インタビュー

「FFXIV」、パッチ3.5「宿命の果て」実装直前インタビュー

鬼神ズルワーンは“チクタクバンバン”? パッチの遊びどころはここだ!

【パッチ3.5 宿命の果て パート1】

1月17日 実装予定

「FFXIV」のプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏

 スクウェア・エニックスは、ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド(以下、FFXIV)」の最新アップデート「パッチ3.5 宿命の果て」パート1を1月17日に実装する。「パッチ3.5」は複数回に分けて実装される予定で、これが「蒼天のイシュガルド」シリーズ最後のアップデートとなる。パート2は、2月のフランクフルトのファンフェスを挟んで3月頃実装される予定。

 「FFXIV」の奇数回のアップデートは、毎回カジュアルコンテンツを中心に横への拡張が行なわれるのが通例だが、今回も24人のカジュアルレイド「影の国ダン・スカー(以下、ダン・スカー)」や、「雲海探索ディアデム諸島」のリニューアルなど、ワイワイと気軽に遊べるコンテンツが多く実装される。

 今回は、ファンフェスを間近に控えたタイミングで、「FFXIV」のプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏にパッチ3.5について話を聞くことができた。この記事が掲載される頃には、プロデューサーレターライブでパッチ3.5に関する更なる情報が公開されると共に、東京ファンフェスの基調講演で「紅蓮のリベレーター」の新情報も判明し、アップデートまでのカウントダウンも始まっているだろう。このインタビューで、あと少しで実装される「パッチ3.5」への期待をさらに膨らませて欲しい。

パッチ3.5は複数回に分けて実装。ストーリーの後半は3月

「紅蓮のリベレーター」では、新しい高難易度ダンジョンとして「次元の狭間 オメガ」が実装される

――パッチトレーラーでは「オメガ」という名前が何回か出てきますね。オメガはフロントラインのマップに埋まっているという設定ですが、メインストーリーにはどういった形で登場するのですか?

吉田氏: 「パッチ2.3 エオルゼアの守護者」の頃から「オメガ」というキーワードは出ていました。パッチ3.4のラストでネロが怪しい動きをしていましたが、その目的がオメガらしいということが、今回のパッチトレーラーをご覧いただければわかるかと思います。オメガが果たしてどういうことになるのかは、3.5の確信部分なので、ぜひパッチをご覧いただきたいです。

――今回のメインストーリーも2回に分かれているのですか?

吉田氏: そうです。パート1とパート2に分かれます。

――トレーラーに入っていたのはパート1のみですか?

吉田氏: パート2の映像もあります。ただし、パート1でも2でもネタバレが過ぎるところは出していません。

――結構、確信に触れているシーンもあるように見えましたが、まだまだこんなものではない?

吉田氏: まだまだです。流れとしては、日本のファンフェスティバルがあって、来年の1月17日にパッチ3.5のパート1が出て、フランクフルトのファンフェスがあって、そのあとパート2の実装で、すべての情報がつながるようにできています。フランクフルトの基調講演が終わらないと出せない絵がたくさんあるのです。それらは抜いてあります。トレーラーの最後にラッシュ映像があったと思いますが、あの辺りにもハッと思うようなシーンが入っていますので、ぜひ色々想像していただいて楽しんでいただけたらなと思います。

――2.5の時にはボリューム的にも大きくて、カットシーンも時間があるとき見てくださいと注意が入るくらいの分量でしたが、今回はどうでしょうか?

吉田氏: ただ見るだけの長尺は、正直あまり好きではありません。ドラマを見ているのと変わらなくなってしまうので、パッチ2.55の時はややイレギュラーとしました。今回は「バエサルの長城」をインスタンスダンジョン(ID)としてバトルコンテンツに組み込んだりしていることもあって、パッチ3.5パート1と、パート2を合わせた全体ボリュームは、体感では前回とあまり変わらないとは思います。ただ、ひとつのカットシーンは前回ほど長くはありません。

――どちらかというとプレーヤーが自分で、物語を進めていく感じですか?

