インタビュー

NIGOROの新作「LA-MULANA2」が1ステージ遊べる新バージョンを出展

開発者の楢村氏に開発状況と今後の予定をインタビュー

9月15日~18日 開催

会場:幕張メッセ

入場料:
一般前売券 1,000円(税込)
一般当日券 1,200円(税込)
小学生以下無料

 東京ゲームショウ2016のインディーゲームコーナーにて、NIGOROが開発中のアクションアドベンチャー「LA-MULANA2」が出展された。

 前作「LA-MULANA」は、考古学者が古代遺跡を冒険するという2Dアクションアドベンチャー。レトロなグラフィックスとシビアなアクション性、膨大なボリュームがうまく融合した作品で、世界的な人気を集めた。本作はそのコンセプトを変えないまま、完全な新作として登場する。2014年初頭には、Kickstarterを使ってクラウドファンディングで資金を集めたことでも話題になった作品だ。

 本作が東京ゲームショウに出展するのは、実はもう4回目となる。また東京ゲームショウの他にも、Bitsummitなど様々なイベントに出展されている。ところが今年になってからはどこにも出展がなく、今回は昨年の東京ゲームショウ以来、約1年ぶりの出展となった。

 ゲームの方は最初のステージがフルで遊べる状態になっていた。前作のレトロなテイストを残しながらも、細かな描写やエフェクトなどが強化。フィールドにあるヒントをもとに謎を解いて奥へと進み、時には罠にひっかかって即死したり、巨大なボスモンスターにやられたりする……という流れも前作と変わらないが、内容は全く違う。筆者としては、久しぶりに「LA-MULANA」を遊んだ感覚が戻ってきた喜びがある。

ステージ1つ分が最後まで遊べるバージョンがついに登場。操作感は前作とほぼ同じだが、フィールドのギミックの見せ方などはかなり変わっていて美しい

 今回は本作の開発者である、NIGOROの楢村匠氏にお話を伺った。1年間の間に何があったのか、そして現状どうなっているのかを聞いているので、ご覧いただきたい。

――嬉しい話ではないですが、「LA-MULANA2」の東京ゲームショウへの出展はもうおなじみですね。何年目になりましたか?

楢村氏 :4年目ですね。東京ゲームショウにインディーゲームコーナーができた時から、ずっと同じものを出し続けています(笑)。ずっと同じステージばかり出しているので、今回は新しいステージにすべきかどうか迷いました。

――イベントに出なかったこの1年間はどんな状況でしたか?

楢村氏 :我々は人数が少ないので、作っている人間がイベントに立たねばなりません。他にもポスターやグッズを作ったりするのも私なので、出展によって開発が止まってしまいます。それもあって、2016年は外に出ないでずっと作ることにしました。それに今回の東京ゲームショウもそうですが、行っても発表できることがないんです。

――それだとインタビューが終わってしまいます(笑)。

楢村氏 :出るのであれば、この辺りに発売できそうですと発表できなければならないと思いましたし、Kickstarterの資金もこの辺りで尽きるぞという目処もありますので、今回、2017年春くらいには何とかしたいと言っています。

――開発の進捗はいかがですか?

楢村氏 :今回からUnityを使い始めたんですが、Unityを使う人は最初に小さなプロジェクトから色々試すことが多いと思います。でも我々はいきなり大プロジェクトを始めてしまったので、どうしても勝手がわかりませんでした。例えばUnity上で動かせるものは全部ゲームで管理できるようにしてもらうために時間がかかったりしています。グラフィッカーも僕1人ですから、Unityでどういうことができるか実験しながら覚えていかねばならなかったんです。今はそれがようやく一通りわかってきて。後は物量の多いゲームなので、次々とデータを作る時間ですね。それを少しでも早く終えて、バランス調整に1~2カ月かけたいと思っています。

――今はシステムの土台はできて、コンテンツを作り込んでいる最中というわけですね。

楢村氏 :普通のゲーム会社なら、最初にシステムをしっかり作った上でデータを作ると思います。後からシステムを変えると大変になりますから。でも僕らは少人数でグラフィックスや音楽も作らなければいけないので、システムとデータを並行して作っていました。今回展示している1ステージ目だけはがっちり完成させてありますが、次のステージはマップしかない、敵キャラクターがいないという状態のものが多いです。またこの作り方をすると、システムが完成した時に最初のステージにいるボスがエラーを吐くといった問題も出てきてしまいます。それでも一通り乗り越えられて、決まったフォーマットでどんどんデータを作るところにようやく来たという感じです。

――「LA-MULANA」と言えば、理不尽な死に方をする場所も多い作品ですが、そういうギミックも作り込んでいる最中ですか?

