めのものが多いですね。
高屋敷氏: あれはmixiさんが重いわけではなくて、それぞれのコンテンツ側のサーバーの関係で重いので。最近聞いたところですと、携帯で始まったコンテンツに何十億というアクセスが来て手に負えなくなったりしたものもあって、サービスインして1カ月くらい経っても、いまだにつながりにくいものもあるようですね。そうはならないようにしようとは思っています。
■ 完成度は期待以上。新しい試みだけに、どんなユーザー層に受け入れられるかが未知数
最初に「mixiアプリ」で動くMMORPGと聞いた時には、新作MMORPGとしては正直あまり期待はしていなかった。というのも「mixiアプリ」で提供されているゲームは多くはミニゲームなので、今回もMMORPGっぽい非同期型のゲームを想像していた。だが、実際に動いているものを見ると、予想を遙かに超えた出来に驚かされた。武器を強化し、スキルを覚えてキャラクターを成長させるシステムは自由度が高く、やり込み要素としても深そうだ。また、マイミクをNPCとして連れて歩けるので、ソロプレイにも幅が出る。
またデータを軽くするために随分簡素化したというキャラクターのアクションについても、多くの2DのMMORPGにけっしてひけは取っていない。ノンターゲットのアクション性の高いRPGというゲーム性も、近年のMMORPGの流れに沿ったものだと言える。移動にWASDキーが使用できるのも、PC向けオンラインゲームでならしたコアゲーマーには嬉しい部分だろう。この辺りはさすがにMMORPGの開発に実績があるメーカーの作品と言える。
MMORPGをプレイしたことがない「mixiアプリ」のユーザーをどう取り込んでいくか、またmixiにいるネットゲームのコアゲーマーをどう楽しませるか。この相反する2つのテーマを両立させていく事ができるのか、それともどちらかのユーザーに特化したゲームになっていくのかは、これからの運営次第だ。まずは12月のオープニングを無事乗り切れるよう、開発のラストスパートを頑張って欲しいと思う。
――最後にユーザーさんに向けてメッセージをもらえますか?
甲斐氏: みんなで楽しくワイワイ遊べるゲームになっているので、mixiのお友達同士で毎日楽しく遊んでいただきたいです。
高屋敷氏: このゲームは自社で作って自社で運営していく形になると思います。今までのゲームはユーザーから少し離れた体制で製作を行なっていたのですが、今度はユーザーさんからのダイレクトな声や要望が届きます。それに応えていけるような運営を行なっていきたいです。まだサービスやサポートの窓口をどうするか決まっていないのですが、できるだけユーザーさんの声を拾っていけるようにしたいです。ユーザー側に立った視点でやっていきたいと思っていますので、温かい目で見守りながら何かあったらご意見を頂きたいです。意見をくれるユーザーさんってすごく少ないと思うのです。そのパーセンテージを上げることができれば、また変化が生まれてくるのではないかと思うのです。そういう形のサービスをしていきたいです。
岡田氏: 僕はユーザーの皆さんに言うことはいつも同じなんですが、ユーザーの皆さんを愛しています。
――ありがとうございました。
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(2009年 11月 18日)