吉田氏: そうですね。でも、よくこんなのをリアルタイムカットシーンで作るなという、すごいシーンはありますよ。プリレンダで作ってもいいようなシーンですが、リアルタイムレンダリングで作っています。前回、ラウバーンがウルベルドと斬り結ぶあたりは、リアルタイムカットシーンとしてはすごく凝ってたと思うのですが、あれを超えるようなことをやっています。

【メインストーリー】

――ちなみに、前回の時にはボリュームが膨らみ過ぎて2.5では収まり切れなかったので2回に分けますというお話でした。今回はなぜ2つに分けたのですか?

吉田氏: 前回ほどの「クリフハンガー」系ではないですが、今回は意図的にパッチを分けました。実はパッチ3.5は3.55を挟み、パート2の公開はその後になります。3.55では「ザ・フィースト」のサードシーズンのフィナーレだったり、アニマウェポンの続編だったりを実装し、その後にパート2にあたるシナリオ後編のパッチを入れると思います。

――それは何故ですか?

吉田氏: 前回は、僕らにとっても初めての拡張パッケージへのつなぎだったので、予想できないことが多くありました。例えば、前回は「アラガントームストーン:詩学」の週制限を一時的に900にしました。これはプレーヤーの方からのフィードバックが多かったからです。3.0に向けて、サブジョブの装備も整えておきたいから、週制限をなくして欲しいという要望だったのですが、まったくなくしてしまうと、やり疲れするので900くらいがいいのではないかということでリリースしました。そうすると、確かに900貯めるのも大変なので、このくらいでよかったかもという声をいただき、やってよかったと思っています。ですから、今回は最初から同様の施策をスケジュールに組み込んでいます。

 これも前回のフィードバックなのですが、「パッチ2.55 希望の灯火 パート2」の時には、リリースタイミングが割と早かったので、シナリオ展開上「こんな状態で待たされるなら、パート2はもっと3.0に近くてもよかったのに」というお声もいただきました。そこで今回は3.55をパート2にするのではなく、そこではコンテンツを入れて、できるだけ「そろそろ次が見たい!」というタイミングでパート2がリリースされ、「そろそろ拡張パッケージで遊びたい!」という時に4.0がリリースできるように、と考えています。

――パッチ3.55と、その次のパッチはいつ頃になるのですか?

吉田氏: 3.55は2月には出すと思います。その次は、3月の予定です。準備はできているので、後は上旬にするか、中旬にするか、下旬にするか、みなさんのテンションを見てからリリースタイミングを決めようと思っています。

――そこでぐっと盛り上げようと思っている?

吉田氏: そう思っています。フランクフルトのファンフェスが2月にありますが、それも「FFXIV」的にはある種パッチっぽいのかなと思っています。2月には「紅蓮のリベレーター」の未来と今をつなぐ最後のカギが出ます。2月は、それでかなりエキサイトしていただけるだろうと思っています。3月にパート2が入って、4月からは本格的に「紅蓮のリベレーター」のPRが始まります。他にも細かいパッチが続く予定です。

アラミゴや、鉄仮面卿に絡んだ物語も進んでいく

――発表されたトレーラーには、アラミゴ関係の話はあまり出てきませんでしたが、鉄仮面卿などは出てくるのですか?

吉田氏: 光の戦士たちがアラミゴに向かうこと自体は、すでに発表させていただいているので、当然登場します。間違いなくカギを握っている人物ではありますから。トレーラーに出していないのは、まだ出せないシーンがあるからです。

――パート1では帝国との闘いがメインになるのですか?

