インタビュー
「ACE COMBAT 7: SKIES UNKNOWN」、今作で「AC」が帰ってきたことを実感してほしい!
河野プロデューサーにインタビュー。片渕須直監督とのエピソードもたっぷり収録
2017年6月16日 04:45
バンダイナムコ エンターテインメントが2018年に発売を予定しているフライトシューティング「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン(ACE COMBAT 7: SKIES UNKNOWN)」。弊誌では、E3 2017に展示されている展示バージョンのプレイレポートをお伝えしているが、今回は「エースコンバット」シリーズプロデューサーの河野一聡氏にインタビューできたので、この模様をお伝えしたい。
雲の表現を刷新! テーマは「正統進化のナンバリング」
――「エースコンバット7」制作のきっかけを教えてください。
河野氏: 前作の「エースコンバット インフィニティ」のあと、次の「エースコンバット」はどうするべきかという時に、「エースコンバット6 解放への戦火」からシリーズのナンバリングが約10年ぐらい開いていて、きちんと今世代機のナンバリングタイトルをまず作ろうということになりました。
――制作時のコンセプトは何でしょうか?
河野氏: 空を飛ぶゲームですので、ずっと雲をはじめとした空の表現をリニューアルできないかということは考えていました。それが今世代機では立体的なボリュームの雲を存在させられるようになり、温めていたアイデアを新しい空の表現で実現するチャンスだと思いました。
雲は視界を遮るほどボリューム感があって、さらに中に入れば(コクピット視点の場合)キャノピーに水滴が付いて、氷結します。雲の中の環境を再現することで、視界は悪くなるのですが、その中で空気の温度や質感、情感のようなものまで感じられるようなものになればと作っています。
――戦闘システムなどについてはいかがでしょうか?
河野氏: 今作はナンバリングということで、操作の挙動などはシリーズの伝統を変えないままより良いものにしようと進めています。
なので触っていただければ、これは「エースコンバット」だとすぐわかっていただけると思います。戦闘機の操作のなかでは今回は敵ミサイルの追尾を妨害する「フレア&チャフ」という防御用の兵装を新たに増やしていて、戦略がプレーヤーの皆さんによって広がればいいなと考えています。
今作のキャッチフレーズは、「正統進化のナンバリングを作ろう」というものです。奇抜なものを、軸を変えるようなものを、というよりは、「『エースコンバット』がより良くなった」と思ってもらうことを目指しています。ルーツを大事にしようということです。
――シリーズのファンをまずは大事にしたいということですね。
河野氏: そういう点では、ストーリー部分もこれまでのナンバリング作とどう繋がっているか、というのはポイントです。
今作では、10年ぶりぐらいに片渕須直監督とお仕事をさせていただいております。片渕監督には「エースコンバット04 シャッタードスカイ」、「エースコンバット5 ジ・アンサング・ウォー」のときにシナリオ部分で参加していただきましたが、「ゲームはこうしたい」とか「シナリオはこう行きたい」とか両方の意見を常に出しあって、ゲームとシナリオの両方が一体となるような作り方をしていきました。
「エースコンバット04」ではエルジアという敵の国が出てきて、「エースコンバット5」ではプレーヤーはオーシアという国に所属していました。今作では、そのエルジアとオーシアが初めて絡むことになります。
まあ初めての方はそんな難しいことを考えなくも楽しめるようにしていますが(笑)、片渕監督独特の戦争観が表現されていて、国対国の戦闘というだけでなく、機械化、無人化されていくパイロットの現場に、今の新世代のパイロットはどう対峙していくかなど、戦闘に赴く登場人物たちの葛藤ドラマも描かれていきます。
――片渕監督と言えば、アニメ映画「この世界の片隅に」のヒットで一躍時の人となりました。今回片渕監督にシナリオを依頼するのは初めから決めていたのですか?
