インタビュー
マナ・ワームはなぜナーフされたのか!? 「ハースストーン」クリエイターインタビュー
「天下一ヴドゥ祭」によって現在のメタはどう変化するのか、突っ込んで聞いてみた
2018年11月4日 16:35
BlizzCon 2018では、「ハースストーン」ワタリガラス年最後の拡張版となる「天下一ヴドゥ祭」が正式発表された。次の拡張版は“海賊”かと思われたが、実際にはトロールだった。トロールは、「World of Warcraft」にとって欠かせない種族であると同時に、ユーザーにとっては特に馴染み深い要素で、「ハースストーン」を舞台にどのようなストーリーが紡がれるのか注目されるところだ。
今回のインタビューでは、「ハースストーン」でリード・ミッションデザイナーを務めるDave Kosak氏と、シニアゲームプロデューサーのTim Erskine氏の2人に対して、ついこの間行なわれたナーフの話題を皮切りに、現環境の感想と手応えについて確認しつつ、「天下一ヴドゥ祭」の魅力について伺ってみた。
「天下一ヴドゥ祭」はメイジがおもしろくなる? マナワーム、ナーフの理由とは!?
――ワタリガラス年の3つ目の拡張パックが発表されたが、ここまでの手応え、感想を聞かせて欲しい。
Dave Kosak氏:ワタリガラス年は多様性に富んだ年だ。「ウィッチウッド」では薄気味悪い世界観で、「メカメカ大作戦」ではちょっと頭のおかしい科学者が暴走して、今回は喧嘩がテーマ。次に何があるかわからない多様性に富んだ年になっていると思う。他方、ウィッチウッドで取り入れた奇数、偶数はゲーム全体に影響を与えていると思う。
――まさにウィッチウッドの奇数、偶数のギミックの影響力は非常に大きく、現在の「メカメカ大作戦」でもその影響に衰えはなく、「メカメカ大作戦」の印象が薄くなっていると感じるほど。この点について開発側ではどのように考えているか?
Kosak氏:それは仰るとおりだ。ただ、「ハースストーン」は常に変わり続けていて、現在は使われていないカードでも、次の拡張で使えるようになることはよくある。環境は常に変わるので、今の状況はそれほど驚くほどのことはないと思う。
――今回の拡張版の発表直前に、3つのカードをナーフしたが、これは「天下一ヴドゥ祭」を視野に入れた、その準備的なものなのか、それとも別の意図があるのか?
Kosak氏:我々は次の拡張版のために、特定のカードをナーフすることはない。基本的にそのときのメタを見て、バランスが取れているかとか、強すぎないかなとか、必須カードになっていないかなということを考えて決める。
――中でも印象的だったのが「含み笑う発明家」だ。最初から強いことはわかっていて実装し、実装後もナーフには否定的だったが、なぜこの土壇場のタイミングで結局ナーフしてしまったのか?
Kosak氏:私はカードデザイナーではないので、バランスの最終的な決定権をもっているわけではないが、とにかく新しいカードはリスクをとっていこうというのが基本的な方針になっている。一旦出した後に変更を加えるときは凄く慎重になる。今回も色々考えた結果。1つだけ強調しておきたいのは、“そのカードがないとプレイできない”という状況は常に避けたい。我々でメタのレポートを見て、データの情報をベースに強すぎるものがあったら、変更を加えようということになる。
――メイジ好きとしてあともうひとつどうしても聞いておきたいのは、クラシックカードのマナワームをなぜこのタイミングでナーフしたのか? しかも長年ずっと使われていたカードに調整を加える場合、ナーフではなく殿堂入りするケースが多いと思うが、なぜ2マナにして残したのか?
Kosak氏:理由は、メイジで使用するカードが固定化されてしまっているためだ。本来はメイジの様々案なカードを使って、多くの種類のデッキを作って貰いたいが、マナワームがあることでコストの安い呪文を入れがちになってしまう状況があったので、使用カードやデッキの多様性がなくなっていたんだ。
――マナワームの影響で入れにくくなっていたという「低コストで効果的な呪文」は今回の拡張版で入るのか?
Kosak氏:それはこの先数週間のカードレビューを楽しみにして欲しい(笑)。今回のメイジはとても楽しいよ。メイジは炎を操るカエルのチャンピオンで楽しんでいただけると思う。
「天下一ヴドゥ祭」の基本テーマは“パワフル&クレイジー”
――改めて今回の拡張版「天下一ヴドゥ祭」の基本コンセプトを教えて欲しい。
Kosak氏:トロールたちがグルバシ闘技場に集まって、9つのチームがロアと呼ばれる神を崇拝していて、どのチームが一番強いのか、どのチームが一番パワフルなのかを決めるという設定。この戦いは、とにかくルールがないということと、見ている群衆達もたまに闘技場に入ってくるぐらいの熱狂が闘技場を包み込んでいる。とにかくルールなしの大げんかだ。「天下一ヴドゥ祭」というタイトルが示すように、とにかく派手でルールなしの大げんかが基本コンセプトだ。
――「メカメカ大作戦」はドクターブームをはじめ、少しコミカルな世界観だったが、今回はどうか?