吉田氏: 誰と戦うかについても、一筋縄にはしていません。「紅蓮のリベレーター」という未来はすでにわかっていますが、そこまでの道筋はまっすぐではないよということです。僕はいたずら好きですし、ストレートに行くと思ったら違った、という感覚を持っていただきたいです。事前にお伝えできることはできるだけお伝えしたうえで、なお本編を見たら「面白かった」と言っていただけるように、できるだけ気を使って、うまくシャッフルして作っているつもりです。

――ユウギリが久しぶりにトレーラーに出ていましたね。最近出ていなくて寂しいなと思っていました。

吉田氏: ユウギリは今回それなりに活躍するのですが、シナリオチームとイベント実装をやっているスタッフの間で、「さらっと出てくるけど、久しぶり的な挨拶があったほうがいいのでは?」ということで1日揉めたりしました(笑)。チーム内にもユウギリが好きなスタッフがいて、「ユウギリがこれだけ前に出て話すのは久しぶりだから、何かないんですか? さらっと出てきますよね」と。

――今まで彼女は何をしていたのですか?

吉田氏: ユウギリは、ドマ開拓団とか、お世話になったリムサの草として動いているという形ではありました。どちらかというと恩があるのは三国エオルゼアなので、どうしてもイシュガルド編をやっている間は、主だった動きが見えなかったのです。彼女は彼女なりに、ドマ開拓団だったり、ドマ本国のことを気にかけているだろうし、そのためにも恩があるリムサだったり、レヴナンツトール辺りのために動いていたはずなので。すっと帰ってくるので、ちょっと悩ましかったところではあります。

鬼神ズルワーンは「はないちもんめ」?

鬼神ズルワーン

――三闘神の最後の1体となる、鬼神ズルワーンはどんな敵ですか?

吉田氏: 今回は難しくてですね。前回脳トレというキーワードでお伝えしやすかったんですが、今回は何というべきかなと……。

――上下に顔があるところは女神ソフィアと似てますが、全然違う?

吉田氏: そうですね。なんというか……、はないちもんめ……だと、若い人にはわからないですかね(笑)。トレーラーに出てきたバームクーヘンみたいなステージが最終ステージなのかも含めて、今回も新しいことをやっています。

――難易度的にはどうですか?

吉田氏: 「真ズルワーン討滅戦」はいつもくらいの難易度でワーワーしているうちに倒せると思います。「極」はこれから僕が加わっての難易度の最終調整を行なう予定ですが、「機工城アレキサンダー零式:4層」をクリアされている方も多いので、今回は少し難し目でもいいのかなと思っています。「影の国ダン・スカー」もありますし、「雲海探索ディアデム諸島」のリニューアルも入ってくるので、アイテムレベルも極まると思います。ですからソフィアくらいの難易度にしてしまうと、サクッと終わってしまったということになってしまいそうで、悩ましいです。

――今回はカジュアルコンテンツが多いから、これが唯一のコアユーザー向けということですか。

吉田氏: ハードめというと、これになってくると思います。普段よりは少し、難易度が高めでもいいのかなと思っています。

――これで三闘神のクエストは終了で、ストーリーも完結ですか?

吉田氏: 完全完結です。帝国将軍の1人であるレグラが、どういった形で結末を迎えるのかというところもそうですし、ウヌクアルハイという謎の少年が何者なのかということも綺麗に明かされます。マザークリスタルとハイデリンとの関係とか、並行世界とかヴォイドとかに関して、設定周りを読み解くのが好きだという方は結構注目しておいていただければと思います。

【鬼神ズルワーン討滅戦】

――2つの新しいインスタンスダンジョンはどんな感じのものか教えてください。

吉田氏: メインストーリーにがっちり絡んでいるのが「巨大防壁 バエサルの長城」です。トレーラーでグランドカンパニーの制服を着た兵士たちが戦っていましたが、とある事件であそこに行かざるを得なくなるという形をとっています。

