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Wargaming.net CEO ビクター・キスリー氏インタビュー
「WoT」30対30のグランドバトルは“昔からの夢”。ぜひ楽しんで欲しい
2017年8月27日 06:24
「World of Tanks」は、グローバルで成功した数少ないオンラインゲームタイトルのひとつで、今年で早くも7周年を迎える。グラフィックスエンジンの刷新をはじめとした、その目まぐるしい進化は、オンラインゲームの中でも特筆すべきもので、絶えず新しい要素を取り入れながら、貪欲に成長を続けている。
その舵取りを行なっているのが、ご存じWargaming.net CEO ビクター・キスリー氏だ。gamescomでは、BtoBブースの最奥に自身専用のインタビュールームを設け、そこで会期中ずっと世界中のメディアに向けて語り続けている。そのスタンスは創業以来まったく変わっていない。弊誌でもインタビューを行なうことができたので、直近の話を中心に、今後の事業戦略について話を伺った。
今年の目標は“プレーヤーハッピー”の追求
――今年のWargamingブースのテーマを教えて欲しい
ビクター・キスリー氏:gamescomには毎年出展しているが、常に新しい体験をお届けしたいと考えている。今年はブースをさらに大きくして、「Total War: ARENA」のCBTが近日が行なわれる発表を行なった。
――数あるゲームショウの中でgamescomを重視する理由は?
キスリー氏:gamescomは、ドイツローカルのイベントではなく、グローバルイベントだからだ。あなたのように日本や、アメリカ、ロシアからメディアが訪れるし、30万人以上の来場者が来る。今年はアンゲル・メルケル首相も訪れるぐらい国全体で興味を持っているイベントだから。
――ビクターさんが考える現在の最重点項目は?
キスリー氏:会社として最重要なのは、ユーザーに対して“プレーヤーハッピー”を実現すること。会社のCEOとしては、それは大事で、それにたどり着くために、社内のコラボレーション、社員間の協力をより強くしていきたい。
――「World of Tanks」ではMusic 2.0というプロジェクトが進行中だが、ビクターさんはミュージシャンや作曲家とのコラボをどのように考えているのか。
キスリー氏:まず、ゲームにおいて音は重要で、内部的にもソフトウェアをアップグレードして、よりよいサウンドを実装できるように工夫を重ねている。SABATONや山岡晃さんとのコラボについては、彼らは「WoT」のプレーヤーだったことが大きく影響している。これは運命的な出会いで、コラボしてお互いにして何ができるのか、どうすれば「WoT」を盛り上げることができるのか一緒に考えている。「WoT」ユーザーにはヘビーメタルが好きな人も多く、SABATONにはブースのステージでのライブ演奏に加え、プレーヤーギャザリングイベントでも演奏して貰う予定で、ユーザーに様々な角度から多くの体験をさせたいと考えている。
――「WoT」は現在どういう状況にあると考えているか?
キスリー氏:「WoT」は今年で7周年を迎え、初期の頃とはグラフィックスも進化し、今は映画のワンシーンのようにまでクオリティが上がっている。大きなアップデートとしてはこれまで最大15対15だったランダムマッチが、30対30のグランドバトルとしてパワーアップする。
我々としてはこうした新しい取り組みを導入することで、より長く、より多くの人にゲームを楽しんで貰いたいと考えている。良い例がアニメーションだと思う。「シンプソンズ」や「ファミリー・ガイ」のように長年続いているアニメーションは、人気を維持するために常に新しいキャラクターやエピソードなど、視聴者の関心を引くものを考えている。ゲームも同じで、今後も20年飽きられないようなタイトルにしたいと考えている。
――グランドバトルの30対30は非常に楽しみにしている。
キスリー氏:ロシアやヨーロッパでは8月下旬から、アジアは9月5日から遊べるようになる。15対15を上回る戦いは前から実現したかったが、当時はPCのスペックや、サーバーの処理能力から実現することが難しかった。グランドバトルは個人的にも非常に興味を持っていてテストにも参加して非常に楽しかった。正式サービスでもグランドバトルに参加して、皆さんと一緒に報酬を獲得したいと考えている。
今後アップデートとしては新しいモードの追加のみならず、マップHD化を進めている。これまで車輌はHD化してきたが、マップは旧来のままだった。これをあたかも映画で見ているようなクオリティにアップデートしていきたい。40以上のマップ全部を一気にはできないが、随時アップデートしていきたいと考えている。
――昨年は「終末のイゼッタ」でアニメ制作にも関わった。今年以降もそうしたゲーム以外の取り組みを進めていく予定はあるか?
