今回紹介する「Tom Clancy's Rainbow Six 3: Raven Shield」(以下:RS)は、対テロリスト特殊部隊を描いたFPSとして定評のある「Tom Clancy's Rainbow Six(以下:R6シリーズ)」の3作目。R6シリーズは、日本では一部のミリタリーマニアがプレーヤー層の中心ではあったが、第1作目の「Rainbow Six」、そして第2作目の「Rogue Spear」ともに追加マップなどを収録した拡張パックが発売されるほどの人気を誇るシリーズだ。 その特徴は徹底的なまでの「リアルへのこだわり」。もともとR6シリーズの制作を担当しているRedstorm Entertainmentは、軍事小説・ルポライターとして有名なTom Clancyも名を連ねるゲーム会社。R6シリーズは彼の代表作である「Rainbow Six」シリーズを題材としたゲームだ。 Rainbow Sixシリーズは、世界中の特殊部隊から精鋭を集めた対テロリスト用の特殊部隊「Rainbow」を描いた人気ミリタリー小説。隊長であるJohn Clark以下、強烈な個性を持つ隊員たちと実際の世界各国の政治&軍事バランスを反映した描写が人気のタイトルだ。また、アメリカ軍をはじめとした世界各国の軍事組織に徹底的なまでの取材を行なって描かれる戦闘描写も魅力のひとつ。そんなこともあって、弾丸一発で死亡、というリアル系FPSでのお約束は当然のこと、通常の特殊部隊ゲームでは「ゲームに必要ない」という理由で簡略化されることの多い、銃器を含めた装備全般への描写は非常に手が込んでおり、妥協はいっさい無い。 また、グラフィック面では「Unreal Tournament 2003」相当のUnrealエンジンが使用されている。このため、前作「Rogue Spear」まではゲーム的雰囲気が漂っていたゲーム内の世界は、Unrealエンジンの特徴である薄暗い場所での高い表現能力によって、一気に薄暗い雰囲気をもった独特の世界に様変わりしている。特殊部隊用の訓練シミュレーターとしての性格がいっそう強まったともいえる。好きな人にはたまらない空間となったことは保証できるだろう。
■ 数少ない事前情報から現実を予想するチーム編成と、詰め将棋のようなプランニング作業
特にRainbow隊員の誰をどのチームに割り当て、使用装備を考えるTeam Roomと、突入ルートを検討するPlanningは、R6シリーズそのものといっても良いくらいの特徴点。実際の作戦突入よりも、突入前の準備が非常に重要になっている。 Team Roomでは、まずチーム編成から始まる。隊員の能力は8種類のステータスによって数値化されているので、能力値を参考に割り振ればいいだろう。ゲーム内では数十人の隊員が所属するRainbowからベストメンバーを8人(1チーム4人まで、3チーム投入することが可能だが、その場合は3-3-2というチーム構成になる)選択する。 一応の指針としては、後述するPlanningで陽動や突入など、敵の矢面に立つチームにはASSAULT能力の高い隊員を振るとか、潜入系のチームならばSTEALTH能力の高い隊員を振りわけていけばいい。 次に装備の選択だ。メインウェポンの銃器だけを見ても、サブマシンガンからスナイパーライフルまで45種類が用意され、そこにサプレッサー(消音器)や大容量マガジンなどのオプション、そしてFMJ (Full Metal Jacket:弾頭部分を鉄などの金属で包み、貫通力を上げたもの)とJHP (Jacketed Hollow Point:弾頭部分を十字に切るなどして、着弾時に大きく広がる弾。貫通力には乏しいが対象を破壊する能力は高い)という2種類の弾薬選択が選択肢として用意されている。
これにハンドガンを中心としたセカンダリウェポンや、Flash Bang(特殊閃光手榴弾)やHeartbeat Sensor(心拍センサー)などの特殊装備、作戦地域で目立たないために用意された色や模様付のBody Armorなどの選択が加わるのだからその選択肢は膨大であり、それなりに銃器に対する知識を持ってると思っていた筆者でもしばし悩むほどだ。
こういう場合は、サブマシンガンに貫通力の低いJHP弾を詰めて使うことで、敵の体内に弾を残すようにするのだが、かといって敵がBody Armorを装備しているとサブマシンガン+JHP弾では致命傷を与えられない。それでは貫通力のある弾をということでFMJ弾に換えて、敵の背後に注意してシュートする必要が出てくるわけだ。こういった数々の武器や弾薬の選択は、作戦遂行成功率に直結してくるため、数多くの選択肢から有効な装備を選択することは、ミッション成功のための至上命題になってくる。 チーム編成が終わると待ち構えているのが、R6シリーズの肝ともいえるPlanning(作戦立案)だ。Planning前のBriefing(事前説明)で得た、敵がいそうな場所(Tension Zone)や、人質が監禁されている場所などの事前情報を元に、編成した突入チームの進入経路、別動チームとの連携など、そういったことを打ち合わせるわけだ。これは現実の対テロリスト特殊部隊でも同様で、特に室内への突入直後といった混乱状況の中で、敵味方確認による発砲の遅れや、同士討ちを極力さけるため、このような事前の申し合わせを入念に行なうそうだ。 では、ゲーム上のPlanningでは具体的に何をするのかというと、マップ上にWaypointと呼ばれる通過地点を置いていく作業になる。作戦中、プレーヤーが操作する以外の隊員たちはAIによって操作され、基本的にこのWaypoint同士を結んだ軌道に沿って移動するわけだ。