――久しぶりの帝国基地ですね。

吉田氏: もう皆さん、帝国基地を走るのは飽きていると思うので、前回も生放送でちょっとお見せしたら「(アラガントームストーン)哲学をもらえそう」というコメントがあったぐらいで、そこは空気感というか、ライティングは外郭や魔導城とは似すぎないように作りました。それに前回はあまりにも長い距離を8人で走ったと思うので、今回は中盤にはもう光の戦士は走らなくてもいいですという状態にはしてあります。ちょっと邂逅編っぽいシチュエーションも用意してみたので、思う存分フルパワーを出していただけると気持ちがよいのではないかと思います。帝国の兵器もいろいろ出てきますが、「FF」シリーズの古い作品が好きな方なら、ちょっとにやっとできるようなものも出てきているので、そのあたりもぜひ見ていただけると、スタッフが喜ぶと思います。

【巨大防壁 バエサルの長城】

――「霊峰浄化 ソーム・アル」についてはいかがですか?

吉田氏: ソーム・アルについては、前回は不浄の三塔のヴィゾフニルの案内でラーヴァナを倒してから、山を登っていきました。今回は故あって、山を下りていくことになります。不浄の三塔の裏に溶岩があるのですが、前回はうまく使いきれていなかったので、今回下りていくことに際してかなり大胆に、冬なのであったかさを感じてもらえるように溶岩を使っています。

――溶岩が頭の上を飛び越えていましたね。

吉田氏: 実は、久しぶりの自然地形ダンジョンでもあるのです。自然地形は作るのが難しいんです。構造物の場合はある程度人の手が入っているから、迷宮っぽくも作れるし、人の手が作ったギミックが置いてあっても不自然ではないのですが、自然に作られた洞窟では、自然物を使ったギミックやモンスターの沸き方を用意していかなくてはならないのです。グラフィックスを作るスタッフはもちろん、企画面でもかなり悩みながら作っていた印象があります。そのぶん、上手くやる余地が十分できたダンジョンかなと思っています。

 前回のパッチで入った「ゼルファトル」でも、敵を無視してオブジェクトから先に壊した方が速いという、小技的な工夫の余地がたくさんあったと思います。自然の要素を活かしつつ、DPSの人たちがちょっと工夫すると楽になるというような要素を入れてあります。

【霊峰浄化 ソーム・アル】

飛空艇バトルを「FFXIV」で再現

「影の国ダン・スカー」のボス「デスゲイズ」は飛空艇の上での戦いとなる

――「影の国ダン・スカ―」は飛空艇の上で戦うシーンがいかにも「FF」的で懐かしさすら感じる雰囲気でしたね。

吉田氏: あそこは担当がかなりこだわって頑張りました。空賊との共闘だったので、最後は大船団で乗り込みたいねという構想はシナリオ初期からありました。デスゲイズを出して、飛空艇の上でのバトルをなんとか「FFXIV」で再現しましょうと、一生懸命作ったのでかなり凝っています。デスゲイズが登場した瞬間に手すりが全部壊れるのが「FFXIV」らしさかもしれませんね(笑)。

――「FFXIV」の手すりってもろいですよね。

吉田氏: もろいですね。何かの攻撃ではなくて、デスゲイズが出てきた瞬間にもう壊れちゃうのかと、初めて見たとき、苦笑しました(笑)。デスゲイズの登場カットシーンで、最初の一撃でバーンと壊れてしまうんです。プレーヤーは手すりがあるシチュエーションを1度も体験することがなく戦うことになります。リヴァイアサンの時にも、女神ソフィアでも前半はあるのですが、今回は潔く最初からありません。じゃあ付けなきゃいいのに、わざわざオブジェクトを付けたうえで、演出で壊すという。そこが「FFXIV」ぽいなと思いました。

――手すりが壊れてナンボって感じがありますからね。

吉田氏: 普段は8人でボトボトっと落ちるんですが、もしかすると十人単位で落ちるかもしれません。

――女神ソフィアでもたまに、8人全員で落ちるとかなり笑えますね。

吉田氏: 誰かについていったらその人が間違っていて全員落ちるってありますからね。「影の国ダン・スカー」は「シャドウ・オブ・マハ」シリーズのラストです。せっかくのアライアンスレイドなので、どばーっと落ちて笑うくらいの気軽な気持ちでやっていただきたいと思います。

――24人全員落ちる可能性もありますか?