Kosak氏:マッチョ大乱闘みたいな(笑)。力強い大きな体をしたキャラクターたちが大乱闘するみたいな。一言でいうと、パワフル&クレイジーだ(笑)。
――今回の主役を担うトロールとはどういう存在なのか?
Kosak氏:我々はみんなトロールのことが大好きだ。「World of Warcraft」の世界ではダークでブードゥーマスター、黒魔術など、ダークな一面もありつつ、ゴールデンシティの王という側面もある。色んな側面があって楽しい種族で、特徴としてはでっかいキバとカッコイイ髪型だ。
――トロールはチャンピオンという理解でいいのか?
Kosak氏:少し違う。トロールは種族のひとつで、最もパワフルなトロールとして、各チームに1人ずつチャンピオンがいて、そうでない普通のトロールもたくさんいる。
――ということはチャンピオンはすべてレジェンドカードか?
Kosak氏:そのとおり。各チームにそれぞれレジェンダリーのロアとチャンピオンがいる。ただし、必ずしも両方デッキに入れなければならないというわけではない。
――そのトロール達が崇める神であるロアと精霊とはどういう存在なのか?
Kosak氏:ロアはレジェンダリーカードで、精霊はレアカードになっていて、ロアは1枚、精霊は最大2枚まで入れることができる。精霊には共通点として隠れ身とバフが付与されており、効果はそれぞれだがロアと一緒にプレイすることでシナジーが生まれ、よりよくプレイできる。繰り返すが、ロアと精霊は必ず一緒にプレイしなければいけないわけではない。
――精霊について、公開されたカードを見ると、獣やエレメンタルのように種族扱いになっていないが、それはなぜか?
Kosak氏:新しいメカニクスを作る時は注意を払っている。あまりプレーヤーにとって混乱をきたさないように、ルールを複雑化させないように考慮している。今回はプレーヤー全員にロアと精霊を楽しんで貰いたいので、ログインするだけで、ロアのレジェンダリーと、2枚の精霊カードをプレゼントする。コンボを作って楽しむことができる。同じく6つのカードパックも提供する。
――「天下一ヴドゥ祭」のデモをプレイしたが、お互いの“Shrine(ミコシ)”を守るという内容になっていた。ミコシとは何か?
Kosak氏:ミコシはシングルプレイ用の新しいメカニクスで、カードとしては手に入らない。とても強力な効果が付与されており、壊されないように守りながら戦っていくことで有利に進められる。BlizzConではデモ用にミコシをマルチプレイ向けの仕様に変えて、拡張版の雰囲気を観て貰いたかった。
――今回のシングルプレイモードである「喧嘩祭」の内容は?
Kosak氏:詳細は明日のパネルで話すつもりだが、簡単に言うと1つのチームを選んで、プレーヤーはそのチャンピオンとなり、他のチームのチャンプを蹴散らす!
――クリアの報酬は?
Kosak氏:カードバックが貰えるよ。
――オーバーキル(血祭)の基本的な考え方を教えて欲しい。スルスラズは、最大4回連続で攻撃できるという分かりやすいものだったが、ほかにどのような血祭があるのか?
Kosak氏:本当に色んな効果を用意している。スルスラズは、敵に対して体力以上のダメージを与えると、スペシャルエフェクトと共に再度攻撃可能になるという特殊な効果が発動するというものだ。具体的にはまだ情報を出せないが、武器だけでなく、ミニオンや呪文もあるので、これから色々公開されると思うので楽しみにして欲しい。
――基本的な考え方は、体力以上の値を回復すると最大4回回復できるとか、そういう理解でいいか?
Kosak氏:かもしれない(笑)。
――今の「ハースストーン」はウィッチウッド環境が続いているといえるが、「天下一ヴドゥ祭」によってメタにどのようなインパクトを与えると考えているか?
Kosak氏:とても興奮している。正直にいうと、クレイジーなカードがたくさん追加されるので、どうなるか楽しみにしている。正直に言うとよくわからない。トロールやロアも強力なので、どういう影響を与えるか楽しみにしている。メイジが好きだという中村さんが、新しいメイジにどのような印象を持つのかも(笑)。
――もう少し掘り下げたい。現在は奇数パラディンや偶数ウォーロックなど、奇数、偶数の強い影響下にあるが、一方でズーやクエストローグのように環境に依存しないデッキもある。今回の拡張版が入ることで、奇数、偶数の影響は限定的になるのか?
Kosak氏:バランスデザイナーではないので答えにくいが、デッキによってはそういうことになるかもしれない。プレーヤー次第だと思う。
――新環境ではどのクラスが流行ると思うか? 個人的な感想が聞きたい。
Erskine氏:ローグ! 「World of Warcraft」がスタートして以来ずっとローグが一番お気に入りのクラスだから。
Kosak氏:ハンター! リンクスを応援しているので。
――日本のハースストーンファンにメッセージを。
Erskine氏:プレイしてくれてありがとう。ファンやコミュニティと話すことは重要で、フィードバックを得て開発に役立てるという意味では一緒に作っていると考えているので、今後もぜひフィードバックをよろしくお願いします。
Kosak氏:プレーヤーの皆さんが闘技場でなにをしでかす楽しみにしている。