各Waypointでは「ここで、室内にFlash Grenadeを投げ込み、敵を制圧(Clearing)せよ」といった行動設定ができる。 また、移動中のRoE(交戦規定:敵を発見したときにどういう行動をとるかを設定できる)や、Go Codeと呼ばれる突入命令を設定できる。Go Codeは、プレーヤーの想像力しだいでさまざまな突入作戦を実現することができる。たとえば室内に立てこもっているテロリストに対して多方から一気に突入するような作戦や、他方で陽動をしてもらっている間に別働チームが建物内部へ潜入するといった作戦をAI連携して行なうことが可能というわけだ。 と、ここまで書いてきたとおり、R6シリーズにおけるチーム編成とPlanningは非常に自由度が高い。数少ない事前情報からベストのチーム編成を行ない、完全な作戦を立案できるのは、R6シリーズをずっと遊んできたユーザーか、それこそプロじゃないと、その自由度の高さに面食らってしまうだろう。 そこでうまく利用したいのが、チーム編成に入る前に提示されるモデルプランだ。これはチーム編成からPlanningまでがあらかじめ設定された、プレーヤーの指針ともなる突入プランだ。初心者のうちはこれに沿って作戦を遂行すれば、ベストではないがベターな突入作戦を行なうことができるだろう。このモデルプランにそって作戦を遂行していくうちに作戦立案のコツがわかってくるはずだ。 コツがわかったら、規定のモデルプランをベースにしてカスタマイズを加えるなり、ゼロから作戦立案を行なうなどすればいい。モデルプランを元に修正を行なうならば、モデルプラン遂行時に敵の反撃を食らったり、隊員の死傷率が高かったりするところを中心にプランをいじるといいだろう。 こうやって、敵がどんな動きをしようとも対処できるようなプランを、詰め将棋のように考え抜いていくのも、R6シリーズの楽しみのひとつだ。筆者もこのPlanningだけで数時間費やして、実際の突入作戦は5分かからないということが多い。モデルプランには無いルートから潜入するルートを考え、それがピタっとはまったときの喜びと達成感は何物にも替えがたいものがある。
慣れてくると、実際の突入作戦よりこっちのPlanningのほうがゲームのメインになってきてしまうから、その奥深さは恐ろしいものがある。最初のうちは何をやっていいかわからないとは思うが、ぜひとも新規プランの構築に挑戦してみて欲しい。そして、新しい作戦プランができたらそれにあった能力を持った隊員を選抜してチームを編成しよう。ちなみに、アクションが苦手という方のためにこのあと行なわれる突入作戦をすべてAIに任せて、プレーヤーは眺めていることもできるようになっている。 ■ 扉ひとつ隔てた向こうには敵がいるかもしれない。進行速度と索敵を両立させなくてはいけない突入作戦
さて、実際の操作系の変更だが「Lean(傾き)がアナログ操作可能」となっているのは注目ポイントだ。これまでLeanというと左右へ一定量、ヒョイヒョイと上半身を振るだけだったのだが、RSでは[左Ctrl]キーを押しながらマウスを動かせば、動かした量と方向に合わせてずりずりと覗き込みを行なってくれる。 この動作をうまく使えば、曲がり角はもちろんのこと、敵がいそうな部屋の窓からちょこっと覗き込むようなことも可能だ。さらにアナログ操作が可能になった点として、ドアの開閉をマウスホイールで段階的に行なえるようになったのも注目したい。この機能を使えば、ドアをちょこっと開けて室内の様子をうかがったり、ドアの隙間からGrenadeを投げ込むということができるわけだ。また、立ちとしゃがみだけであった姿勢に、今回から新しくProne(伏せ状態)が加わっている。通常の突入作戦の時にはあまり使わないが、潜入任務(Recon Mission)などでは役に立つだろう。 さて、先ほどPlanning画面で頭に入れた進行ルートにそって突入を行なうわけだが、プレーヤーの視点には、進行ルート上に設定されたWaypointがスーパーインポーズして表示される。そのWaypointを追っかけて移動すれば、設定した進行ルートにそって移動できるという仕組み。その分これまであったミニマップなどはなくなっている。また、これまでのようにチームリーダーだけを操作できるのではなく、作戦中の隊員全員を切り替えて操作できるようになっている。 また、RSでリファインされたAIにも注目したい。特に味方AIは前作から比べて格段に優秀になっている。これまでのAIは周囲の索敵が不十分で、横合いや後方から敵に襲撃されるとあっという間に死人の山が築かれることが多かったが、今回は先頭の隊員は前方、2番目と3番目の隊員は左右、最後の隊員は後方、といった具合に360度をきっちり警戒して進んでくれる。 これにより、交通事故のような作戦失敗パターンはほぼなくなった。チーム先頭の隊員を主にプレーヤーが担当すれば、上下はまだしも左右方向への警戒が多少手薄でも何とかなるので、アクション初心者にはこの点もうれしいところだ。また、前作Rogue Spearを高難易度ゲームたらしめていた敵AIの射撃能力も大幅に緩和されている。前作ならばこちらが顔を出した瞬間に打ち抜かれているような状況が多々あったが、今回はなんとか物陰に退避→応射という行動が取れるようになっている。味方AIの策的能力向上+敵AIの射撃能力調整によって、難易度は大幅に下がっており、一般プレーヤーも十分に楽しめるゲームに変化したという印象を受けた。