吉田氏: 落ちようと思えば、壮絶に落ちますね……。開発のテストも初見の時にはすごかったですよ。ボタボタボタボタって。アライアンスの色がガーっと黒くなっていくので、結構壮観でした。

――ボスの中には見覚えのある顔もいましたね。

吉田氏: もともと古アムダプールとマハが戦争をしていたこともあって、「シャドウ・オブ・マハ」シリーズでは、アムダプールの事情にも結構触れています。「古城アムダプール(Hard)」に出てきたピエロも途中で一瞬顔見せをしていますし、「古アムダプール市街」の地下に封印されていたディアボロスも登場します。実際に、アムダとマハの間にどういった戦争があったのかも垣間見られるように作っていますので、設定好きな方にはたまらない結末があると思います。「フェルディア」は道化師らしいトリッキーなボスになっていますので、楽しみにしてください。ジャグリングの玉の色をお見逃しなくとだけ言っておきます。

3つの改善でリニューアルするディアデム諸島

リニューアルするディアデム諸島。エリア全体を探索するような目標が提示されることになった
新たな要素として、特定の条件がそろうと出現するボスが新登場。倒すには、最低4パーティが必要だそうだ

――全く新しくなるディアデム諸島について、どういった部分が変わっているのか教えてください。

吉田氏: リニューアルの内容をお話しする前に、前回のディアデム諸島に関してご説明します。以前も軽くお伝えしたと思いますが、もともと、開発チーム内でもプレーヤーの方の中でも「FFXIV」の遊び方についての議論がありました。「FFXIV」というゲームは、コンテンツの遊び方にかなりきっちりしたルールが設定されていて、それがゲーム側から割と強めに提示されているというゲームデザインになっています。そのため、初期のころには、「FFXIV」のインスタンスダンジョンはつまらない。迷う道もなければ、遠いところにある宝箱や隠し通路がないという意見が、「FFXI」とか、ほかのゲームをされていた方からありました。しかし、実際にプレイすると、例えば「トトラクの千獄」では途中でルートが2つに分岐していますが、タンクさんが好きな方に行こうとすると、「そっちは遠いのでやめてください」と言われてしまう。そうならないように、先回りして必要ない部分を落としています。今は時間がない時代なので、ダンジョンが20分で終わらないと、1日のうちに他のコンテンツが遊べません。「FFXIV」は、そういう時間を計算して作られています。

――それが不満な人たちもいるということですね。

吉田氏: 遊びの余地がないことで、飽きたり、自由度がないと感じる人たちもいます。「FFXIV」のデザインを否定したいわけではなくて、このデザインはこれでいいけれど、もっと自由に遊べるようなものがあってもいいのではないかと。そういう声がプレーヤーさんの中にも開発チームの中にもありました。「旧FFXIV」の時には、開発の中に「WoW」をプレイしている人がほとんどいなかったこともあって、どちらかというとそういう要素が多かったのですが、新生した時にグローバルスタンダードに合わせた後も、まだこちらの遊び方にも可能性があるのではないかという声がありました。じゃあ一回思い切ってやってみよう、というのが最初のディアデム諸島でした。

 作っている最中から開発チームでも喧々諤々でした。レイドが好きで、ギミックがあるボスで連携できないようなパーティプレイに何の楽しさがあるんだというスタッフもいましたし、8人で飛び回っておいしそうなモンスターがいたらひたすら狩り続けるのが気楽で楽しいという声もありました。最低限の目的はあった方がいいのではないかという意見も、最後まであったのですが、一旦は極端に振らないと納得感がなく、ずっとこの論争を繰り返すことになってしまう。それはゲームがぶれる原因にもなるので、思い切ってルールを一切設けずに、こちらから何も提示しないという形にしました。