河野氏: ご依頼することになったのは、映画のヒットの前のことでした。もちろん片渕監督が映画の制作でお忙しいのは知っていたので、最初は「監督のように戦争や戦闘機、ミリタリーに詳しくて、ゲームの脚本ができるような方がいたらご紹介いただけませんか?」とメールを出したんです。
すると監督からすぐに返事があって、「残念ながらそういう人はいません。私がやります」と(笑)。「ではお忙しいと思いますが……」とお願いすることになりました。
そのあと、最初は2人でファミレスで会って、こういうことを考えているんだということを話し合いました。するとその1週間後くらいに、オープニングの第1稿がポンと送られてきたのです。そこには、すでに今作のテーマにあたるものがかなり含まれていました。
そしたら監督から「このようなものならすぐに書けますがいかがでしょうか」と。謙虚な方なのですが、その内容が1週間で書いたとは思えない出来なんです。そういうことですぐに、「ぜひやらせてください」とお願いして本格的に動き出しました。
――すごいお話だと思います。
河野氏: その後はメールでやり取りを続けつつ、月に1回くらいで朝から晩まで語り合う“合宿”を開いていたのですが、そしたらあれよあれよという間に映画の方が話題になっていって。
シナリオ自体は完成していましたが、だいたい賞を獲る辺りでお忙しくてぜんぜんお会いする機会がなくなってしまって。ただ「受賞おめでとうございます」とメールすると、すぐに「『エースコンバット04』、『5』の経験が血肉になって今の私がいます」というお返事もいただけて。本当に大切にしていただいているみたいで、ありがたいことです。
私がこの業界に入ったときは、監督やディレクターといった仕事がよくわからなかったのですが、片渕監督と一緒に「エースコンバット04」を一緒に作る中で、監督の仕事はどこを見て何を判断していくのかということを教えていただいて。「エースコンバット5」のときには、「君は育ったね」とお墨付きをいただきました。
私にとっては、とても謙虚な先生、という感じです。ただ日本アカデミー賞も受賞して、益々上の方になってしまったので、今後大丈夫かなと怖くもあるのですが(笑)。
「エースコンバット7」については、秋くらいには日本語版声優のキャスティングも発表予定ですが、片渕監督にはシナリオの段階で演技まで含めて作っていただいているので、キャスティングにも関わっていただいています。
――片渕監督との良い関係がとても良く伝わってきます。話題を「エースコンバット7」に戻しますが、延期の理由を改めてお聞かせいただけますか?
河野氏: 最大の理由は、中途半端な磨かれ方をしたまま出すのは、長らく待っていただいたファンの方への不義理になってしまうと思ったからです。期待にしっかり応えないのはまずいと。
では何が磨かれていないかというと、今作では過去の資産の流用はほぼやっておらず、今世代機での新しい表現に挑戦しつつ、1機体ずつゼロから作り直しています。ゲームプレイを含めて、それらを組み合わせてバランスをとり、調整していく時間が相当かかってしまっています。もう少し磨く時間をいただいて、ファンの方の期待を越えたいと思っています。
――今作ではVRへの取り組みも注目点ですが、VR対応の経緯を教えてください。
河野氏: 最初の段階では、VRの話はありませんでした。VRが話題になって、素直にジェット戦闘機でできたらいいよね、できたらすごいよね、という話になったのです。できたらすごい、ということを実現して届けるというのが我々のやるべき仕事だと思いますので、自然な流れでVR対応を進めることになりました。
――実際に作ってみていかがでしたか?
河野氏: 本編でもVR版でも目指すところは「エースパイロットの気分を体験してもらう」というものですが、アプローチの手段が相当変わります。
本編は映画的な手法や演出をきちんと作ることで体験してもらうのですが、VRはカメラの切り替えが一切使えず、映画的な手法が持ち込めません。いかにして自分がパイロットだと錯覚したままプレイを続けられるか、が難しい部分でした。
――VRモードは本編とは別に用意されるものになるのでしょうか?
河野氏: はい、VR専用のミッションを数種類用意します。当初は本編をそのままVRにすれば行けるかなと甘く見ていたのですが(笑)、まったくそんなことはありませんでした。
まず3D酔いの問題がありますし、先程のカメラの問題もあって、予想よりも手数がかかりました。
ただ嬉しい誤算もあって、ハンガーで戦闘機を眺めると、それだけで数十分楽しめるくらいです。キャンペーンモードとVRモードで過ごす時間は、異なる質のものになります。
それと戦闘機の操作についてですが、VRモードでは機体を倒してから上下させて旋回していくエキスパートモードのみの対応となっています。そうでないと酔ってしまいますので、操作に慣れない方は本編でちゃんとパイロットの修行をしてからプレイしていただければと思います。
――初めて「エースコンバット」をプレイするという方へのオススメポイントはありますか?
河野氏: 戦闘機のゲームは難しいのではという先入観があるのですが、本作は思いのままに飛べるので、興味を持っていただいたら手軽に遊んでもらいたいと思っています。
特にシナリオが凝っていて、戦いを通して自分が成長していく、RPG的な成長物語になっているので、そういうタイプのゲームが好きな人は戦闘機ゲームという壁を感じないでプレイしていただければと思います。
――今後はどのような展開が待っているのでしょうか?
河野氏: まだまだ作品の一旦しかお見せしていません。もっと日本のみなさんに触っていただきたいですし、大空の自由さを思う存分楽しんでもらいたいと思っています。
それと音楽は、ナンバリング作で書いてもらっている小林啓樹君に作曲、監督してもらっています。ナンバリング作のスタッフをフルで揃えているので、今作で「エースコンバット」が帰ってきたことを実感してほしいと思います。
――ありがとうございました。