楢村氏 :前作はアマチュア時代に作っていたもののリメイクだったので、あまり変更すると熱心なファンには嫌がる人もいると思い、理不尽なものもあえてそのままにしました。僕も昔は遊ぶ人がどう思うとか考えず、自分が作りたいものを作ってああなっているので。今回は前作を遊んでくれたプレイ動画や評価、コメントを見た上で、理不尽にならない範囲、でも決してやさしくなってはいないよう調整しています。前作は知らないうちに失敗していたということがあったんですが、ちゃんと目に見えて失敗したことがわかるとか。最初から設計した上で仕掛けを作ることができているので、かなり時間短縮はできていると思います。

――いわゆる初見殺しみたいなものは当然あるけれど、前作とは見せ方が違うと。

楢村氏 :当然ありますが、ちゃんと探りながらやっていると、初見殺しがここにあるということが予想がつくようになります。そういうところはしっかり考えてやらないと、理不尽だ、クソゲーだと言われることにもなるので。

――なぜ死んだのかわからないのはダメだろう、ということですね。ほかに今の段階でアピールできる部分があれば教えていただけますか。

楢村氏 :これまで、なかなか「LA-MULANA2」はこうなるぞと断言はできませんでした。Unityを使って新しい仕組みでやっているので、前と同じ作りにならない部分はあります。ようやく全部が組み上がってきて、グラフィックスや動きは前作よりちゃんとしたものになっています。今、前作の画面を見ると、ちゃちいなと思えるくらいになってきています。前作はレトロゲームの雰囲気をずっと残してきたところがありますが、今回はUnityで作り直すこともあって、前作と同じにならなくていい、違うんだったら違う部分なりに面白くできていればそれでいい、でも「LA-MULANA」のテイストは変わらない、新しい「LA-MULANA」になっています。

――グラフィックスの進化は確かに大きいですね。

楢村氏 :あと前作のリメイクを出した時は、昔からのファンの方が言っていたのは、「記憶を消してやりたい」ということでした。さすがにそれは無理ですが、今回は完全な新作なので、全く新しい、知識がない真っ新な状態からみんなが始められるので、遊ぶ人みんなを巻き込んで楽しめるものになっていると思います。ネットでみんなで考えを出し合ったり、実況しながらコメントもらったり、ヒントは絶つけれど考古学の知識は検索するとか、いろんな楽しみ方が一斉にできるのは滅多にない機会だと思います。

――発売までに体験版を出すなどの予定はありますか?

楢村氏 :Kickstarterのバッカーにはα版などの形で出しています。今回展示したものも、見つかったバグを修正してバッカーの方には提供するつもりです。映像配信はしても構わないと言っていますので、少しでも情報が欲しい方は、配信している方を見れば現状どうなっているかはわかります。以前はもう少し余力があって情報を出せたんですが、今は手が回らないので。でも発売時期がおおよそ決まったら、ホームページも用意し始めますし、情報も出やすくなるとは思います。

――今はその分、頑張って作っているというわけですね。

楢村氏 :Kickstarterが終わった直後の頃には、今回の世界設定やシステムはこうなりますとよくしゃべっていたのですが、そういう情報はバッカーに伝えるべきじゃないかとか、できていない段階で情報を出すのはどうなのかとかいろいろ考えて、出しにくくはなっています。それもよくないなと思うので、情報を出したいのですが、結局は僕が動けるかどうかの問題ですね(笑)。

――バッカーに対するリワードもいっぱいありますよね。

楢村氏 :そうなんです、それもやることがいっぱい待っているんです(笑)。

――ではゲームの完成を待っている方々に一言お願いします。

楢村氏 :僕自身、「LA-MULANA」がWiiウェアで2011年に出てから、何も新作を出していないんです。移植ばかりをしていてゲームを作っている感じがしませんでした。「LA-MULANA2」が出たら、僕も実況動画やコメントを一斉に見られるんだと思うと楽しみです。遊び方にこだわらず、ヒントをもらいながらでも攻略を見ながらでもいいですし、動画配信しながらでもいいですし、画像をたっぷり入れた攻略サイトをまとめてもらってもいいですから、いろんな楽しみ方を見たいです。僕もそういう意味で楽しみにしていますから、いろんな遊び方を考えていって欲しいですね。

――では、来年には東京ゲームショウへの出展がないように……。

楢村氏 :その頃になると、コンシューマーへの移植などの話が進んでいたりして、インディーゲームコーナーではなく一般のコーナーに出せるといいですね。僕らも1年間我慢してきたので、完成したら国内に留まらずいろんなゲームショウに出展したいと思っています。

――それは来年も楽しみですね。ありがとうございました。