――結果的にはやはり難しかったということですか。

吉田氏: それが悪かったとか、遊べないと否定したいわけではないのです。ただ、「FFXIV」というゲームのデザインに慣れてきた人にとっては、ギャップが強すぎたかなと。ずっと一カ所で狩り続けたいという人と、さっさとスポイルを集めて終了したいという人、ギャザラーをやりたいという人の意思の一本化ができない。ずっとルールのあるゲームをしていたが故に、何でもありではダメなんだと。さらに僕らが報酬のアイテムレベル設定をミスったのと、ポップのデータ調整をミスったので、2段階修正をかけた分皆さんのテンションが下がってしまった。そして、あれだけ広いマップがあるのに、ずっと同じ「ゴリランド」に行くだけで探索している感じがない。

――いろいろな問題が見えてきたのですね。

吉田氏: 「同じ目的を持った人たちでマッチングする」、「最低限の報酬は保障される」、「探索をしている感覚を出す」。この3つをきちんと入れたうえで、それ以外は自由にどうぞというものを、もう1度ちゃんと作ろうということになりました。さらに、全員が特定の場所に密集するのは、やはり密集する楽しさがあったからなので、それを活かしたものをちゃんと作ろうということで、半年くらい作っていました。

――そういった議論を経て新しいディアデム諸島はどんな感じになるのですか?

吉田氏: まず入ると、初めからフライングが解除された状態になっています。そして、今回からは、雲海探索を取り仕切っているアインハルト家からの入電という形で、目的がどんどん提示されるようになっています。例えば、まずは北東エリアにあるこのポイントを調査してくれとか、このエリアのここに棲息しているモンスターから何々をいくつ回収して欲しいとか。それを基本にして、どんどん島全体を捜索していきます。一定の数をクリアするとコンプリートになって、基地に戻って報告すると、まとまったアラガントームストーンやスクリップが報酬としてもらえます。

――それが最低限の保証になるわけですね。

吉田氏: そういうことをやっている途中に、区域にF.A.T.E.が発生することがあります。寄り道してそれに参加すると、ちょっとしたボーナスが入ったり、宝箱が直接出たりもします。

――通常のモンスターからは、宝箱が出なくなるのですか?

吉田氏: モンスターからも直接ドロップします。ただ今回は、新しいアイテムが貰えて、それを使って装備ガチャのように装備をもらえるという遊びにしてあります。さっさと探索を終えたらそこで抜けてもいいし、残ったメンバーでほかの遊びをしてもいいしというのが基本です。

――ギャザラーをやりたい人はどうなりますか?

吉田氏: 今回は、バトルジョブとギャザラーで入り口を分けています。ギャザラーはギャザラーだけでパーティを組んで入れるようになっています。ギャザラーパーティとして入ってきたけれど、一旦バトルジョブに切り替えて、さっさと探索だけ終わらせてから三々五々ギャザラーをしよう、ということも可能です。

――ギャザラーでパーティを組んでいても、中でバトルジョブに変えることができるのですか。

吉田氏: できます。目的を合わせるために、マッチングを分けているだけなので。

――入電にまつわるボリューム感はどのくらいなのですか?

吉田氏: 4つくらいです。20分もかからないのではないでしょうか?

――まずはそれをクリアして、次に、また次にというコンテンツになる?

吉田氏: そうですね。外に出てまた入って、そこだけを繰り返しプレイしてもいいですし。3人抜けたけれど、5人残っているから、このままF.A.T.E.をつぶしていきましょうかとか。制限時間は60分なので、制限時間が来るまでこのメンバーで遊びましょうというのは、探索の後でやっていただけるようにしています。

――トレーラーに出ていたボスはどういった形で出てくるのですか?

吉田氏: エリア全体の空の色が変わると、謎の遺跡に突入できるようになります。今までの「FFXIV」にはなかったボス戦になっています。最低4パーティいないと倒せない敵です。昔の「エバークエスト」などをプレイしていた人には懐かしい感じかもしれません。

――その場に4パーティいない場合は?