しかし、難易度が下がったからといってむやみやたらと室内へ突っ込んでいいわけではない。Heartbeat Sensorによってドアの向こう側に敵を確認したら、Flash Bang(特殊閃光手榴弾)やTear Gas(催涙ガス)を投げ込んで敵を無力化するのはもちろんのこと、複数の入り口から突入し敵の注意を分散させることは常に心がけたほうがいい。敵が待ち構えているところに突入していくなどただの的になりにいくようなものだし、銃は一方向にしか撃てない以上、反撃された際の被害も少なくなるのは当然ということだ。 この被害を少なくするというのは、RSを進めていく上では非常に重要となってくる。ゲームを進め、突入作戦を進めていくと隊員に死傷者が出てくることもあるだろう。死亡した隊員は当然のこと、怪我をした隊員も次の作戦へは参加できなくなってしまう。志望した隊員に変わり補充隊員は随時配属されてくるものの、訓練を受けた精鋭に比べるといまいち能力は劣ってしまう。
これが繰り返されるとどうなるかというと、キャンペーン最後のほうの作戦で十分な能力を持った隊員がいなくなるという事態が発生してしまう。この状況が発生してしまうと、結局最初からやり直すという羽目にもなりかねない。こういった状況を防ぐためにも、隊員への危険性が少ない突入計画を選ぶべきだろう。
■ 互いを信じて背中を預ける快感を味わえるマルチプレイ 同作のマルチプレイモードは、従来のゲームモードに加え、「Escort The Pilot」モードが新しく追加された。このゲームモード。リアル系FPSの代表作である「Counter Strike」にあったASマップのゲームモードと同じで、脱出側と脱出阻止側にわかれてゲームが始まる。貧弱な武器(ハンドガン一丁)を持ったパイロットを部隊が護衛して、脱出地点まで連れて行ければ脱出側の勝ちというゲームモードだ。 複数の隊員で方向を分担し、常に360度に対する警戒を行ないつつ進んでいくわけだが、急所に当たれば即死、それ以外の手足に当たっても命中率や移動速度が落ちるというゲームシステムもあって、非常に緊張感のあるゲームモードだ。実際にプレイしての感想だが、特に集団で固まって移動していると、いきなりライフル弾を大量に四方八方から打ち込まれて終了、作戦失敗という展開が結構多かった。 これを回避するためには、プレーヤー同士の意思疎通や事前の作戦(陽動とか迂回しての襲撃とか)に加え、襲撃されたときにパイロットをいかに守るかというフォーメーションの研究(ここら辺はVIPを守るセキュリティサービスの動きなどが参考になるかもしれない)が必要だろう。 そういう意味では、これまでのHostage RescueやSurvivalといったゲームモードとは一線を画したモードだと言える。こういったフォーメーションをスムーズに行なうためには、やはり日頃の練習が欠かせない。IRCや掲示板などのインターネット上のコミュニティを使って、是非とも仲間を捜してみて欲しい。
■ Misson1「Stolen Flame」を誌上プレビュー それでは、最後にMisson1「Stolen Flame」をプレビューしよう。少しでも雰囲気をつかんでもらえればと思う。
(C) 2003 Red Storm Entertainment, Inc. Red Storm and Red Storm Entertainment are trademarks of Red Storm Entertainment, Inc. Rainbow Six is a trademark of Red Storm Entertainment, Inc. Rainbow Six: Raven Shield is a trademark under registration by Ubi Soft Entertainment, Inc. Red Storm Entertainment, Inc. is a Ubi Soft Entertainment company. All Rights Reserved.
□「Tom Clancy's Rainbow Six 3: Raven Shield」公式ホームページ http://www.ubisoft.co.jp/raven-shield/ □関連情報 【2003年1月8日】「Tom Clancy's Rainbow Six 3: Raven Shield」Multiplay Demo Ver.1.1 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030108/demo0108.htm 【2002年11月14日】「Tom Clancy's Rainbow Six 3: Raven Shield」Multiplay Demo http://game.watch.impress.co.jp/docs/20021114/demo1114.htm 【2002年3月5日】「Tom Clancy's Rainbow Six 3: Raven Shield」Singleplay Demo http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030305/demo0305.htm (2003年4月9日)
[Reported by tyokuta]
また、弊誌に掲載された写真、文章の無許諾での転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2003 Impress Corporation All rights reserved. |
|