キスリー氏:アニメ制作については、今具体的に決まっていることはない。アニメとゲームの制作は別だと思っているので、今後も可能性はあるが、基本的にはゲーム制作にフォーカスしたい。
――新規の大型タイトルとして「Total War: ARENA」が控えているが、どのような期待を寄せているか。
キスリー氏:新しい挑戦だと考えている。「WoT」、「WoWS」は、1車輌、1艦艇を操作するゲームだが、「TWA」は、1人で3つのユニット、計300ユニットを操作する。我々が開発に関わっているのでいくつか似た要素はあるが、まったく別のシステムのゲームになっている。α、βを通じて、ユーザーからフィードバックを貰い、学びながらベストなゲームに仕上げていきたい。
もうひとつ言いたいのは、個人的にはノスタルジーを感じるゲームだと言うことだ、過去に我々は「DBA Online」をサービスした経緯があるが、あれに似たところがあるゲームになっている。「DBA Online」はターンベースのデーブルトップゲームで、ギリシャ、日本、中国などが登場するRTSだった。「TWA」はグラフィックスも綺麗だし、ゲーム性も似たところがある。開発を担当しているCreative Assemblyは、過去の作品を見ても、とてもシナジーを感じるタイトルが多い。
――その一方で「World of」の新作がこのところ発表されていないが、このシリーズの新作は考えていないのか?
キスリー氏:もちろん、様々なアイデアを考えているが、ゲーム業界は、良いアイデアが即成功するわけではないし、むしろなかなか成功しない。内部的には様々な施策を準備しているが、過去の経験から、しっかり準備ができてから発表したい。
――先月ミンスクオフィスを訪ね、ベラルーシの魅力を知った。ビクターさんにとってミンスクとはどういう場所か?
キスリー氏:私としては世界の国のなかで、非常に素晴らしく美しい街だと考えている。東京も素晴らしいが、ジャンルがまったく違う。自然が豊かな美しい国だと思っている。
――ChinaJoyで、中国でのWargaming.netのパートナーである空中網から、「World of Tanks」を現代化したようなタンクバトルゲームが発表されていた。この点についてどう考えているのかということと、現代戦をカバーする考えはないのか教えて欲しい。
キスリー氏:そのタイトルに限らず、類似のゲームが世界中にあるのは把握してる。ただ、「World of Tanks」は7年間やっていて、その間に培ったノウハウ、プレーヤーとの信頼関係があるので、似たようなものが出ても負ける気がない。それらのゲームが、新たなユーザーが掴んでいるかというと掴んでいないと思う。今後も類似のゲームに負けないように「WoT」を素晴らしいげーむにしていきたい。
次に現代戦についてだが、もちろんアイデアはある。ただ、今の「WoT」のシステムで現代戦をやっても面白くならないと思う。もし我々が現代戦をカバーするとすれば、それはまったく新しいゲームとして作りたい。
――日本のゲームファンに向けてメッセージを。
キスリー氏:gamescomの直前に発表したが、「World of Tanks Console」では、1人でもCO-OPでも楽しめる、PvEコンテンツ「War Stories」を公開した。今までにないストーリーが体験できるゲームになっていて、始めたばかりの初心者でも楽しめる作りになっているので、ぜひPS4やXbox Oneなどで遊んでみて欲しい。PC版のファンは、9月5日にグランドバトルが実装される。ぜひ期待して欲しい。それから、9月の東京ゲームショウでも様々なことを発表する予定なので、ぜひ期待していただきたい。