吉田氏: 全域でシャウトが効くので、足りないので助けてとか、始まったので集まってということはできます。

――このエリアに入るための、なんらかの条件はありますか?

吉田氏: ありません。9パーティで行きたければ9パーティで行ってもいいです。これを、次に考えているエウレカのほうに生かしていきたいなと思っています。

ジャンピングポーションについて議論を深めて欲しい

「ジャンピングポーションについての議論を深めてほしいので情報を提示した」と吉田氏

――先日、ジャンピングポーションについて、フォーラムに長文の投稿をされていましたが、今のタイミングでああいった投稿をされた意図は何ですか?

吉田氏: ラスベガスのファンフェスでのインタビュー以来、フォーラムでジャンピングポーションについて活発に議論をしていただいています。ですが、仕様がはっきりしていないせいで、空回りするところがあったのと、0と1で考える方が両方にいて不毛な言い合いになっている場合もお見かけしました。せっかく「FFXIV」のために熱く議論をしてくださっているのに、それでは申し訳ないという気持ちがあり、今、中国・韓国版に入っている仕様をちゃんとお伝えすることで、必要がない部分をそぎ落としたうえで議論ができると思ったので、投稿させていただきました。

――プレーヤーの中でも、賛否が分かれているということですか。

吉田氏: ジャンピングポーションについて、新規の方が全員そのポーションを購入して、全員がそれでレベル60になってくると思っている方もいそうでしたので、そうじゃないというところをお伝えしたかったのです。それに、ギャザクラのポーションも存在しませんから、経済にめちゃくちゃな影響を与えたりはしないです。キャップに到達するわけでもなく、最後のひとおしは自分でレベリングしなくてはいけません。価格設定を割と高めにしているので、全員が買うわけでもありませんし、無尽蔵に配るものでもないです。中国と韓国のデータも今回出させていただきました。そうした情報から、懸念されているところが見えてきたら、4.0で出したほうがいいのか、それとももう少し待ったほうがいいのか、その最終決断を1月中くらいに出したいと思います。

――開発内では導入には前向きなのですか?

吉田氏: そうですね。中国・韓国では絶対に必須で、中国・韓国の「4.0」にはアップグレード版が必要になるので、すでに開発はしています。グローバル版に入れるかどうかという問題だけです。

――中国や韓国では新規キャンペーンの時に、ジャンピングポーションを無料で配ったりはしないのですか?

吉田氏: やっていないです。クライアントとセットにして、新規で始めた人が1回だけ「新生の冒険録」と特定のジョブポーションをお安くということはやりましたが、それも有料の期間限定です。フリートライアルの人は使えません。課金して、プレイを継続するモチベーションがある人しか買えないようになっています。この辺りの施策は中国の方が先輩なので、中国の運営と相談しながら作りました。おかげでうまくいっていると思います。韓国でも、最初はやはりスキル格差とかの議論はあったのですが、リリースしたらほぼ問題ありませんでした。グローバル版でもそうなるだろうなとは思っているのですが、やってみないとわからないことなので。今はその手前で議論をしっかりとしてもらったほうがいいかなと。

――「WoW」のポーションでは、いきなりレベルが90とか100になると、何をやっていいのかわからなくてお手上げ状態になるということは確かにありました。もし入れるとしたら、そういったことに対するフォローも入るのですか?

吉田氏: 「FFXIV」の場合、メインシナリオを進めていく過程で、ソロでのプレイがメインとなります。敵との戦いも出てくるので、それが基本的なチュートリアルになると思っています。木人を叩かせろという意見もあることは知っています。

――いきなり高レベルになっても、怖くてコンテンツファインダーに参加できない、ということもあるかなと思いますが。

吉田氏: ジャンプすると、そのレベルまでのすべてのダンジョンが解放済みになります。トレーニングしたければ、レベルの低いやつに行ってもらえればいいのかなと思います。あとは初心者の館ですね。中級者の館を作っては、という意見もあるのですが、僕は初心者の館の方がマッチするような気がします。スキルローテーションはいずれ覚えるでしょうが、完全新規の方にとっては、敵の攻撃を避けるとか、タンクがヘイトを取るとかいう概念のほうが覚えにくいと思うので。そちらへの誘導は何かしらあったほうがいいなと思っています。

――ポーションを使っても、下位のコンテンツをプレイする中で覚えていくということですね。

吉田氏: ジャンピングポーションのようなアイテムを購入されている方は、ゲームへのモチベーションが高い方が多いです。もともと別のオンラインゲームを遊んでいたような方が多いということが、データからも見えています。完全新規の方は、まずはレベル30とか40くらいまで遊んでみて、そこから先を飛ばすためにポーションを買うという方が多いですので、その間にプレイに慣れることができると思います。たくさんのスキルがあってもとりあえずフィールドのモンスターに使ってみながら、ローテーションはネットで検索という方が多いようです。しかし、これも結果論だとは思うので、議論することに意味がないとは思っていませんし、皆さんが望まないのであれば4.0での同時実装は諦めようと思っています。

――逆に、4.0より前に入る可能性はありますか?

吉田氏: それはないです。

――入れるとしたら、必ず4.0に合わせてということですね。

吉田氏: レベルキャップが解放される前に入れると、Pay to Winと勘違いされる方がいると思うのです。「WoW」は「Legion」のリリースに合わせ、拡張パッケージの直前に配りましたが、あれはジャンピングポーションに慣れているからできたことで、「FFXIV」では考えていません。間違いなく大炎上すると思います。

――絶対に入らないということですね。

吉田氏: はい、「紅蓮のリベレーター」のスタートダッシュで、ジャンピングポーションを使った方とマッチングしまくるよりは、事前に準備できていた方が、4.0スタート時に馴染みやすい、というメリットはあるのですが、今回はやらないです。

――最後にファンへのメッセージをお願いします。

吉田氏: 今はまだファンフェス前なので、ファンフェス終わってホッとしてますとは言えないのですが(笑)。でも、ファンフェスで新情報がいろいろと飛び出しているはずです。新しいことをたくさんやっていくのねとか、あまり国内のゲームではやらないことをやっていこうとしているので、そのあたりも含めて、未来に向かって2017年も突っ走っていきます。

 その第1弾となるパッチ3.5「宿命の果て」は、申し訳ないですが、すごくヤキモキするところで、ストーリーが中断されます。それも含めて、いろいろと4.0に向かって準備が始まるので、その空気感も皆さんで共有していただきつつ、新情報をお待ちいただければと思います。

 今回のパッチ3.5はカジュアルコンテンツが非常に多いです。クラフター、ギャザラー用のエフェクト付きの装備も出たりします。4.0に向かう準備とともに、3.Xシリーズの決着がつくパッチになると思います。年末のゲームラッシュも落ち着く頃かと思いますので、休止されている方も戻ってくるにはいいタイミングではないかと思います。

 また、リターナーという新しい復帰者用の支援システムも3.5からスタートします。ビギナーチャットに一緒に入れるようになりますので、メンターさんたちも復帰の手伝いをしてくれると思います。スムーズに復帰できるような施策がはいっています。

 あとは何といってもワールド越えのパーティ募集が入ります。もうあまり過密ワールドにいる理由がなくなってくるので、もしかすると4.0前にフリーカンパニーごとワールド移転する人達も出てくるかもしれません。どちらかというと土地がたくさん空いているところに行ったほうが快適だよねということで、選ぶ人たちも出てくるかと思います。4.0に向けて、遊び方もコンテンツも変わっていく準備の時期だとは思います。僕らは、初夏に「紅蓮のリベレーター」をお届けするために、死ぬ気で作業しています。2017年にはまた「FFXIV」にとって大きな山が作れるようにがんばりますので、2017年もよろしくお願いします。

――ありがとうございました。